2009年09月29日
神殺の聖槍 45
第6章 魔銃光殺砲 5
「そういえば、カルディナはどうしたの?」
麗華が1人いるべき人がいない事に気づく。
「そう言えばいないな。」
「あ、カルディナさんは魔銃の弾を確保しにちょっと行ってくる、って出掛けたわ。」
「ふ~ん。まあいいネ。じゃ、5人で行くアル!」
「ちょっと待った。美緒りんと可奈さんは控室で待機だ。」
「え~?」
「当たり前だ。」
レオーネとしては民間人である可奈さんは置いておかねばなるまい。そして、美緒りんも
一緒にいるとはいえ、戦闘要員ではない。これから行くオーナーがもし今泉の手の者だと
したら、戦闘になる可能性大である。そこに民間人がいるとやりにくい事この手ない。
したがって、行くのはレオーネ・麗華・シルビアの3人だ。
「では、いってらっしゃいませ。」
「じゃ、いってらっしゃ~専用○ク。」
マテ、そのしゃ~専用ちょめちょめ的なネタはヤヴァイだろう。(爆)
危険なコメントを織り交ぜながらwとにもかくにも、オーナー室にたどりつく。
コンコン
「どうぞ。」
ノックとともに扉を開けると、まあまあ大きな部屋が広がり、その奥の机に1人の男性が。
どうやら、あれがオーナーだと思われる。
「そちらのソファにどうぞ。」
オーナーは丁寧に3人をもてなす。
「この度は突然の訪問にもかかわらず紳士的な態度に感謝をいたします。」
この辺りの接見はシルビアが得意のようだ。
「諸君たちが今日の助っ人バンドだったかね?」
「へ?」
どうやら、ここのオーナーはレオーネ達が普通に麻生可奈の演奏をしてくれるメンバーだと
思いこんでるようだ。
「ちょっとどうすんだ?」
「そんなこと言っても…ここは話を合わせておかないとマズイでしょう。」
「回りくどいのは苦手アル。ここはオーナーをとっちめてさっさと敵かどうか…モゴモゴ」
「麗華が離すとややっこしくなるから、今は黙っててくれ。」
「ンガンガ・・・」
レオーネは麗華の口を押さえて無駄口を言わせないようにする。
あとはシルビアに任せるしかなさそうだ。
「は、はい。しがない旅の演奏隊ですが、精一杯やらせていただきます。」
(おいおい、アドリブとはいえそんなハードルの高い設定で大丈夫?)
そんな心配を感じずにはいられないレオーネだが、ここはシルビアに任せた以上話を合わせる
のに専念すべきだろう、と推測する。
「精一杯がんばります。」
「モゴッモゴモゴゴッモゴ。」
「そこの彼女はモゴモゴしかいえないのかね?」
「あ、え~っと、この彼女は風邪をひきまして、でも演奏には支障ございませんのでご安心を。」
「…(レオ、後で覚えておくアル)。」
悪寒を感じずにはいられない麗華の視線を受け止めつつ、話をつづけてもらう。
「で、報酬はいくら欲しいのかね?」
その言葉を待ってました!とばかりにシルビアが話を進める。
「お金は要りません。」
「むむっ、お金はいらないとな?」
「はい、その代わり1つオーナーの所有する品物をいただきたく思います。」
「う~ん、それは何だね?」
ゴクッ
3人に緊張が走る。ここでロンギヌスの槍の話をしてオーナーがどう反応するかで、穏便に
話が進むか一触即発の事態になるか…。
「オーナーの倉庫にございます【ロンギヌスの槍】をいただきたく思います。」
「ナニっ!?」
オーナーの顔色が変わる。
(ヤヴァイ、やはりここのオーナーは今泉の関連の者なのか…)
そんな不安に駆られる一同。
「あれは高かったシロモノなのだが…まあ、よかろう。」
ミ(ノ_ _)ノ=ミ(ノ_ _)ノ=ミ(ノ_ _)ノ=3 ドテッ!
レオーネ・シルビア・麗華がズっコケる。何か起こると思ったが拍子抜けだった感じだった。
「よ、よろしいのですか?」
「ああ、確かに高かったが、骨董屋の付き合いで買ったモノなので好きで買ったわけでは
ないんでな。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「いやいや、お礼はまだ早い。ちゃんとライブが成功したら、という条件じゃからの。」
「はい、わかりました。」
話は意外と早かった。
「ホント、拍子抜けアル。」
「一時はどうなるかと思ったけどな。」
「うまく話を付けてくれてありがとう、シルビア。」
麗華とレオーネは安堵の表情だが、1人浮かない顔をしているシルビア。
「どうしたアルか、シルビア?」
「ここまではよかったけど、まだ大きな問題が残ってるのよ。」
「何かあったアルか、レオ?」
「もう槍は帰ってきたようなモンだろ。」
そういう2人にシルビアが怒りの表情を見せる。
「私たちがきちんと演奏できなければ、この話はご破算なんですよ。」
あ…
そうだ、ロンギヌスの槍はあくまで報酬であって、今日の夜のライブが成功しなければこの話は
なかった事と同じだ。
「とりあえず、控室に戻って検討しよう。」
3人は美緒りん達のいる控室に戻る事にする。
「へぇ、よかったじゃないですか。」
シルビアが事の顛末を説明すると、美緒は素直に喜びを表した。
「でも、今日の夜のライブまであと5時間しかないんですが…大丈夫なんですにょ?」
「な、なんとかなるわよ…ね?」
「大丈夫アル! 私に任せるヨロシ。」
「それが1番不安なんだよなぁ…」
「何か言ったアルか、レオ。」
「いや、何も…。」
「と、とにかく練習よ。」
結局演奏する楽器はこのように決まった。
メインボーカル ・・・ 麻生 可奈
サブボーカル&ギター ・・・ 日下部 美緒
エレクトロオルガン ・・・ シルビア=ガゼール
シンバル&銅鑼 ・・・ 周 麗華
ドラム ・・・ エルファン=レオーネ
まずは1時間個々に楽器に慣れるべく色々と演奏をしてみる。
「・・・さっぱりダメだにょ。」ε-(;-ω-`A) フゥ…
美緒は楽器経験があるのでこの1時間で勘は取り戻したようだ。そしてシルビアの担当する
エレクトロオルガンは一見ややっこしく見えるが基本はパイプオルガンと同じなのでこちらも
なんとかなりそうだが、問題はこれまで楽器に縁のなかったレオーネと銅鑼しかできない麗華が
1番のネックになっている。
「銅鑼はあくまでおまけだからまあよしとしても、ドラムだけはどうにかしないとにぇ。」
「こんな小さな棒2本で音を奏でるなんて出来ないよ。」
確かに素人でドラムを演奏するのには普通では無理がある。でも、何とかしないとせっかく話を
付けたロンギヌスの槍を報酬で得る事は不可能だ。
「レオって、こういうの鈍感アルからねぇ。」
「うっせいやい。」
「何ですって、誰に向かってそんな減らず口を叩いているアルか!?」
麗華とレオーネの口ケンカが始まってしまった。
「麗華はいいよなぁ、鉄板2枚を叩くか銅鑼鳴らしてたらいいんだから。」
「し、失礼な言いっぷりネ。この鉄板をうまく鳴らすのって難しいアルよ。」
「お2人さん、それ鉄板じゃなくシンバルって言うんですが…」
「そこはどうでもいい!」
「す、すみませんぬき。」
美緒りんがシンバルの名称の説明を仕様とするが、そのセリフは2人に一蹴される始末。
「このヘタレドラマー。」
「失敬な。麗華こそそんな簡単なモノしかやらせてもらえないヘタレじゃないか。」
「うが~、ムッカつく言いっぷりネ。そっちこそ、叩くのはへっぴり腰だけアル。」
「何だと、銅鑼叩くよりもお前の頭を叩いた方がいい音するかもしれんぞ。」
「言ったネ、レオ。もうアッタマ来たアル!」
麗華の方が口での言い争いに負け、物を投げる方に回ってしまった。
「あぶねぇなぁ。」
「あれもこれも、みんな投げちゃうアル。」
どこにあったのか分からないが、ナイフやヌンチャクまで飛んでくる。
さすがにナイフは素手なので避けて交わすが、ヌンチャクはキャッチするのに成功。
その瞬間、キャッチした棒の方割れがドラムに当たる。
「ふん、レオなんかヌンチャクでドラムやった方が上手なんじゃないネ?」
「そんな事できるか!?」
「ま、待ってください。」
その時、シルビアが話に割って入る。
「レオーネさん、確かヌンチャクで色々出来るって言ってませんでした?」
「ええ、ヌンチャクで棚に置いてる複数の缶を飛ばしたり、キャッチボールもできますよ。」
「でしたら、試しにヌンチャクでドラムを叩いてみてはいかがでしょう?」
「ぬ、ヌンチャクで!?」
とんでもない事を言うもんだ、と誰もが思った。だが、
ズンチャチャ ズンチャ ♪ ドロロロロロロロロロ シャ~ン ♪
「出来た。w」
笑い話のようだが、これが意外と出来たのだ。
麗華の実家の道場での修業にヌンチャクで色々な事が出来るようになる修業があったが、
まさかそれがここで役に立つとは!?
「イケルかもしれません。」
なんかウソのような話だが、メンバーに光明が差す。
「演奏の練習をしましょう!」
「お~!」
残り時間の4時間のうち、ギリギリまでリハーサルを敢行。完全とはいかないまでも7割方は
出来るようになっていた。
「恐ろしいモノですが、ここまでやれるとも思ってませんでしたね。」
リハーサルをずっとサポートしていた麻生 可奈のマネージャーも驚きを隠せない。
「まもなくステージ開幕です、準備をお願いします~。」
建物のスタッフがレオーネ達を呼ぶ。
「あとはぶっつけ本番だが、俺たちならなんとか出来ると信じている。みんなで成功させよう。」
「アンタが1番フアンアル、と言いたいトコだけどもうやるしかないアルね!」
「そうですね、きっと成功しますよ。」
「ヤヴァくなったら可奈ちゃんとうまくやりますよ。」
「1日限りのコンビですが、張り切っていきましょう♪」
「お~!!!」
5人がステージに上がる。いよいよぶっつけライブの始まりだ!
-つづく-
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Posted at
2009/09/29 22:30:38
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