先週末、カートメーカー・ビレルが主催する2016Birel N35 Champion of Champions in Kota Circuitが今年も開催された。北は北海道、南は九州、そして今回は台湾からもあわせて50ものチームが各サーキット代表として愛知県幸田の地に集まった。ビレル使いナンバー1を決めるために。私の所属するQuadrifoglio Racing Teamはサーキット秋が瀬代表の1チームとして3年連続の参戦となった。
レースはタイムトライアル形式の予選を行い、そのタイム順に1位から25位までをチャレンジクラス、26位から50位までをエンジョイクラスと2つのレースに分けられる。決勝は3時間の耐久レース。使用するマシンは公平を期すため抽選で決められ、予選ではドライバーの体重を量り、65kgになるようウエイトをマシンに載せて調整し、イコールコンディションは徹底されている。
過去2年の戦績は
2014年参加49チーム中49位。
2015年参加50チーム中49位と全く振るわず、自分たちの力の無さをまざまざと見せつけられる結果だった。1年目は他の参加チームの速さに圧倒され、練習走行ではどのように走って良いのか全くわからず、決勝の最後の方でなんとなく感じがつかめて、あと一日あればと思った。2年目は前年と同じく逆走(時計回り)だったので、去年よりも安定して走ることができるかもしれないと思うも、決勝当日はまさかの雨。ウェットコンディションのレースなどほとんど経験がない中、これもレースの最後の方でやっとある程度のペースで走ることができたような感じ。そして迎えた3年目の今年。天気予報は微妙なものだったが、雨でもなんとか対応できるのではないか。今年は過去2年間の経験を基に多少はコンペティティブなレースがきるのではないか。そんな期待をしての日本一決定戦だった。しかし、コースは過去2年間とは異なり順走(反時計回り)。タイヤバリアを用いて多少コースレイアウトは変更されているとはいえ、普段このコースを走り慣れているチームの優位性は明らか。ちょっとした失望感は禁じえなかった。
失望感といえば、自分のことを言うと、当初このレースに参加する予定はなかった。子どもの運動会と重なっていたのだ。日程が重なっていることを知ったときのあの絶望感。ショックでした。子どもの運動会をぶっちぎってまで幸田へ行くという選択肢はなかった。そこまでの勇気は残念ながら私にはない。しかし幸か不幸か天気予報は前日に雨を示していた。そして運動会延期の決定を知らされたのは前日の夜7時。妻の了承を得て正式に参戦が決まったのはその4時間後。軽く高揚する気持ちを抑えられずに就寝し、興奮していたのか早朝3時には目が覚めてしまい、4時には幸田へ向けて出発したのであった。まさかまさかの展開。ついているかも。ひょっとしたら良いことあるかも。抑えられない気持ちとともに東名高速を西へ向かった。
練習走行。一人当たりの走行時間は10分。充分とはいえない。コースの輪郭がなんとなくわかる程度だ。練習走行が終わり予選のタイムトライアル。インラップ、アウトラップを含めて3周のうち2週目のタイムで決勝グリッドが決まる。監督からの命により自分がやることになった。過去2年はチームメイトのmaxiさん。監督の読みはmaxiさんだとチャレンジクラスに入ってしまうかもしれない。監督はなるべく早く帰りたい。そこで私にという話になったのだ。そろそろ経験しておいてもいいんじゃないか、という監督の言葉とともに予選アタッカーの大役を仰せつかったのであった。
監督の予想通りチャレンジコースに出場できるタイムには遠く及ばず、出走グリッドはエンジョイクラスの最後尾。タイム的にはダントツのビリ。10キロのウエイトの影響はやはり大きく、全くペースの上がらない走りに迷いが生じて、後半にあるAコーナーのクリップを大きく外し(すなわちオーバースピードでコーナーに入り)、失速してそこからフィニッシュラインまでの上り勾配では信じられない程スピードが乗らない状態でタイムトライアルを終えたのであった。
このレースの凄いところは参加チームの力が非常に拮抗しているところだ。各サーキットの代表として参加しているのだから当然と言えば当然なのだが、予選タイムで言うと、ポールポジションから32位までが1秒以内なのだ。トップから1秒落ちのタイムではチャレンジクラスを走ることはできない。PPのタイムは1’02.542。14位までが1分2秒台。15位から42位までが1分3秒台。43位から49位までが1分4秒台。そしてQuadrifoglio Racing Team、すなわち私のタイムは1’06.101。ダントツのビリという意味がお分かりになるだろう。
予選の話はこれで終わらない。予選後、罰ゲームが待っていたのだ。49位と50位のドライバーを現役D1ドライバーの助手席に乗せてドリフトの恐怖を味あわせるというものだ。この罰ゲームは全く罰ゲームになっていないと思った。むしろ貴重な体験をすることが出来たし、とても楽しいと思ったのだ。しかし、本当の意味でこれが罰ゲームであると認識したのはドリフト体験が終わった後だった。予選最下位のドライバーとしてしっかり面が割れてしまったのだ。すれ違う人全てが「あ、最下位の奴だ」という目で自分を見ているような気がしてならなかった。自意識過剰と思われるかもしれないが、これは結構辛かった。この歳になってこんな風に晒されるとは。
そして決勝。最後尾25番グリッドからのスタート。ファーストドライバーは監督。どこまで順位を上げられるか期待していた。我がチームにおいて真の実力を持つからだ。そして3時間耐久レースのローリングスタートが切られ、わずか25分後には7位までポジションアップ。セカンドドライバーのmaxiさんと交代時には2位。そしてmaxiさんが走っているときにはなんとトップを快走することが出来たのだ。このお二人の驚異的な走り(aggressive, strong, and fast. 監督は言うに及ばず、maxiさんの走りも 圧巻だった)でトップに踊り出た我がQuadrifoglio Racing Team。誰がこのような展開を想像できたであろうか。過去2年のリザルト。予選最後尾。まるで夢を見ているようだった。
私の足りない能力のひとつは初めてのコースに適応するのに時間がかかるところ。トップを快走するmaxiさんから第3走者の自分と交代するときが来た。走る前に最終コーナーの走り方のアドバイスを監督から受けた。数周後に1分2秒台のタイムが出た。上出来。ベストは2秒1。出来すぎ。過去2回のここでの走りを考えると今回2秒台のペースで走ることができたことは驚きに値することだった。去年までと今年の自分の走りで異なるところはアクセルコントールかもしれない。例えば1コーナーをノーブレーキで進入し、ラインが若干外側へ外れたときに、アクセルを少し抜いてラインを修正することができたように思う。これまではそこでアクセルを緩めずにステアリング操作だけで頑張ろうとしていた。ブレーキングもロックするとブレーキを緩め、グリップを回復させる微妙な操作が少し出来るようになってきたように思う。クルマはとても乗りやすかったので欲を言えば1秒台に入りたかった。もう少し詰める余地はあったと思う。しかし、今更ながら監督のアドバイスの正確さとレース全体を俯瞰する能力には驚きの念を禁じ得 ないのであった。
決勝レースのファステストラップはエンジョイクラスで1’01.053(リザルトは4位)。1秒台を出したのは6チーム。3位と6位のチームのファステストは2秒台(この2台を除いて上位チームは全て1秒台)。周回数で見ると優勝チームは3時間で167周。2,3位が166周。4位から9位までが165周。10位から15位が164周。一周1分2秒前後で走ることを考えると、3時間走ってこれだけしか差がつかないというのは、どのチームもいかに速いかということを表している。いかにミスなく速く安定したラップを刻めるかが上位進出の鍵なのかもしれない。4年前になんとなくカートを始めたこのチームが3時間の耐久レースで5位入賞という結果を手にしたことは快挙と言っても良いと思う。
チャレンジクラスのタイムも見てみたい。ローリングスタート時に赤旗スタートディレイがあったので周回数はエンジョイクラスと単純に比較することはできない。ファステストラップは1’01.164(リザルトは優勝)。ファステストが1秒台は7チーム。ファステスト2秒台で最高位は5位(1’02.028)。6位から17位までを見ていくと1秒台を出しているのは8位のチームだけで残りは全て2秒台。1位から4位までが同一周回(1位と2位の差は3時間走って僅か0.276秒!!)。以下5位から10位まで1周遅れの同一周回。11位から15位までが同一周回。興味深いのは11号車がどちらのレースも最下位であること。我々が使った19号車はチャレンジクラスで優勝している。レース展開その他諸々の要素はあるのかもしれないけれど、ひょっとしたらマシンの当たり外れもあるのかもしれない。19号車は練習走行で使った車両よりも明らかに扱いやすかったからだ。
今回のレース。参加することが急遽決まって、10時間後には自宅から300km離れた愛知県の幸田に着いた。これはある意味奇跡のような展開だと思った。コースを下見しているとき、自分がこの場所でレーシングスーツを着て歩いていることが信じられなかった。そしてレースの結果も充分満足できるものだった。こんなことってあるんだなぁと。生きていて良かったなぁ。人生も捨てたもんじゃない。そんなことを考えました。今回も一緒に遊んでくれたClub Quadrifoglioの皆さんには感謝感謝です。いつもいつも本当にありがとうございます。
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club quadrifoglio | 日記
Posted at
2016/10/06 19:39:39