「HYMATIC」(ハイマチック)フルタイム4WDの本質的な特徴をまとめてみると
・AT専用で
・機械式センターデフを持ち
・差動制限を油圧で制御
・その制御を電子的に行う
そして、これらの条件を満たした4WDシステムを捜してみると、あるタイプの車種では今でも主流であることが分かります。
例えば
・トヨタ「i-Four」
・スバル「VTD-AWD」(不等&可変トルク配分電子制御AWD)
・三菱 「ACD」(アクティブ・センター・ディファレンシャル)
・メルセデス 「4MATIC」
その他、多数のメーカーで採用。
「トヨタ」では、この「ハイマチック」の特徴を満たした4WDシステムが「i-Four 」になります。
「i-Four 」はFR専用の4WDシステムとして、「クラウン」「マークX」などに使われていますが、これは
4WDシステムをより進化させた、制御システム全体の名称(車両総合制御システム)なので少し注意が必要です。
「i-Four 」(車両総合制御システム)
1992年「クラウン マジェスタ」に搭載された「i-Four」は、「走る・曲がる・止まる」の車両運動性能面において、車両の走行限界性能を高めることで一般的な走行状態での安全余裕の確保を図り、特に滑りやすい路面での加速時安定性と旋回性の向上、緊急回避性の向上、制動時の停止距離短縮と安全性の向上を狙った車両総合制御システムをいう。
このシステムは、電子制御フルタイム4WD(以下、4WD)、ABS*1、アクティブ4WS*2、エアサスペンション、エンジン制御(EFI)、オートマチックトランスミッション制御(ECT)の各制御システムからなり、各システム間が多重通信で連結構成され、各システムの制御量分担、最適化およびセンサー、情報を共有することにより、効率的な制御システムの構成を実現した。
「i-Four 」は「電子制御フルタイム4WD」を中心にABS、4WS、サスペンション、EFI、ECTが総合的に連結し電子的に制御されたシステムで、
この「電子制御フルタイム4WD」の部分に「EC-ハイマチックⅡ」が使われていて、しっかり名前も引き継がれています。
「i-Four 」の4WDの基本的な部分は、従来からある「ハイマチック」が担っていて、これは、センターデフの作動制限を油圧で制御し、メカニカルなフルタイム4WDという部分では全く同じということです。
「ハイマチック4WD」は「AT」に適した乗用車専用の4WDとして、独自に「ハイマチック」「EC-ハイマチック」「EC-ハイマチックⅡ」と進化し、成熟していたのですが、近年では「i-Four」の一部分(4WDシステム)という位置付けになり、「EC-ハイマチックⅡ」という名称が表に出ることはほとんどなかったようです。
・1987年 ハイマチック FF用 A241H カローラ、コロナ
・1988年 EC-ハイマチック FF用 A540H カムリ
・1992年 EC-ハイマチックⅡ FR用 A341H A340H A760H クラウン マークⅡ
このように進化に伴い、上位車種へ搭載されていったことで、高級車に相応しいネーミングが必要になったのでしょうか、FR用の「EC-ハイマチックⅡ」が登場した頃には、
実質的な機能は引き継がれつつも名称が「i-Four 」に代わったのです。
既存のシステムを上手く流用し、新たな価値を持つ「i-Four 」というシステムを上手く作り上げたという見方が正確でしょうか、これ以降
「EC-ハイマチックⅡ」という名前は表に出なくなり「i-Four 」に埋もれてしまうのです。
「i-Four 」が初めて使われたのは、1992年「クラウンマジェスタ」からで、その後「クラウン」にも4WDが設定され(10代目 S15#型 1995年から)、同じく「i-Four 」が使われています。
20年以上前に、既に「EC-ハイマチックⅡ 」は「i-Four 」の中心的機能として「クラウンマジェスタ」のような高級車に搭載される4WDシステムになっていました。
3代目「カリブ」はこの3年後に登場するのですが、4WD機構は先代(AE95G)のシステムを流用という形で「ハイマチック」が引き継がれ、古いA型エンジンなのでそのまま古いハイマチック(A241H)を使うことができたわけです。
当初は全て4WD車という性格の3代目「カリブ」も、その後FFが追加され、ついに消滅してしまうのですが・・
120系「カローラ」からは「ハイマチック」に代わる4WDシステム「Vフレックス」が使われ、以降センターデフを持たない電子制御式4WDが採用され続け、現在に至っています。
このクラスの車には経済性(燃費、コスト)を重視した4WDが相応しいという判断からでしょう。
今年発売された新型「クラウン」も4WDシステムは「i-Four 」を使っています。
4WDは6速ATを採用していることから、新開発ではなく先代と同じ「AT」を使った「i-Four 」だと思われます。
そして、この
最新の「i-Four 」の「電子制御フルタイム4WD」の部分には未だに「EC-ハイマチックⅡ」が採用されているのです。
つまり
新型「クラウン」も基本的には「ハイマチックフルタイム4WD」なのです。
「EC-ハイマチックⅡ」は「i-Four 」の中核として今でも活躍していました。
この部分に関しての基本構造(ハイマチック)は20年前に既に完成し、進化してきたのは他の機能との連携や電子制御的な部分、そして駆動系が大半のようです。
「i-Four 」は現在では「クラウン」「マークX」「レクサス」などのFR用の高級車やスポーティーな車といった、走行性能を重視される車種に使われる4WDシステムになっています。
その「i-Four 」が求めている4WD性能は
・走行限界性能を高め
・一般的な走行状態での安全余裕の確保を図り
・特に滑りやすい路面での加速時安定性と旋回性の向上
・緊急回避性の向上
・制動時の停止距離短縮と安全性の向上を狙った
といった、通常の走行条件での走行限界性能を高め、安全余裕の確保を図ることが目的の4WDシステムなので、4WDに求める性能を混同しないように注意が必要です。(例えば,40キロ以下で使う「スバル Xモード」とは求める方向性が違います)
初代「ハイマチック」から潜在的条件は揃っていたので、「i-Four」のような総合制御システムになっていったのもごく自然に感じられます。
「久保さん」の
「ハイマチック」は最初からよく出来た4WDシステムだったのです。
このように「ハイマチック」は基本的にはあまり変わってきてはいないのですが、むしろ変わってしまったのは時代の方で、一言でいえば、「そういう時代になってしまった」ということでしょう。
カリブの4WDを一言でいえば、「i-Four 」から電子制御的な部分をほとんど取りはらったような4WDという表現がぴったりで、見方によっては
電子制御されすぎていない所が魅力的でさえあるのかもしれません。
4WDに関しては電子制御が正義とは限りませんので。
こういった背景があって、「カリブ」の4WDは古くても魅力的なのです。
参考資料 トヨタ自動車HP トヨタ自動車75年史
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Posted at
2013/11/23 19:04:48