相次ぐ緊急会見 「衝突試験」とは
ゴールデンウィーク直前の2023年4月28日の夕方から夜にかけて、ダイハツとトヨタが相次いで緊急記者会見を行った。会見の内容は「側面衝突試験での認証不正」についてだ。そう言われても、自動車ユーザーはもとより、一般消費者にとっても、「衝突試験」や「認証」については、ほとんど知られていないことだと思うので、順を追って見ていく。
まず、側面衝突試験とは、車内に乗員に見立てたダミー人形を置いた状態で、クルマの真横から台車を衝突させるもの。その結果、ダミー人形の頭部、腹部、腰部に受けた衝撃のデータや状態によって、乗員保護の性能を評価する(独立行政法人 自動車事故対策機構のホームページから一部抜粋)。
今回ダイハツが行った側面衝突試験は、国際連合での協議による国際規則(協定規則第95号・UN-R95)に基づくもの。ダミー人形の頭部の加速度など乗員保護に関する基準値に加え、燃料漏れ・感電防止などの技術的要件も加味(国土交通省関連資料より一部抜粋)している。衝突試験には側面衝突のほか、コンクリートの壁に正面から衝突させる「フルラップ前面衝突試験」、クルマ・建物などとクルマの前面の一部の衝突を想定した「オフセット前面衝突試験」、さらに追突時の「後面衝突」で頸部への障害を考慮した試験などがある。
クルマの認証 明かされた「細工」
次に、不正の対象となったクルマの「認証」とは何か?これは、道路運送車両法の規定で、衝突試験、排出ガス試験、燃料消費試験、制動装置(ブレーキ)試験などについての適合性について技術的に審査すること。認証審査は、国土交通省の所管である自動車技術総合機構・交通安全環境研究所が行う。これら認証の審査に合格すると、新車として製造販売するための型式指定を受けることができる。また、日本国内で行う認証は、他の締結国でのその国の基準に適合する(以上、交通安全環境研究所ホームページより一部抜粋)。
ここで、ダイハツの認証不正の話に戻す。
認証に関する衝突試験は、ダイハツ開発本部 滋賀テクニカルセンター(滋賀県蒲生郡竜王町)で行われた。海外市場向けということで、前述の国際規則「UN-R95」での実施だったという。では、具体的にどのような不正行為が行われていたのか?
ダイハツの会見では「認証する車両の前席ドア内張り部分の内側に、不正な加工を行った」と説明した。一般的には、ドアトリムと呼ばれる部分だ。そこを「壊れやすく細工した」という。「壊れやすく」とは、いったいどういうことなのか? 普通に考えると、側面衝突試験での結果を良くするには、部品の強度を上げて「壊れにくく」すると思う人が少なくないはずだが……。
日本向けモデルの不正は?
実際、今回の記者会見でも最初、ダイハツ側の説明がしっかり理解できない記者がいて、複数の記者の質問の末、ダイハツ側は「(ドアトリムが)割れた後にシャープエッジ(尖った形状)にならないように不正をしたと考えられる」と、詳細な説明をした。つまり、乗員を守るためには、直接的な衝撃力に対してではなく、ドアトリムなどが乗員を負傷させないことも、認証の審査を合格するためのキーポイントということだ。
こうした認証不正が確認されたのは、海外向けモデルのみ。タイとマレーシアで生産され、エクアドル、メキシコ、中近東各国を含めた世界各地にも輸出されている小型セダンのトヨタ「ヤリス・エイティブ」と、インドネシア生産でエクアドルなどに輸出される、小型ハッチバックのトヨタ「アギラ」。こうしたダイハツが開発してトヨタブランドとしてトヨタが製造するモデルを、OEM(相手先ブランド)供給と呼ぶ。OEM供給では、開発だけではなく製造も行い、それをOEM契約先に納入する場合もある。もう1つの認証不正対象モデルは、ダイハツとマレーシア地場メーカーとの合弁事業であるプロデュアの小型ハッチバック「アジア」。さらに“開発中”の1モデルを含めた、合計4モデルだ。日本向けモデルでの認証不正について現時点では「ない」としている。
どうして認証不正は起こるのか
では、どうして認証不正が起こってしまうのだろうか?今回の会見でダイハツ側は「担当者にプレッシャーがあったものと考えられる」と説明している。このプレッシャーとは、認証の審査を“一発合格させる”ためということらしい。衝突試験では「実車」を使うため、その準備やコストなどを考えると一発合格を目指すのは当然のことだろう。だが、ここで疑問なのは、事前の社内テストやシミュレーションでは、今回のようなスリットを入れる加工をしなくても、十分に認証審査を合格できる状態にあることがダイハツの社内調査で分かったという点だ。
いずれにしても、「開発」と「実験」という部署と、それを社内で監査するような立場にある「認証」担当部署が同じ組織内にあるという、ダイハツの衝突安全に関わる組織体系に課題があることは明らかだ。その点について、ダイハツ側も改善する意向を示している。さらに、同じくトヨタグループである日野では、2000年代から様々なエンジン不正が定常化していたことについて、特別調査委員会が「企業風土の問題」と言い切り、日野は企業風土の変革に取り組んでいる真っ最中だ。今回のダイハツ会見の後、トヨタの豊田章男会長はトヨタグループ全体に対して、企業風土、ガバナンス、そしてコンプライアンスの再認識を求める姿勢を示した。(桃田健史(執筆) AUTOCAR JAPAN(編集))
不正と言うのは事実ではないことを申告して型式証明を取るということで要するにうそを申請することであるが、うそはいかんだろう、うそは、・・。日野にしても長い間エンジンの性能諸元を偽っていたのだろうが、そんなことをするなら切磋琢磨していいものを作ればいいだろう。ただ最近は企業側もコストや開発時間などを厳しく指定して来るんだろうし、そうなると技術者側も、「指定の予算と時間では結果が出せそうもない。だったらちょっと結果に手を加えて、・・」と言うことになって最初はハラハラドキドキでもそれが通ってしまうとだんだん慣れっこになって行って「様々手をかけて改良しなくても何とかなるならちょっと結果に手心を加えてしまおう」と言うことになってしまうのだろう。でもなあ、そんな偽装をいくらやっても技術は進歩しないし、偽装の手口は進歩するかもしれないが、それがバレたら企業の存続が危うくなる。技術と言うのは手をかけ金をかけあれこれ考えてときには失敗して後戻りしたり、そんなことを繰り返しながら進歩していく。技術は一足飛びには進歩しない。日本のロケット打ち上げだって日本初の衛星を打ち上げるのに4回失敗してマスコミに散々叩かれて5回目にやっと軌道に乗せただろう。しかも「誘導装置はミサイル開発につながる」とか当時の社会党に的外れ、・・あるいはお隣の宗主国にしてみれば的を得た、・・苦言を呈されて何と「無誘導重力ターン方式」なる誘導方式、これはなまじの誘導方式よりもずっと難しいらしい、・・を開発して打ち上げに成功した。ロケットは真っすぐ上に打ち上げても軌道には入らないんだそうだ。そして三菱のスペースジェット、これは50年という技術的空白の果てに旅客機の開発を行って見事に失敗している。戦後たった7年の航空機空白期で航空機準先進国であった日本の航空機技術はどん尻の後進国に落ちぶれた。それが50年と言えば技術的にどれほど変わってしまったのかもう何をか況やではある。目先のちょっとした時間や開発費のために結果を弄ってパスしてもそんなことは技術開発にとって何の利益にもならない。営利企業だからコストも時間も大事なことは良く分かる。でもねえ、それで技術と信頼を失っていては何もならないだろう。技術開発はひたすら愚直であるべきだろう。トヨタ党でトヨタ車ばかり乗り継いで一度だけダイハツのコペンにも乗ってみた。とてもいい車だった。あんな車が作れる会社が技術結果の偽装などを行ってはいけない。そんなことをしたら悲しいだろう。トヨタの株主の一人としてこれだけは申し上げたい、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2023/05/01 22:21:32 | |
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