
多様な価値観が認められるようになった昨今、誰かが「好き」と言っているものを否定するのは、ひとつの考え方として間違ってはいません。
ただ、それに水を差す行為ほど寒いものはありません。それが、自身の判断ではなくイメージや時勢によるものなら尚更です。
でも、どうしようもなかった事象が、10年前に間違いなくありました。2012年、東日本大震災の後にあった政策のひとつ、「エコカー減税」に伴う助成金制度・・・
「13年超過のクルマを廃車にして、エコカーに乗り換えると25万円の補助金が出る」という経済促進のテコ入れは、数々の希少なクルマがスクラップになっていったとされています。
同時にプリウスを始めとしたハイブリッドカーや多くの積載量を持つミニバンが国民車に差し変わり、エコではなく、人が乗れず、危険なイメージのあるスポーツカーは「悪」そのものとして、ポジティブではない位置づけになりました。

そんな時代を耐え抜いた一台がNCロードスター(2005-2015)です。
NCはLWS(ライトウェイトスポーツカー)としての志が高く、凄まじい造り込みがされていたにもかかわらず「日本市場のみ」結果が出せませんでした。でも「売れない=ダメ」だったわけではありません。時代がそれを許してくれなかったのです。
さらにキツかったのは、味方であるはずの先輩ロードスターオーナーからもそっぽを向かれてしまったこと。
原因は「大きく、重い」という諸元の印象があったことと、一気にお洒落なクルマに変わってしまったことで旧オーナー達の「気持ち」が追い付けなかったからです。
当時のマツダディーラーは満足な試乗車も用意しなかったので、じっくり体験できる機会も少なく、イメージだけで「あれは駄目だ」と評価されてしまいました。

そんなのは当たり前な話で、「人馬一体」な乗り味(コンセプト)は先輩ロードスターから受け継いでいますから、仮にちょい乗りしたとしても「違い」を感じるのは微々たるものであり、わざわざ新型に乗り換える必要がなかったからです。
それなのに、安全要件を満たして、お洒落で、パワーもあって・・・となったら、単純に目の敵になります。
それでも熟成を重ねていった矢先に不況や震災の影響でエコカーブームが訪れたのは運がなく、本当に好きな人に支えてもらったのが、NCロードスターというクルマでした。

ただ、今でこそレジェンドなユーノスロードスター(NA)も、先輩LWS(ライトウェイトスポーツカー)からは「偽物扱い」されていたことを忘れてはいけません。エランやオースチン、MGと比較され「大きく、重く」て見た目まで「マネしている」とデビュー当時は悪評を受けており、悔しい思いをしていた時代があったんです。
一部の先輩オーナーではありますが、それと全く同じことを後継車に対して行なっていたのは、何のギャグなのか・・・

さて、今から10年後、2032年には純ガソリンエンジンで走る新車のスポーツカーは滅亡していると予想されています。
その時に「昔のクルマは良かった」という言葉を耳にする機会が増えると思いますが、そこでモーター駆動するロードスターを揶揄するような、しょうもない歴史を繰り返さないことを祈ります(もう大丈夫ですよね?)。
よろしければ、下記トピックもご参照ください。
NCロードスター、不当な評価の原因は?
https://mx-5nb.com/2022/02/07/unjustified-evaluation-of-mx-5/
※上記リンク先の内容はあくまで私見です。また、私は全てのロードスターが大好きであることを、付記しておきます。
Posted at 2022/02/09 22:42:12 | |
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ロードスター | 日記