2008年04月04日
第5章 動乱のパルメシア 3
銀河西暦4986年(帝国歴686年)秘書→大使という前代未聞の人事から始まったパルメシア共和国での大使館であったが、今までの仕事は熟知しているので意外といえば失礼だが、シルヴェーナ・バカロディフ女史はこの半年間ソツなく業務をこなしていた。
「もう完全に大使としての貫録も出てきたかな?(笑)」
ハラピーがシルヴェーナにちょっとおどけてそう言ったが、
「まあここまではどうにか責務を果たせてます。」
シルヴェーナは整然と言った。
実際、最初は女性という事で相手の対応にも手荒い歓迎があったが、もう今ではそんな事もなくなっていた。
「ここまでがんばってくれて感謝しています。」
「いえいえ、とんでもない。陰でフォローしてくれているのは分かってますから。」
ハラピーの感謝の言葉におしとやかに返すシルヴェーナであった。
「では、また。」そう言ってハラピーは大使館を後にした。
「将軍閣下、まもなく準備が整いつつあります。」
「お~、そうかそうか!」
某密室にて謎の2人がよからぬ話をしていた。
「…で、決行はいつじゃ?」
「現在秘密裏に軍を動かしておりますが、あと1週間くらいで万全になるかと。」
「ふむふむ、そうか。いよいよこの国もワシのモノになる訳じゃな。」
「そのとおりでございます、将軍閣下。」
「いやぁ、楽しみじゃ。がっはっはっはっ!」
「何、パルメシア軍の一部で不穏な動きがあるとな?」
「はい、准将。正規の動きではないのでいささかおかしいと思いまして。」
「うむ…。」
ハラピーが大使としての仕事をあえてシルヴェーナに託したのは、パルメシアの動向を隠密裏に掴みたかったからだった。
パルメシアの首脳陣にはハラピーの面が割れていないので、ハラピーも含めシャロン率いる陸戦隊を駆使してこの半年様々な情報を集めていた。
「つまり一部の軍部が何かしら企てている可能性が高いと。」
「ええ、おそらく間違いはないでしょうよ。ただ…」
「ただ?」
「首謀者がまだ判明してないのよ。」
「そうか…。まあ引き続き調査は頼む。」
「わかったわ。」
ハラピーとシャロンは再度確認し合った。
「将軍閣下、完全に準備が整いました。いよいよ明後日決行になります。」
「お~、待ちかねたぞ。明後日だな。」
「はい!」
「むふふふ。帝国の生き残りの国王も腐った共和政府も明後日までの運命か…。
グファっグファっグファっハハハハっ!」
謎の首謀者の不気味な高笑いが密室にこだましていた。
-つづく-
Posted at 2008/04/04 20:52:51 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年04月01日
みなさんの声援のおかげで、この度「エルディア蒼龍伝」がアニメ化となります?!
キャスティングは下記の通りです。
監督・・・ 山本 寛
脚本・・・鷺ノ宮 龍聖
声の出演
ライオネル・ハラピー ・・・ 杉田 智和
サユリ・ハラピー ・・・ 井上 喜久子
シャロン・ハーデルガイム ・・・ 平野 綾
マヤ・アリジェリーニ ・・・ 中原 麻衣
ドルフィガ・リュッケ ・・・ 中村 悠一
クルート・サガス ・・・ 白石 涼子
ブルームハット・ノイットニー・・・ 阪口 大助
メリー・キッシンジャー ・・・ 加藤 英里香
ブルーム・バルディー ・・・ 若本 規夫
銀河西暦5008年4月 テレビエルディア系で放映開始!
…いうまでもなく、
エイプリルフールネタですから。(超爆)
それより続き考えよっと。w
Posted at 2008/04/01 21:35:36 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年03月16日
第5章 動乱のパルメシア 2
銀河西暦4985年(帝国歴685年)12月31日
「遅いな・・・。」
パルメシア共和国内にあるエルディ大使館で前任の大使との引き継ぎに来た訳だが、
待ち合わせの時間を2時間も過ぎようとするが一向に前大使の姿はなかった。
「あと、1時間経っても来なかったら帰るからな。」
ハラピーの傍らで無言でじっと待っている秘書官シルヴェーナ・バカロディフにそう告げたが相変わらず無言のままだった。
(よくわからない女性秘書だなぁ…)
そん、思っていると彼女に電話が入る。
「え~、失踪?!」
電話口で急に大声になるシルヴェーナ。
「ちょっと、どういう事? え? 悪魔が襲ってくると叫んでる…。もう重症ね。」
なにやら妙な状況になってきた。
「准将閣下、さきほど連絡がありまして、前任の大使は来れなくなったとの事です。」
「はぁ?」
状況がうまく飲み込めなかった。
「引き継ぎの書類については私のほうですべてやっておきますので、明日からの執務には影響なく行えryと思います。」
なかなか出来る秘書官のようである。
「ところで、シルヴェーナさん?」
「はい、何でしょう?」
「この秘書官になってどれくらいになりますか?」
「は、はぁ。ちょうど5年になります。」
「5年もですか。では大使の執務はほぼ把握してますね。」
「え、ええ。私が代わりになってもできますよ。なんてね。」
ちょっとおどけてみせるシルヴェーナ。なるほど別に堅物って訳ではなさそうだ。
「では、シルヴェーナさん。大使としてがんばってくれますか?」
「え・・・、え~?!」
本気だったらまさか?!の人事である。
確かに彼女の能力は相当なものでここまでの彼女の経歴を見ても若くしてすばらしいものであった。確かに政治の世界でも秘書出身で政界へという人も少なくないが、仕事場はエルディア帝国である上シルヴェーナは貴族出身ではない。
その彼女を逆の立場にあるエルディア大使に任命するといういのは前代未聞である。
ただ、元々「国交よりも征服」がモットーのエルディア帝国において他国に大使館を置くのはここパルメシアが唯一であった。よって要職でもないので特に問題はないとハラピーはすでに人事局に手を打っていた。
あとは、本人次第であった。
「1日考えさせてください。」とだけシルヴェーナは言った。
「わかった、明日返事を聞かせてくれ。」とハラピーは答えた。
「ねぇ、ハラピー。何であんた自身が大使にならないの?」
その日の夜、大使館のあるパルメシア共和国首都パルファーレ市内にあるバー「アルファード」でハラピーとシャロンはまもなく来る新年をひっそりと迎えるべく飲み明かしていたのだが、シャロンから今日の出来事についての話になったので当然ながらこの話が出てきた。
「パルメシアの情勢を調査するのにはオレの面がばれると何かと動きにくいんでな。」
ハラピーはそう答えた。
「あんた、調査するって何の調査よ?」
「禁則事項だ。w」
「…ナニその言い方? せめて軍規に関わるとか言ってくれる…。」
「すまん…。」
酒が入ってちょっと陽気になったそうだ。w
「ところで、あの娘は?」
「あの娘って?」
「もぉ、何言ってんのよ。マヤはどうしてるの?って言ってんじゃない。」
「あ、ああ。マヤね。 たぶん、寝てる。」
「寝てるぅ?!」
「あいつは昔から寝るのが早くて今でも基本的には変わってないようだ。」
「そうなの?」
「ああ。だから大人の時間の楽しみ方は知らんと思う。」
「あははは、まあその手の知識はこれからあんたが教えればいいじゃん。」
「ぷ~?!」
「ちょっと、きたないわねぇ。」
「お前、酒ぐせ悪くなってないか?」
「さぁ~、何のことかしらねぇ。(笑)」
その後2人の話は夜中の3時頃まで続いた。
銀河西暦4986年(帝国歴686年)1月1日
「あけましておはようございます。お兄ちゃん」
新年にふさわしい明るい挨拶がハラピーの部屋にこだまする。
「…。」
「あれ、元気ないぞぉ。」
「…。(頭痛い、2日酔いかも?!)」
「お~き~ろ~!w」
ベットで寝ているハラピーに体当たり!
「痛ったぁ~!」
「早く起きないかただぞぉ~。」
「わかったわかった。」
しぶしぶ起きるハラピー。
「…で、今日はあの秘書さんと会うの?」
「ああ、昨日の返事をもらわんとな。」
「ふぅ~ん。」
「何だその気のない返事は?」
「…新年の初詣。」
「初詣?」
「一緒に行こうと思ったのに。」
なるほど。今日は新年だった。
「昔は一緒に初詣いったじゃない。」
「そうだったな。」
ハラピーがまだアルジェリーニ家に来た頃は新年の初詣に領内の寺院に行ってたのを思い出した。
「まあ午前中には終わるとおもいから、それから行くか。」
「やったー!」
マヤはご機嫌である。
「ところでパルメシアに初詣出来るトコはあるのか?」
「あ・・・どうなんだろ?」
「おいおい…。」
「そっか、その事を忘れてた。」
「じゃ、俺が午前中出てる間に調べとけ。」
「は~い。」
(ふぅ、こんな感じだとまだマヤには色恋どころではないな)
そう思わずにはいられないハラピーであった。
「謹んでお受けいたします。」
その後、シルヴェーナと会い昨日の大使の件の受諾を確認した。
こうして、銀河西暦4986年(帝国歴686年)秘書→大使という前代未聞の人事から始まる事となった。
- つづく -
Posted at 2008/03/16 21:54:31 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年02月28日
第5章 動乱のパルメシア 1
「準備は進んでおるか?」
「はい将軍閣下、まもなく準備は完了します。あとは、タイミングのみであります。」
「そうか。」
「だた1つ問題が。」
「何じゃ?」
「来週到着する次の帝国軍駐留部隊の司令官です。」
「どんな奴じゃ?」
「かなり若い人物のようですが、詳しい事は不明です。」
「まあ、このパルメシアに派遣される帝国軍の将校なんぞは大体低能なヤツばっかだ。」
「では気にしなくてもよい、と。」
「そうじゃな。一応注意はしておけ。」
「ははっ!」
銀河西暦4985年(帝国歴685年)12月27日。
ハラピー机下の第18艦隊はパルメシア共和国首都パルメシアンに無事到着した。
「今年は久々にクリスマスを宇宙空間で迎えたなぁ。」
「軍人ならば仕方がない事とはいえ、ちょっと寂しいですね。」
「最も、フリーの私には用のない話だがな…。」
「そ、そうなんですか。」
(なんだ、お兄ちゃんはフリーなんだ、よかった^^)
パルメシア宇宙港に到着後、最終チェックで艦内に残っていたハラピーとマヤは
周りの風景を眺めながらそんな話をしていた。
ハラピーは、年明けの銀河西暦2986年1月1日から2年間の予定で、
「パルメシア共和国駐留艦隊司令官兼帝国軍高等弁務官」として赴任した。
この職務は、帝国と唯一外交活動のあるパルメシア共和国の大使としてエルディア帝国大使館での職務を遂行するという一見政治的能力を問われる職務に見えるが、
さほど帝国と積極外交を行っている訳でもなく、先の第28代皇帝の後継争いのからみで独立は認めているが、ひとたび帝国に不平不満を言おうものなら即座に帝国に併合させる腹積もりなので、主な仕事はパルメシアの監視がメインであとは別にあれこれする事はあまりない職務で人気どころか左遷的な人事として帝国内で暗黙の不人気職種の1つとして有名であった。
「嫌われたモノですね、准将。」
前線復帰して1番一緒にいるクルート・サガス少佐が話しかける。
「別にそうは思わんよ。貴官と一緒の所属になる前は意図的に前線から外されてたから、また元に戻ったと思えばいいさ。」
「そういうモンですかねぇ。」
「出世を目指す部下には悪いがこの2年間は昇進はないと思っていてもらわんとな。」
「残念です。」
「そう思うのが普通なのだろうが、私はそうは思わなくなってきた。」
「…といいますと?」
「軍人ではある以上戦争に行くのは当然の事なのだが、辺鄙な所に飛ばされ戦いに参加する機会がないという事は、戦果を上げる事が出来ない為昇進する事はないが戦争に参加すないので戦死する事もないという事になる。」
「はぁ、そう言われればそうですね。」
「おそらくこの先大きな戦いがあると思うから、今は慌てる必要はない。よっくりしようじゃないか。」
サガス少佐は複雑な表情を浮かべていた。
そりゃそうだ、指揮官が出来れば戦わずにいたいなんて聞くのは初めてだろうから。
でも、ハラピーは予想出来ていた。
前線復帰の時のギルドラドとの戦闘、先の反乱の時に辺境銀河連合が絡んでいた事。
これらから予想される事は、帝国に対して大規模な戦闘が近いうちにあるという予言めいた推測であった。
だが、その予想は当たってしまうのだが、その話はまた後日語られるだろう。
銀河西暦4985年(帝国歴685年)12月30日
ハラピーは、パルメシア共和国内のエルディア大使館に入居した。
そして、翌日31日最初の仕事となる前任の大使との引き継ぎが始まった。
- つづく -
Posted at 2008/02/28 19:23:12 | |
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【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年02月21日
第5章 パルメシアの涙
「ベレスティングの乱」終結後、ハラピー達は首都星ゴットオブアクアスターに帰島していた。
今回の働きの功労で1週間の休暇をいただいた総員はそれぞれ休暇を過ごすべく散っていった。実家へ帰る者、旅行へ出かける者、趣味に没頭するモノなど各人有意義に休暇を満喫していた。
そんな中、ハラピーとマヤはこの休暇を利用してハラピーの保護者でありマヤの父君にあたる「ファルコム・アルジェリーニ神公爵」と久々に会ったのだった。
「いや、久しぶりだな。2人とも元気でなによりだ。」
アルジェリーニ神公爵が2人をねぎらう。
そしてそれぞれあった出来事を話し合う。
「私は今でもマヤが軍に務めるのは本当は反対なのだよ。」
マヤはアルジェリーニ神公爵はひとり娘である。当然、将来は結婚してアルジェリーニ家の後継者としての責務があるのだが、そのひとり娘が軍人でもしもの事があればアルジェリーニ家はそこで途絶えるのだから、反対するのは至極当たり前の意見であった。
だが、貴族社会のしきたりで
「貴族の称号を持つ家のうち、1人は必ず軍籍に在籍しなければならない。」
という規定があり、ひとり娘でも軍に出さねばならなかった、という訳だ。
「この国に生まれた以上仕方のない事と思ってます。でも父上の娘に生まれた事には感謝しています。」
マヤはその言葉を真っ直ぐな瞳で答えた。
「そっか。すまんな。」
あとは血を分けた親子、語らずとも理解し合っているのを見たハラピーは心からこの家に縁が出来た事に感謝するとともに、この人達の為に頑張らねばと心に誓うのであった。
1週間後、ハラピー達には新たな命令が下された。
「戦略艦アンヴァイセンを旗艦に500隻の艦艇を配備し正式に第18艦隊を設立する!」
そしてその最初の任務地はパルメシア共和国だった。
パルメシア共和国
今から約100年ほど前、第27代皇帝クチューナ・アクアメイス大公爵が急死した。
大公爵には2人の息子がいた。兄ポラード・アクアメイスと弟タッカード・アクアメイスの2人なのだが、第27代皇帝が後継ぎをまだ定めていなかった為、後継者争いが始まってしまった。
兄ポラードは貴族占有主義を掲げ、弟タッカードは人民共存主義で互いが争う形になったのだが、各貴族の派閥が以外にもどちらかに支持が偏らずそれなりに拮抗した指示になった為帝国内で激しい争いが行われた。
人為的及び資金的に優位だった兄ポラード・アクアメイスの方が終始優位に展開していたがお互い決定打を討てぬまま1年が過ぎていた。
このままでは最終的には負けると判断したタッカード・アクアメイスはこの戦況がこう着しているうちに自身の保身も含め妥協案を出した。その内容は皇位を兄ポラードに譲る代わりに1地区を自分に統括させてくれ、と。
この後継者争いで帝国内は疲弊・経済の悪化が顕著に表れていた為、これ以上の長期戦は避けるべきとの支持者の意見もあり、その示談を了承する事にした。
元々血を分けた兄弟、どちらかが死ぬまで争うのも気がひけたというのが真実だろう。
よって、兄ポラードが第28代皇帝に就任、弟タッカードは当時自治領だったパルメシア自治区をエルディア帝国より独立し「パルメシア王国」を建国したのだった。
やがて、人民共存主義を謳い文句にしていたタッカードは自身の死の直前、王制を継続しつつ共和制を取り入れた王都共和制に移行する遺言を残しこの世を去った。
そして、その死後国名を「パルメシア共和国」に改名した訳だが、帝国との共存を断る訳にはいかず治安軍として帝国軍が鎮座して今に至っていた。
だいたい2年周期で治安軍の総司令官が艦隊ごと入れ替わるシステムですっと推移していたのだがこの任務は昇進の評価があまりない為非常に人気がなく任命にも常に苦労していたのだが、極秘裏でハラピーの昇進スピードを恐れた帝国4元帥の1人帝国艦隊総司令長官ハワード・ブリマシュアン元帥がこの人事に口を挟んだのだった。
この元帥は、過去空戦隊エースだったハラピーを急速に昇進するのを止めるべくエルディア兵器科学研究所行きにした経緯もありハラピーにとっては天敵ともいえる上司であった。
それは、なぜかというと、ブリマシュアン元帥とハラピーの保護者アルジェリーニ神公爵との確執にあるのだが、またそれは別の機会に話す事もあろう。
そんな訳で、ハラピー揮下第18艦隊は一路パルメシア共和国に向けて出発するのであった。
- つづく -
Posted at 2008/02/21 19:36:26 | |
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