車検、通常それだけ言えば「継続検査」を差して言うものです。
新車だってあるけれど、「新規登録」の車検に持ち込む新車は通常、「ナンバー取得が可能」な車両ですな。
この「ナンバー取得ができる」ことを示すものが「形式認証」ってヤツで、我々がふつーに車を買う場合には一切関係しないし、意識もする必要がないものです。
改造車を車検で通す、なんて真似をしてると若干触れるようになるんで、そう云う世界に踏み入れた一部のオーナーは聞きかじってたりするでしょう。
当然、車両整備を生業としていて知らない人は少ないはず。
少し話が逸れるけれど、戸籍がなくても本来行政サービスを受けられるのに、それを知らない職員が多いんだそうだ。私に言わせればありえない話ではあるけれど。
車検の根本たる形式認証が如何なるものか、熟知しないまでも車検にふれる人間で知らないのは問題だと思う、少し話がそれては居るけれどね。
さて。
形式認証を終えた車両は、その後「同様の仕様の車両を、生産ラインで生産を行った同等品」である証明を行うことで車検を受けたことと同等とし、結論から言えばロールアウトされた車両が「完成していることを示す根拠」=完成検査合格証を元に、ディーラーに居る行政書士がちょちょいとすればナンバーを取得できるって寸法になっている。
だから、改造車を車検に通すにはこの「形式認証」に「抵触していないエビデンス」を用意しなければならない。つまり、強度検討書であったりする訳。
改造車といっても車検に通っていた車両の部品を交換した、ボディの一部に補強を入れただけ、エンジンが変わっているだけだから早々でない限りはこの書類を揃えれば通るって手はずだけれど、まあこれが非常に手間(つまり、印紙代と行政書士の仕事代と、現場の人間の手間賃)がかかる。
というのが私の触れている部分。
ここからは殆どの人が預かり知らぬ部分。だので、精確さには欠けるけれど、認識として間違いではないと思う。
そんななので、例えば海外で車検に通っている車両を日本仕様として販売、もしくは道路で運用するとなればこの「形式認証」をうけなければならない。
外車が高い一つの理由でもある。個人もしくは小売での輸入をした場合倍額近い価格まで跳ね上がるのは形式認証を受ける必要によるものだ。
大手企業モノであれば、元々そう云う販路を持ち、国ごとに合わせ適用させるためにそこまで高くはない。
せいぜい、国別架装(ローカライズ)分を製造コストとして上乗せするくらいだろう。
右ハンドル・左ハンドルのことじゃない。例えばウインカーだったり、極端なものであればブレーキのためのエアタンクの容量・認証だったりする。
これが厳密だったのが昭和の「改造車」ってヤツで、ブレーキパッド、マフラー一つ構造申請されていないものを使っただけでアウトだった。
そう、認証制度が変わったってことだ。
でー、ですね。こいつ、実は制度自体はずーっと変化してないんですよ。
けれど中身(検査の基準)が変わるんですよね、それも結構頻繁に。
逆に言えばそれって、かなり軽易に変えられるようなものだってことです。
わかりやすいのは排ガス規制ですね。E-は昭和53年規制、EK9は前期がE-EK9、後期は平成10年アイドリング規制に適合し、GF-EK9へと型式が変わっています。
問題になるのは、「歩行者に対する安全性」と「乗員安全性」に関するものでして。
バッサリ言えばボディの構造に関わる部分です。こいつのせいで、窓の面積が減り、やたらドアの高さが高くなって、我々のように薄い車好きにとってはデザイン的にも困る規制なんですよね……
S660、こいつを逆手に、フロントにエンジンを載せないことでデザイン優位に持ち込んだんです。
多分、その辺りの基準に変化があるってことでしょう。もしくは、グラスエリアの問題か。
どちらにせよ、あのデザインで生産が続けられなくなることが分かったから、施行前に公表し、「10年作る宣言」に対する義理を果たした、ってことなんだと思います。
まあ、「明日から作るな」って流石に行政も言えないので、施行が決まった時点で通達したのだろうと思うんですよ。
で「こりゃいかん。10年作るって公言したのに」と慌てたに違いない。
実はこれ、穿った見方すると(もしくは、斜に構えて考えると)、10年で売れる台数分を生産させてほしい、というホンダさんからの提案であり、想像通り駆け込み需要も現在盛り上がっているって話。
法律には『不遡及の原則』があり、過去に許可したものはたとえ法律が変わってもそれを取り消すことができない、というものがあるのです。
つまり、「一度ナンバーを取った車両」であれば、その車検証の初年度における法律に適合していれば問題がないのです。これが中古車がその当時の状態(同等含む)であれば今も道路を走れる理由です。
ところが、これから生産する車両はこうはいかない(前述のE-とGF-の関係)。
もう一つ。これは消費税でも言えるのですが、「不遡及」なので「契約」さえ交わしてしまえば、その時点で生産数が確定できるのです。
どこまで赦されるか(たとえば、生産設備の都合と契約がこの不遡及の原則をどこまで追求できるか、ということですが)分かりませんが、6年で3万2000台であれば、あと1年で2万台も生産できれば御の字ではなかろうかと。
もちろん、ホンダとしては赤字でしょうから(NSXも赤で生産を続けた)、経済論理からはさっさと切り捨てて良いはずの代物。
海外ではこうなる、と言っても良いのかもしれないですが、正直「台数を作らないで採算を取るスーパースポーツ」より、「赤で生産を続け、それを普及し続ける」日本型の方が私は嬉しいですね。
どちらも企業としては体力を奪われるので好ましいモデルではないのですが……
バカ高いクルマで台数もなく、維持の段階で博物館行き、だなんて代物よりは、走り倒して弄り倒して、安く部品が供給される乗用車だからこそ……
なんていう、過去の走り屋的なスポーツカー、これが我々向けなんだろうと思うのです。
友人の言葉を借りるならば「吉野家」。「速く」「安く」「楽しい」車。
欧米型になり、面白くも糞もない車ばかり供給するような体制にだけはなってほしくはない。
そして、そんな規則でがんじがらめにするのもいい加減にしてほしい。
125ccとか。
ただいわゆるマイクロモビリティはやや緩和の方向性に進んでいるようですが。こちらは今回の話題ではないのであえて触れません。
コロナという未曾有の危機にさらされて、政治家がなんの役にも立っていない事が名白になった緊急事態宣言を見るに……
なんだろうね。思うに、日本は鎖国して(それもコミュニティレベルで)ひっそり誰の迷惑にもならないように生きるべきなんじゃないのかな。
そう云う、農耕文化による生い立ちがあるからこそ、今なんだと思うんだけれど。
閑話休題。
ホンダさん、ありがとう。次があることを期待しつつ、ビートのレストアメニューにならんでS660のレストアメニューも今後追加でよろしくお願いします(笑)。