2008年10月04日
第2章 第2次ペトグランチェスト会戦 5
「クルルギーレ大司教、我が軍は敵異教徒軍に対しかなりの戦果をあげつつあります。」
「うむうむ、よき事じゃ。ここらで一気にとどめを刺してはどうじゃ?」
「はっ、では一気に攻勢をかけるべく艦列を整えます。」
3発の「パルゼウスブラスター」の放射でエルディア帝国軍に対して予想外の戦果をあげ
指揮も高まっていた。そこで、ここで一気に総攻撃をかけ完全勝利を目指すべく
準備をしていた。
(ふっふっふっ、これで次期総大司候補に名乗りをあげるチャンスだ)
クルルギーレは笑いが止まらなかった。
そして、総攻撃の準備が整った。
「よし、これより全面攻勢に出…って何じゃ、あれは?」」
全面攻勢をかける、と言いかけた所で艦隊側面で不思議な艦隊運動をする第14艦隊が気になった。
「な、何じゃ、あの妙な動きをする艦隊は?」
「大司教様、あれは敵第14艦隊のようですな。」
「んな事はわかっておるわ。つくづくイラつくヤツやじゃ。」
ここで一気に決着をつけるべく正面への総攻撃の準備に集中していた所にこの動きをされたものだから、クルルギーレもそちらが気になって仕方なかった。
「ハラピー司令、うまく敵の側面を回り込めそうです。」
「ああ、第14艦隊の陽動が実にうまい。さすがパクリマシューレ提督だ。」
実はハラピーは第8艦隊の出撃許可をもらってすぐ、第14艦隊の連絡を入れていた。
「では適当に側面を突く振りをすればいいのだな?」
「はい、艦艇数はそう多くない提督に実際に攻撃をかけてもらうには結構なリスクを伴ってしまうので、いかにもこちらから隙を窺うぜみたいに動いていただくだけでかまいません。」
「…うむ、わかった。私なりの艦隊運動をお見せしよう。」
「提督のお手並み拝見させていただきます。」
「オイ、貴官は階級は上でも経験数では貴官にひけは取らんぞ。まあ、まかせろ。」
「はっ!」
第14艦隊司令官パクリマシューレ少将は多くを語らずともハラピーの意図を理解したようで、簡潔に通信を済ませ艦隊を動かし始めた。
「さ~て、敵さんにこちらをアピールするようにうまく踊れよ。」
第14艦隊は側面を行ったり来たりして「こっちも攻めるぞぉ」って動きをちょこまかしギルドラドの注意をこちらに向けさせた。
「え~い、うっとおしいヤツらじゃ!ペリア司教補、あそこに1発ブラスターをぶち込め!」
「え~!?大司教様、まだエネルギー充填し始めてから10数分しかたってませんが…」
「あのヤツらが何をしようとしているのかはわからんが牽制にはなるだろう。」
「ですが…」
「かまわん、やれ!」
「…わかりました。」
こうしてエルディア艦隊中央部に向いていた「パルゼウスブラスター」を急遽側面の第14艦隊に向ける事になったのだが…。
「何だって!?今からブラスターを撃てだとぉ?」
「まだエネルギー充填は20%強しか貯まってないんだぞ。」
「上層部は何を考えてるんだ。」
「わしらはいつもコキ使われるばかりだ。」
パルゼウスブラスターの乗組員はこのありえない命令に不平不満を噴出させていた。
「バカモン、大司教様の意思に背くヤツはこうしてやる!」
班長らしき人物が文句を言った兵士に鞭を振りかざす。
「(くっそぉ、いつもわしらは犬以下の扱いだ)」
「(もうがまん出来ん!)」
「(しかし、どうするんだ?)」
「(ムカつくあの班長をこいつでふん捕まえてちまおうぜ!)」
その様子を遠くで見ていた他の兵士が小声で相談をし、大袋を用意してきた。
「あ、班長。あれは何でしょうか?」
「ん、何だ?」
思わずあさっての方向を向かされた班長をここぞとばかりにその大きい袋に詰め込んで周りの全員で袋の外からぼっこぼこに殴りまくった。
「い&$%た>‘@#+Q$い&?…」
そして数分御ピクリとも動かなくなった。
「もう、やってられるかぁ!」
「我々の本当の敵はエルディアの奴らじゃない。わしらを奴隷のように使う上層部の連中だぁ!」
「ヤツらにこの砲をぶちかまして、その功績でエルディアに助けて乞うてもらおう。」
とんでもない展開になった。
「照準、ギルドラド艦隊。撃ってぇ~!?」
兵士の中のリーダー格バルミシア・グレンツ少尉が中心となりバルゼウスブラスターを占拠。更に30%分貯まった高エネルギー砲をさっきまで味方だったギルドラドに向けてぶっ放した!
「大司教様、バルゼウスブラスターがこっちを向いています。」
「何じゃと!?」
驚くのもむりはない、エルディアに向けて撃つはずのバルゼウスブラスターが
味方である自分の方に向いているのだから。
「エネルギー砲、来ますっ!」
「各員、衝撃に備えよ!」
そうは言ったが時すでに遅し、であった。
「うわぁ~~~」
「ぎゃぁ~~~」
充填率30%といえども普通の主砲の数倍にもなろうかという威力のエネルギー砲が撃たれたのだから、たまったモノではない。
「…損傷は?」
「約100隻ほどが沈みました…。」
大司教の怒りが頂点にたった。
「くっそ~、使われ者の分際で権威ある朕に歯向かいおって!」
だが、部下の謀反への怒りを問題にしている暇はなかった。
「大司教様、エルディア艦隊がこっちに向けて突進してきます。」
「何じゃと!」
第14艦隊の動きとバルゼウスブラスターにいる部下の反乱のおかげでほとんど攻撃を受ける事無くギルドラド本陣に突入してきた第8艦隊。
「何だかわからんが今がチャンス、一気に特攻せよ!」
第14艦隊の陽動作戦はあらかじめ用意していたが、ギルドラド内での謀反まではさすがに予想できなかったハラピー達であったが、このチャンスを逃す手はなかった。
「大司教様、敵艦隊が少数の艦艇を壁に特攻をかけてきました!」
「小癪な、けちらせ!」
「はっ。全艦敵の戦闘に砲火を集中。敵中央に大穴をぶち開けろ!」
第8艦隊は前衛に200隻の艦艇を密集体形に陣させそれを壁にしながら一気にギルドラド指揮艦隊に向けて進軍してきたのだった。
「ハラピー閣下、前衛の艦艇に砲火が集中。壁が破壊されそうです。」
「よし、当初の予定通り艦隊を左右それぞれに展開小さく挟み込むように動け!」
ギルドラド指揮艦隊の攻め方は間違っていなかった。
エルディア第8艦隊が中央突破を掛けるべく中心に200隻の艦艇を密集させあたかも
針のようににして攻めてくればその針に砲火を集中し更にその勢いで中央部にも相応の損害を出せる、はずだった。
だが、中央に砲火を集中させ攻撃した攻撃が最終的に倒したのはその針の部分の200隻のみであった。
その200隻に視線を集中させその間隙に本陣は左右に分かれる。
すると、中央には先ほどの200隻の針となる艦艇だけであとはすでに移動して何もいない中央をただ突き抜けるだけだった。
前進速度はそのままでちょっと左右に攻撃をかわして隙が出来たギルドラド指揮艦隊に砲火を集中させた。
簡単にいうと合気道の原理を艦隊運動に発展させた感じだ。
「よし、ギルドラド指揮艦隊は浮き足だったぞ。全艦撃って撃って撃ちまくれ!」
もう、こうなるとギルドラド指揮艦隊の戦列は維持できないレベルまで打ちのめされた。
そして、指揮艦隊の機能が維持できなくなったギルドラド全艦隊に指揮の統一性なんど期待できる訳がなかった。
バルゼウスブラスターの乗組員の謀反がおこる要因は当然ギルドラドという国家の問題点が浮きぼりになった結果でもあった。
宗教国家が首脳部のみが利益をむさぼる政治に走った結果、人民の不平不満がいつ爆発してもおかしくない状況だったのだ。
それがここで爆発し始めただけの話だった。
頼りのバルゼウスブラスターも使えず更に指揮系統がバラバラになったギルドラド軍は、
その後ハラピーら以外の第4艦隊以下の『蒼龍師団』の戦場到着で雌雄が決した。
銀河西暦4987年(帝国歴687年)9月25日。
ここに「第2次ペトグランチェスト航路会戦」はエルディア軍の逆転勝利で幕を閉じた。
-つづく-
次回は10月10日の予定です。
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2008年09月28日
第2章 第2次ペトグランチェスト会戦 4
銀河西暦4987年(帝国歴687年)9月24日。
エルディア帝国とギルドラド惑星共同帯との戦いは佳境に入っていた。
「やむをえん、第8艦隊を前線に投入。敵の高エネルギー砲をぶちのめせ!」
これまでかたくなに第8艦隊を後方に置いていたギルフォード総司令も戦いに勝利せねば
確執うんぬんではないと悟り、前線への投入を指示した。
「遊兵をいかに作らぬよう作戦をたてるかが大事なのだ。」
「最もです。まあ、さすがにあの総司令もそうこう言ってられなくなったと言う事でしょう。」
艦隊を移動し始めた頃艦橋ではハラピーとグランドーレの2人がよもやま話をしていた。
「さて、我が軍のこれからの作戦だが、何か意見はあるかね、参謀長?」
「そうですね、とりあえず右翼の第15艦隊が手薄です。あそこから敵の侵入をされては
我が『蒼龍師団』が分断される恐れがあると思われますので、第15艦隊の更に右翼に
陣を設けるのがよろしいかと。」
「うむ、そうだな。まずはそれで全艦隊に指示を入れてくれ。」
「はっ!」
第8艦隊は右翼第15艦隊の更に右翼に艦隊を展開した。
これによりエルディア軍の両翼を広げ壁は厚くないが半包囲出来る礎が出来た。
(さてと、次の高エネルギー砲発射までに潰せるかが勝負だな。)
ハラピーの思案が整っていく。
「全艦に告ぐ。これより我が第8艦隊は総司令の命によりとっておきの戦力として戦線に参加する事になった。諸君らの手腕に期待する。」
そう艦内放送をかけ、部下を激励する。
「ハラピーは何をいっておるのだ?」
「自分をそこまで英雄振りする気か!?」
その艦内放送は総司令部にも伝わっていたが、いささか過大超過した演説に嫌気を感じるギルフォード総司令達であった。
「お兄ちゃ…いえ、ハラピー司令、今のは少々言いすぎではありませんか?」
「ここまでお預けを喰らってたんだ。部下の士気を上げるにはあれくらい言っておいた方がいいだろうと思ってな。」
「でも…」
「心配するな、総司令部より睨まれるのは今更ではない。これから始まる激闘に際して部下の士気を上げて置く為なら上司から悪者になってされてもかまわんよ。」
さっきの艦内放送の内容で不安を感じた副官マヤ・アルジェリーニ大尉がハラピーに話しかけていた。
「もぅ。ま、いいわ上司に睨まれようがどこまでもついていてあげるから。」
「頼りにしてるよ。」
「うん。」
お互い意志の疎通はばっちりのようだ。
その後、第8艦隊の将官らは旗艦アンヴァイセンの会議室に集まっていた。
これからの作戦行動に対する会議の為だ。
「忙しいところすまんな、諸君。では早速これからの作戦行動についての会議を始める。」
そういうとハラピーの懸案していた作戦の説明と各分艦隊への作戦行動用の艦隊運用システムの入ったデータファイルが配られた。
「つまり、シェーンハイト隊を中心にあの高エネルギー砲を叩くのが目的なのですね。」
第2分艦隊指揮官シャロン・ハーデルガイム准将が確認も含めてそう聞いてきた。
「そういう事だ。よって、今作戦は艦載機の活躍が大きなウェイトを占める事となる。
そして、その為に各艦は十分なサポートを忘れないようにしてもらいたい。」
「平たく言えば、艦隊自体が敵の囮となるように仕向けろ、という事ですか?」
あまりしゃべらないフリードリッヒ・サージェント少将が話をしてきた。
「そうとってくれてかまわない。」
ハラピーがそう言うと室内がざわつき始める。
「司令官、艦載機は1人乗りですが艦艇は1隻あたり約1000人はいるのですぞ。
そのやり方は少々犠牲が多くありませんか?」
つまり、サージェント少将はここは艦載機主体の攻撃ではなく艦砲射撃で応戦した方がいいのではないか、という考えの元に話をしてきていたのだった。
「うむ、少将の意見は正しい。だが、作戦を変えるつもりはない。」
「では、なぜそのような指示をお出しになったのかその真意を教えていただけませんか?」
納得がいってないようなので反論してくるサージェント少将。
「大丈夫、兵を無駄に死なせない作戦は考えてある。それについては参謀長から説明をしてもらう。」
そしてグランドーレ参謀長より今作戦の秘密を教えてもらう将官達。
「なんと!?」
「それは大胆!?」
「もったいないのでは!?」
当然、驚きの返事が返ってくるが
「…わかりました。司令官の指示に従いましょう。」
「感謝する。」
サージェント少将はその作戦の意図が理解できたようで、それ以上は意見を言ってこなかった。
「他に意見や質問がある者は申してくれ。」
「…。」
「…。」
「…特にないようなので、これで作戦会議は終了とする。各員は作戦準備に入ってくれ。」
「では解散!」
こうして作戦会議は終了した。
「ねえ、ハラピー?」
会議終了後、シャロンがハラピーに話しかけてきた。
「ん、何だシャロン?」
「随分大盤振る舞いな作戦考えたわね。」
「あ。アレの事か。」
「一応アレならサージェント少将も理解は出来ないけど納得はするって様子だったわね。」
「他にも作戦はあるかもしれないが、シェーンハイトに活躍の場を作りつつ今会戦に勝利するには、アレが1番人的被害が少ないと思ったんでな。」
「まあ、いいわ。でもこの作戦、利子は高いわよ。」
「何に対してだ?」
「…私に、よ。☆」
「…。」
そう言うとシャロンも作戦準備の為、自分の艦に帰っていった。
(やれやれ、あとが怖いな…)
ハラピーの考えた作戦とは?
いよいよ、第8艦隊も戦いの火ぶたが切って落とされる!
-つづく-
次回は10月4日の予定です。
Posted at 2008/09/28 15:02:30 | |
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2008年09月22日
第2章 第2次ペトグランチェスト会戦 3
「くっ、第2波の攻撃を喰らったか。」
「総司令官閣下、これは厳しい展開になるやもしれません。」
「あのエネルギー砲を潰さねば後々に響くのは間違いない。」
さすがに総司令部でもこの状況は双方の潰し合いの可能性が高くなり、
仮にここでの勝利が得られても損害はかなりのものになるのは必至であった。
「総司令、後方の第8艦隊を使いましょう。」
「あいつを使うのか…。」
「今はそう言ってる場合ではありませんぞ。」
「し、しかし…」
総司令官バーミリアン・ギルフォード上級大将は名うてのスチュアート・ヘルグランダーナ元帥派、すなわち反ファルコム・アルジェリーニ神公爵派なのだった。
ハラピーは言うまでもなくアルジェリーニ神公爵派なので、自身の部下とは言えあまり武勲を立てるのを良しと思ってなかったのだった。
だが、ギルドラドがあのような兵器を使ってくる以上、それにこだわって被害を拡大させる訳にもいかないので、そろそろ腹をくくる時が来たのかも知れなかった。
「総司令官、第8艦隊より入伝です。」
「何だと!?」
絶妙のタイミングで通信が入ってきた。
「ハラピー閣下、そろそろ総司令部にお伺いを立ててはいかがでしょう?」
「この時にか?」
「状況は増援を必要としている時です。ありがたみを持たせる意味では今が1番
恩を着せれる時と判断します。」
「グランドーレ少将、お主もワルよのうぅ。」
「いえいえ、閣下程ではございませんよ。」
「ちょっと、待て。俺はそこまで腹黒か?」
「あははは、冗談ですよ。」
そんなボケとツッコミをかましながら、ハラピーは総司令部に通信を掛けた。
「総司令官閣下、今の所後方から敵が来る気配は全くありません。
何か当方で手伝える事は御座いませんでしょうか?」
「くっ、今の所用事はない…。」
「そうですか。」
(ふむふむ、どこまで我慢できるかな?)
「本当に大丈夫ですか?」
更に念を押してみるハラピー。
「ないわ!」
「そうですか。」
そういうと通信は切れた。
「意外と我慢しましたね。」
「そうだな。でも状況によっては指示がなくても動かねばならんかもな。」
「はい。今はいつでも動けるよう準備をしていかせます。」
「そうしてくれ。」
ハラピーは貴下の艦隊に進撃準備を開始させた。
「実にいやらしいタイミングで通信をかけてきたな。」
「偶然ではありませんか、総司令官閣下?」
総司令部ではギルフォード上級大将とゴルドハウゼン大将がさっきの件で話をしていた。
「いや、あれは恩を着せようとしてるに違いない!」
「閣下、今はそうこう言ってる場合ではありませんよ。」
「全艦、砲撃の手を緩めるな!」
不機嫌な様子のまま指示を出すギルフォード上級大将。
(このままではいかん…)
そう思ったゴルドハウゼン大将は、そっとその場を離れ極秘にハラピーの所へ通信をしてきた。
「何、ゴルドハウゼン大将から通信が入ってきただと?」
「はい、総参謀長のみとの事です。」
「どう思う、グランドーレ少将?」
「総参謀長はしがらみより戦果を優先したという事でしょうね。」
「なるほど。」
「では、通信を繋いでくれ。」
「はっ!」
ゴルドハウゼン大将は特に上級貴族との繋がりはなかった。今の所はヘルグランダーナ元帥の所でやっかいになってはいるがそれに固着するつもりもなかった。
自身も権力の獲得に密かに暗躍していたといってもよかろう。
「やぁ、ハラピー中将。」
「どうしました、総参謀長殿?」
「い、いや…貴官はこの状況をどう思う?」
「は?」
いきなりのその質問の驚くハラピーだったが、一応思う所の答えを告げる。
「こなままですと、双方被害が増すばかりで我が方が勝利したとしても、ここペトクランチェストには帝国軍の屍がかなり増えてしまうと思います。」
「…そうか。やはり、な。」
ゴルドハウゼンも正味の見解を示してみれば同じ意見だった。
「総参謀長殿、私も帝国軍の臣下。総司令官閣下の指示には従いますが、
自軍の勝利の為には尽力を惜しまない所存です。」
「そうか、そうだな。貴官の言う通りだ。」
「そこで、総参謀長殿にご提案が。」
ハラピーはここでゴルドハウゼン大将をうまく丸めこむ事に成功する。
「では神公爵様に宜しく申しておいてくれたまえ。」
「はい、しかと申しておきます。」
こうして通信は終わった。
「中将もお人が悪い。神公爵様にその事を申すのですか。」
「言う必要はないだろう。何も言わない方が総参謀長の為でもあるからな。」
「では、準備を続けますね。」
「ああ、そうしてくれ。」
「総司令官閣下。第8艦隊を前線に投入させます。」
「総参謀長、何を言っているのだ?」
「今彼らの艦隊は貴重です。」
「ヤツに武勲を立てさせるではないか。」
ギルフォード上級大将の鼻息が荒い。
「閣下。モノは考えようです。彼らをこき使うのです。」
「どういう事だ?」
ここでゴルドハウゼンはハラピーからの助言をさも自分の言葉のようにこう言った。
「閣下、彼らを最前戦に投入して攻撃に参加させます。そうすると次に発射される敵の高エネルギー砲の餌食になるのは彼らです。閣下の艦隊は被害を被ることなく戦線で猛威をふるえばいいのです。」
「なるほど。彼らを盾にするという訳だな。」
「その通りです、総司令官閣下。」
「わかった、では早速彼らに前戦に出てくるように命令せよ。」
「はっ、そう指示します。」
「ハラピー閣下総司令部より前線へ出てくる旨の指示が出ました。」
「よし、きた。」
ハラピーとグランドーレの思惑通り前線参加の許可がおりた。
「よし、第8艦隊出撃!」
ようやくハラピーが前線に投入される事になった今会戦。
ギルドラド軍の優位もここまでか!?
-つづく-
次回は9月28日の予定です。
Posted at 2008/09/22 18:54:10 | |
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2008年09月16日
第2章 第2次ペトグランチェスト会戦 2
ギルドラド軍が艦載機を発進させ、局面は第2段階へと移行した。
そしてその動向を客観的に検討していたハラピー貴下の第8艦隊であったが、
「第8艦隊は、後方から敵が来た時を想定し後方の守りを順守せよ。」
との総司令部の指示があった為、これまで全く出番はなかったのだった。
よって、艦橋で両艦隊の動きをデータ収集したりしていたが、今の所それを有効活用する場面が来ていなかった。
「我が艦隊はまだこのまま待機ですか?」
第1分艦隊指揮官フリードリッヒ・サージェント少将がおあずけを喰らっている犬のセリフのごとく言う。
「残念ながら、我々は後方待機のまま変わっていない。」
ハラピーは念のため総司令部に確認を取ってはみたのだが、その場で待機の指示のままであった。
「遠路はるばるここまで来ておいて火事場見学というのは私の趣味ではないな。」
サージェント少将と入れ替わるように通信に入ってきたのは第2分艦隊指揮官シャロン・ハーデルガイム准将であった。
「まあ、気持ちはわからんでもないがここはガマンしてくれ。」
「コーヒーをすすりながら会話されてはやる気も削がれるわ。」
ハラピー及びグランドーレ少将の2人は今は表立っての出番がないので、コーヒーをすすりながら戦況を見つめていたのだった。
最も、ハラピーの性格は昔からの仲でそういうもんだと知っているので、
このグチは特に腹がたっての言動というモノではなかった。
「出番はあるのだな、ハラピー?」
「当然。今1番ありがたみが出る所はどこか模索している所だ。」
「食えん奴だな。」
「ま、もうちょっと待っててくれ。」
「了解した。」
こうしてシャロンとの通信は終わった。
「さて、艦載機の戦いに移行したとはいえ、最終的にはあのデカブツ(パルゼウスブラスター)を静かにさせないとやっかいになるな。」
「そうですね、今敵はあの高エネルギー砲のエネルギー充填の為の時間稼ぎで艦載機を発進させているはず。第2波が発射されればおのずとエネルギー充填時間が算出されるので、その後の作戦行動が立てやすくなるでしょう。但し、味方の犠牲はやむを得ませんが…。」
(ほほぅ、同じ見解をしていたか))
ハラピーも参謀長のその洞察力には驚いていたが同時に自信も深まっていった。
なぜなら、考えが同じならある程度任せても問題がないと判断できるからだ。
「では、参謀長。ちょっと席を外すので第2波が発射されたら連絡をくれ。」
「ヤー・イッヒ・プラジナント!」
その後艦載機決戦は一進一退の攻防を呈していた。
先手を取られた分前半は優位だったギルドラドの艦載機群も次第に数で勝るエルディア艦載機群に押し返されていた。
「パルゼウスブラスターのエネルギー充填はまだなにか!?」
「あと10分で終了であります、大司教様。」
「本当に1時間もかかるようだな…」
「エネルギー充填が完了したら、艦載機を撤退させろ。」
「はっ!」
艦載機での戦闘にシフトさせた理由はまさにハラピーらの予想通りであったが、
事実そろそろ艦載機同士の戦いがやばくなりそうだったので、これはこれで問題はなかったと思うクルルギーレ大司教だった。
「エネルギー充填、完了しました。」
「よし、艦載機を下がらせろ。そして、敵艦隊中央部に1発デカイのをお見舞いしてやれ!」
「はっ!」
パルゼウスブラスター第1波発射から70分かかって第2波が発射された。
「総司令官、ギルドラドからの高エネルギー砲第2波、来ます!」
グァギャガ~ン
「戦艦プラメテウス・トロメテーヌその他計800隻、消失。」
「ぐぅ~、おのれぇ、ギルドラドの奴らぁ~!?」
「総司令官、どうします?」
「一体、情報部は何をやっていたのだ?あんな兵器の情報を見落としているとは…。」
総司令部では今回の戦いにおいて情報部の情報収集能力の低下を呪い始めていた。
一方、しばらくの間司令部をパスツール・グランドーレ少将に任せたハラピーは
第2分艦隊指揮艦にいるじゃじゃ馬指揮官と秘匿通信を行っていた。
「色々と忙しくてなかなか可奈氏をする時間がなかったな。」
「今は戦闘中よ、ハラピー。不謹慎ではなくて?」
「もうしばらくは大丈夫だろうと思う。」
「そう…。」
そしてちょっとの間の間をおいてシャロンから話が再開される。
「元気だったようだな、安心したよ。」
「あ、ありがとう。ハラピーからそんな言葉が出るとは思わなかったな。」
「おい、そりゃどういう意味だ?」
「そのまんまの意味よ。」
「…ぷっ、あはははは。」
「なぜそこで笑うのよぉ?」
「だってさ、相変わらず変わんないなぁ、と思ったらなんか可笑しくてさ。」
「…、もう。」
1年前のパルメシアクーデターの後、シャロンは司令部付きの職務に転属していたが、
本人曰く、「私は現場が性に合っている」との通りデスクワークでイライラが募り
ひと騒動あったと聞いていた。
今はギルドラドとの総力戦にあたり使える戦力はとにかく使う主旨で現場復帰したシャロンであったが、やはり現場が似合うようで生き生きとしていた。
「まあ、これから我々の出番が来ると思うので、がんばってくれよ。」
「わかったわ、この1年のうっぷんを晴らさせてもらうわ。」
(うん、これは期待大だな)
いよいよ本領発揮できる役者が揃えれたハラピーもこれからの戦いに向けて
生き生きとしていた。
そこに、グランドーレ少将から連絡が入る。
「司令官閣下、第2波が発射されました。」
「そうか。ではこれから戻る。」
ハラピーの気合も最高潮に達しようとしていた。
「どうだった、時間は?」
「はい、多少の誤差はあるでしょうが65~70分と思われます。」
「そうか、少将が予測していた時間とだいたい合っていたな。さすがだ。」
「恐縮です。では、そろそろ準備を始めていきましょうか?」
「ああ、そうしてくれ。私もそろそろアクションを起こすとしようか。」
現在の両軍の状況は、
<エルディア帝国>
第4艦隊 ・・・ 3100隻
第6艦隊 ・・・ 2700隻
第8艦隊 ・・・ 3200隻
第14艦隊 ・・・ 1800隻
第15艦隊 ・・・ 1000隻
計 9300隻
<ギルドラド惑星共同帯>
計 8700隻
これまでは「パルゼウスブラスター」によってギルドラド軍が優位に戦っていたが、
これまで後方で待機していたハラピーら第8艦隊が、いよいよ行動を開始するのであった。
果たして、第2次ペトグランチェスト会戦はどういう結末を迎えるのか?
それは、神のみぞ知る事であった。
-つづく-
次回は9月22日の予定です。
Posted at 2008/09/16 19:24:52 | |
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2008年09月10日
第2章 第2次ペトグランチェスト会戦 1
「お~っほっほっほ。いい感じざますね。」
「はい、クルルギーレ大司教様。我がギルドラド軍が高エネルギー砲を持ってるとは思ってなかったでしょうから、今頃は慌てふためいているはずです。」
「うむ、この機を逃すな。攻勢に転じよ。」
「はっ!」
今回のギルドラド大遠征団最高顧問クルルギーレ大司教は笑みが止まらなかった。
先の戦いがあった1年前から、ギルドラド軍はエルディア帝国軍に対抗すべくこちらも大量破壊兵器を持つべく試案を重ねていた結果、エルディア軍の持つ1隻の艦に注目した。他でもないハラピーの乗る艦「アンヴァイセン」である。
「あの巨大戦艦と同等の艦が我がギルドラドでも建造できないのか?」
1か月かけて想定される構造と建造期間を算出した結果、
「今は巨大戦艦は必要なし!」との事だった。
それもそのはず、今回注目したのは巨大戦艦ではなくその巨大戦艦の持つ高エネルギー砲「ドラゴンキャノン」が要注目だったからだ。
そして、今回の戦いにどうにか間に合わせたのが、ギルドラド製高エネルギー砲
「パルゼウスブラスター」であった。
出力はほぼ「ドラゴンキャノン」に匹敵する破壊力を持つ事が出来たのだが、1つだけ問題点があった。
「何だ、今のは?」
「総司令官閣下。ギルドラドも第8艦隊のあの艦と同様の高エネルギー砲を所有しているという事に思われます。」
「んなモノは見ればわかる!要はあれに対抗するにはどうするのか?という問題だ。」
第4艦隊旗艦メックラーダ艦橋では総司令官バーミリアン・ギルフォード上級大将と総参謀長アウグスト・ゴルドハウゼン大将がこの問題に対峙していた。
「あのエネルギー砲についてハラピー中将に聞いてみますか?」
ゴルドハウゼン大将がそういうと、
「いや、余計な事はせんでよい。それより数の上では我が方が優位。そのまま押し込め!」
「はぁ…」
(何だ、部下に聞くのはプライドが許さないのか?)
そんな詮索を感じながらもそれ以上の発言は控えたゴルトハウゼンであった。
「ほほぅ、あんなモノを用意してたとはね。」
第8艦隊旗艦アンヴァイセン艦橋でもギルドラド側の放った高エネルギー砲を確認出来た。
「どうもあの兵器が今回の戦いにおいてギルドラド軍のとっておきのモノのようだな、参謀長?」
「まあそんな感じでしょうが、そう悲観するモノでもないでしょう。」
「お?言うねぇ。では参謀長のご意見を聞かせてもらおうかな。」
まだパスツール・グランドーレ少将の人と成りがわかってないハラピーはこういう会話からその性格等を把握すべく質問をかけてみた。
「そうですね。ゴラゴンキャノンもそうですがあの高エネルギー砲については発想自体はそんなに難しいモノではないはずです。この艦も一見すごそうに見えますが、要はそれまでの戦艦を拡大したようなモンですからね。」
そう、この戦略艦アンヴァイセンは特別難しい建造システムは実はないのだった。
従来の戦艦を1・5倍大きく作り空いたスペースにドラゴンキャノンと大艦隊を指揮できるコンピューターシステムとモノポールエネルギーシステムを付けくわえただけといってしまえばいいのだから。ただし、その各機構自体はかなりの難易度のモノではあるが…。
「その中で我が方のドラゴンキャノンに着目したのはさすがといえましょう。ただし、ギルドラドではモノポールエネルギーの原材料・モノポール鉱石はないはずなので、エネルギー充填には従来のものを使用していると予想されます。そうなると我々がドラゴンキャノンを発射するのにかかるエネルギー充填時間より明らかに所要時間はかかるはずです。その所要時間がかかればかかるほど我が方には優位な材料となるでしょう。」
(こいつ、かなりの切れ者だな!?)
ハラピーもその洞察力にはただただ驚く以外になかった。
「何じゃと!? エネルギー充填に1時間もかかるのか。」
「は、はぁ、そのようで…。」
クルルギーレ大司教はその報告を聞いてこれまでの高揚した気持ちが半減していくのは肌で感じていた。
「そんなにエネルギー充填に時間がかかっては意味がないではないか。」
そう、先で言っていた問題点とは、この高エネルギー砲を発射する為のエネルギー充填にかかる所要時間が1時間と長い事なのである。
確かにバルゼウスブラスターの破壊力は驚異になる。だが、その脅威が連続して行えないとなると相手にかけれるプレッシャーがあまりないのである。そう、逆に言えばそれが敵から標的になてしまうのだ。
「くそ~、エルディアの奴らにそれを悟らせてはならぬ。参謀長!」
「はっ、お呼びでしょうか?」
「アレをまたいつでも撃てると思わせるように錯覚させるようにせよ!」
「はっ、では一旦艦載機での攻撃で誤魔化しますか。」
「うむ、そうしてくれ。」
「では、指示します。」
「敵艦隊より艦載機の発進を確認!」
「ここで近接戦闘だと。」
「どうします。総司令官閣下?」
「まずは艦砲射撃で蹴散らせ。その間にこちらも艦載機を発進させよ。」
「「ヤー・イッヒ・バルジオス・ギルフォード!」
こうして戦いは第2段階に移行していった。
-つづく-
次回は9月16日の予定です。
Posted at 2008/09/10 08:29:23 | |
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