原点が格闘技

私は大学時代から社会人にいたるまで、空手をやってました。
今は一旦離脱して（そもそも資格も持ってない）ますが、格闘技、ソレも打撃系が好きでした。
私の信条として、自分で経験してみなければ結局わからないというのがあって、殆どの場合が「経験値にする」ことソレそのものが目的である場合が多いんです。
突き詰めると好奇心で知り尽くすこと、ただソレだけとも言えるでしょう。
本棚に経験を並べてラベルを集めているのではなくて、逆再生するように世界を構築するように、把握したいのです。

頭の中で世界を構築する事ができるようになれば、知らないことはない。
意識せずともそれができるなら、分からない事はない。

ただ、私の場合無意識で行える事と意識的に行わなければならない事に区別がありません。
それは結局格闘技が原点にあるようです。

空手を覚えるのも、何度も繰り返し型を行い、体が勝手に動くようになるまで鍛錬するのです。
意識しなくても動く。その動きは条件式による。
特に空手は「後の先」という理想があり、自ら攻撃しない自衛のための格闘技だと言われます。
もう少し私自身の解釈としては、あえて相手に打たせながら相手より早く打ち返す、「正当防衛の条件をきちんと満たした上での暴力」と考えてるのですが。
卑怯ですね。
だのでカウンターというよりは相手の動きそのものを抑え込む、侍が対峙したまま動かないような攻防、その辺が極みだと思います。

となると、意識は「こう動こう」や「右で突こう」と考えている暇などありません。
相手の目線や僅かな動きを捉え、反応する必要があります。
意識と体の動きは別物に切り離さなければいけません。
早く動くというのはそういうことです。格闘ゲームで言う１フレームでも早く相手より優位に立たなければ、動かなければいけないのが打撃系格闘技となります。

更に空手では寸止め、完全な間合いで打ち込む必要があるので視界における距離感はかなり精確にあらなければいけません。

その辺の経験が総て運転技術につながってくるのが、ううん……私らしいというか、他の人はそうならんだろうって突っ込んでくるというか……

ただ共通点も多いと思うんですよ。小手先じゃなくて何度も繰り返した結果が身につくというか。
走り込み、その経験値こそが運転技術になる。
本当の意味での人馬一体となるためには、全開で精確な操作を行う事を繰り返さなければいけないでしょう。
つまりそれがサーキット走行だったり、スラローム競技だったりすると思います。
私はダートトライアル出身です。
自分でサーキットを走り回って全開走行を覚えました。
時計が絶対のあの世界観では生きていけませんでしたが、その代わり、自分の体を大きく拡張する感覚は身につきました。
無心でただひたすら走り込む事が、全天候で行えるというのはその証でしょう。
タイムを削るのはある程度までは楽しいんですけれど、アレはある意味精密性を求められるものなので、ズボラな私には向いてないんです。

ただ車が思い通りに動いてほしい。
それも自分で体を振り回しているように。

楽に、というのはその意味において正しく、最小限度の意識でも自在であること、それは決して注意散漫になる訳ではなく、更に操作が不正確になるものでもない。
どこまで意識するのか。できるのか。能動的な安全運転として、何を信じるのか。
私は感覚ではなく、明確で具体的なものを認識することとしています。
そしてソレを時間で刻み、例えば２秒の安全を確保する、対向車は少なくとも３秒先にいる、自分の周囲は１秒の余裕があるという風に。
時間で意識をスライスして移すことでタスクを振り分けるのは疑似マルチタスクのWindows3.1と同じですが、運転はコレが必要です。

そんな意識の割り振りを、やれステアリングを回した、アクセルを踏んだと意識していては当然周囲に注意など払えませんね。
だので、目線の先に加速する、道にそって旋回するのもほぼ意識せず視界をトレースさせる位の、見たらすぐ動くところまで持っていく。

私はソレが必要だと思って、ずっと運転してきたのです。
なので、視界に捉える、耳で聞く、結果手足が動く。基本は目と耳を向けること。CPUを介さず直接描画するGPUのように、見えているけれど体を動かすことは意識しなくてもできるからこそ。
だからこそレスポンスや車の動きに「違和感」というかたちで経験とのズレを感じるのです。

それも一週間ほどで馴染んでしまうんですがね。

何にせよ、車が移動の手段でしかないのであれば、タクシーや電車のほうがどれだけいいか。
自分で運転する故にその先に進みたくなる、というのが当たり前で、それは移動手段ではないと思うわけです。