2008年05月04日
第6章 驕れる政府は久しからず 3
「しかし、進軍が遅いのぅ。」
「はっ大佐殿、夜のためいささか遅くなってはおりますが、
あと2時間もあれば到着するものと思います。」
予備役兵が多いのと不慣れな夜行軍の為進軍は遅れていたガルフライヤー大佐率いる聖府軍であったが、軍事宇宙港まであと10キロの所までやってきていた。
「帝国軍の慌てふためく様子が今から楽しみじゃ!」
ワクワクするガルフライヤー大佐であったが、その様子をのぞき見る人たちがいた。
「ヤツら、来ましたね。」
「ああ。これから自分らがどうなるかわかってないだけに皆マヌケ顔に見えるわ。」
新人整備班の若造からの報告で聖府軍の侵攻を事前に察知していたハラピーらは
シャトル出発の準備に伴う時間を稼ぐべく軍事宇宙港5キロ手前で密かに罠を仕掛けていた。
ズガガガガ!!!
「何事だ!?」
突然、進軍している聖府軍に向けて道路の横のビルから銃撃を受ける。
「くそっ、待ち伏せか!」「やり返せ!」
銃撃があったビルに向けて聖府軍の戦車が砲撃を開始した。
膨大な爆音とともに砲撃を受けたビルが崩れて道路にいる聖府軍になだれ落ちてきた!
「うわぁ~!?」
まさか、1・2発の砲撃で急激な崩れ方をしてくるとは思っていなかったせいか、
防衛策も取れず、崩れ落ちるビルの瓦礫に巻き込まれる。
「よし! あの瓦礫の場所に向けて高射ロケット砲をぶっ放せぇ!」
プシュー!
上部に放たれたロケットが弧を描いて瓦礫に巻き込まれた聖府軍に襲い掛かる!
「くっ、どこから攻撃を受けたんだ?」
「わかりません、上部から降ってきたのは確認出来ましたが、発射元は不明です。」
「え~い、適度にバラけろ、固まってると集中砲火の的になってしまう。」
聖府軍は、戦闘経験の浅さが災いし奇襲攻撃に対して意外にもモロかった。
「ふふふ、あたふたしてるな、ヤツら。」
罠を担当した第18艦隊陸戦隊のペーレギュント中佐は元々特殊部隊所属の知識を駆使して
ビルに様々な仕掛けを施していた。
まんまと罠にハマった聖府軍は完全に浮足立っていた。
「ではとどめとイキマスカ。w」
更に、道路に対して対面にあったビルが突然爆発!
轟音とともに瓦礫がまた聖府軍を襲う!
「大佐、我が軍は完全に敵の思うつぼにハマってしまってます。」
「うるさい、わかっておるわ! くそ~、まさかこんな仕掛けを施していたとは?!」
ガルフライヤー大佐は舌打ちが止まらない!
「よし、適当に遊んだ所で宇宙港に戻るとするか。」
「准将、シャトルの発進準備が整いました。」
「そうか! では、最終防衛隊のみを残し全員搭乗せよ!」
罠を張ったペーレギュント中佐が軍事宇宙港に戻ってから2時間後、
シャトルの発進準備も終わり、再び軍事宇宙港にも罠を仕掛ける。
「大佐、どうしますか?」
「我々聖府軍の任務は帝国軍が占拠する軍事宇宙港を奪還するのが目的だ。まだ何もそれが達成されておらん。残った部隊ででもそれを遂行せねばならん。」
「はっ、残存部隊を整理し、出発します。」
(このクーデターは失敗に終わるやもしれんな…)
この作戦に参加していた聖府軍陸戦隊参謀マルクレッツェ少佐は近い将来、このクーデターの逝きつく先は決して明るくはないとこの時確認したのであった。
結局、軍事宇宙港に仕掛けた罠にもハマり、聖府軍は部隊の80%を失った。
「なんとか全員脱出に成功しましたね。」
「ああ、これで敵聖府軍もいくらか弱体化出来たはずだ。あとはパルメシア人自身に任せるとしよう。」
旗艦アンヴァイセンに戻ったハラピーであったが、今度はハラピーらの艦隊に向かってくる艦隊がやってきた。
「帝国艦隊を迎撃せよ!」
パルメシア純正統政府聖府軍第1艦隊司令官ボライネルズ・ワイズマン中将の号令とともに
パルメシア聖府軍の意地とエルディア帝国第18艦隊司令官ライオネル・ハラピーの戦術が
今ここに衝突!
果たして、ハラピーらは無事帝国に帰る事が出来るか?
- つづく -
Posted at 2008/05/04 22:35:20 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年04月28日
第6章 驕れる政府は久しからず 2
「よし、これより軍事宇宙港奪還作戦を決行する!」
銀河西暦4986年(帝国歴686年)7月2日21:00。
パルメシア純正統政府聖府軍ガルブライヤー大佐率いる陸軍は、
ハラピーらに奪取された軍事宇宙港を奪還すべく軍を動かし始めた。
夜襲する事により、エルディア軍への奇襲がその理由である。
「これが成功すれば憎っくき帝国軍をコテンパンに出来るチャンスである。
諸君らの奮起に期待する。」
大佐の号礼とともに出撃を開始、一路軍事宇宙港を目指す。
その頃軍事宇宙港では…。
「とりあえずシャトルの準備を先にしておけ、と准将の命令だ。
さっさと済ませてひと勝負しようぜ。」
「ああ、これさえやっておけば俺らの仕事は粗方終了だしな、さっさとするべ。」
「同感だ。」
明日の出発前にシャトルの発進準備をハラピーから命じられたサブチームは、
シュピッツ少佐の「めんどくさい事は先に済ませる。」性格も合わせて速攻で準備をしていた。
「少佐もこれを済ませたらひと勝負やろうと思うんですが、参戦しますか?」
「アレをやるのか?」
「モチロンですぁ。パルメシアの借金はパルメシアで返済しときたいんで。」
「ほほぅ、言ったな。よしここを速攻で終わらせ借金を倍にしてやるわ。」
「お、少佐もやる気満々ですな。」
「あっはははは。」
地球でいう所の麻雀をエルディアでは「マーティン」と言う。
その話をしてた訳だが、整備班はどうもギャンブラーが多いようだ。
「おい、新人。酒買ってきておいてくれ。」
「はぁ…。。わかりました。」
夜の盛り上がりのため。酒を買いに行かされる新人整備士はちょっと遠めではあるが
パルメシアン郊外の大型酒店に買い出しに出かけたのであった。
「あ~、何でオレが買い出しに行かなきゃなんねぇんだよ。」
いささか納得いかない新人整備士であった。
すると酒屋の近くで何やらたくさんの物音を聞いた。
「何だべ?」
新人がその音の方に目を向けると、なんと多数の軍勢が軍事宇宙港に向けて動いていた。
「あわわわわ…、早く帰って報告しないと!」
酒屋には目もくれず一目散で新人は宇宙港へ帰って行った。
「シャトル発進を急がせろ。運ぶものは最小限でかまわん。陸戦隊は最後まで敵を足止め。上の艦隊にも急遽帰還する旨を伝達。各位迅速に頼むぞ!」
買い出しの新人整備士からの報告を受け、ハラピーはすぐさま帰還の準備を命じた。
先日この宇宙港を奪取したばかりのハラピーらであったが、物思いにふける間もなくここを去らねばならなくなっていた。
「もう、パルメシアに来る事もないかもしれないな。」
参謀長に小声で言うハラピー。
「どうしてです?」
「今回の騒動で間違いなくパルメシアと戦争になるのは間違いないであろうが、
私に帝都への帰還を命じた以上パルメシアと戦争になっても私の出番はないって事だ。」
「ああ、なるほど。」
「ま、先の話より無事にアンヴァイセンに帰る事に集中しよう。」
「ごもっともですな、司令官殿。」
「やはり宇宙港はちょっと遠いですなぁ、大佐殿。」
「ロケットやシャトルが飛び交う所だから、街中より離れた場所に建設されるのは仕方がないのだが、こういう時には更に遠く感じるのぅ。」
「はぁ、おっしゃる通りであります。しかも隠密裏に行動する為大回りして向かってますから。」
「まあ、帝国のヤツらも今日の夜攻撃を受けるとは思ってないであろうから、ヤツらの慌てふためく姿を見るのが今から楽しみじゃ。焦る事もあるまいて。」
「全くであります。」
えらくのんびりとした進軍であったが、この誤差が成否を分ける事になるとは到底思っていなかったガルブライヤー大佐であった。
-つづく-
Posted at 2008/04/28 20:15:07 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年04月22日
第6章 驕れる政府は久しからず 1
銀河西暦4986年(帝国歴686年)7月1日。
パルメシア共和国首都パルメシアンには3つの勢力がひしめき合うという
異例な状況が出来ていた。
クーデターにより成立したパルメシア純正統政府
パルメシア共和国治安軍残党及び宮殿守備隊
エルディア帝国軍パルメシア駐留艦隊所属陸戦隊
「ふう、ここまでは最悪の事態は免れたな。」
ハラピーら第18艦隊陸戦隊「ローゼンバトラー」が軍事宇宙港を制圧した為、
いざという時には脱出可能な体制を取れたのが大きく純正統政府軍は絶対数が足りない上
治安軍の残党と宮殿守備隊にも気を配らねばならないので、クーデターは完全に成功とはいえない状況であった。
「問題はこれからだ。」
そう、あくまでこれはパルメシア共和国内での問題なので、しかるべき所からの要請がなければハラピーらは動く事は出来なかった。
そのしかるべき所であるパルメシア共和国議会は強制解散、王宮の国王は死去。
パルメシアはこれからどうなるのか?
「それは私にもわからない。」
それしか言いようがないのも事実であった。
そんな中、クーデターの首謀者「ムリカラーニ将軍」の公式声明が行われた。
「我々パルメシア純正統政府は、国王というエルディア帝国の手先を打倒する事に成功した。この国は民主共和制でありながら、その国王の傲慢な権力と利権だけが目当ての議会によってその崇高な目的を果たせぬまま今日に至った。おかげでこの国の経済は破綻寸前まで落ち込んでいる。このままではパルメシアの光が閉ざされてしまう。私はそれが我慢出来なかった。このような形になった事は国民の皆さんにこの場を借りて陳謝させていただく。その代わりその腐敗した議会は解散、そして諸悪の根源だる王室もこれを打破する事に成功しました。これからは我々が純粋なパルメシア人による政治をこれより開始しパルメシアの新たなる時代が始まるよう努めるべく精進していくので国民の皆、宜しくお願いするものである!」
「エルディアを悪玉扱いして自分らの行為を無理やり正当化させたな。」
まあ、クーデターを行う理由を説明するのによくある手段ではあるが、最も理にかなっているのも事実であった。あとはこのパルメシアの民衆に形あるもので示さねば逆に自分らが窮地に立つのであるが、果たしてどうするのか興味があった。
だが、その思いが叶う事はなさそうだった。
「軍令部は何と言ってきた?」
「はっ、第18艦隊は7月7日を持ってパルメシア駐留艦隊としての任を解く故、本国に帰還せよ、との、事です。」
「おいおい、マジか?!」
軍事宇宙港を制圧後、事の顛末を軍令部に報告していたのだが、エルディア帝国としては内政干渉を避ける為、とっとと帰って来い、と言う事のようだ。」
「仕方ない、では艦隊に帰還する準備を始めてくれ。」
ハラピーは参謀長ドルフィガ・リュッケ中佐にそう告げた。
だが、ハラピーらに魔の手が迫っていた。
「では、夜襲を掛けると言うのか?」
「はい、そうであります将軍閣下。エルディアの奴らは我々が今軍事宇宙港を奪還すべく動くとは思ってないはず。その油断している時にこそチャンスがあるというものであります。」
「なるほど、あいわかった。ではガルブライヤー大佐に軍事宇宙港奪還作戦を一任する。」
「ありがたき幸せ!必ずや成功させてご覧にいれまする。」
ここでクーデター軍が動くとはハラピーも思っていなかった。
銀河西暦4986年(帝国歴686年)7月2日20:00。
事態は急展開を迎える。
- つづく -
Posted at 2008/04/22 20:04:46 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年04月16日
第5章 動乱のパルメシア 5
クーデター軍(自称パルメシア革命軍)に参加したのは、
パルメシア共和国治安軍査閲本部長ムリカラーニ将軍直属の予備役部隊
パルメシア陸戦部隊
アクロニア守備隊
、の計3部隊が参加していた。
そして、それぞれが2か所ずつ計6ヵ所の主要地区を占拠するため軍を動かしていた。
早々にパルメシア軍事宇宙港を占拠したアクロニア守備隊は、守備要員のみを残し次の国会議事堂の占拠に本体を移動していた。
「ふぁ~、退屈だなぁ。」
「まあ、絶対数が少ないのに一遍に6か所を占拠するなんて無茶だよな。」
「でも、これが成功すれば俺らも田舎の守備隊から純正規軍の一員だぜ。」
「田舎部隊で一生が終わるくらいなら、俺もひと花咲かせたいからな。」
「だいたい、今の政治がすべて悪いんだ。」
「そうそう。」
残った守備要員達が暇を持て余していた。
今、パルメシア共和国は不景気で職をあぶれた人が仕方なく軍に入って飢えをしのぐ人が少なくなかった。
そして、その不正規な軍人たちをうまく丸めこんだムリカラーニ将軍一派が革命軍と称して一気に政変を企てたのであった。
「あとは次の所へ行った部隊がさっさと占拠して帰ってくるのを待つとしよう。」
「ああ、そうだな。」
もう、守備要員達も本体の帰り待ちと思い込んでるのでのんびりムードであった。
「1部隊がこっちに向かってきてます。」
「お、本体が帰ってきたか?」
「意外と早かったな。」
「今日は宴会だな。」
ぞろぞろとお迎えに出かけようとする守備要員達。
「ん、待てよ。」
「どうした?」
「何か違いやしないか?」
見張りが再度部隊の確認をする。
「う、あれは・・・」
「?」
ドッカ~ン!!!
軍事宇宙港入り口に爆音が轟く!
「敵襲ぅ~!!!」
「何だと?!」
入り口に一個部隊が強襲してきた。
「一気に行くわよ!」
「お~!」「やるぜ!」「ぶちのめすZE!」
シャロン率いるエルディア駐留軍主力「ローゼンバトラー」の攻撃である。
「くそっ、エルディア軍が何でしゃしゃり出てくるんだ。」
「ダメです、防ぎきれません!」
軍事宇宙港を守るクーデター軍に「ローゼンバトラー」を抑える数も戦力もなかった。
「敵は数が少ないわ。速攻あるのみ!」
守備隊の数が少ないのを把握している為、速攻勝負が適切と踏んだシャロンは伏兵の心配もせず攻め一手で攻撃を仕掛ける。
「隊長、もう我が守備兵もほとんどおりません。」
「…、ここまでか。」
さすがに速攻で敵襲を喰らった上戦力の質・差も歴然だった為勝敗は早くから決していた。
「守備隊より降伏する旨の対応を懇願してきました。」
「わかった、受諾するよう伝えて。」
「はっ!」
こうして6月26日16:00、軍事宇宙港はエルディア軍の統制下になった。
「シャロン中佐、御苦労さまでした。」
「いえいえ、優秀な部下の賜物です。」
エルディア大使と共に遅れて到着したハラピーは無事シャロン達との合流を果たした。
「現状はどうなってる?」
「はい准将、主要6か所を占拠すべく侵攻したクーデター軍ですが、ここと首相官邸以外の4か所は占拠されました。」
「首相宮殿を守ったのはどこの軍だ?」
「バラカニアン宮殿守備隊とパルメシア第1陸戦隊です。」
「パルメシア軍が守ったのならともかくなぜバラカニアン宮殿守備隊がなぜ首相官邸を守ったのだ?」
「国王陛下の指示だそうです。」
「…そうか。で、国王陛下は。」
「亡くなったそうです。」
「?!」
一瞬たじろくハラピー。
「どうなったのか詳しく教えてくれ。」
「国王陛下。このままではここを守り切れません。」
「うむ…。クーデター軍のの動きは?」
「おそらくこの国の主要6か所を占拠すべく動いているものと思われます。」
「現在まだ占拠されてない箇所はどこかわかるか?」
「首相官邸はまだ大丈夫のようです。ここから1番近いので情報は早いです。」
「では宮殿守備隊を首相官邸の防衛に充てよ。」
「しかし、国王。それではこの宮殿の守りが出来ませぬ。」
「もうこの国の王政もこれまでという事じゃろう。」
「何をおっしゃりまする。元々は初代国王より代々継続されてきたこの王家をここで終わらせるというのですか。」
「それはワシもわからん。とにかく宮殿守備隊長に命ずる。首相官邸を防衛せよ。」
「…わかりました。国王の仰せのままに。」
「この国を頼むぞ、我が息子よ。」
そして、守備隊のいない宮殿がクーデター軍に占拠されるのは時間の問題であった。
「国王陛下。これまでのようです。」
「…そうか。悪いがちょっと1人にしてくれるか?」
「?! 陛下…まさか」
「頼む。」
「…わかりました。」
その後、第8代パルメシア国王ボルマイヤ・アクアメイスの自害が確認された。
「そうか。」
だいたいの状況を聞いたハラピーはそれ以上その事について聞く事はなかった。
こうして長い6月26日が終わろうとしていた。
「くそっ、エルディアのやつらめ。とことん我々の邪魔をしおって。」
「将軍閣下、落ち付いてください。」
「うるさいわ!ワシの描いたシナリオが狂ったではないか。」
「しかし、主要4か所は我々の支配下に収める事が出来ました。」
「う~ん…」
「明日は再度攻撃を仕掛けますか?」
「いや、とりあえず包囲をして様子見でかまわん。それより議会を解散して我々で臨時政府を樹立する手配をせよ。」
「はっ。では当初の予定通りにいたします。」
「うむ。」
6月27日、ムリカラーニ将軍の演説にてパルメシア共和国議会の解散と
パルメシア純正統政府の樹立を宣言したのであった。
- つづく -
Posted at 2008/04/16 20:46:53 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年04月10日
第5章 動乱のパルメシア 4
銀河西暦4986年(帝国歴686年)6月26日。
この日は一見何事もなく1日が始まったのだが、裏では極秘裏にある事が進んでいた。
「では、進撃を開始せよ!」
パルメシア共和国治安軍査閲本部長ムリカラーニ将軍の号令と共に前もって準備していたクーデター軍が6月26日AM6:26を持って作戦行動に入った。
ちなみに、なぜ6月26日なのか?
それはこの日がムリカラーニ将軍56歳の誕生日であったからだ。
(これで、ワシの願望であったこの国の頂点に君臨する時がやってきたのだ!)
作戦行動の為将軍1人の執務室でムリカラーニ将軍はひとりほくそ笑むのであった。
クーデター軍は、国会議事堂・国王の住むバルカニアン宮殿・首相官邸・国立宇宙港・国家治安委員会・エルディア大使館の計6か所の重要拠点を占拠すべく軍を動かし始めた。
「提督、各地に張り巡らした諜報網から軍が動き始めたとの報告がありました。」
「そうはついに始まったか。」
エルディア大使館横のホテル「バラライナ」にてここ1週間必死に索敵を行っていたハラピーであったが、ついに動きをキャッチする事が出来た。
「シャロン、貴官は陸戦隊を率いてクーデター軍が帰島する前に軍事宇宙港を押さえてくれ!」
「軍事宇宙港? 国王を保護すべくバルカニアン宮殿の方に行った方がいいのでは?」
「いや、仮に国王の保護に成功しても宮殿を囲まれたら意味がない。そこでいざという時我らが脱出できるよう宇宙港を押さえるのが先決である。相手が各地を一気に占拠する為、あちこちに軍が移動しているので、足もとの軍事宇宙港が逆に手薄になっているはず。国立宇宙港は民間空港なので出来れば無用な戦果は避けたいしな。」
「わかったわ、じゃ早速行ってくるわ。」
「ああ。頼む!」
シャロンに指示を出した後、ハラピーはエルディア大使館に急行した。
首都パルメシアンではクーデター軍が暴れているため、あちこちで銃声や爆発音は響いていた。
「エルディア大使シルヴェーナ・バカロディフ、貴殿を逮捕します!」
エルディア大使館にもクーデター軍がやってきていた。
「あなた方は何をしているのかわかっているのですか!」
シルヴェーナが招かざる客に叱咤する。
「ふん、パルメシア人のくせにエルディアに組みする逆賊が」
大使館に来たクーデター軍の指揮官がシルヴェーナに吐き捨てるように言う。
「あなた達は帝国を打倒する為にこの国を共和国から帝国にするおつもりなの。」
シルヴェーナが鋭い指摘をする。
「う、う、うるさい! 腐敗した共和国を打破する為にはやむをえんのだ。」
必死に言い返そうとする指揮官だが、説得力はない。
「まあ、お好きになさい。あなた達のやった事がパルメシアの民衆からどう思われるか楽しみにさせていただくわ。」
シルヴェーナのこの言葉で指揮官は完全にキレてしまった。
「あ~、このクソアマがぁ~!これで黙らせてやる!!!」
指揮官が持っていた銃をシルヴェーナに向ける!
(どうやら私の命運もこれまでだったようね…)
パンパンパン!!!
銃声が部屋にこだまする!
…が倒れたのは銃を構えいたはずの指揮官だった。
「ふぅ、間に合ったか。」
その後ろに現れたのはハラピーと部下数名であった。
「ハラピー提督?!」
まさか!という顔のシルヴェーナ。と同時にその場にへたり込む。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ、何とか…」
ハラピーがへたり込んだシルヴェーナを助け起こす。
「一体何がどうなったのか…」
「安全な場所へ送ります。」
少々混乱気味のシルヴェーナを女性士官に任せる。
「よし! 大使は無事保護した。これより我々も先行するシャロンと合流する。」
先に軍事宇宙港に向かったシャロンを追いかけるハラピーであった。
6月26日16:30。まだこの日は終わるには早かった。
-つづく-
Posted at 2008/04/10 21:08:08 | |
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