恭介のパートナー『
魔耶』のイメージ画像。
まあ、こんな感じの娘と思って下さい。w
第3章 蒼天の剣 5
劉大志の豪邸で夕食と宿泊を済ませた恭介らは、緊張であまり寝れなかった目をこすりながら
起きる。そして、客間の寝室から部屋を出ると、ちょうど劉大志が出掛けようとしていた所だった。
「早上好(おはようございます)、劉大志。」
「哎呀,早上好(ああ、おはよう)。」
前もって教えてもらってた中国語で恭介が挨拶をすると、劉氏は笑顔で挨拶を返してくれる。
「昨日は色々とありがとうございました。」
さすがに、ここからは日本語で話す。w
「夕食もおいしかったですし、寝室も豪華でよく寝れました。」
豪華過ぎて緊張して寝れなかったわ、とは言えず、普通にお礼を兼ねて言う。
「そうですか、それはよかった。」
「もう、正装をされてますが、お出掛けですか?」
「ええ、今日は早朝から視察がありまして。」
「そうですか、ご多忙ですね。」
「私はもう出掛けますので、朝食を食べてからお出掛けするといいでしょう。」
優しく言ってくれる劉大志。この辺が紳士だなぁ、と思う恭介であった。
「ありがとうございます、劉大志。」
「では、私はこれで出掛けますが、『青龍偃月刀』の件、宜しくお願いしますね。」
「はい、最善を尽くします。」
「うむ、では。」
そう言って劉氏は仕事に出掛ける為に家を出る。
それを見送った恭介に後ろから声を掛ける人物が。
「三千里様、朝食の用意が出来ました。」
恭介が振り向くと、魔耶とは違うメイド姿の給仕が。今回魔耶はメイド姿をしていないので
一瞬魔耶かと思ったが、その給仕は魔耶よりの背が低いので魔耶とは違う、とわかる。
「えっと…」
「劉大志の家でお世話係をしている『
林 帆(リン・ファン)』と申します。」
「あ、どうも。三千里恭介です。」
「存じております。では、ご案内します。」
そう言うと、その後は無言で食事の出来る部屋に案内される。
着いた部屋には、小麗さんと魔耶がすでに席に着いていた。
「いつまで待たせるアルか!(怒)」
部屋に入ってきた恭介に対して、開口一番怒号が発せられる。
「あ…どうもすみません。」
「ったく、分かればいいアルよ、分かれば。」
思わず謝ってしまう恭介だが、なぜ怒られないといけないのか?
「まあ、お席に着いてください。」
メイドの帆さんに言われ、しぶしぶ席に座る恭介。
ガツン!
イスに座った途端、恭介の足に激痛が走る!
「痛った~!?」
「静かにするアル!」
痛みで叫ぶ恭介の声にいらつく小麗。
「何すんだ、魔耶。」
隣にいる魔耶を睨む恭介。昨日同様、恭介の足を踏んだようだ。
「別に。」
「別に、って、お前は○尻エリカかっ!?」
魔耶は澄ました顔で平然としている。
「まあいいアルね。帆さん、朝食を持ってくるネ。」
「かしこまりました、お嬢様。」
小麗の方はさっさと朝食にしたいらしく、恭介にかまう様子はない。
一方、恭介は魔耶に足を踏まれた理由をしつこく聞くが、魔耶は運ばれた朝食を食べにかかると
恭介が何を言おうが無視して、食事をする。
いくら怒っても魔耶が意に介さないので、だんだんと怒るのがアホらしくなってきたので、
怒るのをやめ、朝食を食べる事にする。
この後、3人とも食事優先で一言も話をする事なく朝食を食べる。
「承您款待了(ごちそうさま)。」
朝食を食べ終えた小麗は、そう言うとそそくさと部屋を出て行く。
(そっけない娘だな)
そう思った恭介だが、特に興味もなかったので、自分も食事が済むと部屋を出ようとする。
ぐさっ!
「痛った~!?」
今度はお尻に激痛が走り、思わず叫ぶ恭介。
後ろを振り向くと、フォークを持った魔耶の姿があった。
「まさか、お前が刺したのか?」
「そう。」
ぐぐっと怒りがこみ上げてくる。
「ふさけんな、魔耶。何で人の尻を刺すんだよ!?」
今日は魔耶の不平不満を乞う事はしていないのに、何で…と思いながら尋ねる。
「まだ、私食べ終えてない。」
「へ?」
魔耶の返答にキョトンとする恭介。
「まだ、私が食べ終えてないのに、席を立って出ようとしたから。」
「は?」
「食べ終えるまで待って。」
「もしもし…魔耶さん?」
魔耶は、す~っと息を吸い込むと、
「私が食べ終えるまで待って、って言ってるの!」
恭介の耳元でそう叫ぶ魔耶。
「やかましいわ。」
耳元で大声を放つ魔耶に怒る恭介だが、魔耶はそんな事は気にせず残った朝食を食べにかかる。
「…はぁ。」
魔耶が最初に恭介のパートナーになった時の事を思い出す。
「三千里君、今度君のパートナーとなる魔耶君だ。」
I・S・A・Mドイツ支部にて、紹介された恭介のパートナーは意外にも日本人だった。
「ドイツ支部でパートナーが就任するので、てっきりドイツの方かと思いましたが?」
「三千里君は来年日本支部に戻る。ならば、日本人の方がやりやすかろう、とおもってな。」
「言われてみればそうですね。」
「まあ、ドイツ支部では君に合うパートナーがいなかっただけなんだかな。」
「は、何かおっしゃいました?」
「いや、何でもない。」
その後、魔耶を紹介されたが、言葉数が少ない娘だった。
今でこそ、結構喋ってくれるようになったが、それはとある任務がきっかけだった。
その話をしようかと思ったが、魔耶が朝食を食べ終えたようなので、またの機会にしよう。
「恭介様、お待たせしました。」
「ん、では出掛ける準備をしようか。」
「はい。」
そう言って、それぞれが部屋に戻り出掛ける準備をする。
そして、1時間後、邸宅の玄関に支度を終えた恭介達がやってくる。
すでに魔耶は玄関で待っていた。
「待ったかい?」
「いえ、今来た所です。」
そう言う魔耶だが、10分前には来ていたそうだ。
「では、帆さん、短い間でしたがお世話になりました。ありがとうございました。」
「いえ、大したお構いも出来ませんでしたが、そう言っていただけると嬉しいです。」
玄関先で一緒に待っていたメイドの帆さんが短く会釈をし、日本流でお別れの言葉を言ってくれる。
いいメイドさんだ、と思う恭介であった。
そうこう言ってると玄関にBMWの7シリーズがやってくる。
そして、そのBMWを指差し、メイドの帆さんが、
「このクルマで北京駅までお送りします。」
と言う。
言われるがままに、そのBMWに乗る恭介と魔耶。
「では、我が主人に代わって『青龍偃月刀』の奪取をお願いいたします。」
「わかりました、最善を尽くします。」
そう言って帆さんを別れた恭介らは、BMWで北京駅に向かうのだが、やたら飛ばすのだ。
確かに、BMW7シリーズは一昨年新型にスイッチされ、キーコンセプトながら最近の機能を
満載したハイテクサルーンである。その頂点に立つ750iが搭載するV8・ツインターボは
407馬力を誇るハイパワーで、運転する楽しみはもちろん同乗者にも快適な空間を提供する
クルマである。
だが、そのクルマをサーキットばりで運転するのはちょっと賛同出来ないな、と思いつつ乗って
いたが、一応節度を持って運転しているし、歩行者が多い時は無理な運転はしないので、
一言言おうかとも思ったが、昨日乗ったレンタカーに付いた運転手なんか酷いもんだった。
それに比べたら、全然ましである。いや、飛ばす事以外は日本のタクシードライバーの中でも
上質な方だと思う。まあ北京駅までそんなに距離はないので、ドイツ支部時代でも乗った事の
なかったBMWを満喫しようと考える恭介であった。
そんなこんなでBMWは無事に北京駅に到着する。
「運転手さん、ありがとうございました。」
「…。」
返事はない。そっか、運転手さんは中国人だから日本語じゃわかんないか、と思った恭介は
「司机先生,谢谢。」
あらかじめメモっておいた中国語を探してお礼を言う。
「不客气(どういたしまして)。」
そう言って運転手はかぶっていた帽子を取って、恭介の方へ振り返る。
「ああああ!?」
その運転手を見て、恭介は驚きの声を出す。
「私も一緒に上海へ行くアルっ。」
BMWの運転手の声は可愛い女性の声だった。
「な、何で小麗さんが!?」
そう、BMWを運転し、恭介と一緒に上海へ行こうと言ったのは、劉大志の娘・小麗であった。
-つづく-