2023年04月09日
私が知る限りの空気の流れ _管内層流
昨日の続きで。
エンジン内部にて、空力・流体力学による抗力はものに与える力でエンジンが壊れたりはしませんね。
ですが今度は逆に空気そのものの粘り気などにより、エンジン内部における流体の流れが、圧力の伝達に影響を与える。
つまり、丁寧に流体を整える事が、吸排気において重要であるという事です。
おっとここで終わってしまってはその辺の書籍と大きく変わりはしませんね。
ということで少しだけ解説しましょう。
そもそも空力、揚力などの力はどこから生まれているのか。
それが空気の流れ、流体における圧力がその正体である、と私は思っています。
空気の重さであり、粘り気であると。
例えば流体速度はそのまま圧力の低下を引き起こし、物体を引き寄せる。それがコアンダ効果の動きだと、理解しています。
その辺の基本的な理解は流体力学の基礎を頭に入れているだけなので、計算したりはできません、私の場合。そんな私がエンジン内部において起きていることについてお話をするわけですので、そのつもりで以降を読み進めてください。
エンジンはそもそも燃料の燃焼による圧力の発生を物理的な動きに変換するものです。
なので、燃焼に必要な空気を吸う吸気と、発生した圧力を逃がす過程に加え熱を持つ…が特徴になりますよね。
この時、レシプロエンジンは圧縮・膨張を繰り返すことでバルブの上下動はリズミカルに、回転運動に同調した圧力変動を起こす。
つまり、ある周波数をもって脈動を起こす。
コレが独特の音を生む。エンジンが、鼓動を起こす。
様々なエンジンがあるので、その配管サイズによる共振周波数、つまりパイプの厚み、口径と長さにより発生する脈動はエンジンに従った音を立てる。
さて、その脈動、定期的な圧力変動を持った流体は、水道の水とは異なる特徴を持っている。
水道では単純に圧力は傾斜する。つまり、入り口より出口のほうが圧力が低下する。
流体は基本的に、壁面に近い外側と中央部、内側にかけて速度傾斜があり、中央部が速く壁面部は遅い。
ところが、ある程度以上速度が早い状態になると中央部は渦流になり、壁面は相変わらず層流、壁面に沿った整った流れになる。
個体における連続体力学における変形に対する摩擦が、流体におけるせん断力、内部摩擦となり、作動流体では変形は圧力変動であり、変形に対する抗力とも取れる。
まあ、物理的な専門用語的には正しくないかもしれないけれど。
エンジンは、その構造上どうしてもその影響を受けざるを得ない。
ピストンの上下動により生まれる圧力変動は、バルブの開閉による圧力変動に変わり、脈動として排出される。
排出に遅れ吸気の脈動を発生させる。どちらもピストンの上下、燃焼室内の圧力変動をバルブの開閉によって更に異なった圧力変動へと切り替える。
このためいわゆる正弦波ではない、複数の周波数を組み合わせたような音を生む。
まあ、大まかに正弦波で構わない。ここでは周期的に変動するある程度の圧力波であることが重要だから。
まず排気系から考えることとします。
本来圧力変動があれば流体は伸び縮みする。もちろん圧力傾斜もあるので排気はエンジンから押し出される方向に進みます。
2ストであれば吸気の圧力変動を排気が直接受けるので反射波を利用してスムーズに押し出す「チャンバ」を設ける事があります。チャンバによって出口に無理やり吸い出す、掃気という表現でもってこれを知っていることもあると思います。まあ、2スト自体ほとんど存在しないので専門性のある教育を受けていなければ詳しい構造などは知られていないでしょう。
4ストで話を進めます。
一旦排気に向けて低圧→高圧→低圧の脈動が排出された場合、このまま押し流されるだけではなく、先程の通り伸び縮むこと、高圧部が低圧部に対し膨らむのですがこれは更に上流(エンジン)側ではなく下流(出口)側への圧力傾斜により伸びる、押し出されます。
ストレートの配管内であればコレも特段の問題は起きませんが、伸びる際殆どの場合乱流化することでしょう。粘性を超えたせん断力を加えられた瞬間から「ちぎれる」と、中央部の流れは渦流として独立します。これが乱流の動きで、乱流は流れとは別の動きをします。
このため流体の粘性における抗力は発生しません。また流速は管径と当然関係があるとはいえ、ある程度以上太くなると今度は乱流化が進み、結論で言えば流速は低下します。
層流に比し乱流は全体速度が低くなるようです。太い=流速低下となり、結論的に低音重視になる上、どれだけエンジンの素性が良くても排気そのものは安定しません。
だので、排気管は適切な太さ、排出される排気量と圧力に見合った太さである必要性があるということになります。
細すぎても太すぎても乱流化する方向に進みます。
適切に層流を安定させた場合、前に進む高圧部は低圧部に引きずられる効果を発揮し、上流から下流に向けて引きずられる効果を発揮します。
アクセルを急激にオフにした場合、ある程度の時間はこの引きずり効果が発生します。
だので、先程の適切な管径を保ったマフラーであれば次にアクセルを開けた瞬間、回転数は通常より疾く駆け上がる。
これはエンジンそのものではなく、適切な排気管によるもの。
更に吸気管に於いては、低圧が先程と逆に発生しています。
空いた瞬間から閉じるまでの間発生した低圧は先程の高圧とは真逆の動きをします。
実は空気の伸び縮みに関して、伸びることは比較的に容易です。
結果、低圧部の発生と維持にかかわるエネルギーに対し、高圧部の発生と維持に掛かるエネルギーはより高く時間も短くなります。
容易に低圧になる、体積を増やせる、よく伸びるということです。
よく伸びるということは、排気を逆流させ、吸気を押し込む事が難しいことと同義であるとともに、アクセルオフ時の吸気待機時間を維持しやすいともいえます。
つまり、吸気の適正管径は排気の適正管径より太くても良い。
ホンダエンジンによくありがちな、やたらと吸気量が多いと感じられるのはコレも原因であろうと思われます。
逆に吸気管そのものが短い・開放に近い状態でも大きな問題にならないものの、排気に関してはきちんとエキマニ・マフラーの構造をきちんと取らなければいけないのです。
排気は引きずりをきちんと維持し、押し込みに対し対応できる排気系を持つことでエンジンそのものがトルクを生み、キレの良い回転を維持できる。太すぎてはいけないし、高圧化が難しい中では細すぎても良くない。
レスポンスを考えれば細すぎる密閉吸気管よりは開放管でよい。ただし、実際には空気溜まり、「サージタンク」がなければレスポンスを維持できません。だのでシングルスロットルの構造にはサージタンクと適切なインマニが必要となります。しかもただの筒ではなく、ある程度特殊な構造を持って、容量も必要になります。
ではマルチスロットルでは?
通常短気筒直結のインテークにスロットルが直結されたような構造になります。
だので、インテークの容量分は確保できます。むしろマルチスロットルの方が圧を維持し易いのでレスポンスも高くなります。
燃費や排気ガスの事を気にしないのであれば旧キャブの方がレスポンスなどが良かったのはこの辺も関わります。
最後に、私自身は手を出していないので経験則ではありませんが、ポート研磨に関する話はNSXでも使用されていたので既に公開されています。
鏡面仕上げよりは均一なある程度の表面粗さがある方がよいとされました。これは壁面における層流の維持と効率化という意味で重要なんですが、ではなぜ鏡面では駄目なんでしょうか?
もちろん、荒れている状態や鋳物の出来合いでは形状や表面粗さの意味で意味がないのは分かりますよね。御存知の通りです。
推測になってしまいますが、鏡面である場合、壁面における流体からの影響を受けやすい、粘る壁面になることで流れにくくなってしまうのではないかと。
金属が光っていない程度のあらさ、アルミニウム合金の表面のような程度が適切なのかもしれません。
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Posted at
2023/04/09 14:19:02
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