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2010年10月20日

「見過ごされてきた踏み間違い事故」という勘違い

「見過ごされてきた踏み間違い事故」という勘違い 19日の夜、NHKのクローズアップ現代で「見過ごされてきた踏み間違い事故」という企画を報じていた。翌朝の民放の情報番組でも、NHKが扱っていたのと同じ九州産業大学の松永勝也教授を出して同工異曲の企画を扱っていたので、もしかしたら背景に、どっかの売り込みがあったのかもしれない。

 ところで僕は、22年半近く免許歴がある(運転歴はそれより半年くらい短い)のだが、その間に一度、アクセルとブレーキの明確な『踏み間違え』をやらかした。オートマ車を運転していて、存在しないクラッチペダルを踏もうとして左足がブレーキ・ペダルを蹴っ飛ばすミスは頻繁にやらかしているが、ブレーキのつもりでアクセルを踏んでしまったのは、後にも先にもその1回限りである。

 そのときの状況は、こうだ。
僕は車を後退させるとき、基本的にはミラーで車と障害物の位置関係を確認している。直接目視もしないことはないのだけれど、それは車を「停めたい場所」に入れ始める前にあらかた済ませてしまい、バックし始めてからは(通常の走行で、見え方と車の姿勢を見慣れている)ミラーに映る風景に大きく依存している。ただ、このやり方は各種教本ではダメな運転の仕方ということになっている。

 そこで、まだそれほど運転歴がなかった当時の僕は、がらがらに空いた駐車場で教本がお勧めする、上体を捻ってしっかり後ろを向いてバックする方法を試してみたのだった。安全のためにより適切な方法があるのなら、そっちを習得したほうがいいんだろうなあと思ったからだ。で、その結果がブレーキとアクセルの踏み間違えである。

 上体を左に捻ったことで、足とペダルの位置関係がズレていることは認識していて、その分足の位置を補正したつもりだったのだけれども、それでも踏んだのはブレーキではなくアクセルだった。幸いにして、車の進行方向にはまだまだ余裕があり、かつチョイと踏んでアクセルだと分かった瞬間にペダルから足を離したので、車が何かにぶつかるようなことはなかったのだけれども、心底ヒヤッとした。
 以来、僕はバックするときに直接目視をするような場合でも、決して腰から下は動かさないように心がけている。ドアを少し開けて顔を出し、背後の壁ギリギリまで這いずるように下げるときでも腰下は絶対にずらさない。

 ところでテレビ番組のほうの話だ。
大学教授の実験に否と表白するのはおこがましいのかもしれないが、それでも僕は見るなり「やり方がおかしいやろ。このセンセ、車の運転してないんとちゃうか?」と思った。
 実験では、ドライブ・シミュレーターの画面に青文字と赤文字でアルファベットのAとBが表示され、どっちが青でどっちが赤だったかは忘れたが、ともかく赤い文字が出たときはすぐにブレーキ・ペダルを、青い文字が出たときにはアクセル・ペダルを踏みなさい、というものだった。

 反射神経や文字(図形)認識力を測定するようなテストならそれで結構だが、車の加減速、なかんずく急にブレーキを踏まなきゃならん局面というのは、目の前になんか飛び出してくる、車間が急激に詰まる、そういうことに対応してブレーキを踏むのである。図形認識――Aはブレーキだっけ?Bがブレーキだっけ?などと思考のプロセスが入り込む――をしているのとは違う。こんなテストで、年配者や高齢者はペダルの踏み違いが多い、なんてことが確認できると思っているのだとしたら、思い違いもはなはだしい。 

 そして、テストのやり方と別に僕が大いに驚いたのは、被験者たちのペダルの操作の仕方だ。
いや、確かに教本などでは「ブレーキを踏むときには踵を床についてはいけません、足全体でペダルを踏み込みなさい」的なことを指導している。そして被験者は、そのご指導の通りに操作をしているのだが……僕は、ブレーキを踏むときには踵を上げろ、というのは百害あって一利もない間違った指導だと考えている。ペダルの操作は一種のブラインド・タッチだから、ホーム・ポジションがずれて誤操作を招くようなことは、厳に慎むべきなのだ。

 踵を着かず足全体でブレーキ・ペダルを踏み込むというのは、かつてブレーキ・サーボ(倍力装置)の能力が十分でなかった時代には極めて妥当な運転のノウハウだっただろう。実際、弟が所有する1960年代設計のスポーツ・カーなんかだと、そういうペダルの踏み方をしないとブレーキがまったく利かない。
 けれども、昨今の車はペダルを軽く踏み込んだだけでもブレーキが利き始めるくらい、十二分な能力がある。踵を浮かせるペダルの踏み方は、そうしないと止まれなかった時代の「遺物」であって、今現在のドライバーにとっては「ブレーキが利かないリスク」を上回る「ペダルを踏み違えるリスク」を生じさせる“間違った運転のお作法”だと――競技などを別にすれば――言ってもいいくらいだと僕は思う。

 さてNHKの番組では、かつてAT車の暴走事故が問題になった折に業界内で検討した際、自動車メーカーが「機構上の問題ではない」と結論付けて“対策をしてこなかったこと”が今日の踏み間違い事故増加の主犯であるかのごとき誘導を行っている。ホンマかいな。というか、なにゆーてけつかんねん。
 メーカーが取扱説明書などで推奨する「正しい運転姿勢」をとり、ペダルを踏みかえるたびに足を浮かせるような運転をしなくてもなお事故が増え続けているというのならば、あるいはそれは機械の側(つまりメーカーの対応の側)に帰すべき責任がある可能性がある。

 だが、ユーザーの「間違った/適切性を欠いた」操作についての検証を十分に行わず、ケツを一方的にメーカーの対応に持ってくというのは、非科学的で不合理な言いようだ。機械を適切に操作できない/しないユーザーの問題をそっちのけに、原因を一方的に機械の側に求めるなど、筋違いな言いがりも甚だしい。

 番組を見ていて気になったことをもうひとつ。
踏み間違い事故を起こした人たちの一覧表が映し出されて、免許歴20年とか30年とかのベテラン・ドライバーという話だったけれど、それもどうなんだろう。
 人間工学的に(あるいは科学的に)検証するならば、免許取得から○年だなんて粗雑な指標ではなくて、航空機パイロットの「飛行時間○時間」みたいに、その人がどの程度の運転実績を持っているのかに着目するが筋なんじゃないだろうか。週に1回程度買い物しに運転するだけの人と、週5日は運転している人とでは、同じ20年の免許歴であってもドライバーとしての経験は雲泥の差であるはずなのだから。
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Posted at 2010/10/25 10:59:18

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この記事へのコメント

2010年10月25日 19:43
こんばんわ。おひさしぶりです。(^^;;;

>確かに教本などでは「ブレーキを踏むときには踵を床についてはいけません、足全体でペダルを踏み込みなさい」的なことを指導している。

このくだりにはビックリしました。自分が普通免許を取得したのは既に30年以上も前なので、その時に教本にそう書いてあったか?教官にそのような指導を受けたのか?は記憶にありませんが、踵を床につけずにブレーキングなど非常に危険だと思います。

自分は既に20年以上、AT車メインの運転になってしまいましたが(一応、50歳前までMTのロードスターは所有してましたが)、個人的にはエンブレをあまり期待できないAT車では、どうしてもブレーキに頼ることが多くなるので、MT車以上にきめ細かなブレーキングを要求されると思っています。そうしたブレーキングをする場合には踵をしっかりと床につけて(踵を支点として)ブレーキングしないといけません。
コメントへの返答
2010年10月26日 15:46
お久しぶりです。

まったくF.Kashiwagiさんのおっしゃるとおりで、踵を浮かせてペダルを踏むなんて、まったく論外です。当時の教本をひっくり返して確認したわけじゃないので記憶頼りではあるのですが、教習所に通っていた頃から「そんなやりかたはおかしいだろ」と、ず~~っと違和感を抱き続けていましたので、そういう指導内容だったのは確かだと思います。

いずれにせよ、教習所のカリキュラムには前時代的なものが結構残っていると感じています。
いまでもまだ「ポンピング・ブレーク」なんか教えているのかなぁ……。
2010年10月26日 23:08
話が脱線しますが、そろそろ車の運転のインターフェースを変える時期じゃないかと思います。
電車だってかつてはブレーキとアクセル?が別々でした。でも今では一本のレバーで操作しています。
車も同じで良いのではないでしょうか。根本的に間違えさせない操作系にする事が必要と思います。

電車方式の他にも、ハンドルをグルグル回す必要を無くせばバイクのようなスロットルをハンドルに設けて足はブレーキ専用にするとか、色々方法はあると思います。

EVという世間的に今までとは別の車と思われている車が普及し始めるこの時期がチャンスかなと。
コメントへの返答
2010年10月27日 17:10
去年の東京モーターショーのとき、トヨタがそのあたりの研究をしているコンセプト・カーを出展していました。ちゃんと説明員を捕まえて話を聞かないと、ショー・アップ用の空想科学的未来カーを「思いつき」で展示してるように見えてしまいますが、ちゃんとまじめに研究しているとのこと。さすが業界最大手、抜かりがない……。
ただ、マン=マシーンのインターフェースを抜本的に変える際には、けっこうリスクがあるんですよね。
2010年10月27日 0:19
確かにそれは踏み間違いの実験と言うよりも、反射神経のテストに近いですね。
JAFのセーフティトレーニングと言う教習の中に、右側の信号が点灯したら左にハンドルを切り、左の信号だと右にハンドルを切る、と言う課目があるんですが、一瞬頭の中で置き換えが必要になります。
それと同じようなものじゃないかと。

ブレーキは僕も踏み替えた事はないですね。
一瞬反応が遅れるのと、やはり踏み間違える危険性があるからです。
コメントへの返答
2010年10月27日 17:41
いやほんと、反射神経のテストとしか思えないです。
ブレーキを踏むにせよハンドルを切るにせよ、通常の運転動作の中でそれら動作のきっかけになるのは、他車や歩行者など『危険を生じさせる障害物』で、それを回避するために動作を(場合によっては反射的に)起こすのですが、それは『頭で解釈する』必要があるシグナル(記号)では代用できない筈なんですよね……。

実験をやった学者先生も大概ですが、それを鵜呑みに垂れ流すテレビ局もテレビ局です。
2010年10月27日 2:09
数年前、運転歴40年以上のベテラン(父親)の運転するクルマに乗ったんですが、踵をあげてました。なんでそんな危なっかしい操作をするのだろう?と思ったのですが、やっと謎が判明しました!(笑)

バイクが長かった僕としては、初めてクルマに乗った時、非常にデリケートな操作を要求されるアクセルやとブレーキを足でやるというのが難関でした。(更にクラッチは左手、ミッションは左足と、これも手足が逆なので、非常に混乱したことも…)

まぁしかし、慣れというものは恐ろしいもので、理不尽を感じながらも「仕方ない」と運転しているうちに自然と身体に身に付いたのですが、とにかく最初はクルマの操作系に対して大いに疑問に持っていたことも確かです。

僕は車でブレーキとアクセルを踏み間違えたことはありませんが、昨今のクルマは低速トルクも太い上にアクセルも軽いので、チョイと踏んだらドン!と出ますね。バックで踏み間違えると、身体もアクセルをベタ踏む方向に急激に持って行かれるわけで、パニック状態のドライバーにとっては余計に危険な気もします。

カローラなんてのはバックで100km/hも出るそうですが、踏み間違えるユーザーの多そうなクルマの場合、5km/hくらいしか出ない方がメーカーにとっても良さそうな感じもしますね。
コメントへの返答
2010年10月27日 17:56
踵を上げるブレーキ操作の「なぜ?」は、実は僕も今回のテレビ番組を見ながら「なんでこんなアホな操作を覚えさせるんだろうなあ……」と思ってるうちに、ふと閃いたのです。

僕はYuckyとは逆にバイク(といっても僕の免許じゃ原付にしか乗れませんが)のほうが後だったので、発進時のアクセル開度の加減が分からず、いきなり棹立ちしそうになりました(笑)。

車の発進時の急な加速を抑える手口として、今はどうだか知らないんですが、昔のメルセデス・ベンツは基本的に必ず2速発進するようにプログラムされていると聞きました。
1速で発進できるのは、ドライバーが意図的に発進時からフル・スロットルをぶちかましたときだけ、とか。
自動車ライターの下野康史はそれを指して「メルセデスは基本的にドライバーを信用していない」などと書いていました。
2011年3月9日 21:45
そのNHKクローズアップ現代でも報じられていましたが、AT車が普及する以前(昭和の頃)から、MT車では殆ど「ペダルの踏み間違い事故」は起こっていなかったらしいし、最近(MT車比率が低下してはいるが)でもMT車での事故は見られないという。
つまり、左足をクラッチべダルの位置に当てている限りは、右足での「ペダル踏み間違い」は発生していないのでは?
お役所仕事の事故原因の調査などでは、浮かび上がってき来ていない様だが、ペダル踏み間違い事故を起こした多くの運転者の左足は、ブレーキペダルの下辺りにあったのでは?
以前、トヨタに「感圧センサー装備の左足フットレスト」を全車装備にして、左足がフットレストに当たっていなければ原則アクセルペダルの急踏み込みが作動しないシステムが事故防止に効果があるのでは、と提案してみました。

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