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ロボ部長のブログ一覧

2013年07月26日 イイね!

New Edge Chronicle#5 モンデオの奥ゆかしき切れ味

New Edge Chronicle#5 モンデオの奥ゆかしき切れ味フォーカスが出た後で、ニューエッジ・デザインがもしフォーマルなサルーンに応用されたらどうなるだろう?と考えたことがある。その時、シャープな、文字通りエッジの立ったラジカルなデザインの、今までに見たことのないようなサルーン像が頭に浮かんだ。

果たして、ニューエッジ・デザインを引っ提げて現れた二代目モンデオにそんな尖った風情はなく、むしろ控え目にさえ映った。その反面で、フォーカスのように翔んだ部分こそなかったものの、よく練り上げられた造形であることに感心させられた。ヨーロッパフォードで旗艦モデルの役割を担うに足る堂々とした存在感と、ニューエッジ・デザインの一派としての存在感との巧みな折り合い。初代モンデオがいかにも欧米合作の所産といった無国籍な趣であったのに対して、当時のジャーマンスタイル調な骨太のスタンスは、ヨーロッパの地を走るに相応しいたたずまいだった。

硬質な面の表情やタテ方向の流れが強調された幾何学的なディテールには、デザインディレクターのクリス・バードがアウディ出身である影響が色濃い。その上でモンデオは、アウディをはじめとするドイツメーカーの車に比べると、過剰にソリッドでない、どこか軽やかな感覚も備わっていたのが絶妙だった。適度に絞り込まれたリアエンドの両端に付いた明快な三角形状のテールランプと、その輪郭線の延長にCピラーのラインが自然に連なる一帯は、落ち着きと躍動感をたたえたモンデオを象徴する造形上のハイライトである。

一方で、ニューエッジ・モンデオのもうひとつのハイライトは、インテリアの目覚ましい質の向上である。フォーカスまでは凝った造形に対して、パーツの成型や組み付けの精度が明らかに追い付いていなかった。そこからすると、モンデオのインテリアは一足飛びのクオリティアップを果たしたといえる。最上級車としての品格を備えるため、モンデオでは開発の初期からサプライヤーを巻き込んでの品質向上に取り組んだと聞く。しかし、ここではKa やフォーカスに倣った造形の冒険を抑えて、オーソドックスな形状でまとめたことも功を奏したといえよう。曲率が大きく分割線の少ないパーツで構成されたインパネは、張りのあるボディパネルとの調和がよく取れており、内外のトータルコーディネーションという点から見ても成功している。

ニューエッジ・デザインという、ある種の過激さを孕んだ造形テーマを保守的な上位車種に応用する。すぐれて挑戦的な試みだが、それをストレートに表さず、あえて穏当に表現してみせたモンデオのアプローチは、その後に控える「究極のニューエッジ・デザイン」フィエスタの誕生へと大きく生かされることとなる。
Posted at 2013/07/26 20:52:20 | コメント(1) | トラックバック(0) | Mondeo | クルマ
2013年07月19日 イイね!

New Edge Chronicle#4 デザインの意志と力・・フォーカス

New Edge Chronicle#4  デザインの意志と力・・フォーカスデザインにはつくり手のメッセージが込められている。どれほど経営者やデザイナーが身振り手振りを交えて自らプレゼンテーションに挑んだとしても、大多数の人々は市場に提供される商品やサービスのデザインを通じてしかつくり手の志・誠意を理解できないものだ。
初代フォーカスが現れたとき、人々はそこにフォードの変革への意志を感じたはずである。ライバルが多くさまざまなユーザーを相手にしなければならない厳しいCセグメントにあって、フォードは求められる商品性を過不足なく充たすだけでなく、それ以上の「何か」を自らフォーカスに課した。その「何か」こそデザインである。Ka に始まったニューエッジ・デザインは、フォーカスに至って初めてオールニューのプラットフォームを得たことで、その真価が発揮された。

幅広で上背が低いスタンスが無条件に許されるなら、人々の視線を引き寄せる格好のいいクルマをつくることはたやすい。しかしフォードがフォーカスのために新たに起こしたハードポイントは、スタイルの追求を主目的にするものではなく、居住性や乗降性、積載性、経済性といった実用ハッチバックに必須の要素を高いバランスで成立させるための解だった。それはデザイナーにとっては容易ならざる基本条件である。
ちょっとしたミニバン級の全高と、タンブルフォームを抑え気味にしたスクエアなキャビン形状を持つフォーカスは、下手なデザイナーの手にかかればたちまち鈍重なクルマに堕したところだが、ニューエッジ・デザインの手法の応用が巧みでまったくハンディを感じさせない。

フォーカスで多用された円弧のモティーフは、それ自体が方向性を持ち視線を誘導する特性があるので、フォルムに動感を与えて立体のボリューム感を削いで見せる効果がある。ニューエッジ・デザインの特長のひとつである線と面を交錯させたグラフィカルな処理が活きるポイントだ。
カーデザインの領域では、グラフィックの要素に頼ることに対して「グラフィックに走る」などと揶揄し、立体造形をおろそかにしているとみる傾向もある。しかしフォーカスでは、立体と表層面のグラフィクスが不可分な関係にあり、互いが融合しながら高め合うリッチなデザインが実現されている。

フォーカスのデザインでも特に画期的かつ合理的だと思わされるのが、リアのテールランプである。リアピラー上に置かれたそれは、高い位置であることに加え、三角形という判読しやすく印象に残りやすい図形のため視認性に優れている。しかもハイマウントされた恩恵で、リアハッチゲートがケラレることなく広い開口面が確保された点も見逃せない。

このテールランプに象徴されるような、必要とされる機能をより高めつつ、他とは明らかに違う印象を与えるインパクトを備えた、実に欲張ったディテールを集積させたのが初代フォーカスというクルマだった。デビュー直後はあまりに斬新に映り、むしろ奇異に受け止められないかと感じたほどだった。ほどなく欧州でベストセラーカーの地位を獲得し、フォードの小型車のスタンダードとなって世界各地で親しまれることとなる。デザインに込めた意志と力を多くの人のもとへ届けた偉大な一台である。
Posted at 2013/07/19 22:03:36 | コメント(0) | トラックバック(0) | Focus | クルマ
2013年07月14日 イイね!

New Edge Chronicle#3 滑らかに鋭く・ピューマ

New Edge  Chronicle#3 滑らかに鋭く・ピューマピューマは外見的にはどこからどう眺めてもニューエッジ・デザインの文脈を外れて見える。Ka やクーガーのようなシャープエッジはランプなどのディテールの一部に見られるのみだ。しかしフォードは明確にピューマをニューエッジの一派に位置付けており、 開発のタイミングもKa に続くニューエッジの揺籃期にあたる。
他のニューエッジ各車とのテイストの違いは、ひとえにボディサイズが影響しているのだろう。小型のスポーティーカーであるピューマはリトルクーガー的にエッジの立った造形を施すには寸足らずだし、ある意味それはKa が担っているともいえる。であれば、基本的な立体造形はむしろ古典的なクーペのセオリーに則って、ランプやグリルのグラフィクスなどにニューエッジ・デザインの手法を反映させたのがピューマの成り立ちと理解できるのではなかろうか。いにしえのイタリアやイギリスのライトウェイトスポーツカーを思わせる雰囲気は、ヨーロッパの風土と、スポーツカーを好む人々の気質の中で長年にわたって育まれてきたクーペスタイルの王道なのだろう。
ニューエッジという枠組みにとらわれずに一台のクーペとして目を向ければ、いたってコンパクトなサイズでありながら立体の構成に破綻がない点が特筆できる。こういったサイズのクーペだと、往々にして「線がもっと伸びたがって」いたり「面がもっと広がりたがって」いたりと、どこかアンバランスだと感じさせる造形に陥りがちである(そのアンバランスさが魅力という見方もあるが)。ところがピューマは、頭の先からシッポに至るまで、すべての面とラインがバランスを保ったままきちんと収斂されているのがお見事である。

ところでピューマといえば、日本には標準車はまずないだろうが、限定で500台しか生産されなかったレーシングピューマが若干数上陸している。2006年に開催されたFJL のサーキットイベントでそのミステリアスな存在を目の当たりにして、大変なショックを覚えた。大きく張り出したブリスターフェンダーや、それでもなお車体からはみ出さんばかりのワイドトレッドのスタンスが醸し出すたたずまいに一撃されたのだが、考えてみればそれらはニューエッジ・デザインのテーマとはあまり関係がない。きわめてエンスー的な要素であって、ピューマというクルマはそういった価値観で味わうのが相応しいのだろうと思う。
Posted at 2013/07/14 21:58:04 | コメント(1) | トラックバック(0) | Puma | クルマ
2013年07月07日 イイね!

New Edge Chronicle#2 唯一無二の大胆さは景色になった・・Ka

New Edge Chronicle#2 唯一無二の大胆さは景色になった・・Ka フォードが提唱した新しいデザインテーマであるニューエッジ・デザインが初めて採用された市販車である。Kaについては、市販に先駆けて発表されたコンセプトカーをめぐる戦略も印象ぶかい。それはKa:のネーミングで94年のショーの舞台に現れたが、後に登場する量産型Kaとは全体のプロポーションこそほぼ同じに見えたものの、全身は二代目トーラスで極まったフォード一流のぬめっとした造形を施された小型車だった。実はその裏で、フォードがまったく異なったデザインでKaの市販化を企んでいたことには少しも気付かなかった。それから一年あまりを経て、量産型Kaの写真を初めて見た時には、いい意味でフォードに裏切られた!と唸ったものである。

とろけたモチのような形を見馴れた目にはKaの新鮮さが際立った。基本的な形状は「丸い」が、それまでとは丸さの質が違っていた。当時、あるカーデザイナーがKaの丸さを“風船がパンパンに張ったみたいだ”と表現していたが、まさしく言い得て妙であり、およそ伝統的なカーデザインの曲面使いのセオリーから外れた面質である。

カーデザインにおける「丸さ」とは、大概が何らかの機能と結び付いている。空力特性向上のためであったり、車体強度を稼ぐためであったり、有効な空間を確保するためであったり。だがKaの丸さはそうした性能上の要求から導き出されたものではない。
Kaはフィエスタのプラットフォームをベースとするが、開発にあたり最も強く求められたのは「フィエスタとはまったく印象の違うクルマであること」だったという。実用的な小型車としての正当な役割はフィエスタに負わせてでも、Think different であることがKaに課せられた最大の機能であった。それゆえにデザイナーは、有機的なラウンドフォルムとの決別を怖れず新しい「丸さ」に挑むことができた。その意味では、Kaの丸いデザインもまた、ひとつの機能を追求した結果生まれたものと言っていい。90年代のカーデザインの歴史において、後に与えた影響の大きさという点でアウディTTと並び金字塔となったデザインであることは確かだ。

ちなみにKaのデザインに対しては、当時カーデザインの分野はもとよりプロダクト(製品)デザインの分野からも高い注目が寄せられている。Kaの少し後から登場して一世を風靡した初代iMacのデザインと同列に論じられたこともあった。カーデザインとプロダクトデザインは、どちらも人工的なものを対象とするデザインであるにも関わらず、意外なほどお互いの距離が遠く、相互理解も少ないのが実情である。しかし、Kaのデザインに見られた特異な手法、たとえばディテールの輪郭線を意図的に交錯させることでできる面の強調、グラフィカルなラインとストレートな素材感が強調された前後のバンパー、プラスチックの特性を最大限に活かしたインテリアなどは、プロダクトデザイナーの感性をも刺激せずにはおかなかったようだ。そういえば、ごく初期のKaのカタログには、鬼才フィリップ・スタルクがデザインしたプロダクトの写真がイメージで使われていたが、それもKaのデザインが自動車の美学というより、プロダクトデザイン的な発想と手法のもとに組み上げられたことを示唆している。

“丸いのにシャープ・まろやかにしてソリッド”と実に表情豊かなKaも、その基本形状はフォードのキネティック・デザインをはじめとする最新のカーデザインと比べればあくまでも端正である。クールなたたずまいでありながら、どこか懐かしさを抱かせるあたりも旨い。個人的には、KaのCピラーの太さと形状は、デザイナーがかつてラリーフィールドでも名を馳せた初代エスコートのそれをイメージしたに違いない、と想像している。ともかく、眺める角度によって思いもよらないボディラインで愉しませてくれて、見る者を飽きさせることがない。Kaのように毎日付き合う相棒のようなクルマであれば、日々新鮮な感覚を与えてくれることはとても大事な要素である。だからこそ、初代Kaはその強い個性にも関わらず、10年以上もの長きにわたりヨーロッパで愛され、いつしか日常の風景となることができたのだろう。
Posted at 2013/07/07 14:49:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | Ka | クルマ

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「まさしく、日本の景色の中にいるフォード。Viva !」
何シテル?   01/17 15:18
自然体で、気兼ねも気負いもなく付き合えて、けれど愉しいクルマ。フォードを40年近くにわたって乗り継いでいます。2016年をもってフォードは日本から事業撤退しまし...
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