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第2章 バカと刀は使いよう 8
「いっぱい食べたね。」
「ええ、もう大満足。♥」
「御馳走様です。」
「ゴチになります、丹下~。」
「ううっ・・・(泣)」
人の奢りで飯を食うのがこんない美味しいだなんて。w
「では、あとはデザートを頼んで、っと。」
「まだ食うんかいっ!」×4
あれだけ食べて更にデザートまで食べようとする澄香。
さすがに都歌沙・恭介・有希・スポンサー丹下もツッコミを入れざるを得ない。w
「え~、1つだけいいから、ね。」
そう言うと丹下にウィンクをする澄香。
「は、はい。1品と言わず2つでも3つでもいいですよ。♥」
「はぁ…」
丹下は尻に敷かれるタイプだな、と改めて思った恭介であった。w
「じゃ、ごはんをもう1杯。」
「え、ごはんだけ?デザートじゃなかったの?」
「何言ってるの、ごはんこそデザートじゃない。」
「言ってる意味がよくわからないんだが…」
ごはんがデザート? 何のこっちゃ?
「ほら、歌でもあったじゃない、『
ごはんはデザート』って歌が、さ。♪」
「あ~、うちの学校にある軽音楽部が作った曲にそういうのがあったね。」
「あ、知ってます。確か『
放課後DAYタイム♪』ってバンドですよね。」
へぇ、そんな部が修大附にあったんだ。w
「で、最近はごはんをデザートにしてるんだ、てへっ。」
「てへっ、じゃねぇよ。(爆」
「と、とにかく、普通のデザートを食べましょう。」
「結局お前も食うんかいっ!」
って事で、4名は普通にデザートアイスを、澄香は食べるラー油付きごはんを注文する。
「でね、
もぐもぐ、来月の修学旅行の、
もぐもぐ、場所なんだけどね、
もぐもぐ、どこになるか…」
「なあ澄香、食べるか喋るかどっちかにしてくれ。」
「澄香は天然だからねぇ。」
「お前がそれをいうか。(爆」
これまでの行動を見ると、都歌沙も結構天然ぷりを感じた故の恭介の意見であった。w
「せっかくの高校の修学旅行なんだから、思い切って海外とかもいいと思うんだけどなぁ。」
「ねえ丹下~、そのお金はどこから出るのよ?海外なんて高くて行けないわよ。」
「ありきたりの所でも、修学旅行となれば雰囲気が変わってくるからおもしろいと思うよ。」
「そうだね。一体どこになるんだろうね?」
「せっかくだから【尖閣諸島】ってのは?」
「丹下~、その
せっかくと
尖閣を掛けたつもりだろうが、そのダジャレは笑えない。(爆」
デザートを食べながらそれぞれが来月に迫った修学旅行の話で盛り上がる。
「では、最後に来賓の三千里恭介っちから一言お願いします。」
そろそろいい時間になってきたので、澄香が音頭を取りお開きにしようとする。
「え~、本日は私・三千里恭介の歓迎会を開いてくれて感謝の限りであります。」
「堅っ苦しいぞ~、恭介っち。」
「そうだよ、三千里クン。」
「三千里~、ここでハレンチな1発ギャグを…」
「ハレンチハレンチユカイ・・・って、そんな事するかっ!」
ぼかっ!
みんなが大笑いする。
「では、改めて。今日は本当にありがとう。まさか転校したばかりの俺にこうまでしてくれるなんて
本当に嬉しかった。今日の思い出は一生忘れない。」
パチパチパチパチ♪
簡単ではあったが、恭介の感謝の気持ちが集まった全員伝わったようだ。
「これからも宜しくね、恭介っち。」
「これからも宜しくね、三千里クン。」
「これからも宜しくお願いします、恭介さん。」
「これからも宜しくな、
心の友よ。」
「丹下~。お前はジャイアンか。w」
こうして、一通りの挨拶が終わっった、かと思った時後ろから声がする。
「私も忘れないでよ。」
「あ、ゆみっちだ。」
恭介の後ろから竹嶋由布子が声をかける。
「最後に私からのサービス、ね。♥」
そういうと、小さな紙袋をみんなに手渡す。 何だろうと袋を開けると、そこにはカップケーキが。
「あ~、今大人気の【
虹色パティシエール】で売ってる
バニラショコラケーキだ!」
「え~、うそうそ。あ~、本当だ!」
「私、1度食べてみたかったんです。」
女性陣には大ウケである。
「えっと、丹下~?」
「何だい、三千里~。」
「お前、このケーキ良かったら食べないか。」
「え、いいの!?」
「ああ、お前今日お金いっぱい使っただろう。せめてこれでも食べてくれ。」
「ありがち、三千里~。」
そう言って恭介に抱きつこうとする。
(゜Д゜三⊂(゜Д゜)スカ。
感動で抱き合うつもりで恭介に突進する丹下であったが、思いっきり恭介はその突進を避ける。
「痛~っ、逃げないでよ、三千里~。」
「男が男に抱きつこうとするからだ。俺はそんな趣味はないっ!」
最後にオチが付いて、この集まりはお開きとなる。
「じゃ、また学校で。」
そう言うと、速攻でその場を後にする澄香。
「相変わらず忙しい娘だな、澄香は。」
「何でも、この後デートだって。」
「デート? 誰と?」
「刑事さん。」
「け、刑事さん!?」
そう、澄香は恭介と出会って間がない頃、都歌沙とマクドムドムで会った時に出くわした事件の際
事情徴収をした刑事と縁があって付き合ってる事を都歌沙から聞く。
「恋には猪突猛進あるのみ、が澄香のモットーだからね。」
軽く笑いながらそう言う都歌沙であるが、事情徴収を受けた刑事と恋仲になるってのも珍しいと
思うんだが、というのが正直な感想だが世の中色々な恋路があるもんだ。w
「とっとっ、ところで、三千里クンはこの後何か用事があるの?」
「あ、えっと…」
時計を見ると時間は18:30。アルピナが羽田空港に到着する時間は20:20。今からクルマで
飛ばしてもギリギリって時間だ。
「あ、用があるならいいの。」
「で、でも…」
「ううん、忙しいのにごめんね。」
そう言うと、そのまま帰ろうとする都歌沙。その姿を見て恭介は何か別の感情を覚える。
がしっ!
そう思った瞬間、恭介は帰ろうとする都歌沙の手を取っていた。
「え?」
思いもよらぬ行動に驚く都歌沙だが、思わず手を取った恭介自身も驚いている。
(どうしたんだ、俺? なぜ彼女の手を取った?)
「え~っと、ちょっとだけ電話していい?」
「え? ええ。」
キョトンとしながらも、恭介が電話するのを待つ都歌沙。
プルルルル プルルルル プルルルル・・・
「はい、もしもし?」
電話の先は魔耶であった。
「ああ、魔耶か。」
「どうしたのですか、恭介様。そろそろアルピナ様をお迎えに行く時間ですよ。」
「えっと、その事なんだが…」
「どうしました?」
「すまないが、魔耶1人で迎えに行ってくれないか?」
思ってもいなかった言葉に驚く魔耶。
「何を言ってるんですか!? 恭介様が出向いてこそ意義があるのに私だけで出迎えるなんて
出来る訳ないでしょう。」
「それはそうなんだが…」
「電話してくる時間があるのでしたが、速攻で戻って来て下さいっ。」
1人で行けという理由は聞いてこなかった、仮にその事を聞いてきても魔耶に言える訳がない。
「…すまなかった。これから羽田に向かう。15分したら戻るから準備をしていてくれ。」
「…わかりました。」
何か言いたそうだったが、魔耶はそれ以上聞いてくる事はなかった。
今度は、都歌沙の方の番だ。
「ごめん、待たせた。」
「ううん、いいの。電話は終わった?」
「ああ。引きとめてすまなかった。」
「…そう。」
「…。」
ちょっとの間2人の間に沈黙が漂う。
「…じゃ、帰るね。」
そう言って、その場を去ろうとする都歌沙。
がしっ!
去ろうとする都歌沙の手を再び取ってしまう恭介。
「1つだけ尋ねていい?」
「え、ええ。」
「さっき、俺がこの後用があるか聞いてきたのはなぜだい?」
「え…」
今度は都歌沙が戸惑いを見せる番である。
なぜ、恭介の都合を尋ねたのか?
それは初めて恭介と出会った時から今の今までずっと抱いていた想いであった。
この場合の初めて会った時とは2年B組の教室で出会った時ではない。そう彼女の言う初めて
出会った時とは、恭介が運転するインプレッサに轢かれそうになった時の事である。
運動神経の良い都歌沙は動体視力も抜群である。クルマに轢かれそうになった時、運転手の
顔を見ておく事はそう難しい事ではなかった。あもちろん、その顔は間違いなく恭介の顔である。
1度、恭介に確認を取ったがその時は「違う」という答えであった。だが、その答えに今でも
納得をしていない都歌沙の考えがあった。
「私があの時クルマに轢かれそうになったのは
三千里恭介に間違いない!」
この想いがずっとあった。別にその事を攻めようという訳ではない。どちらかと言えば思わず道に
飛び出してしまった都歌沙の方に非があるといえよう。ずっと気になっていたのは、もしあの時の
運転手が恭介である場合、なぜその事を恭介が隠すのか?同級生である恭介がなぜクルマに
乗っていたのか?彼の家で歓迎会をしようとした時、それとなく拒否する方向に持っていかれた
のはなぜか?色々な事が重なっていくにつれ、都歌沙の心の中には『三千里恭介』がすっぽり
収まっていた。
どうしても真実が知りたい。でも、それを知ってどうなる?
様々な葛藤があった中迎えた今日のイグナリアでの歓迎会。みんなと色々な話をしながらも
都歌沙の視線はいつの間にか恭介を追っていた。もう試行錯誤する事に限界が来ていた。
「どうしても聞きたい事があったから…。」
やっと絞り出した返答がそれであった。だが、恭介にはそれだけで彼女の真意が見て取れた。
「明日は時間が取れるかい?」
「えっと、朝は修業があるけど、昼から父上が出掛けるので、その間なら大丈夫。」
「わかった。その時間を開けておいてくれ。」
「…うん、わかった。」
「じゃ、俺行かないといけないから。」
「ええ。じゃ明日。」
「ああ。」
そう言うと、お互い帰路に着く。
それぞれ想う所はあっただろうが、その事は明日になってから、と考えていた。
-つづく-