Ryo L.W.S.enthusiastのブログ一覧

ビートの車検対応として購入したレガリスKですが、見ておわかりの通りきれいに分岐したテールパイプが装着されています。


この構造だと、最終的に減速された排気がこの分岐に衝突します。
パイプ内の流体は壁面が遅く中央部が早いという速度の分布が存在し、この壁面側の速度低下を「壁面による抵抗」と表現していたりします。
面白いのがコアンダ効果による引き寄せもあり、壁面の流れは壁面にそって流れ続けます。
壁面の角度が多少変わる程度では壁面に沿って流れ続けようとします。
だので、中央はまっすぐ抜け、壁面に沿って流れる場合、出口部で乱流化します。
ラッパのように外側までなめらかに角度を持たせると外側まできれいに流れようとします。

昔手品でもありましたが、ろうとを逆向きにして空気を流すと蝋燭の火が消せない、なんて単純なものでこれが確認できます。ちなみにそれについては最後にうちの手持ちマフラーでのお話で若干話します。

さて、そんな状態でこの分岐に衝突するとどうなるか。
中央部の流れは分岐で二手に分かれます。ここまではそんなに難しく有りません。
問題はこの分岐量が圧力や条件で「常に同じ量にならない」事。

トータル長い目で見れば同じ量になるようになるのでさほど気になりません。
水道なんかそうでしょう。
しかし例えば１秒や２秒という短い間で見ると、７：３や６：４になりますわね。
で、それが維持されるかっていうとそうではない。少ない量が流れた方は当然圧力が低くなり、今度は４：６や５：５の量に変化する。
アクセルの開度で踏み変えるなどすることで元圧も変わるので走行中はあまり関係ありませんし、トータル圧力が管容量より低い状態、ここではつまりアイドリングに極めて近い状況においてのみこの状況を観察できます。

先程管内の流れは速度の分布（その状態を通常「層流」と呼びます）があると表現しました。
しかしこれも管の容積に対し充分な圧力を持っている場合の事。
圧力が足りず流れがきれいにならない状態だとそうは行きません。
これを乱流、もしくは渦を巻くので渦流と呼び、乱流状況下ではきれいに壁面を伝う流れが発生しません。

これを踏まえ、アイドリングに近い状態の分岐テールがどんな状況になっているか考察します。

分岐直前まではきちんと流れています。しかし、テールでいきなり容積も増え、テールを満たす程の圧が発生していない状況だと考えられます。
つまり、分岐してしまうと１気圧以下になるような状況が発生している場合、４つの出口のうち２つは１気圧以上、もう二つ、片方は乱流化している筈ですね。これが先程の７：３に分かれた場合としましょう。

ちなみに乱流化した場合は部分的に１気圧以下になっている可能性はあります。
圧力の分布により渦流が発生し、渦流は壁の影響を受けにくいので「はがれ」と呼ばれる状態になり、音もまっすぐ伝わらなくなります。
音が伝わるには密度がある程度は一定になっていなければいけないからですね。
粗密がひどい状態の空気は想定するような音を伝えるどころか、余計な音を発生させている事もあります（音の正体は粗密波なので、圧力差が音に変わる。ソニックブームのように）。

音に音をぶつけて消音するノイズリダクションなどを経験していればなんとなく分かりますでしょうか。

という訳で、４のうちまともに音が聞こえるのが結果２本になります。
これも、先程の説明どおり在る瞬間は５：５、等量になるんですが……アイドリング状態に近い場合、実は等量になった瞬間は渦流化します。２本とも圧力が足りていない状態になってしまうんです。
これでは一時的に音が聞こえにくくなる、音量低下します。

そしてこれを繰り返す訳です。
するとどーなるか。
ぼぅぼぅぼぅと波があるような、まるで水平対向エンジン（あそこまで波の在る音ではない）のようなばらつきのある音が聞こえるようになります。
聞いたイメージではCB1300のアイドリングのようなばらつきです。

これが好きな人にはたまらんでしょうね。
存在感があります。ただ閉塞感のある耳障りな感覚も同時に発生しているので、神経質な人は眉を顰めるのではないでしょうか。

ちなみに市販車ではほとんど見かけないので状況をはっきり確認できていませんが、今私が持っているV.O.S.マフラー部はテールがややきつめのラッパ状になっています。
ラッパ状では管断面積が出口に向かうに従い増加します。なので、出口付近まできちんと圧力を維持してても、出口に向かうに従い中央部の圧がどうしても低下します。
速度低下を起こし、排気が足りなくなるタイミングで中央部が乱流化し、出口からの逆流を起こしてラッパの中央を蓋する格好になります。
これが排気音を低下させます。だので、ワンオフマフラーとしては珍しくアイドリングが恐ろしく静かで、内部構造によらないために軽量且つ高性能を維持するという、ワンオフらしい贅沢なものとなっているのです。

とまあ、こんな考察、実際にテールにティッシュが吸い込まれるのを見て気づいただけなんですがね。
驚くでしょ？マフラーって普通排気を外に排出してるんだから有りえん、って。

可圧縮気体の密閉空間内の流体力学は液体のそれとも若干異なるので考察しがいがあって楽しいですよ。無論理論云々じゃなくて、私の場合は実際に触ってみて確認する、実践型での確認ですから即応用できます。

久々に頭を使って楽しかった。そんなレガリスK購入でした。