2008年02月04日
第4章 ベレスティングの乱 4
惑星スチュングレーの衛星軌道上の制空権を確保したハラピーは、いよいよ惑星に降下しての地上戦に向けての準備に入っていた。
「基本戦略は、まず軍事宇宙港を制圧。しかる後に放送局・警察本部のみ占拠を目指しつつ本体はベレスティング男爵邸の制圧に全力を掛ける。」
ハラピーは、幹部を集め作戦概要を説明した。そして、更に
「今回の作戦指揮はハーデルガイム中佐に全権を委託する!」と付け加えた。
幹部一同も同意見だったので、誰からも異論を唱える者はいなかった。
銀河西暦4985年(帝国歴685年)11月16日、上陸作戦は開始された。
戦略艦アンヴァイセンより地上に向けて大気圏突破型ミサイルにより男爵邸周辺に攻撃を仕掛ける。
「まさかハラピーがあんなに怒るとは思わなかった。どうしよう?」
おろおろするベレスティング男爵。
「男爵様、上空からこの邸宅の周辺に向けてミサイル攻撃を受けております。我々をこの邸宅に封じ込めるようです。今下手に出ては危険と思われます。」
「くそっ、辺境銀河連合の奴らにうまく乗せられたわ。よくも騙しやがって…」
「…。(もう、これは終わりだな)」補佐官はもう覚悟をしていた。
男爵邸の周辺に攻撃を仕掛けそこに注意を引き付け、シャロンの率いる陸戦隊は軍事宇宙港に降下し、一気にこれを占拠する事に成功した。
だが、それと同時期にハラピーの元に高速通信が入った。
「ベレスティング男爵の死体と引き換えに残った者たちへの身の安全を願う。それが叶わぬ時は最後の1兵まで戦う!」と。
「一体、何が起こったのだ?」
「仲間割れか?!」
艦内では、様々な憶測が飛び交うが、真実はこうだった。
「男爵、やめてください!」
「うるさい、私は逮捕されたらどうせ何だかんだ言われて死刑になるんだ。だったら、ワシに仕える者も同罪、ここで一緒に死んでもらう!」
そう言いだすと、近くにいる使用人らに向けて発砲し始めた。
「もう、むちゃくちゃだ。」
補佐官がそうつぶやくと、自身が持っていた銃で男爵を撃った。
「貴様ぁ~…、私に向けて撃つのか?!」
「男爵、もうあなたには誰も付いてはいきません。潔くここで天寿を全うしてください。」
撃たれた男爵はのたうち回りなだらその命を絶ったのだった。
「全面降伏を持って残りの者の生命の安全は保障しよう。」
「ありがとうございます。」
ハラピーは男爵の補佐官にそう告げた。
後に「ベレスティングの乱」と呼ばれた脱税から始まった反乱はこれで解決した。
だが、これでもう1つ判ったのが、辺境銀河連合が帝国に向けて戦火の火ぶたを切ろうとしている可能性が高いという事も…。
- つづく -
Posted at 2008/02/04 18:32:05 | |
トラックバック(0) |
【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年01月23日
第4章 ベレスティングの乱 3
「惑星バリワッシュの衛星軌道上に敵艦隊発見。数およそ100隻!」
サガス中佐から報告を受けた艦内では、その事も踏まえた中で作戦会議が行われていた。
「准将、現在の状況は極めて不利と言わざるを得ません。ここは味方の増援を求めるのが得策かと思われますが?」
参謀長のドルフィガ・リュッケ中佐の言い分は最もだった。
「その必要はない、参謀長。」
「なぜです?」
「ちょうどいい機会だ。ここで艦首に搭載している大型主砲を使おうと思う。」
「大型主砲ですか?」
「ああ、ドラゴンキャノンを使う絶好の機会だ!」
その主砲の威力がまだわからないので、一同の不安はまだぬぐえていなかった。
「では、早速準備にかかれ!」
戦略艦アンヴァイセンに搭載された艦首大型主砲ドラゴンキャノンは、艦の主電源であるモノポール鉱石から発せられる発光エネルギーを艦の動力エネルギーと別に凝縮して巨大エネルギーを作りそれを放射するシステムになっている。
そして、エネルギー凝縮後敵艦隊が待つ惑星スチュングレーの衛星軌道上に到着した。
「敵艦隊捕捉、向こうもこちらを識別した様子。こちらに向かってきます。」
敵艦隊の概要は、巡航艦クラスがメインの小艦隊であった。
「敵艦隊中央へ照準固定、発射準備完了しました!」
「よし、いっちょデカイ花火を打ち上げるとするか。」
敵艦隊がもう目の前まで迫ってきた。
「ハラピー、大丈夫なの?」
シャロンが不安そうに聞いてきた。
「ま、見てなって。」
ハラピーはやる気満々である。
「あんた、全然不安そうな素振りもないけど、どう思ってるの?」
ハラピーの一歩後ろで何事もなさそうに立っている副官マヤ・アルジェリーニ中尉にシャロンが声を掛ける。
「お兄ちゃ…じゃなかった、ハラピー准将が大丈夫と言ってるんですから、絶対大丈夫です。」
「言い切ってるよ、この子は?!」
その自信ありげな様子に、ただただ驚くばかりのシャロンであった。
「ドラゴンキャノン、発射!」
敵が射程距離に入った所で、ついにその砲火が放たれた。
巨大なエネルギー光線が渦を巻きながら敵艦隊に向けて飛んでいく。
そして、その光に包まれる敵艦隊!?
「す…すごい!!!」
巨大エネルギーは敵艦隊を丸々飲み込んでいった。
「て、敵艦隊、ほぼ消滅…」
巨大エネルギー光線が敵艦隊に当たるとそこからの爆発が更に連鎖してその周辺の艦艇をも飲み込んでいき、瞬く間に爆散していったのだった。
そして爆発がおさまった後には10隻をも切った敵艦隊の残骸が漂っていた。
「これはすさまじい破壊力ですな…。」
艦橋ではそのすごさに言葉も出なかった。
「准将、残った敵艦隊が逃げていきます。」
「放っておけ。」
残った敵の艦艇は辺境方面に逃げていった。
「よし、これで制空権は確保した。」
衛星軌道上にいた敵はいなくなったので、惑星スチュングレーは丸裸状態になった。
「ベレスティング男爵に降伏勧告を行ってくれ。」
アンヴァイセンからベレスティング男爵のいる宮殿に高速通信で降伏勧告を掛けるべく通信を開き、そして回線が繋がった。
「ベレスティング男爵、惑星を守っていた艦隊はもういない。おとなしく降伏して法の裁きに従うように。」
「うるせい! 混血貴族ふぜいがあれこれ指図すんじゃねぇよ!」
ハラピーが男爵に降伏勧告をしたが、男爵は全く降伏する気配はなかった。それどころか無礼極まりないセリフを浴びせる。
「ひどい言いよう…。」首脳部全員が凍りつく。
「言いたい事はそれだけか。」
ハラピーはその下品な言葉を聞き流してそう言った。
「ふん、どうせお前の親代わりのファルコム・アルジェリーニ神公爵も平民から搾取すてのうのうと贅沢三昧の生活をしてるんだろう。俺がちょっとパクったくらいでピーピー言うな、混ざりモン風情のくせに…」
「ひどい、ひどすぎる…」
そのセリフを聞いたマヤが嗚咽を漏らす。
ハラピーは自分への罵りは聞き流せるが、これまで世話になったファルコム・アルジェリーニ神公爵への無礼極まりない発言については許す訳にはいかなかった。
「男爵、そこを動くなよ! 私自身の手でその口ごとかっ捌いてやる!」
ハラピーの怒りが頂点に達した。周りの人たちも始めて怒りをあらわにするハラピーに驚くばかりであった。
「シャロン・ハーデルガイム中佐。」
「何でも言って、ハラピー。」
「陸戦隊の出動準備を。これより惑星スチュングレーに上陸してベレスティング男爵を逮捕する!」
「了解したわ、准将!」
こうしてベレスティングの乱は最終局面を迎えたのであった。
- つづく -
Posted at 2008/01/23 19:07:23 | |
トラックバック(0) |
【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 趣味
2008年01月09日
第4章 ベレスティングの乱 2
銀河西暦4985年(帝国歴685年)、月も変わって11月の初旬、
戦略艦アンヴァイセン以下10数隻はベレスティング男爵のいる惑星スチュングレーまで
あとわずかな所までやってきていた。
「まずは、惑星周辺に待ち伏せがあるかどうかだ。サガス少佐、索敵を頼む。」
「はっ、早速索敵を開始します。」
先日帝国国税局が脱税疑惑の調査のため惑星スチュングレーに査察団を派遣したのだが、
派遣したメンバーが迎撃を受けその時にはっきりと帝国に対する反抗的言動及び反旗をひるがえす対応もあった為今回ハラピーを派遣したのだが、まだ迎撃されたのが規模がはっきりわからないので、まずは敵の戦力がどのくらいかを把握するため索敵の指示を出した。
「索敵の間、2時間の休憩を許可する。各自食事等を済ませよ。」
おそらくここで敵が発見されればすぐさま戦闘になる可能性が高い為、ここで休憩を取らせておこうとの考えだった。
ちなみに、「休憩をとれる時は取っておく」というのがハラピーの基本戦略でもあった。
ハラピーは艦内の状況確認で見回りをしていたその時、陸戦隊副隊長ブラッディ・ハンセン大尉と出くわした。
「よっ、おたくの上司は元気かい?」
「…上司というのは中佐の事ですか?」
「当然だ、君らから見て上司は彼女だけだろう、違うか?」
「…そうですな。今となっては…」
そこから2人の間に沈黙が走る。そして口を開いたのは意外にもブラッディの方だった。
「中佐がいなければ我々はこの世に存在しなかった…。」
「…」
ハラピーはブラッディが話すのをただ待っていた。
「そう、あれは2年前のことです。」
4983年(帝国歴683年)12月 惑星バリワッシュ
「ハンセン中尉、我々は完全に包囲されたようです。」
「中尉、わが部隊の生き残りは全員で41名であります。」
部下から報告を受けるハンセン中尉。
この年、エルディア帝国は辺境銀河連合との戦闘を行っていた時期だったのだが、帝国と辺境銀河連合の国境付近の惑星バリワッシュで大がかりな地上戦が行われていた。だが、帝国はこの惑星の地上戦で指揮官ホーラ・ビンバット佐の失態で戦線崩壊の局面を迎えていた。
当時からブラッディの所属する「第24陸戦隊」は歴戦の強者揃いでこの国境に面する惑星の防衛に一役買っていたのだが、ホラー・ビンバット大佐はその名声にお漏れ簡素な戦術で対応しようとした為、この部隊せん滅が大命題の辺境銀河連合軍2個陸戦部隊が挟撃線を展開し、まんまと罠にはまった帝国軍第24陸戦部隊は崩壊の1歩手前まで被害をこうむっていた。
「もう、弾薬も少ないであります。」
「中尉、ここで朽ちるのでありますか?」
「…、くっ」
ほぼ万策は尽きていた。あとは玉砕か自決しか他に考えが浮かばない状況にまで追い込まれていた部隊のメンバーはその選びたくない究極の選択をせねばなたなかった。
その時、
「中尉、ヘリの大群がこっちに来ます。」
「こちらに我が軍のヘリが来る予定は聞いていない…。」
「という事は更に敵の攻撃が…」
「うわ~~~」
「落ち着け!」
そうは言ったが、自身もどうすればいいのか見当さえ付かなかった。…が、
「ヘリから何かが落ちてきます。まさか、爆弾?!」
「…」
そう思ったが、落ちてきたのは木枠のコンテナだった。
落ちた瞬間木枠が壊れ出てきたのは多数の武器・弾薬・と水であった。
「中尉、これは?」
「…ん、このマークは?!」
そうその木枠に掘られた印はほかでもない帝国軍の印であった。
「どうやら、間に合ったようだ。」
「そうですな、ハーデルガイム大尉。」
ヘリ部隊を率いてきたのはシャロン大尉が残存のヘリをかき集めて援護をするために手配したものだった。
「アホ上司が気が狂ってどっかにいったおかげでスムースに事が運べたわ。」
「大尉の迅速な対応でなんとか援助物資を届けれましたね。」
「本当は勝手にやった事だから軍規モノなんだけどね。」
「誰も大尉を訴える兵士はいませんよ。」
「ありがと。ではもう一仕事お願いね。」
「空からの支援攻撃ですね。」
「ええ、全ヘリに通達。速やかに敵に攻撃をかけて!特に戦車を先に殺ってね。」
こうして、予想外の空からの攻撃に辺境銀河連合軍は足並みが崩れ、その間隙を縫ってなんとか帝国軍陸戦隊は命からがら逃げる事が出来たのだった。
「あれから我が部隊は解散するはずだったのですが、ハーデルガイム中佐が我々の部隊長になってくれたおかげでこうして今があるのです。我々は一生ハーデルガイム中佐に忠誠を誓う所存であります。」
「おいおい、軍人が1個人に忠誠を誓うというのを公にいうのは控えた方がいいぞ。」
「…准将はその事を上層部に報告するのでありますか?」
「別に報告する気はないね。そもそも告げ口は性に合わんし。」
「…ふ。」
「…あははは。」
「彼女をサポートしてやれよ。」
「はっ!」
こうして2人はそれぞれの持ち場に戻って行った。
「准将、索敵に行ってたサガス中佐からです。」
「つないでくれ。」
「惑星バリワッシュの衛星軌道上に敵艦隊発見。数およそ100隻!」
「100隻だと!?」
参謀長のドルフィガ・リュッケ中佐が声を露わに叫ぶ!
そしてサガス中佐から報告を受けた一同はその数に驚きを隠せなかった。
ただ、ハラピーを除いては。
- つづく -
Posted at 2008/01/10 00:09:48 | |
トラックバック(0) |
【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 日記
2008年01月02日
第4章 ベレスティングの乱 1
「ベレスティング男爵がクーデター?」
エルディア帝国は、貴族であろうが納税義務を負っている。
なぜなら平民の収める税金は各領土の領主(ほとんど貴族)に収め、そこから今度は領主が帝国に税金を納める形を取っているからである。
だが、中にはその税金をごまかそうとする貴族も少なくない。
そこで『帝国国税局』は完全に公帝の直属省庁となっていて税金支払のごまかしをする者には相応の罰則を与えれるようになっている。
だが、実情は一部の貴族ではいくらかごまかしが効き、その事は暗黙の了解となっているのだが、当然それを快く思ってない貴族もいるのである。
まあ、それは至極当たり前の怒りなのだが、帝国国税局は一部を除き他の貴族のこまかしは許してくえないのであった。
過去にも何人もの貴族が脱税により降格あるいは追徴課税を負っている。
そして、今回のベレスティング男爵の件もその中の1つであるのだかちょっと様子が違うのが、国税局の調査にきた人たちを迎撃し帝国に反旗を翻したのであったからだ。
その為今回、帝国軍はベレスティング男爵討伐の命を下したのである。
まずはハラピーに警告・調査をさせ、場合によってはそのまま制圧も許可する命を決定したのであった。
「今回なんでシャロンが派遣されたのか、この命令書でやっとわかった。」
そう、シャロンは陸戦隊の隊長として今回この艦にやってきたのだが、本来戦略艦に陸戦隊は必要ないはずである。
だが、そういう思惑があるので陸戦隊を連れていくのだという訳だ。
「しかし、シャロンがまさかあのローゼンバトラーの隊長になってるとはなぁ。」
ローゼンバトラーとは、元々は帝国軍陸戦隊の1部隊であったのだが、数々の成果を上げいつのまにか帝国最強部隊となり今では帝国独立陸戦隊として重要な作戦での戦闘に参戦させるようになっていた。
今回その部隊が参加するという事で、激戦を覚悟しなければいけなかった。
「やれやれ、とんでもない命令をくれたもんだ。」
「まあ、どうせ地方のバカ男爵がいきがってダダこねてるだけでしょ。」
ハラピーとシャロンが士官用の喫茶室で話をしていた。
「いや、それよりも気になってる事があってな。」
「何が?」
「普通、脱税くらいで帝国に反旗を翻すにはリスクが大きいはずだ。1地方領主の軍備はたかが知れてる。それでも帝国に刃向うには何か彼らをサポートする組織ないし団体があるのでは?と思ってな。」
「何があるっていうの?」
「それを調査するのがまずは先だな。」
「もう、脱税は決まってるんだから、到着してからさっさと事を済ませた方がよくて?」
「まあ、行けばわかるさ。」
「ふ~ん…。」
どうも釈然としないシャロンであったが、実際ここであれこれ仮定を並べてもそれが確定かどうかは行ってみないとわからないので、それ以上は何も言わなかった。
今回の作戦には戦略艦アンヴァイセンの他に空母マーバラと輸送船10隻・工作艦2隻が随行する事になった。
銀河西暦4985年(帝国歴685年)10月。
まだこの年が終わるにはまだ早かった。
Posted at 2008/01/02 20:21:30 | |
トラックバック(0) |
【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 日記
2007年12月20日
エルディア蒼龍伝 12
第3章 艦長就任 3
駐留ステーション別館
「いよいよ完成品とご対面だな。」
ハラピーは研究所にあった未完成からどう変わったのか期待しながらドックにやってきた。
「お~、すばらしい!」
戦略艦「アンヴァイセン」
全長 750m(通常の戦艦が350~400m)
艦首巨大主砲「ドラゴンキャノン」を筆頭に主砲3門・副砲5門を設置。
艦内には戦略特化型コンピュータ「マイクラ」により第1艦橋の立体レーダーでの全体把握能力から全艦への連携指示をリンクさせるシステムも完備し、指揮系統の統一をしやすくしている。(まだ実戦配備してないので試験段階)
「こいつに誰が乗るのかと思ってたが、自分が乗れるとは思わなかったな。」
しみじみ思いながら艦を見ていると、誰かが近づいてきた。
「何、ボ~っとしるのよ。」
「…。」
その聞き覚えのあるツンケンした声の主は、「シャロン・ハーデルガイム」その人であった。
「久しぶりね。」
「ああ、3年半ぶり…だったっけ?」
「よく覚えてるわね。」
「忘れるもんか、ここ最近で女性にひっぱたかれたのはその3年半前から今に至るまで全くなかったからな。」
「あ、あれはあんた誘っておいて来なかったからよ。」
「弁解も聞かずに、か?」
「あとから聞いたわ。さすがに悪かったと思ってる。」
「で、お詫びのキスは?」
「本気で誘う気ないのにそういう事いうからひっぱたくのよ。」
「あははは。」
「はぁ…。」
そんな3流の夫婦漫才的な会話で再開したハラピーとシャロンであった。
やがて、搭乗予定の乗組員が続々集結してきた。
「艦長、乗組員名簿です。」
そういって名簿を持って来てくれたのは、参謀長になるドルフィガ・リュッケ中佐であった。
「ありがとう。」
そう言ってハラピーは名簿を受け取り目を通す。
確認している中で、1人の乗員の名前の所で目が止まった。
それと同時にハラピーに声をかける人物がいた。
「久しぶり!」
その聞き覚えのある声を忘れるはずはない。
「お兄ちゃん!」といって抱きついてくる女性軍人。
「まさかと思ったが、やっぱり『マヤ』か?!」
「うん、やっと一緒の部署になれた!」
「…。」
「あれ、うれしくないの?」
「戸惑ってるんだ。」
彼女の名前は「マヤ・アルジェリーニ」。
そう、今から11年前の帝国歴674年、ハラピーの保護者となったファルコム・アルジェリーニ神公爵の1人娘である。
1人っ子だったマヤはハラピーという仮とはいえ兄弟が出来たようでうれしかったそうだ。ハラピーもお世話になる方の娘という事で人一倍優しく接してきたのでハラピーが士官学校に行くまでの3年間で本当の兄弟と同じくらいの間柄にまでなっていた。
そして、軍人になってからはさすが合う機会も少なくなってたがその絆はずっと繋がったままであった。
(本当は軍人になんかなって欲しくなかった)
ファルコム・アルジェリーニ神公爵は、以前ハラピーにあった時に「軍人になって父上の役に立ちたい。」と言ってマヤが軍人になった事を聞いていたが、それはハラピーも同じ意見だった。
だが、ハラピー自身も軍務で時間が取れず結局マヤは士官学校を首席で卒業し軍令部に勤務していたのだが、まさか前線に配属になるなんて上級貴族の女性の子族だと基本的には本人が希望しなければ前線配属はありえないのである。
「まさか、自分で志願したのか?」
「当然じゃない!それくらいは知ってるでしょう。」
「だから、戸惑ってる、と言ったんだ。」
「…そっか。でも、わかって欲しい。」
「ああ、言って聞くようなマヤじゃないもんな。」
「ぷぅ~、そこまで言う?!」
「あははは。」
(ま、配属になった以上仕方ないな)
そう思う中で、「(何かあった時は必ずたすけなければ!)」と決意するハラピーであった。
そして、全乗組員350名が全員揃った。
艦長 ライオネル・ハラピー准将
参謀長 ドルフィガ・リュッケ中佐
副参謀 シャロン・ハーデルガイム中佐
陸戦隊隊長 同 上
空戦隊隊長 クルート・サガス少佐
副官 マヤ・アルジェリーニ中尉
そして最初の任務がグンレイブより言い渡されたが、その指令書には予想外な指示が明記されていた。
「クーデターを調査・制圧せよ!」と。
- つづく -
Posted at 2007/12/20 21:47:53 | |
トラックバック(0) |
【自作小説】エルディア蒼龍伝 | 日記