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2010年04月18日

【小説】刀をたずねて三千里  3

 
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     第1章   刀を狩るモノ   3
 
 
 
 八九寺市は近代化と高齢化を踏まえ、近代技術を推奨しつつも高齢の方が安心出来る
 昭和の面影も残しながら街作りが行われた。
 
 3人が向かった先は学校からほど近い「魔宵(まよい)」駅前商店街。
 この商店街は見た目は昭和の頃の商店街を思わせる雰囲気を漂わせているが、その店は
 随所で近代化によって効率的に展開されている。
 
 今から恭介らが行こうとする『マック』とはこの商店街にある『マクドムドム』という奇妙な店。
 一応言っておくが、マクドナルドとドムドムバーガーを足して2で割った訳ではない。w
 その名を略して『マック』である。
 
 「到着ぅ~。」
 
 先頭を行く澄香がそのマックに着いたと言う。都歌沙は澄香とよく来るので知っているが、
 恭介にとっては初めてなので少々困惑気味だ。
 
  いらっしゃいませ~
 
 お店に入ると元気の良い店員の声が聞こえる。
 そして、そのままカウンターへ向かう3人。
 
 「ようこそ、マクドムドムへ。」
 
 女性店員がとびっきりの笑顔で言う。
 
 (へぇ、さわやかな笑顔だなぁ)
 
 恭介はそう思いながら店員を見ていると、澄香がそれを察知したのか
 
 「ふ~ん、恭介っちはこういう娘が好みなのかな~?」
 
 といたずらっぽく言う。
 
 「何か違ってないか、どうしてこんな会話になる?」
 「だってね、お花ちゃんが恭介っちを睨んでるからさ。」
 「え!?」
 
 恭介がその言葉で都歌沙を見ると、なぜか恭介を冷ややかな目で見ている。
 
 「あのぅ、何か…」
 「…何でもないっ。」
 
 そう言うと隣のカウンターに行き自分の商品を注文し始める。
 
 「何で怒ってるんですか?」
 「恭介っち、隠しごと出来ないタイプでしょう?」
 「え!?」
 「どうやら図星の様ね。」
 「えっと…」
 「何を隠してるかは知らないけど、お花ちゃんと仲良くしたいならもっと上手に嘘を付く事ね。」
 
 そう言うと、恭介を押しのけて正面の女性店員に注文をする。
 
 どういう事だ?、と恭介は考えてみる。思い当た節はただ1つ、
 
 (先日の轢かれそうになったあの事だろうな。)
 
 ただ、恭介としてもあの場ではそう言うしかなかった。
 どう考えてもあの場で「はいそうです。」なんて言ったら、その理由やら年が2つ違う事も
 説明しないといけなくなる。どうせずっとこの学校にいる訳ではないので、ここでこの2人に
 嫌われてもちょっとだけ我慢すればいいだけだし、それがこの仕事の宿命だと自分に
 言い聞かせる恭介であった。
 
 「あのぅ、お客様?」
 「…」
 「もしもし~?」
 「…」
 「お客様っ!」
 「どわっ!?」
 
 考え事をしていた間、カウンターの前でずっと突っ立ってる形になってたようで、心配して
 店員が呼んでいたが、最後の大声まで全く気付かなかったようだ。
 
 「そんなにメニューが決まりませんか?」
 「あ、ああ、えっと…どうしましょう?」
 
  ぷっw
 
 その女性店員は思わずプッと吹き出し笑いをしてしまう。
 
 「す、すみません。笑ってはいけないのに…」
 「い、いえ。こちらこそすみません。」
 「では、宜しければこのAセットがお手頃でお勧めですが?」
 「あ、ではそれで。」
 「はい、かしこまりました。」
 
 最後はまたとびっきりの笑顔で返す女性店員。
 
 
 
 「恭介っち、遅~い。」
 
 さっさと注文を済ませ2Fの席で待っていた澄香が文句を言う。
 
 「あ、すんません。」
 
 恐縮する恭介。
 
 「突っ立ってないで、さっさと座りなさいよ。」
 「あ、ああ。」
 
 強めな口調で言う都歌沙。言われるがままに2人が座る向かい側に恭介も座る。
 
 「さて、私のマスコット嬢のお花ちゃんが失礼した件のお詫び会を開催したいと思います。」
 
 澄香がその場を立ち、司会っぽい感じで仕切りに入る。w
 
 「…。」
 「…。」
 
 その動作が想定外だったので、都歌沙と恭介は唖然としていた。
 
 「はい、そこの2人、ちゃっちゃと盛り上げる!」
 
 「わ~わ~。」
 「いよっ、山本屋。」
 
  パシッ! パシッ!
 
 「棒読み、禁止っ。ちゃんと盛り上げる事!」
 「はい。」
 「はい。」
 
 そんなやりとりは、注文したのが来るまでの5分も続くのであった。(爆)
 
 
 
 「では、ゆっくりしていってネ。♥」
 
 注文した品を持ってきた店員のゆっくりスマイルを残り香に、3人の前に各種バーガー類が並ぶ。
 
 「さっ、食べよっ。」
 
 そう言うと、澄香は1番に恭介のAセットにあるフライドポテトに手を伸ばす。
 
 「いっただきま~す。」
 
 なぜか都歌沙もその動きに同調するように恭介のフライドポテトをつまむ。
 
 「え、え、え?」
 
 動揺しまくる恭介に澄香が一言。
 
 「これがこの会合の儀式よ。」
 「そうそう。」
 
 都歌沙もそう言って頷きながら更に恭介のフライドポテトをつまむ。
 
 「大丈夫よ恭介っち、ここは私のおごりだから。」
 
 更に恭介のフライドポテトをつまみながら、ニコニコ顔でそう言う。
 
 「おい、このAセットの勘定は俺が出したんだがなぁ。」
 
 ちょっと怒り気味に言う恭介。
 
 「ダメダメ。恭介っちにそういう顔は似合わないぞ。」
 「そうそう。」
 「はぁ…」
 
 そして、恭介のフライドポテトはあっという間に無くなった。
 
 「さて、ここからが本番。」
 「そうそう。」
 
 そう言うと、今度は澄香・都歌沙が頼んだフライドポテトを恭介のトレイに載せる。
 
 「さあ、お食べ。♥」
 「そうそう。」
 「えっと、これは…」
 
 2人がどういう考えでこういう態度を取るのか理解できない恭介。
 すると、さっきまでそうそうとしか言わなかった都歌沙が話し始める。
 
 「さっきも澄香が言ったと思うけど、三千里くんが何かを隠してるのはわかったわ。でも、今は
  その事を聞かない。少なくとも1年間は同じクラスなんだから、いつか私達が信用に値する
  クラスメイトだと思った時は話してね。」
 
 都歌沙から言われたセリフは恭介の心に大きく響く。
 
 「そっか、俺は隠しごとが下手だったのか。」
 
 恭介は2人にそれだけ言う。都歌沙が言った1年の間入れないとは思うが、この学校での
 生活はきっと楽しいだろうな、と思うと自然と笑みがこぼれる。
 
 「うん、いい絵がいだよ三千里くん。」
 「その時を楽しみにしてるよ、恭介っち。」
 
 澄香も優しい笑顔で言う。
 
 (本当は1年もここにいられないだろうが、居れる間はこの空間を大事にしよう)
 
 そう思う恭介であった。
 
 
 
 そして、その笑顔のまま本命のハンバーガーを食べようとした時、
 
   ガッシャ~ン!
 
 1Fから何かが割れるような大きな音がする。
 
 「一体何なの!?」
 
 その音を聞いた恭介達はすぐさま1Fに降りる。
 
  きゃ~!!!
 
 恭介がオーダーを注文した女性店員の声が聞こえるが、その声はどう聞いても叫び声だ。
 
 そして、悲鳴のする店の玄関には血だらけの男が店の正面玄関のガラスドアをぶち破って
 飛びこんできた様子であった!
 
 「何なの、これは!?」
 「澄香、見ちゃダメ。」
 
 そう言うと都歌沙は澄香の目を隠す。都歌沙がその光景に驚きはしてるが、
 大きな動揺は見せていない。
 
 (まさか、この男の怪我の様子は!?)
 
 その男の怪我の具合を見て、恭介の脳裏に浮かんだのは
 
 (刃物による切り傷。しかもただの刃物でない。これは間違いなく刀により切られ傷だ!)
 
 「ついに、私がここへきた本当の目的が表面化してきたか。」
 
 恭介にはさっきまでの柔らかな雰囲気はなく、彼が任務に向かう時の顔になっていた。
 立ち位置からその顔の表情が都歌沙達に見えないんが救いだったろう。
 
 
   -つづく-
 
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Posted at 2010/04/18 23:00:40

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この記事へのコメント

2010年4月19日 0:36
市の名前と駅の名前が…(笑)
コメントへの返答
2010年4月19日 21:45
まんま某物語ですね。(爆)

プロフィール

「ホンダの頭にホンダ」
何シテル?   05/13 16:39
再び色々ありまして、乗り換えです。 2回目のホンダ車でまた白に戻りました。 引き続き宜しくお願いいたします。。♪   一般人からみたらオタク系だと思...
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