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2016年10月16日
太平洋戦争末期、断末魔の混乱の中、日本はジェット戦闘機を完成させていた。



今年で戦後70年。テレビや新聞、雑誌などでも70年前の戦争を振り返る特集を数多見かけるようになった。その多くは政治のあり方や人々の生活に着目するが、一方で「企業は、技術者は、戦争にどう向き合ったのか」という視点もあるだろう。

 

戦前の技術者といえば、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の主任設計者を務めた三菱重工業の堀越二郎氏が有名だ。日本は少なくとも、太平洋戦争前半までは数多くの戦闘機を輩出する「航空大国」だった。戦争中盤からは戦局悪化に物資不足が重なり、航空機の開発は鈍るようになったが、それでも終戦間際に二つの画期的な航空機を開発。量産されなかったものの、飛行試験にこぎつけていた。

 

ひとつは、国産としては初めてジェットエンジンを採用した中島飛行機(現・富士重工業)の特殊戦闘機「橘花(きっか)」。もうひとつは、三菱重工業のロケットエンジン戦闘機「秋水(しゅうすい)」だ。ジェットエンジンとロケットエンジンという、当時最先端の技術を追求した二つの戦闘機だった。これらの技術は、戦後7年間の「航空禁止令」の期間を超えて、現在まで続く航空機の技術の礎になっていると言える。



広島に原子爆弾が落とされた翌日、1945年8月7日。千葉・木更津にある海軍の飛行場で、1機の航空機が爆音をとどろかせて飛び立った。祈るような視線を浴びせるのは、海軍空技廠や中島飛行機の技術者たち。日本初のジェット機「橘花」が生まれた瞬間だった。




当時、まだ自動車と同様の「レシプロ式」が主流だった航空機のエンジン。しかし、基本的にはプロペラを回して前方の空気をそのまま後方に吹き出すだけなので、スピードには限界があった(プロペラの回転速度が音速に達すると衝撃波が発生し、空気抵抗が急に増えてしまう)。当時はこれに加え、燃料事情も悪くなっており、粗悪な燃料でも動かすことのできる高性能なジェットエンジンが求められていた。

 

航空機の性能はほとんどエンジンで決まるといっても過言ではない。ドイツやイタリア、英米などは1940年代前後に次々とジェットエンジンの実用化に成功し、なかでもドイツは42年に世界で初めてジェット戦闘機(メッサーシュミットMe262)の飛行に成功していた。日本の陸海軍も、当初は独自にジェットエンジンを開発する方針をとったがいずれも実戦配備には至らず、1944年、軍事同盟を結んでいたドイツからMe262に搭載されていたBMW製のエンジン「BMW003」の図面を取り寄せて開発することになった。



とはいえ当時のは図面の取り寄せもままならない状態だった。大戦中で鉄道や船を使った物資の輸送は敵の妨害を受ける中、日本とドイツは、開発したばかりの潜水艦を使って軍人や技術資料を運んだ。ただ、戦争末期になると戦局の悪化により、潜水艦も撃沈されることが少なくなかった。



1944年7月の「第4次遣独潜水艦作戦」では、日本はMe262の資料や本連載後半で紹介するロケットエンジンの資料を取り寄せた。同作戦で潜水艦はフランスの港からシンガポールまでは何とかたどり着いたものの、フィリピン沖で米軍の潜水艦に撃沈されてしまう。このため、事前にシンガポールで輸送機に乗り換えた海軍中佐が持ち帰った資料をのぞき、ほとんどが海の藻屑と消えた。




海軍中佐が持ち帰った資料は、エンジンの断面図などわずかしかなかったが、これをもとに中島飛行機が機体を、石川島重工業(現IHI) がエンジンを設計した。日本全土で敵機の空襲が本格化する中、工場を焼かれては設計室を移しながら、わずか1年弱で開発した。石川島のジェットエンジンは「ネ20」(ネは燃焼噴射推進装置の頭文字)。以前、陸軍や海軍が独自開発しようとしていたジェットエンジンに近いものがあった。

 

そして1945年8月7日。木更津の地で、海軍のパイロットを乗せたジェット戦闘機「橘花」は飛んだ。といっても、当時は軍用の燃料でさえ払底していたため、「松根油を十六分間ぶんだけ満たした『橘花』は、(中略)操縦特性やエンジンの状態など、事前に決められたチェックを手早く済ませると、十二分間の飛行を終えて帰還した」(杉浦一機「ものがたり 日本の航空技術」より)。
 


初飛行から5日後の12日には再び飛行試験に臨んだが、滑走路をオーバーランして脚部を破損。機体の修理中に終戦となった。

 


実戦配備には間に合わなかった戦闘機「橘花」とジェットエンジン「ネ20」。この時期の日本の航空機産業に対して米国は、一定の評価を下している。45年の米海軍の報告書は、こう締めくくっている。「ネ―20はなかなか良い。BMW003Aは小型のターボジェットで最良のものだろうが、ネ―20を搭載した日本の飛行杭は軽量構造ゆえに、003Aエンジンを搭載したドイツのMe262と同等の性能をもつことに注目されねばならない」(前間孝則『ジェットエンジンに取り憑かれた男』)。
 


戦後、米国やソ連は、ドイツからジェット戦闘機の技術を採り入れ、航空大国の地位を確立していく。



太平洋戦争当時の日本の航空技術を欧米と比較すると機体設計はほぼ同等、エンジン開発は10年遅れ、プロペラは20年以上遅れていたと言われる。また電気系、油圧系、燃料、潤滑、機械工作などの周辺技術も10年以上遅れていたそうだ。部材にドリルで穴を開けて表面の面取りを同時に行う工作機械が日本では作れなかったのに米国では1930年代にそうした工作機械が作られて使用されていたという。




戦後、日本の戦闘機を米国が調査する際、電装系を米国のものと取り換えて米国の潤滑油とハイオクタンガソリンを使用したところ日本の航空機の速度、上昇力などは軒並み10%程度も上がったそうだ。当時の日本の戦闘機で600キロを超える速度を記録したものは数えるほどしかないが、零戦も600キロオーバーの戦闘機だったということになる。そうであれば新型機など開発しなくても周辺技術さえしっかりしていれば零戦でF6Fなど一掃できたかもしれない。航空燃料も今はその辺のスタンドで簡単に手に入るオクタン価100のハイオクガソリンなどは日本で生産することができず米国からの輸入に頼っていた。




そんな国がどうして米国と戦争をしようなどと考えたのか理解に苦しむが、戦争末期などは材料はない、燃料はないでとにかく悲惨な状況だったようだ。そんな状況でドイツから持ち帰ったわずかな資料でよくぞジェット機やロケット機などを作って飛ばせたものだとその気合と根性には感心してしまう。特にジェットエンジンは多燃料機関でどんな燃料でも使うことができたので結構期待していたようだ。仮にこうしたジェット機やロケット機の開発に成功して戦線に投入できたとしても米国はさらに高性能なジェット機を大量に戦線に投入してきただろうから戦局が変わるようなことはなかっただろうが、当時の技術者が血を絞るような思いでこうした新技術に取り組んだことには頭が下がる。




その技術は戦後何とか復活してMRJとATD-Xが継承している。航空機産業は極めてすそ野の広い産業で日本の経済に与える影響は極めて大きいので是非健全な発展を遂げてほしい。医療費に30兆円以上もつぎ込んでいて、それはそれで必要なことは理解するが、少し合理化して何兆円かをこうした産業の発展に投入すべきだろう。高度な先端技術の開発には長い時間と莫大な費用が必要だ。そういうものは国策として取り組んでもいいのではないだろうか。「コンクリートから先端技術へ」将来の日本にはぜひ必要なことだろう。





関連情報URL : http://newswitch.jp/p/1549
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Posted at 2016/10/16 11:14:01

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