
急に寒くなり、自転車には厳しい季節になりましたが、「カリブ」にとっては4WDの恩恵を一番受けられる季節でもあります。
積雪は年2、3日程度しかありませんが路面の凍結は珍しくないので、ノーマルタイヤで普通に走行できるのはありがたいです。
前期型の頃に、7年間(15万キロ)4WDの「AUTO」ボタンはOFFのままで、雪道だけONにしていたことがあります。
「取説」では「牽引や特殊な状況以外では「AUTO」ボタンはON」ということでしたが、「取説」そのものを前期型の頃は持っていなかったので、感覚に頼った結果「AUTO」ON-OFFの違いがとても分かりにくかったので、自己流の間違った解釈をしていました。
「AUTO」ボタンの誤りに気がついたのは後期型の「取説」を見た後で、長い間「カリブ」の「ハイマチック」フルタイム4WDのことはよく分からないまま乗っていたのです。
誤った使い方でも壊れないのは、流石「トヨタ」。
以前、4WDの前後のトルク配分が知りたくて、「ハイマチック4WD」について「トヨタお客様相談センター」に問い合わせたことがありますが、古い情報なので簡単に見つからないのか、「不明」という残念で意外な回答でした。
このときの問い合わせ内容は、「前後のトルク配分、センターデフAUTOボタンON・OFF時どのようにトルク配分が変化するか」、大体このような内容でした。
現在も、前後のトルク配分と変化については分かっていませんが、感覚的には50:50を基本にしたトルク配分なのでしょうか、「FF」でも「FR」でもないという、掴みどころがない感じがします。
「ハイマチック4WD」についてはとても情報が少ないのですが、下記の動画がとても興味深い情報を提供しています。
古い映像で画質が悪いのが本当に惜しいですが大変貴重かと。
「新車情報'88 トヨタ カローラ 4WD」http://www.youtube.com/watch?v=GAlemlVn2A0
(18分頃から「ハイマチック」のメカニズム・原理など説明しています)
まず「ハイマチック4WD」誕生の背景。
開発の「久保さん」の話では
・4WDの時代が「いつか来るだろう」ということで・・ 5,6年前(82、83年頃)から考えていた
・「カリブ」の4WD機構が既にあって将来どういった形で発展していくかと・・
・しかも「ATトランスミッション」に適した機構は何かと・・
「ランクル」などの伝統的なクロカン系の4WDとは別に、新しい発想から乗用車ベースの4WDとして初代「カリブ」が誕生、そして乗用車専用の「AT」に適した4WD機構として進化し誕生したのが「ハイマチック4WD」(A241H)のようです。

この頃(88年2月)初代「カリブ」の持つ独特のアイデンティティが「カローラ」という世界有数の大衆車に乗っかる形で、4WD機構、エンジン、プラットフォームなど「カローラ」と共通の、2代目「カリブ」AE95G誕生。(※プラットフォームは正確には「スプリンターシエロ」)
そして、なにかと謎の多い「ハイマチック」については
・Hydraulic(油圧)
・Multiple plate(多板)
・active(活動)
・Traction(トラクション)
・Intelligent(知能)
・control(制御)
ようやく「HYMATIC」(ハイマチック)の、名前の由来が分かった。
さらに「メカニズム」については
・「ATトランスミッション」は元々「湿式多板クラッチ」を使っていて制御が非常にやりやすい
・路面、走行条件に応じて差動制限の特性を与えている
・「ATトランスミッション」に走行条件を検出した信号が既にある
・色々条件に合わせて、外側から制御できるメリットを買って「HYMATIC」を採用
「ATトランスミッション」に既にある「油圧」「信号」を使い制御する方式なので「AT」と一体の、AT専用の4WDシステムで、3代目「カリブ」では「ECT-S」と「ハイマチック」の連携が見られるところは興味深いですね。
(※「湿式多板クラッチ」はAT用と差動制限用は、同じ構造を用いているが別々で、共用しているのではありません)
(※「7AFE」には電子制御の4速「ECT-S」を採用、電子制御を利用し高速時と後退時の差動油圧をより最適化している。「4AFE」は普通の4速ATなので「7AFE」のような最適化はされていない)
勘違いしやすいのは、動力の分配は「機械式センターデフ」がおこなっていて、「湿式多板クラッチ」を使った油圧制御は「差動の制限」をコントロールしているだけであるという点です。
これは油圧制御の有無に関わらず、前後のトルク配分は「センターデフ」が常時行っていて、極端な状況(例えば一輪空転するような)以外では「AUTO」「OFF」の違いを体感することは難しいということでしょう。
そして「AUTO」の状態では、スロットル開度、車速、シフト位置を検出し、油力の有無、強弱によってセンタデフの差動油圧を最適にコントロールし、トルク配分を行っているそうです。
謎の「マニュアル」ボタンの存在理由もここにあり、シフト位置を任意に選択・固定させ、さらにスロットル開度(アクセル)を調節することで、理想の油圧の状態にコントロールして、「スタック」時よりスムーズに発進できるというものです。
ここは、こういった「ハイマチック」の原理が分かっていないと理解しにくい部分なのですが、当時は4WD車以外でも「ECT-S」搭載には同じ「マニュアル」ボタンが付いていた車種もあり、大部分の人は自分と同じように使いこなせなかったのではないかと容易に想像できます。
また、MT車の「デフロック」などには及ばない部分をこうして補っている「短所」でもあるのですが、ATとMTでは理想的な4WDは違うという、現代の4WD機構の多様化が既に見られ、メリット・デメリットを踏まえたうえでATには「ハイマチック」を採用したということでしょう。
・MT(ABS有) センターデフ+ビスカスカップリング
・MT(ABSなし) センターデフ+メカニカルデフロック
・AT センターデフ+油圧制御
3代目の「カリブ」には3つの組み合わせがあり、なぜMTとATで差動制限の方式が違うのか疑問でしたが、「ハイマチック」はAT用なので、MTには使えないからという単純な理由であることが判明。
26年も前の「ハイマチック4WD」ですが、雪上をノーマルタイヤでスイスイ走れ、4WDを意識することなく普通に運転でき、トラブルや煩わしさなども皆無で、「良く出来た4WDだなぁ」というのが正直な気持ちです。
「ハイマチック」は構造的に見ても合理的で、よく出来たAT用の「センターデフ方式のフルタイム4WD」だと改めて思いましたが、最近は名前を聞くことはありません。
「センターデフ方式のフルタイム4WD」そのものが少なくなり、26年前の「ハイマチック」は時代遅れの古いシステムなのでしょうか。
後編へ、つづく
Posted at 2013/11/13 21:06:34 | |
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スプリンターカリブ | 日記