2008年06月20日
第8章 カピストルーラ会戦 1
銀河西暦4986年(帝国歴686年)9月3日。
エルディア帝国と辺境銀河連合との国境付近の一角カピストルーラ星域にて、
エルディア軍の偵察衛星から所属不明の艦艇を多数発見したとの報告がもたらされた。
「早速、お仕事が出来ましたね。」
「そうだな、敵がいなければなおよかったんだがな。」
新型偵察機エア・クンデンを駆るローゼンバトラー隊は早速辺境銀河連合の国境付近の1つであるカピストルーラ海域にて辺境銀河連合の艦艇を発見したのだった。
「やはりおいでなすったか。」
「総司令官閣下、いかがなさいますか?」
「当然、迎撃せねばばなるまい。」
「では、ご指示を。」
「全艦、翁形陣にて敵艦隊に備えよ。」
すでに先行情報で辺境銀河連合が動きを見せているのは察知さいていたが、国境の3か所のどこから攻めてくるかについては偵察隊次第であったが、本体がいるカピストルーラ海域でお目見え出来たのはある意味運がよかったのかもしれない。
「敵艦隊、レーダーにて発見!」
ついに敵艦隊のお出ましである。
「敵艦隊数およそ6000隻です。」
「6000隻だと!?」
敵艦隊がどれだけ来るかはこちらに近づくまではわからなかったが、まさか6000隻も動員してくるとは思わなかった。
「我々がレーダーで見えるだけで6000隻か。これはやっかいだな。」
「伏兵がいる可能性も含め下手をすれば10000隻いる可能性も加味せねばなるまい!」
「司令、どうします?」
参謀長の視線が総司令官エルメストラーデ大将に注がれる。
「ふふふ、おもしろい!」至って冷静であった。
その総司令官の堂々たる様子で一同の動揺はかなり軽減された。
「では総員戦闘配備!」
エルディア帝国軍2個艦隊&ハラピーらがいる第18艦隊の計8000隻VS辺境銀河連合艦隊6000隻との壮絶な戦いの火ぶたが切って落とされた。
「打てぇ!!!」
翁形陣に展開したエルディア艦隊が辺境銀河連合艦隊に向けて集中砲火を浴びせる!
「当艦隊は左翼に攻撃を集中させる。ドラゴンキャノン発射用意。」
エルディア艦隊の左翼に展開していたハラピー率いる第18艦隊は左翼から敵の進軍を抑えるべくドラゴンキャノンによる切り崩しを仕掛ける。
「ドラゴンキャノン発射!」
巨大エネルギー砲が辺境銀河連合艦隊左翼に突き刺さる!
「よし、敵がひるんだ隙を突く。各艦所属の空戦隊を発進させよ!」
エルメストラーデ大将の命で戦闘は第2段階に移行していく。
「いよいよ出番が来たわね。」
「行くわよ。」
「がんばりましょう。」
「シェーンハイト隊に我々のお手本をお見せしようではないか。」
第18艦隊所属になったザフィーラ・ベルギノーゼ中佐率いるシェーンハイト隊及びクルート・サガス中佐率いる空戦隊が意気揚揚と発進していく。
「ハラピー司令、順調にいってますね。」
「ああ、今の所は、な。」
優勢に進んでいる攻撃にもかかわらず、何か煮え切らない様子のハラピーであった。
(正面決戦で辺境銀河連合が勝てる見込みはないはずなのに、なぜこういう戦いをするのか?)
エルディア艦隊が優位に戦線を展開していったその時、総司令部に緊急通信が入る。
「た、大変です。」
「何事か?」
「第7駐留ステーションが爆発したとの報告が…」
「何だと!?」
まさに予想だにしなかった展開が起こっていた!
「ステーション長、敵です!」
「敵? 何を言ってるのだ? 今、アイスピック総司令が出陣して敵艦隊と
交戦してるはずであろうか?!」
「しかし、これをご覧ください。」
「な…」
スクリーンには第7駐留ステーションを半包囲する辺境銀河連合の艦艇が映し出されていた。
「ありえない?! 今、総司令と交戦している敵艦隊の他にもこちらにも艦隊を送りこんでいたというのか?」
留守を預かる第7駐留ステーション長パクラッテ・ゴリュースベッキ少将は驚きを禁じ得なかった。
「ステーション長、敵艦隊より降伏勧告が入ってきました。」
「くっ、そんなバカな…」
そうこうしてる間に第7駐留ステーションは辺境銀河連合の艦艇3000隻で半包囲されていた。
「ステーション長、ご指示を。」
「ここを敵に渡す訳にはいかん、このステーションと刺し違えてでも敵にここを占拠させる訳にはいかない。皆、覚悟を決めてくれ!」
「…はっ。仕方ありませんがそうせざるを得ないようですな。」
「ふっふっふっ、エルディアの要塞が降伏してきたか。ま、かしこい選択だな。」
辺境銀河連合の艦隊は駐留ステーションを我が物にせんとすべくステーションに入港し始めていた。
「敵艦隊が入港しました。」
「よし、ではみんなこの決断をする私を怨むと思うが、許せ。」
「な、何をなさるのですか!」
そういうと駐留ステーションの自爆システムを起動させた。
「ステーション長、ここにはステーションを運営する為の人員が5万人はいるのですぞ!」
「分かっておる、でもここを辺境銀河連合に使われたらエルディア帝国は喉元に剣を突かれている状況と変わらん事になる。恨むならヴァルハラで恨んでくれ!」
「ステーション長っ!?」
そして5分後、第7駐留ステーションとその人員5万人更に入港した辺境銀河連合の
艦艇3000隻が宇宙の藻屑と消えていった。
-つづく-
次回は7月2日の予定です。
Posted at 2008/06/20 19:00:12 | |
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2008年06月08日
第7章 別れと出会い
「来ましたね。」
マクシミリアン・エルメストラーデ大将とご対面である。
「この度白龍師団に編成させていただいた第18艦隊司令ライオネル・ハラピーです。」
ハラピーも畏まりながら入室する。
「軍令部より艦隊の書類をいただいてますが、なかなかおもしろい編成ですね。」
「おもしろい、と言いますと?」
「ウワサの最新鋭の戦略艦にアウトロー集団と言われているローゼンバトラーに
今回シェーンハイトまで編入させたそうですね。」
「はぁ、それが?」
「いえ、別に。確認しただけです。」
「…。」
(はぁ、やっぱやりにくいなぁ)
どうにもエルメストラーデ大将の意図が読めないので、会話が進まない。
「ところで…」
エルメストラーデ大将が身を乗り出して話し始める。
「その艦を私に譲る気はないかね?」
「!?」
「おいおい、冗談だよ。そんなに親の仇のような顔をしないでくれ。」
「…、失礼しました。」
自分でも想像できないような顔をしていたようで、いくらなんでも上官にすべき表情では
ないなと反省し謝罪した。
(なるほど、こういう小さな点を戦術を使う方だな)
アイスピックたる所以の一端を垣間見た形であった。
「なるほど、戦い方を専属化させる、という事ですか?」
「そうです。シェーンハイトを有効に活用するには対艦艇専属に特化させるべきと思ってます。」
ハラピーはシェーンハイト隊のザフィーラ中佐と空戦隊指揮官サガス中佐の両名を呼び、
今後の空戦隊の運用についての会議を行っていた。
「確かに。対戦艦では非常に成果が見えます。それは有益に運用させるべきだと思います。」
「では、サガス中佐。空戦隊の再編をザフィーラ中佐とよく検討すてください。」
「司令、では偵察任務を追加させる事でよろしいでしょうか?」
「ああ、彼らの洞察力を有効に活用させたいので、それに向けて訓練を開始してほしい。」
次にハラピーは、ローゼンバトラー隊長ブラッディ・ハンセン少佐を面会をし
今後の意向を告げていた。
「…仕方ありませんな。地上戦がなければ我々の出番はありませんからそれも
やむを得ませんなぁ。わかりました、出来るようになりましょう。」
「お願いします。」
こうして、陸戦隊ローゼンバトラーに新型偵察機エア・クンデンを配備し、
今後に備える事となった。
こうやって第18艦隊が色々と内部の再編を確実にこなしていたその頃、
国境付近では新たなる脅威が目前に迫っていた。
「では、いよいよ参りますか。」
「うむ、全艦エルディア帝国に向けて全速前進だ!」
エルディア帝国と辺境銀河連合の国境付近、極秘裏に動く艦隊があった。
銀河西暦4986年(帝国歴686年)9月3日。
じわじわと辺境銀河連合の動きが現れてきた。そして、ついに嵐の時が訪れたようだ。
-つづく-
次回は6月20日の予定です。
Posted at 2008/06/08 20:43:28 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年05月27日
第7章 別れと出会い 2
「司令、軍令部より遅れていた編成部隊がまもなく合流するとの報告が入りました。」
「そうか。これで空戦隊の層も厚くなるな。」
「サガズ少佐も忙しくなりますね。」
「いや、尻に敷かれるかもな。」
「あははは。」「あははは。」
旗艦アンヴァイセン艦橋で第18艦隊司令官ハラピーと参謀長リュッケが待ちわびた残りの部隊の到着を今か今かと待ちわびていた。
「司令、戦略空母プリッツより通信が来ました。」
「繋いでくれ。」
艦橋のメインスクリーンにひときわ輝く美貌の女性。
「お久しぶりね、ハラピー。」
「いえ、お待ちしておりました。」
空母プリッツ以下10隻の小型空母を従えて第18艦隊に合流してきたのは、他でもないかつてのハラピーの上司でもあったザフィーラ・ベルギノーゼ中佐であった。
(だいぶ我儘を言ったが、これで駒は揃ったな)
今をさかのぼる事、3週間前。
「シェーンハイト部隊が欲しいだと?!」
「はい!」
「シェーンハイト部隊は元々時期航空戦力として開発していたがその効果と開発費の比例がかみ合わず事実上帝国の軍拡計画から外され、結局今では1個部隊30機を残すのみという言うなれば「お荷物部隊」だぞ。」
「はい、存じてます。」
「…ふぅ、よかろう。お前さんの初所属部隊の元でもあるから、ちょうどよいのかもしれんな。手配しよう。」
「あるがとうございます、長官。」
「まあ、帝国内でも扱いに困ってると言われていた陸戦隊「ローゼンバトラー」
空戦隊「シェーンハイト」を取り囲む形になったか。それもまた一興。」
「…。」
「ま、しっかりやれよ!」
「はっ!」
「しかし、またこうして一緒に戦う事になるとはね。」
「ホント、偶然って怖いですねぇ。」
「偶然…ねぇ?」
合流後、ハラピーとザフィーラがサロンで再開を祝して乾杯していた。
「あの新人さんが今では提督とはね。」
「まあ世の中は不思議なこともあるもんです。」
「よく言うわ。でも『撃墜王』とまで言われるようになったのはあなたの努力と成果の賜物よ。」
「ありがとうございます。」
新人としてシェーンハイト部隊に配属になった事、そこでの色々な経験などが走馬灯のように思い出される。
「…ふふふ。」
「何がおかしいんです?」
「ついこの前までパイロットだったと思ってたらもう提督とは、ねぇ。」
「おもしろがってませんか?ザフィーラさん。」
「ザフィーラって言ってくれるんですね。」
「あ、あ~いやぁ、そのぅ…。」
なぜか照れるハラピーであった。
(やっぱ、照れるなぁ)
元上司が今度は部下としてこうして会うのはやはり恥かしさが先に出てしまうハラピーであった。
「ま、いいわ。今度は私が部下ね。」
「そうですね。」
「では、司令官。私たちシェーンハイトを宜しくお願いします。」
深々とお辞儀をするザフィーラ。
「いえ、頭をあげてください。この配属は私の願いでもあったのでそう恐縮されては…」
「恐縮されては?」
「恥かしいではないですか。w」
「…うふふふ。」
「…あははは。」
師弟コンビ復活である。
「提督、まもなく第7駐留ステーションに到着します。」
「そうか。では、各員着艦準備を始めてくれ。」
「はっ!」
銀河西暦4986年(帝国歴686年)8月17日。
第18艦隊は無事に第7駐留ステーシュンに到着した。
「提督、アイスピ…じゃなかった、マクシミリアン・エルメストラーデ大将閣下がお呼びです。」
「おいでなすったな。じゃ、行ってくるわ。」
「お無事でぇ。」
手を振って別れるリュッケ参謀長。
(おい、そういう見送りはやめてくれ…)
溜息まじりのハラピーだった。
いよいよ、マクシミリアン・エルメストラーデ大将とのご対面である。
「ふ~、緊張するなぁ。」
コンコン
司令官室のドアをノックするハラピー。
「ライオネル・ハラピー、ただ今到着いたしました。」
「開いてますよ。」
「失礼します。」
司令官室に入室する。ハラピーの緊張が最高潮に達する。
-つづく-
次回は6月8日の予定です。
Posted at 2008/05/27 19:34:21 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年05月15日
第7章 別れと出会い 1
ハラピーら第18艦隊の再編も終わろうとしていた時、
「あ、今日の晩、空いておいてね!」
…と、シャロンが言ってきた。
(相変わらずこちらの選択肢はないんだな)
そうは思いながらも、その夜首都星ではハラピーの唯一お酒をたしなむ「ジキル」ろいうBARで待ち合わせをしてたので早速出かける。
「遅いわよ!」
すでにシャロンは「ジキル」の来て1杯やっていた。
「おい、もう飲んでるんかい!」
思わずツッコみを入れるハラピー。
「まあ、いいじゃない。」
「ふぅ、じゃマスター。自分にも彼女と同じモノを1つ。」
「かしこまりました。」
そして、シャロンと同じパープルターンというブランデーが出てきた。
「珍しいな、ウィスキー好きのシャロンがブランデーとは。」
「今日はそういう気分なの。」
「そうか。」
ハラピーもそう言うと黙ってパーブルターンを味わう。
そして、しばらくは沈黙した状態であったが、グラスのブランデーを飲み終えたハラピーが重い口を開く。
「栄転、っていえばいいのかな。」
「うん、一応そうね。」
今回の再編で陸戦隊隊長であったシャロンが第5艦隊次席参謀として召集された。
今回の功績もあって、階級も大佐となり見事昇進と相成った。
「あとはハンセンがうまくやってくれるわ。」
シャロンが離れた後の「ローゼンバトラー」の隊長には副隊長だったブラッディ・ハンセンが少佐に昇格して就任する事になっていた。
「次席参謀として呼ばれたという事は、いよいよ幹部候補生としての扱いになったな。」
「あんまし実感はないんだけどね。」
「仕方ないさ、この国の貴族制度のしがらみはどうしても付いてまわるからな。」
「…ハラピー、あんたは私が離れるのがいいっての?」
「おいおい、軍の人事にあれこれ言うとは、どうしたんだ?」
「もう、いい…」
そう、言うとグラスのブランデーを一気に飲み干す。
「一気はあんましよくな…」
「今日は黙って飲ませて!」
「…。」
(こうなったらシャロンがガンとして聞かないからなぁ…)
しばらくはシャロンの思うように飲ませた。
「やっぱ、飲みつぶれたか。」
案の定、キツイブランデーを飲み過ぎたせいか散々グチった後シャロンは寝てしまった。
「はぁ、やれやれ…」
しぶしぶシャロンの官舎までタクシーを飛ばす。
(まあ、大事な戦力が減るのはツラいが、これもやむを得ないなか)
今度配属されるマクシミリアン・エルメストラーデ大将の管轄は辺境銀河連合の国境付近であり、互いが本気で戦えば両方とも想像を絶する被害が出るであろう敵国である為、常に緊張の度合いが大きい地域でもあった。
それだけに、信頼出来る部下がいるのといないのとでは大きく違うのであったが、シャロンはハーデルガイム侯爵家の第1後継者でもある為、ある程度の実績がついた所からは将来の幹部候補としての官職につくのはこの貴族主義のエルディア帝国にとっては至極当たり前の世界である。
「う、う~ん…ハラピー…」
「ん?」
「…バカっ…」
「!」
「ムニュムニュ…」
「寝言か…。」
(ムカつく寝言だな)
そう思うハラピーだが、100万エディ(エルディアの通貨単位)にも匹敵する寝顔を見せられてはその怒りもすぐに収まるのであった。w
携帯でシャロン付きのメイドに連絡をし玄関先でシャロンを任せて、自身は帰宅の途についた。
銀河西暦4986年(帝国歴686年)8月。
「全艦、発進!」
」総艦艇数1500隻に増加した新生第18艦隊はいよいよ辺境銀河連合国境付近にある第7駐留ステーションに向けて発進した!
-つづく-
次回は5月27日の予定です。
Posted at 2008/05/15 18:46:07 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年05月09日
第6章 驕れる政府は久しからず 4
銀河西暦4986年(帝国歴686年)7月3日。
パルメシア共和国首都星パルメシアンより離脱しようとするエルディア帝国第18艦隊500隻に対して、パルメシア純正統政府聖府軍第1艦隊2000隻の主力艦隊が阻止すべく追いかけてきた。
「さ~て、お手並み拝見といきますか。」
第18艦隊司令ライオネル・ハラピー准将はこの状況にもさほど慌てる様子もなく見えた。
「提督、こちらの数は500隻、パルメシア艦隊は2000隻。圧倒的な数の違いがあるのですが、どうなされるおつもりですか?」
参謀長ドルフィガ・リュッケ中佐が今回の作戦について質問してくる。
普通なら相手が4倍もの数で応戦してくるなら慌てふためいてもおかしくはないのだが、司令であるハラピーがいやにのんびり構えているので、ブリッジのクルーに不安はそんなになかった。
「とりあえず敵の数は多いが、今回出てきているパルメシアの艦艇を分析してみた所、ほとんどがミドラークラス(巡洋艦くらいの大きさ)との情報を得ている。そしてこれが重要なんだが、向こうはこっちをせん滅しなければならないのに対してこっちは言ってみれば逃げ帰るのが目的なんだから、戦略的には我々の方が作戦が立てやすいって訳だ。」
なるほど、という参謀長と妙に納得するブリッジにいるクルーのメンバー。
「絶対勝たなければいけないパルメシア艦隊に対して、我々は負けない戦いに徹すればいいのだから、戦術も立てやすいから楽でいいわ。」
あっさりとこう言われたら、実際は数の上では不利なのは変わらないがこっちが有利に思えてくる。本当、モノは言いようであるし、その暗示にかかったハラピーの部下の士気は高かった。
「では、プレッシャーを掛けるとするかね。」
「はっ!」
「艦首大型主砲ドラゴンキャノン発射用意、目標敵艦隊旗艦!」
「準備します。」
まだこっちの艦のデータがないはずので、先制パンチが有効であると踏んだハラピーは最初からドラゴンキャノンでの攻撃を指示した。
「発射準備、完了!」
「よし、ドラゴンキャノン発射ぁ!!!」
艦首より高エネルギー波がパルメシア艦隊中央に炸裂する!
いきなり奇襲で切り札での攻撃を喰らった上、旗艦スレスレにその砲撃を喰らったパルメシア艦隊旗艦では動揺を隠せずにはいたらなかった。
「何だ!? 今の攻撃は?」
「司令官、我が艦隊は高エネルギー波をモロに喰らいました!」
「被害は?」
「消滅した艦艇およそ…に、200隻!」
「何だと!?」
パルメシア第1艦隊司令ボライネルズ・ワイズマン中将は驚きを隠せなかった!
切り札を後に隠すか先制攻撃で使うかは戦況によって常に異なるが今回はデータ不足を有効に利用し先制パンチで使ったのだが、まさにそれがドンピシャとなった。
「全艦全速前進!一気に敵の中央を突破し、そのまま突っ切れ!」
まだ動揺がおさまらないパルメシア艦隊は追い打ちをかけられるようにエルディア艦隊の中央突破攻撃を喰らったモノだから、戦列は総崩れだった。数は少なくとも火力の強さと勢いで数の劣勢をカバーしたハラピーの戦術は一同を感嘆させるに十分であった。
「エルディア艦隊に中央を突破させたれました。」
「くそっ、反転して攻撃してくるぞ、こっちも構えて迎撃せよ!」
「はっ!」
迎撃体制に入ったパルメシア艦隊であったが、ハラピーらエルディア艦隊はそのまま戦線を離脱していく。
「奴らはどうしたのだ? 戦況的に有利な今、なぜさらに攻めてこないのだ?」
「…あ~!」
「どうした、参謀長?」
「やられました司令官閣下、ヤツらの目的は我々と交戦するのではなく、我々を交してエルディアに帰還するためだったのではないでしょうか?」
「…くわっ、そういう事か。やられたわい!」
そう思った頃には中央突破した勢いそのままにハラピーら第18艦隊は一気に戦線を離脱、エルディア方面に逃げ果せたのであった。
「あははは、うまくいきましたね、司令。」
「ああ、そうだな。」
一見平静を装ったハラピーであったが、内心はヒヤヒヤものであった。
(ふぅ、なんとかうまくいったな)
こうして、なんとかパルメシア艦隊との交戦を終え、一路首都星ゴッド・オブ・アクアスターに向けて帰路につくハラピー達であった。
「色々、御苦労だったな、准将。」
「ええ、でもまあいい経験になりました。」
軍令部にてハラピーは軍令部人事管理局々長ブルーム・バルディー大将に今回の顛末の報告をした。
「では、次の辞令が出てるので早速赴いてくれ!」
「局長、辞令が出てるって、ご自身が決定したことでしょうに。」
「あははは、まあ固い事は言いっこなしだ。」
「はぁ…。で、今度はどこに行けとおっしゃるのですか?」
「まあ、そう脹れるな。では、ハラピー准将、貴官を少将に昇格する。」
「は、はっ。ありがたき幸せ!」
「そして、第18艦隊の艦艇数を総数1500隻に増大。
「あ、ありがとうございます。」
「そして、貴官はアイスピックの指揮下に入ってくれ。」
「あ、アイスピック? まさか、マクシミリアン・エルメストラーデ大将の指揮下ですか?」
「ああ、その通りだ。」
「…マジですか?」
ボークシュラウダー星域
「…。o(`・ェ・´)p 殺!」
「はっ、司令官の指示である。一気に攻め落とせ!」
参謀長セリーデ・トライクリッヒ少将の号礼と共に貴下の艦隊の総攻撃が炸裂する!
「司令官閣下、我々の勝利です。」
「…うむ。」
「はっ、では全艦帰島!」
マクシミリアン・エルメストラーデ大将は、冷静沈着な指揮や静かなる闘志で威圧感たっぷりの一点集中攻撃で敵艦隊を打ちのめす戦い振りが特徴なのだが、口数が非常に少ない上に徹底的に敵をせん滅する戦い方もあって帝国軍の中では「アイスピック」というあだ名が付けられているのだった。
静かではあるがその存在感は圧倒的な司令官である為、影で「上官でありたくない司令官ベスト2」の称号wを持っていた。
その指揮下に入るとあって、ちょっとテンションが下がってしまうハラピーであった。
「はぁ、やりにくいなぁ。」
- つづく -
次回は5月15日の予定です。
Posted at 2008/05/09 19:47:51 | |
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