2008年11月22日
第6章 すれ違い 5
「どういう事か説明してもらおうじゃないの。」
エリカが仁王立ちで宮本を凝視している。
「え、えっとこれには深~い事情があって…」
あたふたする宮本。
だが、ここで引き下がらない方が1名。
「別にあなたがどうこう言う筋合いはないんじゃなくて?」
「く、釘抜さん!?」
釘抜さんが宮本をかばうようにデンと前に出る。
それにはさすがにちょっとたじろくエリカ。
「確かに胸触られたのには驚いちゃったけど、あなたには関係ないわ。」
「いえ、大いに関係ありますっ!」
「へぇ、何、宮本クンと関係があるって言うの?」
「え…いえ、あのぅ…」
エリカ自身もまだ自分の気持ちが整理できていないので、いきなり核心を突かれ動揺する。
「ねえ、宮本クンはどうお考え?」
釘抜さんが宮本に迫る。
「え? じ、自分は…」
もじもじする宮本にイラっとした釘抜さんはズバッと話をしてきた。
「私は宮本クンが好きよ!」
「え~!?」×2
その言葉に驚く宮本とエリカ。
「私ははっきり言ったわよ。今度はエリカさんがはっきり言う番よ。」
「…わかりました。」
(ドキドキ…しっかりしろ、私)
ここらではっきりしておかなければいけないのはエリカ自身も宮本もわかっていた。
ただ、はっきりとしたきっかけがなかっただけなのだ。
「私は恭介が好き!いくら大先輩の釘抜さんでも後には引けないわ!」
はっきりとした口調でエリカは言った。
「さあ、今度は宮本クンがはっきりする番よ。私とエリカさん、どっちを選ぶの?」
「恭介…」
デンと構えている釘抜さんに対して、エリカはああは言ったもののまだ動揺があった。
(オレはどっちを選ぶのか?)
宮本の葛藤が始まった。
エリカとは過去に色々あったものの縁があって再開した。
そして、今回釘抜さんから突然とはいえアプローチされた。
かたや有望株とはいえまだエリカは若手。対して釘抜さんはこの業界では誰もが知ってる大先輩である。1人の男性としてだけで考えれば答えは出るのだが、業界内の事情を考えればすんなりと答えが出せないのも事実だった。
(これから出す答えにオレは後悔しないか?)
宮本自身も葛藤している。
「どっちなの、宮本クン?」
釘抜さんが答えを追及してくる。
(こっ、ここは男を貫きとおすべきだ!)
宮本の答えは決まった。
そして、その答えを告げようとした瞬間、釘抜さんがとんでもない発言をしてきた。
「宮本クン、私を振った時はどうなるか分かってるでしょうね?」
「え!?」×2
この言葉にはエリカも宮本も度肝を抜かれた。
(そんな、釘抜さんがそんな事を言うなんて…)
エリカは釘抜さんに対して初めて尊敬とは違う気持ちが芽生える。
「さあ、答えなさい宮本クン。」
釘抜さんが更に追及してくる。
「お、オレは…」
宮本がしゃべろうとした瞬間、先にエリカが話し始める。
「私は恭介が好き。たとえ釘抜さんでも譲れない!」
その言い方は自分自身の想いを精一杯込めた口調だった。
「…で、宮本クンの答えは?」
釘抜さんが静かに宮本に言う。
「自分・宮本恭介は佐藤エリカを愛していますっ!」
「それは答えなのね。後悔しないわね?」
「はい、たとえ釘抜さんにうちの仕事を今後断られたとしてもすべて責任は自分が取ります!」
釘抜さんの言葉に今はっきりと宮本の答えが出た。
「ふっ、あははははは。」
「?」
「?」
突然大笑いし始める釘抜さん。
「あははは、なるほどね。」
釘抜さんは1人で大笑いし1人で納得したが、宮本とエリカはなぜ釘抜さんが
大笑いし始めたのかまだ理解していなかった。
「要は宮本クンはもし私が振られたとなったら仕事もキャンセルして今の作品が滞ると思ったのね?」
「…は、はい。」
宮本は正直に思ってた事を告げた。
「私も振られたくらいで仕事を辞めるなんで事は言わないわよ。」
「私も釘抜さんがそう言うんじゃないかと思ってました。」
エリカも正直にそう言う。
「おい、こら2人とも。勝手に勘違いしないでよ。私が言いたかったのは、私を振ると言う事は宮本クンがエリカさんを選んだと言う事だから、男としてちゃんと責任を果たしなさいよ、という意味よ。」
ちょっと怒った口調で釘抜さんは言った。
どうやら宮本もエリカも完全に勘違いしていた。
「すみません。」×2
2人はハモりながら釘抜さんに謝った。
「まあ、誤解が解けたのならいいわ。」
もう釘抜さんも怒った様子はなかった。
まあ、ああいう風に言われたらそう誤解してもおかしくはなかった。
言葉というものは簡単なようで実に難しいものである。
その事を肝に命じた3人であった。
後日、宮本は今の住まいから違う所に引っ越しを決める。
理由は今後は1人住まいではなくなるからだ。
「恭介、この荷物はここでいいの?」
「あ、そこでいいよ。」
「恭介って案外荷物持ってなかったのね。」
「放っとけ!w」
「あははは。」
いつかは宮本とエリカが一緒に暮らす日が来る…かどうかはまだ定かではない。
なぜなら…
「遊びにきたわよ~!」
「え、釘抜さん!?」
「私も来ちゃったわよぉ。♥」
「げ、井の頭喜久子さんまで!?」
「まだまだいるわよぉ。」
「な、なんで岩清水さんまで…」
「こんなおもしろいネタ、見逃す手はないわ。」
「…冷やかしですか!?」
「当然よねぇ!」
宮本とエリカの周りは今日も賑やかだった。♪
-おわり-
ちょうど20回という節目でこのお話は終わりです。
これまで見ていただいた方、どうもありがとうございました。
宮本恭介と佐藤エリカがその後どうなったかは、みなさんのご想像にお任せします。w
声優好きの私としては、こういうパロディ小説はどうなの?と思いながらここまでやってきましたが、後悔はしてません。文才がない分、読むづらい面があった事については反省してますが。(爆)
また違う形で復活するかどうかは神のみぞ知る!?w
Posted at 2008/11/22 18:17:41 | |
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2008年11月16日
第6章 すれ違い 4
釘抜さんからデートっぽいお誘いを受けた夜、宮本は新しい携帯の説明書と格闘していた。
「機能が多すぎて使いきれねぇ。(爆)」
最新機種のDOKODEMO・N906ⅰを購入した宮本だったが、それまでが902シリーズだった為、多機能なのはいいのだがそのすべての機能の4分の1くらいしか理解できていなかった。
(まあ、電話とメールが出来ればいっか。)
大体、最新機種ユーザーの半分以上はこういう感じだと思うが、若い宮本でもその1人だった。
そして、適当に携帯を放った瞬間に携帯のベルが鳴る。♪
(誰だろう?)
表示された画面を見るとそこには「佐藤エリカ」の文字が。
慌てて電話に出る宮本。
「も、もしもし?」
「あ、恭介? やっと繋がった。♥」
電話の向こうで安堵の気配を感じさせるエリカ。
「もう、何で今日電話繋がらなかったの?」
「あ、えっと…」
「え、聴き取れない、ナニ?」
(あ、釘抜さんの件は黙ってた方がいいな)
宮本はそこで隠し事を作ってしまった。
「うっかり電話落して携帯壊しちゃって。」
「あ、そうなんだ。」
ここでは、たあいのない会話で話が済んだ。
「…なんですって。」
「へぇ、そうなんだ。」
「そういえば、釘抜さんもうっかりが多いらしいわよ。」
「く、くぎぬっゲホッ…」
「ちょ、ど、どうしたの?」
「い、いや…」
「な~んかアヤシイ?」
「な、何が?」
「何でそこでどもるの?」
「そ、えっと、あれだ、長話だから喉が乾いちゃってさ…」
「ふ~ん、じゃ私と長話だと色々と問題が出てくるんだ…。」
「お、おい、それは考え過ぎだってば。」
「…まあ、いいわ。じゃ、明日事務所で。」
「ああ、じゃ明日。」
こうして電話を終える宮本だったが、やはり動揺があったのは隠せてない気がした。
(まあ、明日ちゃんと説明すれば大丈夫だろう)
そう思う宮本だった。
翌日、アルデバラン事務所。
「おはようございます。恭介いますか?」
「あ、おはようエリカくん。今日も通い妻かね?」
「もう定岡さん、茶化さないでくださいよぉ。」
エリカの出社に対応してきたのは、定岡主任だった。
「で、恭す…じゃなかった、宮本はいますか?」
「あ、奥の部屋にいるから勝手に入ってくれていいよ。」
「じゃ、お邪魔しま~す。」
宮本がいる奥の部屋に向うエリカ。
「あれ、そういうえば宮本は今釘抜さんと一緒だったが…ま、いっか。w」
これが火種の元になるとは思ってもいなかった定岡であった。
一方、エリカがやってくるほんの10分前の事務所にて。
「おはようございます。」
「おはよう…って、アレ、釘抜さん?」
「はい、宮本クンに用があって来ました。」
「あ、そう…。ちょっと待ってて。」
(何で釘抜さんが来るんだ?)
定岡はその事が不思議で仕方がないと思いつつも宮本を呼んできた。
「若坊、お客さんだ。」
「あ、ありがとうございます、定岡主任。どなたですか?」
「ああ、釘抜さんなんだが。」
「え、ええ!?」
かなり動揺している宮本。
「お前、何やらかした?」
「やらかした、って何です?」
「今日予定のない釘抜さんがうちの事務所に若坊宛で来るって事はお前が何か粗相をした意外に考えられん!」
「そ、そんな事はないはすですが…」
「まあ、いい。とりあえず行け。」
「は、はい。」
慌てて玄関に向かう宮本。そこには確かに釘抜さんの姿が。
「お、おはやうございます。」
「ナニどもってんのよ。w」
クスクス笑う釘抜さんだったが、宮本の心境は穏やかではなかった。
「な、何か私粗相をしましたか?」
「は?」
「いや、ですから今日の訪問は私に対するクレームなのかと思って…」
「クレーム? あははは。」
豪快に笑う釘抜さん。
「や、やっぱ、僕何かやっちゃいましたか?」
心配そうに話をする宮本。
「あははは、違う違う。そういう件じゃないわよ。」
「…では、何語とでしょうか?」
動揺してるせいか訳わかんない対応をする宮本。
「いえ、ね、昨日の件で私あなたに電話するって言っておいてあなたの電話番号聞いてなかったから、聞きにきただけよ。」
「エ…あ、そ、そういう事ですか。」
その場にへたり込む宮本。
「ちょっと、どうしたの宮本クン?」
なぜその場にへたり込むのかわからない釘抜さん。
そして、その理由を説明する宮本。
「な~んだ、そういう事か。」
「勘違いでしたね。」
理由がわかりお互い笑い合う2人。
「…って訳で電話番号教えて。」
「あ、はい。ちょっと待って下さいよ。」
携帯を取り出す宮本だったが、ここでポケットから携帯を出す時、持ち損ねたせいで落としそうになる。
「あ、あわわわ…」
「あ、こ、こっち!?」
手から弾いていった携帯が釘抜さんの方に向っていく。
「ま、待て。」
飛んでいく携帯に手がかかるがその勢いでまだ前に手が伸びる。
そしてその先には釘抜さんの胸が!?
「わっあわわわ!?」
思わず釘抜さんの胸に触っている宮本。
「きゃあ~!?」
あまりの出来事で思わず大声をあげる釘抜さん。
そこにちょうどやってきたのは、ナント…
「…ナニ、この大声は!?」
ちょうど奥の部屋に到着したエリカが大声と同時にその場に現れる。
「ちょっと恭介、あんた何で釘抜さんの胸触ってんのよ!」
「え…あ、こ、これは…」
非常にヤバイ状況に。(爆) そして、3人とも絶句…。
-つづく-
次回も一応不定期。
Posted at 2008/11/16 17:11:58 | |
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2008年11月10日
第6章 すれ違い 3
「はぁ…、また無駄な出費だよぉ。」
釘抜さんトコの愛犬まっしゅとまろんに携帯をダメにされた宮本は
翌日、DOKODEMOショップに携帯を買いにやってきた。
「順番待ちかぁ。」
席は満杯だったので、誰かが手続きを終わるまでは待たなくてはならなかった。
(見本でも見てどれにするか物色するか)
順番が来るまで色々と見本の携帯を見ていると、突然目隠しをされる。
「だ~れだ?」
急に目隠しをされ戸惑う宮本。
「さ~て、私は誰でしょう?」
「どこかで聞いた覚えがあるんですけど、どちらさんですか?」
「本当にわからないの?」
「わからないから聞いてるのです。」
「むかっ、こいつ結構鈍感なヤツ。」
仕掛け人が逆ギレしてた。w
「何なんですか、もう!?」
ナンデヤネンと言わざるを得ない。
(う~ん、目隠しをする手の感触は女性だと思うが…、待てよこの声に聞き覚えが)
「鈍感最低バカ変態!」
「勝手に目隠ししてその態度ですかい…って、あ~!?」
つい最近聞き覚えがあるそのフレーズ、ようやく目隠しの相手がわかった宮本。
「わかりました!」
「おぅ、ようやくわかったか?」
「はい。くっ…」
(待てよ、やられっぱなしじゃ何か負けた気がするのでわざと間違えてみよう)
ここでスケベ心が芽生える宮本。そして余計な事をやってしまう。
「このセリフ口調はそう、中田理恵さんですね!」
『中田理恵』釘抜理恵と人気を二分すつツンデレ声優の1人。
当然、色々な作品で一緒になる機会も多く同じ理恵繋がりで仲のいい2人だが、
ここで宮本に中田理恵と間違えられるのは少々プライドが許さなかった。
カチン!
スケベ心が宮本に厄災をおよぼす。
「バカ~っ!」
「のわっ!?」
さっきまで目隠ししていた手が離れたと同時にその手が宮本の目を攻撃した。
「シネッ!」
「うぎゃ~、目が目がぁ~!?」
そのまま眼潰し攻撃される。
「何すんですか、釘抜さん!」
「あれ、な~んだわかってたんだ。てへっ。♥」
「テヘッ♥…っじゃありませんよぉ。(涙)」
余計なスケベ心は身を滅ぼす事を肝に命じる宮本であった。w
「わるかったわね。」
「もういいですよ。」
釘抜さんが持っていたハンカチを宮本に渡す。
「悪かったわね、うちのまっしゅとまろんが携帯壊しちゃって。」
(さっきの眼潰し攻撃の方を先に謝って欲しかったんですが…)
いたたまれない気持の宮本だったが、ラチがあかないのでその件にはツッコまなかった。
「いえ、まあ携帯は買えば済む事ですから。」
優しく返答する宮本。
(な、何か可愛いぞ、この子)
釘抜さんは宮本に対して変な気持ちが芽生え始める。
「よし、お姉さんが携帯代出してあげる。」
「え、そうはいきませんよぉ。」
「何言ってるの、こっちに非があるんだからそれくらいはさせて。」
「は、はぁ。ではお言葉に甘えます。」
「うん、イイ子だ。♥」
最新の携帯は平気で5万円前後するので、まだ安月給の宮本には相当痛い出費になりかねなかった。先方が非を認めて払ってくれるというのだから今回は相手の立場も含めそれに従う事にした。
「どうもありがとうございました。」
「いえ、こちらこそごめんなさいね。」
「いえいえ。」
ニコっと微笑む宮本。
キュン♥
(な、なにこの気持ちは…)
宮本に対してまた変な気持になる釘抜さん。
「あ、あのぉ…」
「はい?」
モジモジする釘抜さん。
「こっ、今度の休みはいつかな?」
「はぁ、この金曜日ですが、それが何か?」
「ぐっ、偶然ねぇ、私もその日休みだわ。」
「は、はぁ…」
(何でそんな事聞いてくるんだろう?)
おかしな事を聞いてくるなぁ?と思う宮本だったが、釘抜さんが更に話を続ける。
「よっ、よかったらその日ちょっと付き合ってくれない?」
「え…え~!?」
急に予想外のお誘いに戸惑いを隠せない宮本。
「だ、ダメぇ?♥」
(そ、そんな猫なで声で言われると、こっ、断れない…)
「はっはぁ、よろしゅうございます。」
「何、その返答の仕方は。」
コロコロと笑う釘抜さん。
(へぇ、可愛い笑い方するんだなぁ、この人)
宮本は釘抜さんに対して、何か親近感が湧いてきた。
「じゃ、時間は金曜日の前に電話するわね。」
そう言うと持っていたシステム手帳の1ペーシを破りササッっと自身の携帯番号を書いて
宮本に渡す。
「これ私の番号だから、新しい携帯に入れといてね。♥」
「は、はい。」
あまりに急な展開にまだ地に足が付いていない現状の宮本。
「じゃ、私行くから。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
釘抜さんは宮本にニコニコと手を振りながらその場を後にした。
「可愛い人だなぁ…って、アレ?」
そこで初めて気づく宮本。
(これってもしかしてデートのお誘い?)
顔が真っ赤になる宮本だった。
-つづく-
<出演者プロフィール紹介>
中田 理恵 (1月3日生まれ)
去年まではドラマチック・アパートメント所属の声優だったが、今年の4月に
リノリートの所属に移籍。佐々木アニメーション学院卒のグランプリ獲得者。
デビュー当初はおとなしいキャラの役が多かったが、「ローゼンリッター」の慶光燈役を
きっかけに強烈な印象の敵役や成人女性役での配役が増えている。
実は声優デビューより歌手デビューの方が早かったのは知る人ぞ知る話。w
同じ理恵繋がりで今回釘抜理恵さんとか咬ませましたが、公私共に仲がいいのは
堀江優衣・親戚良子・あとはローゼンリッターの共演者辺りだそうだ。
やっぱりこの人もゲーマーで1番のお気に入りは「動物の森」。w
好きな言葉は「めげない逃げない諦めない」。
<主な出演作品>
花小路メイド隊 マリファナ 役
疾風のごとく! ルナマリア 役
ローゼンリッター 慶光燈 役 など多彩
次回も不定期更新。じゃ、また。(^-^)/
Posted at 2008/11/10 23:41:16 | |
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2008年11月03日
第6章 すれ違い 2
「(おかけになった電話番号は圏外が電源が入ってない為かかりません。)」
「まだつながらないよぉ…」
宮本は昨日からエリカに電話しまくっていたが、ずっと同じアナウンスだった。
(ま、まさかこの前の件で嫌われたのかも…)
宮本の心境は仕事どころではなかったが、実情はそういう訳にはいかなかった。
「若坊、収録スタジオの準備は出来てるのかぁ?」
「は、はいっ。これからですぅ。」
「何呑気にしてる、とっととスタジオに行って来い!」
「はい~っ。」
すぐさまスタジオに赴く宮本。
(あとで必ず再度連絡を取ろう)
だが、その日宮本がエリカに電話する事はなかった、いや出来なかったが正しい。
「おはようございます。」
その日、エリカは「かお☆すた OVA」の収録で杏アニのスタジオにいた。
「エリカさん、携帯の電源は切っててくださいねぇ。」
「あ、はい。」
音響機器の関係らしく、杏アニスタジオ内では携帯の電源は皆オフが原則だったのだ。
「では、撮りを始めま~す。」
こうして宮本がエリカに電話をしていた頃エリカの携帯の電源はオフなので、
当然「お掛けになった~」というアナウンスが流れる。
「お疲れ様です。」
「はい、お疲れ様。」
ようやく収録が終わった。
「エリっち、お疲れ。」
「あ、綾ちゃんお疲れ様っ。」
エリカに声を掛けたのは和泉ひなた役の平松綾だ。
かつて「エルディア聖灼伝」での急遽役交替事件では色々とあった2人だが、
この作品をきっかけにお互いは仲良しになっていた。
「どう、最近あの若坊クンとはうまくやってるの?」
ニヤっとした顔でそう話す綾。
だが、エリカの顔はすぐれない。
「何かあったの?」
「うん、実は最近すれ違い気味で…」
「ちょっと場所を変えましょう。」
スタジオを出てここ数カ月の出来事を綾に話すエリカ。
「ちょと、それマジな話?」
「う、うん…」
あの映画館居眠り話をした時、さすがに綾もア然とした。
「それはマズイわねぇ。」
「う、うん、私もそう思うの。だって恭介が…」
「それは違うよ、エリっち。」
「え?」
綾の顔が真剣な顔に。
「確かにお互いの失敗談なんだろうけど、彼のせいにする考えはよくないんじゃない?」
「な、なんでよ?」
「いい? 男ってのは下手に女が出しゃばると勝手に後ろめたくなる生き物なの。
気持ちはわかるけど、ちょっとエリっちが『ごめん、私が悪かったわね』って言うと
彼も『あ、そんな事ないよ。俺も悪かったよ。』ってなるはずなの。もしそこで男がエラそうに出しゃばってきたらその時はガツンと言っていいの。ちょっとだけ彼を立てれば意外とうまくまとまるものよ。」
「う~ん、そうなのかなぁ」
まだ半信半疑なエリカ。
「恥ずかしいんだけど私もそれで失敗したクチだから、エリっちにもその悲しい事に
なて欲しくないから、ね。」
「綾ちゃん。」
エリカは綾が親身に話を聞いて答えてくれる事がうれしかった。
「うん、ありがとっ。ちょっとだけ素直になってみる。」
「うん、そうするといよ。エリっちのキャラじゃないけどね。w」
「え? 言ったな、綾ちゃん!」
「あははは。」
(ありがとう、綾ちゃん)
持つべきは友だな、と改めて感じるエリカだった。
そして、平松綾と別れたあと宮本に連絡をするのだが、
「(おかけになった電話番号は圏外が電源が入ってない為かかりません。)」
(何、どういう事? まだそんなに遅い時間じゃないはず…)
時計の針はPM8:30を指していた。
確かに夜とはいえお子ちゃま以外はまだ起きてる時間だ。
「おかしい。恭介の仕事は携帯必至なはずなのに、なぜ繋がらないの?」
なぜ、エリカ⇒宮本の連絡が通じないのか? それはこういう事だった。
「乾杯~!」
ドンドンドン♪ パフパフパフ♪
アルデバラン恒例の収録後宴会の始まりだ。w
「本日は第1回の収録でしたが、無事終了しました。」
ワーワーワー
「今日は我が作品に初参加の声優さんの歓迎会も兼ねてます。これからも宜しくお願いしたいので、ド~ンと騒いで盛り上がってください~。」
「あ、鍵谷クン、こっちこっち。」
「あ、どうも、釘抜さん。」
「先日機動戦士ガンガル00の収録で一緒だったじゃない。」
「あ、そうですね。あははは。で、今日はまっしゅとまろん連れてきてるんですね…。」
「そう、私がいないと寂しがるから。で、ここの新人クンに見てもらってるの。」
「そうなんですか。(新人クン、可哀そうに)」
「え、何か言った? あ、ところでもう身体は大丈夫なの?」
「ええ、もうあのバイク事故から2年経ってますし、まだまだこれからですよ。」
「そうそれはよかったわ。じゃ、飲みなさい。」
「は、はい…。」
しこたま注がれる鍵谷。このテーブルは「機動戦士ガンガル」のテーブルのようだ。
「ラジオ番組でも一緒なのに、ここでも一緒なんだな。」
桜田孝宏 ・岩清水藍の両名を見つけそう言うのは吹山潤だ。
「あ、ソバージュ!」X2
2人はついあのアニメ作品のキャラで吹山を呼ぶ。
「相変わらずのボケコンビだな、2人とも。」
「吹山が真面目すぎるんだ。何だ今持ってるグラスに入っている飲み物は?」
「何って烏龍茶だが。」
「もう、相変わらずね潤さんは。♥」
「宴会の席で酒を飲まないのは逆に失礼だ、潤。」
「それは偏見だ。私はこれでも楽しんでいる。」
「…もう、いい。」
「あははは。桜田さんの負けですね。w」
このテーブルは「コードネーム 反逆のソバージュ」の同窓会になっていた。
「我々の席は渋すぎるなぁ、喜久子クン。」
「失礼ですね、菅本さん。私まだ17歳ですよ。♥」
「…そうだったな、すまない。」
「なんですか、その間は。(怒)」
「まあまあ、ど、どうぞ飲んでください。」
「ぶらぁ~、飲まないでかぁ!!!」
「私まだ未成年っ、ジュースちょうだ~い。」
「喜久子さん、もしかして酔ってませんか? はぁ…」
超ベテラン席のお相手はアルデバラン・定岡主任の担当だった。w
「はい、これ食べておとなしくしててくださいよ。」
釘抜さんの愛犬「まっしゅ」と「まろん」の世話は宮本の仕事だった。
わんわん ワンワン わんわん ワンワン
「@あ^、暴れるなってば。」
「ちょっと若坊クン。私の愛犬にケガさせたらタダじゃしまないよよぉ。」
「釘抜さん、顔が怖いですって、あっ、じゃれるな~!?」
まっしゅとまろんが宮本に飛び付く。
「おわっ!?」
それを受け止める瞬間、ポケットの携帯がポロっと落ちる。
「わんわん。♥」
その携帯に興味をもったまっしゅが宮本の携帯を咥える。
「ガルゥ~」
まろんがそれを奪取すべく唸る。
わんわん きゃんきゃん
「あ~、携帯返せって、あ~~~~~~~~~~!?!?
取り返した携帯は犬の唾液でおっ死んでいた。w
「データがぁ~~~」
「え~い、やかましい!」 ブスッ!
釘抜さんの眼つぶしが宮本に炸裂!w
(あ~あ、データが消えた。エリカへの連絡が出来ない…)
まさか携帯が壊れるとは思ってなかったようで、電話番号は携帯頼りで他にデータは
残していなかったのだ。
こうして今日も宮本とエリカは互いに音信不通のまま過ぎようとしていた。
-つづく-
次回も不定期更新です。
Posted at 2008/11/03 22:29:04 | |
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2008年10月29日
第6章 すれ違い 1
アニメ制作会社「アルデバラン」事務所
「おはようございます。」
「お、いらっしゃい、エリカちゃん。」
「あのぅ、恭介いますか?」
「あ~ごめんね。今台本と予定表持って各プロダクシュンの所を回ってるわ。」
「あ、そうなんですか。」
エリカのエロゲバイト騒動から3か月、エリカもあれから仕事が増え宮本との時間が
取れなくなっていた。
「あ、今度うちでも新作やるからよかったらオーディション受けてみてね。」
宮本の留守で定岡主任が事務所でてんてこ舞いだった。
「何の新作なんですか?」
「『エルディア蒼龍伝』だよ。」
「『エルディア蒼龍伝』?」
「そう、前エリカちゃんも出てもらってた『エルディア聖灼伝』の続編だよ。」
「え~!?」
元々『エルディア蒼龍伝』という作品があって、そのスピンオフ作品が『エルディア聖灼伝』なのだが、時代背景的にスピンオフの方を先にアニメ化し結構好評だったので、
今回満を持して本編スタートと相成った訳だった。
「その準備でうちも忙しくてねぇ。」
いつもはのんびりの定岡も珍しくバタバタとしていた。
「で、オーディションはいつやるんですか?」
「ああ、来週の月曜日だよ。」
「来週の月曜日…、あ、あずき色に染まる大坂の収録日だ…。」
「そっか、じゃ今回は残念だね。」
あれからエリカの出演作品は、
「あずき色に染まる大坂」 ・・・ 武者小路 華恋 役
「闇執事」 ・・・ バファリン 役
「かお☆すた OVA」 ・・・ 柏木 かなみ 役
「ざこキャラ!!ドテッw」 ・・・ 虹川 にとみ 役
…と、今現在だけで4作品も出演している状態でこれ以上の作品追加は無理だった。
「まあ、聖灼伝の時に出てた女性キャラは今回ほとんどでないから大丈夫なんだけどね。」
「は、はぁ…。」
複雑な心境である。エリカがスターダムになるきっかけでもあった作品なだけに愛着もあったが、この業界は余程の声優出ない限り特別扱いはないのである。
ちゃんとオーディションを受けた上での選考となるのだ。
「じゃ、今日はこれで失礼します。」
「あ、後で宮本に来た事伝えとくわ。」
「あ、お願いします。」
(はぁ、失敗とすれ違いのオンパレードだわ…)
実はエリカは半月前に宮本とデートをしたのだがお互い忙しいせいか、
「ねぇ、今日は映画観て色々買い物に付き合ってね。」
「ああ、いいよ。」
と2人で予定を立てていたのだが、最初の映画でつまづく。
「…。」
「…ぐぅ。」
「・・・さん?」
「…ぐぅぐぅ。」
「・・・きゃくさん?」
「…ぐぅぐぅぐぅ…。」
「お客さん!」
「…ぐぅ…って、はい?」
「お客さんもうとっくに上映は終わってもう片付けなんですがねぇ。」
「え、え~!?」
2人とも疲れていたのか最初にやる他の映画の紹介の所で早くも寝てしまい、
本編なんぞただの1秒もみてなかった。あげくの果てに係員に起こされる始末。
これでお互いテンションだだ下がりでその日は別れそれからすれ違いばっかだったのだ。
(こんなんじゃ、お互いの距離を縮めるどころじゃないわ…)
よくTVで、お互い仕事が忙しくてすれ違いの結果別れた、とか言うエピソード話を
他人事のように思っていたが、自分にその状況が訪れていた事にようやく気付く。
(がんばんなくちゃ、だわ)
そして翌月曜日、エリカはあずき色の染まる大坂の収録に来ていた。
「あ、おはよう(平松)綾ちゃんと(佐藤)エリカちゃん。」
「おはようございます、プロデューサー。」×2
同じ作品で再会した2人はさっきまで一緒に「かお☆すた」OVAで和泉ひなた役と
柏木かなみコンビで役柄を演じた後その足でこの作品の収録にきていた。
「今日は釘抜さんは?」
「あ、今日はうちの作品の出番ないからって他のオーディションに行ったそうだよ。」
(他のオーディション…まさか、ね)
エリカの不安は的中した。
「みなさん、おはようございます。今日は我が製作会社アルデバランの新作アニメ発表会にお越しいただきありがとうございます。」
定岡主任が司会で『エルディア蒼龍伝』の制作発表会が行われていた。
「え~、今作品は『エリディア聖灼伝』の続編作品でありますが、オーディションの結果、声優陣は総入れ替えになりました。では、各役の声優の紹介です。」
ライオネル・ハラピー准将 ・・・ 吹山 潤
サユリ・ハラピー ・・・ 井之頭 喜久子
ドルフィガ・リュッケ中佐 ・・・ 桜田 孝宏
シャロン・ハーデルガイム中佐 ・・・ 釘抜 理恵
クルート・サガス少佐 ・・・ 鍵谷 浩史
マヤ・アルジェリーニ中尉 ・・・ 土井口 優香
メリー・キッシンジャー大尉 ・・・ 岩清水 藍
ブルーム・バルディー大将 ・・・ 菅本 規夫
D・アルジェリーニ神公爵 ・・・ 山小屋 宏一
「今日は役者さんは登場しませんが、各専門誌でのインタビュー等はまた時間を作りますのでその時にお願いします。」
ざわざわ ざわざわ ざわざわ
「では、これにて終了いたします。」
「ふぅ、なんとか終わった。」
「御苦労さん。」
「あ、定岡主任。」
準備に奮闘した宮本をねぎらう定岡。
「これからが大変だぞ。」
「はい、頑張ります。」
「…あ、そうだ宮本。」
「はい?」
「この前エリカちゃんが来てたわ。」
「エリカちゃんって、佐藤エリアですか?」
「そうだよ。」
「…そういう事は早く言ってくださいっ!」
慌ててエリカの携帯に電話する宮本。
(おかけになった電話番号は圏外が電源が入ってない為かかりません。)
「つながらないよぉ…」
こうして2人のすれ違いは更に続くのであった。
-つづく-
<出演者プロフィール紹介>
吹山 潤 (11月26日生まれ)
バスタブプロダクション所属の声優。大阪府高槻市出身だが、生まれは広島県福山市。
デビューは1998年。声優になったきっかけは、好きだった女子が声優を目指していて、一緒にオーディションを受けた結果合格したからというのは有名な話。w
たこ焼き屋でのバイト歴もある左右両手ききのツワモノ。豆知識大好きの多重性格者。(爆)
同事務所に五島斑子・岩清水藍らがいる。
<主な出演作品>
「∀ガンガル」 ギース・パジェ 役
「無敵勇者フサイチゼノン」 神 威章 役
「低重心グラヴィロン」 天空 侍斗牙 役
「コードネーム 反逆のソバージュ」 ソバージュ・ペペロンチーヌ役
「マリノスF(ファンタジスタ)」 モカ・アンジェロサクソン役 など多彩
次回も一応不定期更新。
Posted at 2008/10/29 19:00:02 | |
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