2024年01月23日
実車見学とワルキューレ作戦【後編】
G80M3の実車見学の後、嫁とのハードネゴの何か材料となるべく、高校生&大学生の若い感性へのモニタリングをしたところ、しょっぱい結果となってしまった前編。
それでも避けては通れない天王山、ワルキューレ作戦発動なるか。
後編です。
頭の中で整理ができないまま帰宅し、一息ついたところで、嫁に今日のことを伝えるべくリビングへ。
暖かい紅茶を入れて、先に食卓に着いていた嫁から「どうだった?」と切り出され、
「うん、新車みたいだった。」
「で、パパはどうしたいの?」
「予算少しオーバーしているけど、欲しいと思う。」
「そう分かった。」との意外過ぎる反応に、
「え??いいの??」善は急げと、椅子から立ち上がろうとすると、
「でも、その前にもう一度教えて。どうして買い換えたいのか。」と嫁から最後となるであろう質問が。
ここで間違えると、すべてが水泡と化してしまう。
慎重に言葉を選びながら、
「この前ディーラー行ったときさ、ドライブシャフトの件とかあったでしょ。あと、エンジンにもクランクハブっていう泣き所があって、ここが壊れると、何百万円もかかるようになる。その他にも経年劣化が起きるから、その前にと思って。エンジンの性能も上がって、あと、トラクションも良くなっているから安全なんだよね。」
「ふ~ん、それから?」
「そ、それから!?乗り心地が良くなって快適になっていることと、この先何年も乗り続けられることかな。」
「ふんふん、それから?」
「何??それからって、、、、あ、多分、BMWがリリースする最後のM3になると思う。」
「へ~、それで??」
「そ、そ、、、それでって、、、、え~と、評論家とかも絶賛してるし、なんならYouTube観てみる?で、まだ何かあるん?」と、嫁の真意がつかみきれないまま焦り始める私に、
「ううん、すごくよく分かった。」と紅茶を傾ける嫁。
「質問終わり?なんか良く分からないけど、とにかく分かってくれたんだ。」ふぅと息を吐いて、椅子に深く腰掛けると、
「パパさ、全然違うんだもん。」と嫁が切り出したのでした。
「一番最初の青いM3、その次の黒いやつ、で、今のM3買うとき、何ていうか、パパ、すごいウザくて熱苦しかったんだよね。いかに凄い車かって、聞いてもないのにしょっちゅうしゃべってて、南国の熱病にかかったみたいでさ。特に今のM3って、病気を治して絶対に乗るって言って、それで3年で病気、本当に良くしちゃったじゃん。でも、今のパパ、全然ウザくも熱くもないの。」
そう指摘され、確かに、G80を見たときも、かつて歴代のM3に対して抱いた恋焦がれるような気持が湧いてこなかったことに思い至り、
「それは、自分が年齢を重ねたからでさ、初恋とかしなくなってるのと同じなんじゃないかな。」と反駁するも、
「理由をしつこく聞いたのも、もしかしたらパパの中に何か凄いパトスが隠れているんじゃなかった思ったんだけど、そうでもなかったみたいね。」
「あ、いや、ある。あるよ、熱い気持ち。」
「本当に?」
途端に嫁から疑いの眼が向けられ、言葉のメッキが剥がれ落ちていくのが分かる。
「パパがさ、車好きって知ってるけど、なんか今回のことって違う気がするのよね。」
「どういうこと?」
「みんカラのお友達さんたち、私もオフ会で何回か会ったことあるけど、ずっと同じ車乗っている人も多いんでしょ?」
「うん。いるよ、たくさん。」
「そのこだわりとかポリシーってかっこいいと思うの。」
「確かに。」
「そういう人たちって、いわゆる車好きの中でもかなりコアだよね。」
「だね。」
「私の個人的な意見だけどね、、、」と、嫁が『あくまで』と断りを入れた、その次の言葉に私は核心を突かれた気がしたのでした。
「今のパパ見ていると、本当の車好きというよりも、新しもの好きに見える。」
「は、、いや、そんなこと、、、、、」
「私にはそう見えるって話。理由を聞いてると、家電を買い替えるみたいに聞こえちゃうんだもん。パパにとってあの車はそうじゃないでしょ?」
「もちろん家電て訳じゃあ、、、、、」
確かに、E36M3の時には、初めてのM社謹製ストレートシックスに初恋のようにうなされ、そしてE46M3には、グラマラスなフォルム、その心臓部は直6NAの究極形でもあり、極限まで削り込んだシリンダーブロックに適切な連桿比を逸脱した振動や共鳴、コメタルのリコールなどのあえてリスクに踏み込んでまでパワーアップを果たした技術者たちの矜持に心打たれ、E90M3は8000rpmオーバーのV8にただ感嘆させられ、F80は禁断のツインターボ化の代わりにフルバランスを取り戻した3L直6に胸をかき乱されるなど、内燃機関オタクの私の胸をこれでもかと躍らせたトピックがあったのに、今は気持ちが凪いでいる。
嫁はそんな私の心根を見透かしていたに違いなく、
「ちょっと良く考えてみる。」そう伝えて見積書をしまい、自室へと戻ろうとする私に、
「ダメって言っているんじゃないのよ。ま、でも、あのでっかいお鼻、かわいいって言ったけど、うちのM3のほうがまだまだイケメンだよね。」
とまるでこうなるのを初めから知っていたかのように、口元に柔らかい笑みを湛えていたのでした。
おそらく、『絶対にこれにするんだ!!』って無理矢理押し通したら、その通りになったかもしれませんが、その代わりに、大切な何かを見落としてしまっていたのかもしれないことに気づかされた一昨日。
これじゃなくてはダメなんだと胸を張ってウザくて暑苦しく言えるようになるまで、しっかりと自分と向き合っていくことを心に決めつつ、G80現車見学とハードネゴ、まだまだ続くのでした。
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My Life | 日記
Posted at
2024/01/23 10:06:33
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