今回の内容、本当は前回のブログの前半部だったのですが、毎度のことながら長くなったので分割し、さらに記事の前後を入れ替えた形になります。なのでこちらを先に読んだ後に前回の記事を読み直すとより自然で分かりやすいかもしれません。
前回の補足的な意味として、これまでのおさらいも含めて順に説明していきます。
ここから本題です
まず、トランスファーの底部に小さな穴が開いており、この穴から微量のオイルが漏れています。
この穴の存在はオイル漏れが起きるまでは気がつかず当初は謎の穴でしたが、現在は大よその予測はついています(詳細は後程)。
カリブのトランスファーA241H( AT用 )には作動油のATFと潤滑油のギアオイルの2種類が使われており、そのうちのATFがこの穴から漏れ出していると考えています。
漏れ出しているオイルの判別は色や香りからATFだと判断しているので、もし微量のギアオイルが混ざっていたとしても気が付かず、よって含まれていないという判断になります。
そして
一応、これまでに双方のオイルに漏れ止め剤を投入しており、その効果はこんな感じでした。
・ATF : リスローン投入( これまでのところ目立った効果は見られません )
・ギヤオイル : NC-81投入(オイルの色の変化から、こちらからの漏れは止まっていると判断)
リアデフに投入したNC-81の効果からも、やはりこちらの効果はあったのだろうと推測しています。
トランスファー内でのATFとギアオイルの分布はこんな感じです。
AT専用ということで、AT絡みの部分はその延長でATFが使われ、駆動部の潤滑にはギヤオイルという役割分担のようで、MTと比較するとやや特殊な構造ですかね。
ともかく、カリブ(4WD AT用)の大きな特徴はトランスファーにATFとギアオイルの2種のオイルが使われている点で、その内部のオイル分布・経路も決して単純な分かれ方はしておりません。
画像参照:トヨタ自動車75年史 ハイマチック (A241H トランスアクスル) (写真提供:アイシン・エィ・ダブリュ)
カリブのトランスファーのカットモデル画像が存在するおかげで、内部を開けずに中の構造が大よそ分かります。滅多にないレアケースで奇跡的と言ってもいいのでは?
鮮明とは言えませんが、とても貴重で役立ちます。
トランスファーケース内では「2種のオイルを分離するタイプのオイルシール」が2箇所に使われており、この場所はこのシールによってのみATFとギアオイルが隔離されているのでとても重要な役割を担ったシールと言えます。
混ざったら大変そうで、もう責任重大でしょう。
先ほど説明したオイル漏れが起きている小さな穴は、この片方のオイルシールの真下にあることがA241Hのカットモデルの画像から特定できています。
画像はあまり闡明ではありませんが、特徴的な“くびれ”がある場所に穴が開いているおかげで、ピンポイントで場所を特定できました。つまり、このトランスファーケースの“くびれ”は、シールの外周に沿った出っ張りと凹みだったのです。
小さな青マルが現在オイル漏れが起きている小さな穴の予想位置になります。
修理書の断面図には記載されておりませんが、向かって左側のシール中心のほぼ真下にあるはずです。先ほどのカットモデルの画像判断からこの位置にあることはまず間違いありません。
向かって右側のシールにはしっかりバイパス経路&穴が記載されており、シールと穴の位置関係や形状から、シールおよびバイパス経路の役割も見えてきます。
シールの中間にあるミゾの存在と、バイパス経路がシールの中間にある点が大きなポイントかと。
もう一方のバイパス経路の出口はこんな感じで、右側ドライブシャフトの付け根にあり、こちらの穴は直径が倍以上大きいです。
理由はおそらく、穴の傾斜が緩いので外部に流れやすくするために経路面積を広くする必要があり、それと加工上の都合で、ある程度の長さが必要なので、細いと加工が難しかったりコストがかかるためだと思われます。
それに、穴からシールまで距離があるため、ゴミや埃も入り難くシールへの悪影響も少なそうです。その点、漏れ出している方の穴はシールとの距離が近く、走行中の風の影響も受けそうなので、小さな穴の方が都合がいいのでしょう。
もしかしたらシールの寿命にとっては、この穴の存在はマイナスに働くかもしれません。
しかし、気密性や気圧差を考慮し、あえてそうしてあるのかもしれません。
「2種のオイルを分離するタイプのオイルシール」同品番実物の画像(漏れている側)です。
当然ですが、もう片方も品番こそ違えど形状や基本構造はほぼ同じようです。
シールの中間に深いミゾがあるのが大きな特徴で、2種のオイルを分離するタイプのシールでもやや特殊な形状をしているようです。このことから、深いミゾに重要な意味と役割があることが伺えます。(※シールメーカーのカタログを根拠に判断)
シールの深い溝は漏れ出したオイルを逃がすバイパスの役割を担い、決して双方のオイルが混ざらないための工夫で、最終的に穴から外部に排出させる構造だと考えられます。
どうやらこの穴は、シールから漏れ出したオイルを逃がすバイパスの役割と、シールの寿命を知らせるシグナルの役割との二つを併せ持っているようです。
なるほど!とても大切な役割のある穴だということが分かってきました。
繊細でデリケートな内部構造をもつATとしては、ATFとギアオイルという性質のまったく異なる2種のオイルが混ざってしまうことは絶対に避けたいでしょうから、とても重要な役割を担ったオイルシールとバイパス経路&穴と言っていいでしょう。
普通は、この穴の存在自体にまず気がつきませんし、穴の役割なんてさらに知る由もありません。
かなりマニアックで、開発や製造に関わる一部の人しか知らない類の情報ではないでしょうか。
こんな感じで、新たな発見があったりして、一連の処置や対策は煩わしさはあっても、頭の中で色々考えるのが好きなので楽しさもあります。
まとめ
このように、バイパス経路&穴の存在によって、万が一シールからオイルが漏れ出しても双方のオイルが簡単には接触しない構造になっているようです。よって双方から微量のオイルが漏れ出すだけならば機能的には大した問題ではなく、漏れを上手に吸収しつつ、双方のオイル量さえしっかり確保してあれば基本的には大丈夫だと考えていいでしょう。
幸い現在の漏れの量は微々たるものなのでさほど深刻ではありません。今後は漏れ出す量の変化に注意し、急激に増えることさえなければこの状態のまましばらく使える可能性もでてきました。
この状態で、あと5年、6万キロは使いたいと思うのは欲張り過ぎでしょうか?
まあ正直、自分でも微妙だなぁ~という認識はあります。
出来ればそうしたいという淡い期待というか願望です。
以上、トランスファーからのオイル漏れのについて現時点で把握していること&おさらいでした。
前回のブログ「爪楊枝」で塞ぐ、塞がないは、ここまでの情報を根拠に判断した結果です。
やっぱり爪楊枝で塞がない方がいいですよね。
雑感
それにしても、カットモデルのメカニカルな内部構造を見た後では、シールからの微量のオイル漏れなんてのはとても些細な事のようにも思えてきて、ATの調子が良いこともあり、まだまだ行けそうな強気な気分にもなります。
このAT、これだけ長い期間使ってきてシールの経年劣化に伴う微量のオイル漏れだけですから、基本的には耐久性は高いと判断でき、むしろ頼もしくさえ感じられます。
元々はカローラ(90系)の4WD用に開発されたATなので、コスパ&耐久性はさすがの一言です。庶民の移動手段として世界中の悪路で活躍したことでしょう。この頃のカローラは一番元気があり、丁度カリーナEDが大ヒットした頃で、まだセダン全盛の時代でした。
まあこんな感じで、よく出来た4WDだと思います。
新車で200万切る価格もかなり安いと思います(カリブ=110系カローラワゴン4WD)。
最期に
ごく最近でもハイマチックフルタイム4WDのことを誤解されているネタをネットで見かけました。
やっぱり誤解・勘違いされやすいようです。
https://carview.yahoo.co.jp/ncar/catalog/toyota/sprinter-carib/chiebukuro/detail/?qid=12168919427
ベストアンサーの回答ですが、「■ ハイマチックフルタイム4WD」の説明は間違っております。
カリブのハイマチックフルタイム4WDは間違いなくセンターデフ式のフルタイム4WDです。