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2010年10月12日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  21

 
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            第2章、
 
 
 
      第2章  バカと刀は使いよう  7

 
そして、迎えた翌日。天気も良くまさに5月晴れといえる天候である。 

「ふわ~っ。もう朝か。」
 
窓枠から差し込む日光で目が覚める恭介。
昨日は寝るのが遅かったので少々眠気が残っているが、こんな事は日常茶飯事なので
気にしない。w
 
「さ~て、と…。」
 
 ぐ~ ぐ~ ぐ~
 
二度寝に入る恭介。(爆
 
 ガツ~ン!
 
「こら三千里クン、起きなさいっ。」
 
優しい声でそう言うが、二度寝する恭介に対してフライパン攻撃は優しくないね。w
 
「痛いなぁ、次田女史。」
 
 グリグリグリ(怒
 
「いたたたたたたたた…」 
さとみんと呼びなさい、と何度言わせるの!」
 
二度寝を急に叩き起こされる形になり、さとみんと呼ばなければいけないのをすっかり忘れていた。
 
(うわ~、めんどくせ~)
 
「三千里クン、アルピナ氏が来日されるのは夜でしたわね?」
「ええ、そうですが、何か?」
「それまではヒマ?」
 
何だか次田女史の様子がおかしい。簡単に言うと不気味である。 

「ひ、ヒマって…どういう事ですか?」
「え、えっとね、ちょっと頼まれ事があるの。」
「はぁ、何でしょう?」
デートしない?」
「…」
「…」
「・・・」
「・・・」
「・・・あのぅ、さとみん?」
「な~に?」
「今日は帰って来ませんので~!」
 
恭介は着の身着のままで教会を出ていく。
 
「もう、冗談だったのに。」
 
この人が言うと冗談に聞こえないのが怖い。(爆 
 
 
 
「教会の片付けですか?」
「そうなの。午前中だけでもいいから手伝ってくれるかな、と思って。」
「だったら、最初からそう言って下さい。」
「もう、最近の若い子は冗談も通じないのね。」
「さとみんの言う冗談は、冗談とは思えませんよ。」
 
どうやら教会の倉庫の片付けを頼みたかったらしいが、つい冗談混じりに言ってしまった為に
ややこしくなったのだった。困った年増だZE。w
 
 
「じゃ、ちゃっちゃと片付けましょう。」
 
そんな訳で、朝食後次田女史と恭介は倉庫の片付けをし、黙々と作業する事3時間。
あっという間に昼が迫っていた。
 
(おっと、もうこんな時間か)
 
昼にはイグナリアに待ち合わせしているので、そろそろ切り上げなければならなかった。
 
「じゃ、そろそろ昼になるので…」
「あ、ありがとう。じゃ、お昼ごはんも一緒に…」
「失礼しま~す。」
「え、ええ~っ!?」
 
あっさりその場を去る恭介。
 
「全く、もう。冗談よ、って言うまで待ってよ。」
 
親父ギャグも結構めんどくさいが、おばはんのシャレもあまりセンスがない。w
 
もう12時が迫っていたので、そそくさと準備を済ませ一路イグナリアへ向かう恭介であった。
 
 
 
 カランカラン♪
 
何とか12時に間に合った恭介が、イグナリアのドアを開ける。
 
「いらっしゃいませ~。」
 
元気の良い店員の声が恭介の耳に聞こえてくる。
ひとまず都歌沙や澄香を探そうと店内をぐるっと見ると、小学生でもわかるような大きな横断幕が
張ってある一角を見つける。その文字を観た恭介はこのまま店を出たくなった。そこには、
 
 ☆転校おめでとう、恭介☆と書かれた横断幕が!?
 
「お客様、1名様ですか?」
「いや、今日は調子が悪くなったので帰ります。」
「は?」
 
居心地が悪そうなのでそう言って逃げ帰ろうろすると、見覚えのある店員が恭介の元にやってくる。
 
「いらっしゃませ恭介さん、お待ちしておりました。お席までご案内します。」
「あ…竹嶋さん。」
 
そう、恭介の同級生でもありここイグナリアでアルバイトをする竹嶋由布子・通称竹ちゃんが
お出迎えをしてくれる。これで、恭介はあの恥ずかしい横断幕がある所への強制連行が決まる。

「あ、お待たせ。」
 
デカイ横断幕のある席に着くと、すでにメンバーが揃っている様子だった。
  
「あ、恭介っち、来たね。」
「三千里クン、やっと来たわね。」
「こ、こんにちは三千里さん。」
 
都歌沙と澄香は面識があるのでわかる。だが1人見覚えがない娘がいる。
 
「なあ澄香、1人面識のない娘があるんだが。」
「え~、恭介っちあんたクラスメイトの顔を覚えてないの?」
「え、そうなの?」
「全く三千里クンは失礼なんだね。」
「す、すまん。」
 
澄香と都歌沙がイジワルっぽく言う。恭介は本当に見覚えがないので、素直に謝り誰かを聞く。
 
「この娘は恭介っちのクラスメイトでもあり私達の友達でもある北山有希。」
「あ、そうなんだ。えっと、三千里恭介です。」
「こ、こちらこそ宜しく。」
 
北山有希という娘は丁寧に挨拶をする。
 
(ずいぶんおとなしそうな娘だなぁ)
 
そんな第1印象であった。
 
「あ、三千里~、俺もいるよ~。」
「…帰れ!」
 
せっかく綺麗所の女性が3人もいる中にどくだみ草が生えてやがる。何でコイツがいるんだ?
 
「誰が丹下を呼んだんだ?」
 
不機嫌に都歌沙らに尋ねると、その答えは逆方向から聞こえてくる。
 
「すみません、私が話したんです。」
 
振り返るとそこにはメニューと注文用のポケコンを持った竹ちゃんの姿が。ウェトレス姿が眩しい。w
 
「そうですか、まあそれなら仕方がないですね。丹下~、そこの子供用イスを用意してやるわ。」
「三千里~、ちょっと冷たい。」
「何なら凍らせてやってもいいぞ。」
「(。´Д⊂)うぅ・・・。 恭介がいじめる~。」
 
そう言って、澄香の元へ寄りそう。
 
「おお、よしよし。可哀想に。」
 
そう言うと丹下の頭をなでる。その様子は飼い犬と飼い主の光景にしか見えない。w
 
「まあ、恭介。そう怒るな。」
「だってさ…」
「今日の歓迎会のスポンサー様なんだから無下にしてはいけない!」
 
両腕を腰に当てて、きっぱりとした態度で言う澄香。
 
 「え~!?」
 
1番驚いたのは丹下本人であった。(爆
 
「そんな訳で、みんなじゃんじゃん食べて飲んでくれ!」
「わ~い。」
「やった~。」
「ごちそうになります。」
「売上貢献に感謝です。」
 
一同は喜びにあふれている。
 
「う~、何でこうなるの…。」
 
泣きながら財布の中身を確認する丹下。ちょっとだけ可哀想に思う恭介であった。
 
(丹下、お前の好意は無駄にはしない。たっぷりたべさせていただくZE)
 
 じゃ、みんな乾杯~!
 
ファミレス・イグナリアは一部で大騒ぎのあるファミレスなので、お気を付け下さい。w
 
 
  -つづく-
 
2010年09月30日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  20

 
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      第2章  バカと刀は使いよう  6
 
 
 「ねえ、三千里~。まさか朝乃先輩を狙ってはいないだろうね?」
 「は?」
 「朝乃先輩は、不肖この丹下が憧れているお方。もし三千里~が朝乃先輩を狙うのなら
  友達関係も解消させていただく。」
 
 ビシッとした態度で、どえらい勘違いをぶちまげる丹下。(爆
 まあ、恭介は朝乃魔央に対して、恋心的な感情は持っていないので、
 
 「心配すんな。朝乃先輩は狙ってもなければ恋を求める相手でもないから安心しろ、丹下~。」
 
 と言ってやる。すると安心した様子で、
 
 「そ、そっか。三千里は話の判るヤツだなぁ。」
 
 とニコニコしながら言う。ちょっとめんどくさいと感じてしまう。w
 
 「あ、狙わないって事は、美人だとは思ってないって事か?彼女は素晴らしい女性だぞ。」
 「あ、ああ、そうのようだな。」
 「あ、いや、そうは言っても美人と思ってアタックされても困るし、どうするべ?」
 「はぁ…、付き合ってられない。」
 
 そう言って丹下と別れようとすると、腕を掴まれる。
 
 「まだ、話は済んでない。」
 「だから、俺はこの後用事があるんだ。」
 「何、まさか朝乃先輩と…」
 
  ボカッ 
 
 「違うつってんだろうが!?」
 「い、痛いよ、三千里~。」
 「もう帰る!」
 「あ~、待ってくれよ。」
 
 限りなくめんどくさいヤツである。(爆
 
 
 「じゃ、三千里またね~。」
 
 えらく元気に別れの挨拶をする丹下。さっきまでの嫉妬ぶりがウソのようだ。(爆
 あの後下校をして分かれ道に出るまで、散々朝乃先輩の良い所と称してグダグダ話を聞かされ
 恭介はドッと疲れていたが、話をいっぱいできた丹下の方が実に満足できたようだ。
 
 (それにしても、朝乃魔央。彼女の竹刀さばきは相当なモノだ。もしあれが真剣なら…)
 
 恭介は、丹下と別れたあと、教会へ帰る道で朝乃魔央と戦ったのを思い出していた。
 竹刀と真剣ではどことなく勝手が違う。恭介は魔央と戦っている際感じた違和感だ。
 真剣ならもうちょっとやれる自信がある。伊達に体内に刀を持てる男だけあってそこの
 想いは誰にも負けない自負を持っている。だが、彼女も同じ違和感を持っているのなら
 真剣でも互角に渡り合わせてくる可能性もある。
 
 (さすがに一女子高校生が真剣を振るう事はないか)
 
 そう思う恭介であった。
 
 
 「ただいま~。」
 
 聖・バーナード教会に帰ってきた恭介の元に2人の女性は立ちはだかる。
 
 「おかえりなさいませ、恭介様。」
 「おかり、恭介クン。」
 
 一瞬、たじろく恭介。この2ショットは恭介にとってはジェイソンとプレデターが同時に襲って
 くるのに等しいくらいの恐怖感を感じるモノであった。(爆
 
 「恭介クン、どうしてこの女がここへ来るの?」
 
 まずは次田女史が先陣を切る。
 
 「それは恭介様のパートナーは私であって、次田女史はあくまで日本支部の住居管理人で
  しかないのです。だから、私が恭介様と同じ場所にいるのは至極当然の事なのですよ。」
 
 次田女史の問いに答えるのは、恭介ではなく魔耶であった。
 
 「ちょっと、何であなたが答えるのよ。私は恭介クンに聞いてるの?」
 「あなた、さっき何を聞いていたの。私は恭介様のパートナーなんだから、私が答えただけ。」
 「誰がパートナーですって、誰が管理人ですって。ふざけんじゃないわよ!」
 「やりますの、年増女史。」
 「キー、今何っていいやがった!?」
 
 うわっ、出ましたよ。時々出る次田女史の暴言。w
 こりゃ、取っ組み合いの喧嘩になる前に止めないと!
 
 「だいたい、昔から日本支部のお局様と呼ばれてるのに、まだ居残ってるなんて。」
 「ムカッ、私は日本支部に無くてはならない存在なのよ。仕事に忠実で問題ないじゃない。」
 「プッ、ただ長くいるだけじゃなくって?」
 
 この一言で次田女史の闘争心に火がついた!
 
 「もう我慢なりませんわ。ここで決着をつけましょう。」
 「望む所ですわ。老体に鞭打って頑張んなさい。」
 
 2人の言い争いはとうとう掴み合いの喧嘩に発展した!
 
 「ちょっと2人とも落ちつけ!」
 
 2人の間に割って入る恭介。だが、それがいけなかった。
 
  バキッ!!#○`ε´)=○)゚O゚(((c=(゚ロ゚;qア~タタタタタタタ  
 
 2人のパンチがちょうど間に入った恭介に両方ともヒットする!
 
 
 
 「あいたたた…」
 「恭介様、何であの場面で間に入ってくるんです?」
 「恭介クン、わざわざパンチの前に顔を出しちゃダメでしょう。」
 
 喧嘩の仲裁に入った人は大抵そのあおりを食らう。よくあるパターンだ。w
 両頬に絆創膏を貼る形となった恭介。それを見て2人の笑いが教会内にこだまする。
 
 「ったく、誰のせいでこうなったと思ってんだよ…。」
 
 恭介は怒りを必死に抑えながらそう呟くしかなかった。
 
 「もう寝るっ!」
 
 そう言って、恭介はまだ夕方なのに、寝てしまった。
 
 
 場所は変わって、ここは八九寺市内のとあるアジトの禁断場所。
 
 「夜のご来訪申し訳ありません、あまおう様。」
 「うむ…。」
 
 とあるアジトにやってきたのは、他でもない朝乃魔央である。
 
 「で、仕事の内容とは?」
 
 夜が苦手な魔央は手短に済ませようと早速要件を聞こうとする。
 
 「はっ。今回の仕事はI・S・A・Mという組織がございまして、そこのドイツの所属から
  ブラハム・B・アルピナと言う人物が明日来日します。その男が我が棟梁の求める刀、
  【大和守源秀国】を持っているとの情報です。そこで、あまおう様にその刀を奪取する旨の
  依頼が出ました。」
 「なるほど。その依頼引き受けたと棟梁に伝えておいてください。」
 「はっ、確かにお伝えいたします、あまおう様。」
 
 朝乃魔央は実は恭介の所属するI・S・A・Mとは対をなす悪党組織・W・S・Cの日本支部の
 幹部であった。正確にはW・S・C日本支部長・朝乃真之介の娘である。
 ちなみに、W・S・Cとは[World Sword Collection]の略である。
 
 「ところで、その『あまおう様』っていうのはいいかげん呼び方を変えてくれぬか?」
 「なぜです、あまおう様。可愛くていい名前じゃありませんか。」
 「の名前で呼ばれるのは死ぬほど恥ずかしいんじゃ!」
 「え~、もったいない…」
 「とにかく、この仕事が終わるまでには違う名前を考えておくように。」
 「はっ!(と言っても、ちょっと時間が経ったら忘れてるから今は返事だけしとこうw)」
 
 『あまおう様』と呼ばれるのは、心底イヤという訳じゃなさそうだ。w
 
 
 そして、色々問題のある明日の朝を迎える。
 
 
  -つづく-
 
2010年09月21日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  19

 
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      第2章  バカと刀は使いよう  5
 
 
 「さあ、貴殿の腕前が如何ほどであるか、とくと見せていただこうぞ。」
 
 恭介と魔央が剣道場の中央にお互い立つ。
 実際、恭介は剣道の正式なルールを知らないので、とりあえず魔央の動きを見てから
 同じような行動をする。だが、相手の動きを見てからの行動なので一瞬だが動きが遅れる。
 それを見て、魔央の表情が緩む。この表情が崩れる意味は恭介にとっていい意味はない。
 
 「なるほど、さすが達人だ。」
 
 鼻で笑うような言いっぷり。完全に達人と言うのは嘘であると察知したようだ。
 
 「では、どっからでもかかって来なさい。」
 
 恭介はまだ達人の振りをする。でも、恭介も伊達にI・S・A・Mで仕事をしていない。
 相手の動向を察知するのは慣れている。特に1対1ではなおさらだ。
 まあ、それが出来ないとI・S・A・M内でも名うての仕事人として認知されない。
 
 「では、さっさと済ませてしまおう。」
 
 そう言うや否や、早速魔央が攻めに入る。
 
  カキン カキン
 
 竹刀が重なり合う音が道場内にこだまする。女子部員も固唾をのんでその戦いを見守る。
 一言多い丹下もその雰囲気に飲まれ言葉が出ない。
 
 何度か竹刀を重ね合うと、お互いそれまで持っていた認識が変わる。
 
 魔央は達人と言うのはニセだと思っていたが、その太刀筋は達人とは違うが鋭さを感じる。
 一方、恭介の方もさすが全国大会に出場するだけあって、その太刀筋は鋭い。
 どちらも高度にレベルは高いのであった。
 
 「ふむ。始まる前の行動で貴殿が達人ではないと思っていたが、どうやら別の認識が必要ね。」
 「う~ん、さすが全国大会に出場するだけあって、太刀筋が半端じゃないな。」
 
 互いにクスッと笑う。
 
 「では、本気で行くぞ。」
 「ふっ、そりゃおもしろそうだな。」
 
 最初はお互い様子見の立ち合いだったようだ。そして、今度はお互い力を出す形となる。
 
 「と~りゃ~!」
 
 魔央が一気に来る!
 
  カシャン カシャン カスッ
 
 魔央の攻撃が恭介の身体を幾度もかすめる。
 
 「まだまだ~!」
 
  ビュン ビュン シュパッ
 
 更にスピードが増す魔央の攻撃。だが、寸前の所でそれをかわす恭介。
 
 (そ、そんな、私の攻撃が当たらないなんて…何なの、この男は!?)
 
 全国大会というが、実際の腕前はその全国大会でもトップクラスにも入る腕前なのだ。
 だが、それを持ってしても恭介に攻撃を当てる事は出来ていない。
 次第に焦りの色が出つつある。
 
 (ふ~、危ねぇなぁ。 ちょっとでも油断でしたらその地点で攻撃が当たってしまうだろう)
 
 恭介の方も今の所攻撃をかわしているが、実は余裕がないに等しい状況であった。
 
 「これは決め技を出さないと勝てない!」×2
 
 そう思った魔央であったが、恭介も考えは同じであった。
 
 お互いの気合の入れ様が変わる。それはまさに殺気と同じである。
 
 「では、行くわよ。」
 「こちらも全力で行くぜ。」
 
 互いがにらみ合う。その雰囲気が道場全体を覆う。2人の戦いを見る女子部員や丹下に
 冷や汗がとめどもなく出る。
 
 場内が静まる、そして緊張が走る。 今、まさに壮絶な対決が始まろうとしていた!
 
  ピロピロピロピロ~♪
 
 静まった場内に突然鳴る携帯の着信音。
 鳴った音の場所にすべての視線が集まる。
 
 道場の隅に置いてある学生カバンからだ。
 
 「だ、誰のカバンなの!? 着信音は切るように言ってあったでしょ!」
 
 女子剣道部々長・杉沢由美が怒号を発する。神聖なる道場内は携帯電話は電源を切るか
 マナーモードにするように指導されている。そんな中、突然鳴った携帯音に場内はざわめく。
 一体、誰の携帯なのか?
 
 「あ、この音は、私だ。」
 
 犯人が自ら名乗る。その声の主に一同の視線が集結。
 
 「あ、朝乃魔央さん!?」
 
 全員が唖然とする。2人の気合が最高潮に達し、いまだかつてない戦いっぷりが見れるか、
 と言う時に鳴った携帯音がまさかの当人の携帯だったとは。w
 
 「すみません、出ます。」
 
 そう言って自分のカバンの中を探り、携帯を取り出すとそのまま電話に出る。
 
 「はい、もしもし?」
 
 この瞬間、道場内にドッと笑いが巻き起こる。
 それまでの緊張感がこの携帯電話の件ですっきり抜け落ちたのだった。
 
 「ふぅ~。」
 
 恭介も一息つく。
 そして、道場内が笑いに包まれる仲、平然と電話をする魔央。その顔は全く悪びれる様子はなく
 聞き取りにくい中必死で電話のやり取りをしている。
 
 やがて、電話が終わるとすっと部長の元に歩み、深々とお辞儀をする。
 
 「部長、携帯の電話を切るのを忘れて申し訳ありませんでした。」
 「い、いいのよ。次からは気を付けてね。」
 「はい、どうもすみませんでした。」
 
 改めて部長に一礼すると、今度は恭介の元にやってきて深々をお辞儀をする。
 
 「すまなかった、私の不手際で試合の箸を折ってしまった。何とお詫びすればよいか?」
 「い、いや。確かに箸を折る形になったが、まあその件はもういいし、お詫びをする事もない。」
 「だ、だが、それでは私の気が済まぬ。何か申してくれ。」
 
 確かに、試合は中断しお互いもう戦う気が削がれてしまった為、今日はもう2人が戦う事は
 ないだろう。そうなった原因が魔央にあった以上、自身としては何かお詫びの形を取らねば
 気が済まなかったのだろう。だが、恭介はもうそれ以上お詫びをしてもらう気は無かった。
 
 「いや、ここまでが限界だ。もし、あの後戦ってても私は勝てなかっただろう。あそこで
 終わってくれて助かったのは、こっちの方だ。だから、逆にこっちがお礼をしないと…」
 「いやいや、そういう訳にはいかない。」
 「わかった、ここは喧嘩両成敗と言う事で、お互いおとがめなしと言う事で終わろう、な。」
 「だがそれでは私の気が済ま…」
 
 まだ何かを言おうとした魔央の口にそっと手を当てて話すのを止める恭介。
 
 「いや、楽しかったよ。もうあれで十分だ。感謝する。」
 「き、恭介様。」
 
 魔央の顔色が赤くなる。
 
 「はい、それまで。」
 
 2人の間に入っていったのは、ナント丹下であった。
 
 「な、何だよ丹下。」
 「三千里~、何で憧れの朝乃先輩とこんな間近で話をしてるんだ。」
 「た、互いの健闘を称えたというだけの話だろう。何を怒ってるんだ、丹下~。」
 「も、もう十分話しただろう。さっさと出るよ。」
 
 そういうと丹下は恭介の手を取って道場を出ていく。
 
 「一体、何だったの?」
 
 部長・杉沢を始め女子剣道部員はホカンと口を開けて唖然としていた。(爆
 その中、魔央だけは出ていく恭介の様子を目で追っていた。
 
 「じ、じゃ、練習を再開するわよ。」
 「は、はい。」
 
 杉沢の掛け声で、女子剣道部の部活動は平常に戻った。
 
 
 
 「ったく、何で朝乃先輩と話をしてるんだよ、三千里~。」
 
 1人で怒っている丹下。お前が俺を達人に仕立てたから話がおかしくなってあげくのはてに
 その朝乃先輩と戦う羽目になったんだろうが!?
 
 「全部、丹下~が悪いっ!」
 「え~、何で!?」
 
 何が悪いのか判断が付かないヤツが1番タチが悪いんだけど…。(爆
 
 
 
 話は少し戻って、朝乃魔央が携帯電話で話をしていた内容を。
 
 「はい、もしもし?」
 「あ、あまおう様。お忙しい中失礼いたします。」
 「あ、かまいません事よ。」
 「あのぅ、周囲が騒がしく電話が聞き取りにくいのですが、どこかカラオケボックスか何かです?」

 ちょうど、魔央が電話に出た事で道場内がドッと笑いに包まれた時だ。
 
 「ちょっと取り込み中なので、用件は手短に。」
 「はっ。電話の用件は仕事の依頼であります。」
 「仕事ですか。判りました、では今日の夜にアジトに寄りますわ。」
 「わかりました、あまおう様宜しくお願いいたします。」
 
  ガチャ ツーツー 
 
 「全くこんなタイミングで電話をしてくるなんて、何て使えない部下なのかしら。」
 
 不機嫌にブツブツ言うがそれも一瞬だけ。すぐさま普通の表情に戻る。
 
 このあとは、部長と恭介に謝って、続きの話を恭介としようとしたら、変な男が恭介を
 連れていってしまった、という訳。
 
 
  -つづく-
 
 
2010年09月12日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  18

 
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      第2章  バカと刀は使いよう  4
 
 
  『武徳殿』

 修大附には部活動を奨励しており、その為の施設はなかなか揃っている。
 そんな中、武道を志す部である4つの部の為に『武徳殿』と言う建物が存在する。
 
  4F ・・・ 弓道部・女子入浴室
  3F ・・・ 剣道部
  2F ・・・ 空手部・男子入浴室
  1F ・・・ 柔道部
 
 男女それぞれ存在する柔道部・剣道部は階のフロアすべてを占拠、空手部(男子のみ)・
 弓道部(女子のみ)は半分エリアが空くので、その場所に男女それぞれにお風呂やシャワーを
 使えるような施設が備わっている。もちろん、のぞき厳禁である。(男女ともw)
 
 そして、この武徳殿に丹下と丹下によって連れてこられた恭介の2人が放課後やってきた。
 
 「なあ、たんげ~。」
 「何だい、三千里~。」
 「ここはどこだ?」
 「どこだ、って武徳殿だけど。」
 「そんな事を聞いてるんじゃない。なぜ、俺を巻き込む?」
 「巻きこまれたとは心外だな~。三千里~はこういうの好きだと思ったんだけど…。」
 
 (俺、コイツにそんな事言ったの一度もないんだがなぁ…)
 
 腑に落ちない表情の恭介を尻目に、丹下は目を輝かせている。ミ☆キラッ
 
 「とにかく、一度朝乃魔央さんを拝んでおく事は重要だよ~。」
 
 (何が重要なのかわからんが…まあ、見るだけならタダだし…)
 
 段々と恭介も丹下の術中にハマりつつある。w
 
 「じゃ、中に入るよ。」
 
 そう言うと、丹下が先に武徳殿に入りその後に恭介が続く。
 
 「向かうは3F・剣道場だ~。」
 
 丹下はめっちゃ元気である。w
 そして、階段を上がり3Fに到着。階段を上がると中央に廊下がありその左右に男女それぞれの
 剣道場がある。当然、向かうは女性のいる剣道場である。w
 
 「ここだよ、三千里~。」
 
 丹下が女子側の道場を指差しながら言う。
 
 「じゃ、入ろうか。」
 
 そう言って場内に入ろうとするが、入り口で女子部員に止められる。
 
 「ここは許可なく男子が入る事は禁止されてます。許可は取ってありますか?」
 「んなモノはない!」
 
 丹下はきっぱりと言う。だが、それは女子部員から見れば逆に不信と言う目で帰される。(爆)
 
 「近寄らないでくれる、バカ男子共。」
 「バカとは失礼な。4月の校内模試では100位以内に入ってたぞ。」
 
 (丹下、それは正直微妙だぞ…)
 
 「許可なく入った者には、容赦なくお仕置きをしても良いと部長から言われている。
  これ以上の接近はそれに値するので、近づかないように。」
 
 毅然とした態度で丹下にタンカを切る女子剣道部員。そこまで堂々とタンカを切ると言う事は
 それないrの腕があるからなのだろう。案の定、その女子部員の手には竹刀がある。
 
 「俺たちは変な目で見ようとするんじゃなく、真剣なまなざしで朝乃先輩の雄姿を見ようと
  したたけだ。」
 「それが変なんだというんだ。横のお前も一緒の類だろう。バカ共が!?」
 
 (ちょっと待て、そこの女子部員。この丹下はバカだが、俺もそいつと共と思われるのは心外だ)
 
 恭介は、別の意味で怒っていた。w
 
 「お前じゃ話にならない。部長に直談判させていただくので、中に入るぞ。」
 「ちょ、ちょっと…。いいかげんにしてよ。でないと、この竹刀でブッ叩くわよ!」
 「ほほぅ、話で解決できないと思った途端、武器で脅すのか?それが武道の精神か!?」
 「うっ…」
 
 丹下の言い分で女子部員の動きが止まる。そうなると、丹下の口調の勢いが俄然増す。
 
 「武道を志す者は、邪な考えで物事に対峙しては武道においての精神修行にならない。」
 
 (お~、何だかもっともらしい事を言ってるぞ)
 
 恭介も丹下の言い分に一瞬驚くが、第3者の目で見ると、それは茶番でしかない。w
 もうちょっと様子を伺うか、と思いながら恭介は2人のやり取りを引き続き見る。
 
 「かのキリストも言った、右の道場を見せたら左の道場も見せよ、と。」
 「はぁ?」
 「さっき、我々は男子の剣道部の頑張りを見せてもらった。順番で言うと今度は女子剣道部の
  雄姿を見るのが妥当であろう。それだけなのですよ。」
 「え、えっと…」
 「更に言うと、この彼は剣道の達人である。君たちの部活動を見る意味でも視察は必要だ。」
 「…はい?」
 
 マシンガンのごとくなし崩しに言いまくる丹下に返す言葉の無い女子部員。
 ところで、俺いつから剣道の達人になった? 俺自身初耳だが…。(爆)
 
 「(三千里~、今だけでいいから達人らしく振舞ってくれよ。)」
 
 完全に無茶振りである。(爆)
 まあ仕方ない、ここまで来て朝乃魔央先輩を見逃すのももったいないしな。今だけ話にノるか。
 
 「そうじゃ、我こそ達人じゃ。」
 「同じ年か1個上の先輩にしか見えませんが…」
 
 女子部員が不思議な顔で恭介を見る。だが、乗りかかった(ドロ)船、ここで引く訳にはいかない。
 実際剣の扱いは自信がある。その辺の知識で対応すればいっか。
 そんな考えで、突然達人にされた恭介はその場しのぎのウソに対処する羽目になる。
 
 「で、では、そう言う事なので朝乃先輩、実際に戦ってみてください。」
 
 女史部員は恭介と丹下を飛び越える感じでそう話す。
 なぜ、頭越しに話をする、と思い、2人は後ろを見てみる。
 すると、そこにはスラっとした感じの綺麗な女子生徒が立っていた。
 そして、その女子生徒は恭介と丹下をマジマジと見る。
 
 「話の筋はわかりませんが、この男どもはのぞきに来た輩なのでしょうか?」
 
 恭介らは思いっきりのぞきの犯人扱いだ。(爆)
 
 「何をおっしゃるうさぎさん。私達は達人と共に視察をですね…」
 
     ギロッ!?
 
 朝乃魔央の威圧感たっぷりの視線が突き刺さる。
 どこかで感じた視線に近い、…そうだ、澄香の怒った視線に近い感じだ。
 
 「よろしい。では、2人が道場内に入るのを許可いたしましょう。」
 「あ、朝乃先輩。部長に許可なくそんな事言っていいんですか?」
 
 さっきの女子部員も朝乃魔央がそんな事を言うとは思ってもなかったので、驚いている。
 
 「杉村さん、心配は無用ですわよ。」
 「そうそう、俺たちには何も心配いりませんよ。」
 
 丹下は味方を得たかのように、偉そうに言う。
 
 「そこの君、名前は何て言いました?」
 
 恭介らを指差して尋ねる朝乃魔央。
 
 「憧れの朝乃先輩にお会いできて光栄です。私は丹下鉄平と言いまして…」
 「あなたに尋ねているのではありません。あなたが達人と言ったそちらの方に尋ねているのです。」
 「あ、そうですか…。ささ、先輩がお前の名前をお聴きされておる。さっさと申せ。」
 
 丹下、お前はどっちの立場の人間なんだ!?
 
 「で、貴殿の名は何と申しますの?」
 「あ、三千里恭介です。」
 「三千里恭介様ですね。」
 「え!? ええ…そうですね。」
 
 さ、様で呼ばれるとは思わなかった。(驚)
 
 「では、達人と言われるその腕前、私にも見せていただきたいですわ。」
 「え…と言いますと?」
 「何をおっしゃるの。当然、私と恭介様とでひと勝負しますのよ。」
 
 え、ええっ!?
 
 丹下の出まかせを真に受けて、勝負する事になってしまった恭介。
 いや、逆に嘘と知っててそれの反省を促す考えなのか!?
 いずれにしても、今ここで謝れば話は早いが、そrはそれでちょっとプライドが許さない気もあった。
 秘密ではあるが、恭介自身も剣を司る身。竹刀であろうが基本は同じ。久々にこういう手合わせも
 いいかな、と思ったので、何も反論せずに承諾する。
 
 「(ねぇ三千里~、あんな事言ってるけど、大丈夫?)」
 「(お前があんな事言うからおかしくなったんだろうが。尻拭いはしてやるから感謝しろよ!)」
 「(あ、ああ。今度何か奢るわ。)」
 「(わかった、それでいい。)」
 「(でも三千里~、剣道やった事あるの?)」
 「(部には入ってないが多少のたしなみはあるから、何とかなるだろう。)」
 「(そ、そう…。)」
 
 自分から嘘を言っておいて心配する丹下も丹下だが、彼なりに心配してるので今回は勘弁して
 やろう。さて、何を奢らせるかな?w
 
 「もう、遺言の伝達は終わりましたか?」
 
 優しい口調で辛辣な事を言う朝乃魔央。逆に怖いわ。
 
 こうして、三千里恭介と朝乃魔央の2人は剣道対決する事になる。
 
 
   -つづく-
 
2010年09月03日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  17

 
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            第2章、 
 
 
      第2章  バカと刀は使いよう  3
 
 
 「では、アルピナの出迎えはすまないが、宜しく頼む。」
 「わかりました、恭介様。」
 
 保健室から出た恭介と魔耶は最小限の手筈を済ませると、それぞれの任務に戻っていく。
 もっとも、魔耶とは違い、恭介は教室に戻るだけなのだが。w
 
 
 教室に戻った恭介だが、すでに午後の授業は終盤戦に向かっていた。
 
 「もうこの授業で最後かぁ。」
 
 前半3時限・後半3時限の授業構成を持つ修学院大学付属高校(通称・修大附)だが、
 午後保健室などで色々あった後、やっと教室に戻った時はもう6時限目の始まるチャイムが
 鳴る所であった。
 
 そして、最後の授業を受ける恭介に冷たい視線が突き刺さる!
 
    ギロッ!?
 
 また澄香かと思ったら、うわ~、今度は都歌沙の方だった。(爆)
 
 そういえば、保健室に向かう時、都歌沙が呼んでいたけど急いでたので無視してしまったが、
 どうやら、それを根に持ってるようだ、困ったなぁ…。
 
 キーン  コーン  カーン  コーン 
 
 どうするか悩んでいると、授業の終わるチャイムがかかる。
 
 6時限目の後HR(ホームルーム)があるのだが、職員室に6時限目の先生が戻ってから
 担任の先生が教室にやってくる方式なので、先生が来るまで若干時間がある。
 
 その時間で恭介の元に迫ってくる巨頭2人が!?
 
 「恭介っちぃ~。」
 「三千里ク~ン。」
 
 当然、やってきたのは澄香と都歌沙である。
 
 「あ、あの~、何でしょう?」
 
 ここで恭介は言ってはならない言葉を投げかける。(爆)
 
 「何でしょう?ですって!?」(怒)×2
 
 2人からの視線が痛い。
 
 「今日はあえてどうこう言わない。ただ1つだけ言っておくわ。」
 
 澄香が怒りを抑えつつ、必死に平静を装いつつ言う。
 
 「明日、PM12:00にイグナリアに集合する事。もし、来なかったらタダじゃすまないから。」
 
 澄香は両腕を腰に当てながらそう言い放つと自分の席に戻る。
 その直後、都歌沙が補足を入れる。
 
 「三千里クンの家を聞こうとしたんだけど、今日全然話出来なかったよね。だから勝手だけど
 イグナリアを場所にさせていただいたの。」
 「そうですか。すみませんでした。」
 「あのね。澄香は三千里クンの転校祝いをしたかったの。」
 「え?」
 
 なぜ、澄香が恭介の家に来ようとしたのかわからなかったが、都歌沙がその理由を教えてくれる。
 
 「マクドムドムで私達3人が一緒にフライドポテト等を食べた時、変な事件が起こったじゃない、
 だから、今度はきちっとした形で転校祝いも兼ねて会食しようって澄香が言ってたからなの。」
 
  いい娘やん、澄香って。♪
 
 「わかった、じゃ、明日イグナリアで。」
 「うん。
 
 そう言うと、都歌沙も自分の席に戻る。
 
 
 
 「は~い、HRを始めますよ~。」
 
 都歌沙が自分の席に戻ったと同時に、恭介の2年B組の担任・菅波朋子先生が教室に来る。
 
 「今日のHRの議題は、来月に迫った修学旅行の行き先の事と今度女子剣道部が全国大会へ
  出場する件についてです。」
 
  ざわざわ ざわざわ ざわざわ ざわざわ
 
 にわかに教室がざわめくが、それもそのはず。学生生活において修学旅行というイベントは
 誰もが楽しみにしているモノである。
 そして、その場所がどこになるかでも大きな要因となるモノである。
 
 「し、静かにしてくださいっ。」
 
 菅波先生がざわめきを抑えようとする。
 だが、それに火を付けるバカがどのクラスにも1人は必ずいるものだ。w
 
 「スガトモ先生、行き先はエロマンガ島がいいと思いま~す。」
 
  ブーブー(怒)
 
 教室全体からブーイングが飛び交う。こんなおバカな事を言うのは、このクラスではコイツだけだ。
 
 「丹下君、変な場所を申告しないでください。」
 
  わははははw
 
 教室内が大爆笑の渦になる。恭介のクラスの担任である菅波先生は通称・スガトモ先生と
 呼ばれ親しまれている。だが、人の良い性格が災いしてこのようにからかわれる事もある。
 そして、今日はクラスきってのおバカキャラ・丹下鉄平にちょっかいを出されていた。
 
 「と、とにかく、来週には選定しますのでどこがいいかみなさんで考えていてください。」
 
 クラス内のざわめきが止まらないので、この議題は早々に済ませる事にした。
 
 「で、もう1つ、翌週の金曜日、我が校から全国大会へ出場を決めた朝乃魔央さんの走行会が
  あります。放課後ですが、時間がある方は参加してください。」
 
 この報告は修学旅行の話題でざわめく教室内では、ほとんどの人が聞き流していた。
 その中でわずかの人物がこの話をしっかりと聞いていた。
 その話を聞いていた中の1人が他でもない恭介であった。
 
 (へぇ、剣道大会で全国に行くんだ。見た事ないけどどれほどの腕前なんだろう)
 
 恭介の場合は、純粋に剣の実力に興味を持ったのが理由だが、もう1人はいささか状況が
 違ったようだ。その男はHR後恭介に話しかけてくるのだった。
 
 「では、これでHRは終了します。みなさん、良い週末を迎えてください。」
 
 そう言うと、菅波先生は教室を後にする。
 その後、すかさず恭介の元に都歌沙がやってくるが澄香は向こうで待っている様子。
 そして恭介の方を見ているのだが、その表情はさっきまでの険しさはなかった。
 
 「じゃ、三千里クン、明日の昼忘れないでよ!」
 「あ、ああ。」
 「うん、じゃあね。」
 
 そう言うと、そそくさと澄香の所へ戻る。そして、何やら笑いながら話をしつつ教室を出て行く。
 
 「つくづく女はわからん…。」
 
 そう思う恭介だが、気分は悪くない。
 そう感じてる直後に、恭介の元にやってくる1人のクラスメイト。
 
 「ねえねえ、三千里~。」
 「何だ、バカか。」
 「バカか、はないよ~。」
 
 恭介の元にやってきたのは、おバカキャラ全開の男・丹下鉄平である。
 
 「一体、何の用だ?」
 「そんなに冷たく当たらないでくれよ~。」
 
 恭介は、この男が好きではなかった。いや、正しくは苦手と言った方が正しいかな。w
 なぜなら、恭介は16の時からI・S・A・Mで仕事をし始めていた。大人の中に混じって時には
 殺し合いもした事のある恭介にこの丹下という男のナヨナヨとした感じがどうにも性に
 合わなかったのが、彼を好まない大きな理由である。
 
 「で、何の用だ?」
 「あ、ああ。さっきのスガトモ先生の話聞いた?」
 「…。」
 「あれ、どうしたの~?」
 「いや、たんげ~がスガトモ先生の身体意外に興味を持つなんて思ってなかったから、驚いた。」
 「ちょっと~、それどういうこと~!?」
 「そのままの意味だが、たんげ~。」
 「確かにスガトモ先生のスタイルは大いに関心がある。」
 
 (大いにあるんかいっ!? 物好きだな、たんげ~)
 
 恭介は半ば呆れ顔で、まだ話をしてくる丹下の相手をしなければならない。
 
 「三千里~は変な顔するけど、スガトモ先生のスタイルには大いにソソルものがあると
 思わないか、と尋ねたい…って、ちょっとそんな顔で睨まないでくれよ~。」
 「もう、帰っていいか?」
 
 恭介が呆れて帰ろうとすると、すぐさま恭介の手を取って引きとめる。
 
 「まだ話が済んでないよ~。」
 「だから、何の用だって!?」
 「そんなに怒らないでよ~。」
 
 このままじゃ堂々巡りだ。怒る気持ちを抑えつつ、もう1度丹下の話を聞く事にする。
 
 「さっきスガトモ先生が言ってた話なんだけど…」
 「ん、修学旅行の件か?」
 
 恭介はてっきりそうだと思ったが、答えは意外な方であった。
 
 「違うよ~、朝乃魔央さんの事だよ~。」
 「…。」
 「どうしたの、三千里~。」
 「朝乃さんの事だが、俺その娘見た事ないんだが…。」
 「え~!?
 
 めっちゃ驚く丹下。
 
 「あの才色兼備・運動神経バツグン・スタイルも文句なしの彼女を知らないのかい?」
 「ああ、知らん。」
 「そ、そんなバカな…。」
 「バカにバカと言われると無性に腹立つんだけど。」
 
 転校して間なしの男が、そうそう他のクラスの生徒を知る訳がない。
 ましてや、その朝乃魔央さんという娘は1学年上の3年だと言うそうだ。同じ学年でもまだ
 知らない人が多い中で、上級生を知る訳がなかろう。もうちょっとしたらまた転校する身なのに…。
 
 「そうか~。それはいけないよ三千里~。」
 「何がいけないのか皆目わからん。」
 「そ、そうだ。今から彼女を見に行こう!」
 「はぁ!?」
 「そうと決まれば善は急げだ~。」
 
 そう言うと、丹下は恭介の腕を掴んで女子剣道部のある道場まで引っ張っていく。
 
 
   -つづく-
 

プロフィール

「ホンダの頭にホンダ」
何シテル?   05/13 16:39
再び色々ありまして、乗り換えです。 2回目のホンダ車でまた白に戻りました。 引き続き宜しくお願いいたします。。♪   一般人からみたらオタク系だと思...
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