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2010年08月22日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  16

 
 バックナンバー⇒第1章、 
            第2章、
 
 
      第2章  バカと刀は使いよう  2
 
 
  キーン  コーン  カーン  コーン  
 
 授業が始まるチャイムと同時に教室に戻った恭介。間一髪であった。
 
 特に何事もなく授業は始まったが、1人だけ何かに気になっている人物がいた。
 
 「ちょっと、三千里クン?」
 
 恭介に小声で話しかけるのは花畑都歌沙。恭介と同じ2年B組で山本澄香とは仲が良い。
 
 「何?」
 「何じゃないよ、三千里クン。授業始まる前にどこ行ってたの?」
 「あ、ちょっとヤボ用。」
 「何、ヤボ用って?」
 
 いやにしつこく聞いてくるなぁ。
 
 「別に俺が何やっててもいいだろ?」
 「まあ、私も気になるから聞いてるのもあるんだけど、ほら、あれ。」
 
 都歌沙が指差す方向を見る。
 
   ギロッ!?
 
 うわ~、睨んでるよ。澄香が。(爆)
 
 「何て言っておく?」
 「そうだなぁ、とりあえずトイレのと言っといてくれ。」
 「…何それ。」
 
 今度は都歌沙の冷ややかな視線が。
 だって、本当の理由なんて言える訳ないし…。
 まあ、澄香に嫌われても大きな影響もないからいいとしよう。だが、都歌沙に嫌われるのは
 ちょっと悲しい気がする。何でだろう?
 
 
 その後、授業は淡々と進み、午前中の授業が終わる。
 
 恭介は次田女史に言われた様に保健室に向かう恭介。
 
 「ちょっと三千里クン。どこ行くの?」
 「…。」
 
 都歌沙が恭介を呼ぶが、あえて無視して教室を出る。
 
 (はぁ、後の弁解が大変だな…)
 
 
 
  ガラガラガラ
 
 保健室の扉を開ける。
 いつもなら正面に保健医・友野友子女医がいるはずなのだが、その姿はなかった。
 
 「友野先生も魔耶もいない、か。」
 
 パッと室内を見渡すが、誰かがいる気配はなかった。
 そう、気配はなかったはずなのだが、この直後恭介は何者かに背後を突かれる!
 
 「おとなしくしろ!」
 
 恭介ののど元にはナイフのような刃物を突きつけられる。
 
 「俺に刃物は効かないぜ。」
 
 不敵な笑いを浮かべながら恭介は言う。
 
 「わかってますわ。」
 
 そう言うと、恭介に刃物を突きつけた人物は刃物をしまい、恭介から一旦離れる。
 
 「やっぱり、お前か、魔耶。」
 「お待ちしておりましたわ、恭介様。」
 
 恭介に刃物を突きつけた人物とは魔耶であった。
 
  『魔耶』
 
 I・S・A・M日本支部所属。三千里恭介直属のサポーターとして恭介の仕事を補佐している。
 見た目は20歳くらいに見えるが、実年齢は不詳。169cm 52kg B88・W59・H86。
 なぜかメイド服で活動する事が多く、特殊作戦であろうがその基本姿勢は変わらず、
 メイド服の戦闘モード版等5種類のメイド服がある、と本人も言っている。
 だが、恭介自身が知ってる別バージョンのメイド服でも2つまだ見た事がないモノがあるらしい。w
 
 
 「今日は急にどうしたんだ、魔耶。」
 「はい、実は明日ドイツ支部からアルピナ様が来日されると報告がありまして…」
 「…。」
 「…。」
 「…、、マジで?」
 「はい、マジで。」
 「え~!?」
 
 恭介は心底驚く。
 
 「ちょっと待て、魔耶。どうして今アイツが日本に来るんだよ。」
 「はぁ、そうなんですが…」
 「何か理由は聞いてないのか?」
 「ええ。ただ一言だけ言ってましたね。」
 「な、何と?」
 「恭介、首を洗って待ってろ!と。」
 
  ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!
 
 恭介は狂喜乱舞しそうな心を必死で抑える。
 
 「恭介様。明日は土曜日ですので、学校はお休みですよね。」
 「あ、ああそうだが…」
 「では、問題は御座いませんね。」
 
 アイツが来る事自体が問題なんだが。(爆)
 
 「あ、そうだ!」
 「どうなさいました?」
 「明日は、澄香や都歌沙が来る。」
 「どこに?」
 「家に。」
 「…それはマズイですねぇ。」
 「な、何で?」
 「それは問題でしょう。S・バーナード協会はI・S・A・M日本支部の所有物。
  第3者の来訪は有事の際に支障をきたします。」
 「そ、そういうもんなのか?」
 「恭介様、そんな初歩的な事も気付いてないのですか。」
 「なんかカチンと来る言い方だな。」
 「いずれにしても、明日はアルピナ様が来日する日。お迎え等の問題もございます故どうします?」
 「ああ…。困ったなぁ。」
 
 恭介は勝手に座ってる友野女医の席で考え込む。
 
 別に澄香との約束を鉾にしてもずっとこの学校にいる訳じゃないから気にする事はないんだけど
 都歌沙に対しては何か引け目というか申し訳なさを感じるのはなぜだろう。
 
 「アイツが来日するのは何時頃だ?」
 「ええ、報告によりますと、明日のパリ発羽田行きの到着時間は20:20と聞いてます。」
 「そうか、じゃ澄香や都歌沙との時間のバッティングは避けられそうだな。」
 
 ひとまず、最悪の事態は回避できそうだと一安心する恭介。
 だが、何やら腑に落ちない表情をしている魔耶。
 
 「どうした、魔耶?」
 「いえ、1つお聞きしたい事がございまして…」
 「何だい?」
 
 す~っと恭介に近づき、そして
 
 「澄香とか都歌沙さんて誰なんですか?」(怒)
 
 「く、苦しい…」
 
 優しい顔しながら恭介の首を絞める魔耶。余計に怖いんですが…。
 
 「まさか、私と言うサポーターがありながら他にもサポーターを雇ってるんじゃありませんよね。」
 
 そう言いながら、更に首を絞める力が強くなる。
 
 「そ、そんな事はない。だって、彼女らはただの同級生なんだから。」
 「ど、同級生ですって!?」
 
 なぜ、そこで驚く?
 
 「ど、同級生と言えば、とあるPCゲームでその同級生といやらしい展開がどうのこうの…(ry」
 「おい。その情報、誰から聞いた?」
 「前日本支部長からですが、何か。」
 「あのおっさんだっきゃ~。」(怒)
 
 
 とりあえず、澄香や都歌沙についての説明をする。無論、『同級生』というPCゲームの説明も。w
 
 「そ、そういう事ですか。」
 「そうそう。」
 「大変、失礼をいたしました。私、てっきりサポーターの任務を変えられるのかと思いまして…」
 「俺の知る所、魔耶以外で能力の高いサポーターを知らない。だから安心しろ。」
 「恭介様。」
 
 何だか、甘~い雰囲気が。 だが、それもつかの間だった。
 
 「ふぁ~、眠いのぅ。」
 
  !?
 
 保健室に誰かがやってきた。慌てながらも魔耶は一瞬でベットのあるカーテン向こうに隠れる。
 
 「ん、誰だ、人の席でふんぞり返っているのは?」
 
 恭介の方は椅子に座っていたので、慌てて移動しようとしたが、コマ付きの椅子だったので、
 それが転がり隠れるどころかヘンテコな格好で座る形になってしまっていた。w
 
 「ん、見ない顔だな。」
 「あ、どうも。えっと、先生ですよね?」
 
 保健室に入ってきたのは、白衣を着た女性。どうやら校医であると推測した恭介はそう言う。
 
 「いかにも、私は『友野友子』だ。では今度はキミにも名乗ってもらおう。」
 「あ、三千里恭介と言います。」
 「ほぅ、珍しい名前だな。」
 「みんな、そう言います。」
 「まあ私としては生徒の名前を覚えるのは苦手だから、変わった名の方が覚えやすい。」
 「はぁ、そうなんですか。」
 
 何やら変わった雰囲気を持つ校医だなぁ、と思う恭介。
 校医でありながら妖艶な雰囲気を醸し出しているのは、どうかと思うが。w
 
 「ところで三千円くん、保健室に何の用だい?」
 「先生、俺は『三千円』じゃなく、『三千里』ですっ。」
 「あ、済まなかった。昔のバイトの癖が出てしまって、あははは。」
 
 あなたは一体どんなバイトしてたんですか!?
 
 「では三千円くん…」
 「三千里です。」
 「あ、すまん。で、保健室には何の用かな?」
 「あ、えっと…」
 
 思わず理由に詰まる恭介。
 
 「まあ、私は校医ではあるが教育に口を挟む立場ではないのであまりどうこうは言わないが、
  逢い引きは別の所でやって欲しいものだな。」
 
 と言ってカーテンを開ける。
 
 「あ…」
 
 当然そこには魔耶がいる。
 
 「他にも逢い引き出来る部屋があるだろう。さっさと出て行きな。」
 
 少し怒り気味に言う友野女医。
  
 「は、はい。」
 「失礼いたしますわ。」
 
 そそくさと保健室を出て行く恭介と魔耶。
 
 「まったく、もう。最近の高校生はマセテルんだから。あ~、私もりたくなったわ。」
 
 1人になった保健室で何気にトンデモナイ発言をする友野友子女医であった。(爆)
 
 
   -つづく-
 
2010年08月11日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  15

 
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      第2章  バカと刀は使いよう  1
 
 
 時は金曜日。
 
 昔、金曜日と言えば『花の金曜日』と称され、社会人の間では週末が連休になったのと
 時を同じくしてその前日の金曜日は週末の休みなので、夜遅くまで遊んでも支障がないという
 感じで、よく飲みに行ったり楽しんだりしたものである。
 
 時が経ち、今では学生も土日の週末が休みとなり、社会人が謳歌していた金曜日は
 一般学生達にも言葉としては言われないが『花の金曜日』は存在していた。
 
 ここ修学院大学付属高校(以後、修大付と略す)2年B組でも、金曜日は週末に向けて
 色々と模索している人がいた。
 
 「あ、来た来た、恭介っち~。」
 
 朝、教室に到着した恭介に向けて大きく手を振る人物がいる。山本澄香である。
 
 「おい、昨日の電話は何なんだ?」
 
 恭介は怒ってはいなかったが、昨日用件だけ言って一方的に切られた電話には
 納得がいってなかった。
 
 「詳しい事は今日話すから用件だけ伝えとこうと思ったから。」
 「俺が言ってるのはそんな事じゃねぇ。」
 「何、恭介っち、せっかく誘ってあげてんのに、そんな事言う訳?」
 
 何かカチンとくる言い方しやがって。
 
 「では、誘わなくて結構。週末は仲のいい友達と楽しくな。じゃ。」
 
 特に期待していた訳ではないので、そう言ってやった。
 で、自分の席に戻ろうとした時、澄香が恭介の腕を取る。
 
 「待・ち・な・さ・い。」
 「一体何なんだよ…って、うわ、目が怖っ!?」
 
 澄香が恭介を睨みつけている。
 
 「恭介っちに断る権利はないの。」
 「権利がないなら、義務もないはずだ。」
 「何、それ。難しい事言わないで。」
 
 別に難しい事は何もないと思うが…。
 
 「よし、簡潔に言う。俺が聴きたいのはどういう理由で俺の所に来るのか?と言うことなんだ。」
 「何野暮な事を尋ねてんのよ。」
 「野暮?」
 「そうよ。」
 「俺には話が見えないんだが…。」
 
 どういう事だ、俺への誘いを尋ねる事が野暮というのは?
 
 「もう、ニブちんにもわかるように言ったげる。」
 「おう、そうしてくれ。」
 「何か調子狂うなぁ。要は恭介っちの転校記念をやろうって事よ。」
 「…。」
 「…。」
 「……。」
 「……。」
 「………、あ、そう言う事か。」
 
  バシッ!
 
 澄香のツッコミが入る。
 
 「今、気付いたか、バカちんが。(笑)」
 「すまんな。」
 「まあ、ネタばれしちゃったからもういいわ。で、恭介っちの住まいってどこ?」
 「あ、俺の住まいか。えっと、き…」
 
  プルプルプルプル♪
 
 「あ、すまん。電話だ。」
 
 恭介の電話が鳴ったようだ。そして、恭介はその電話に出る。
 
 「もしもし?」
 「あ、私、さとみんですわ。」
 
  ガチャ ツーツーツー
 
 恭介はすぐに電話を切る。
 
 「恭介っち、どったの?」
 「ああ、イタズラ電話なようだ。」
 「へぇ。今日のパンツは何色、とか言われた?」
 「…。澄香、おまえ…」
 「ごめん、私が悪かったわ。それ以上言わないで。」
 
  プルプルプルプル♪
 
 再び電話が鳴る。電話してきた相手は『次田里美』という表示があった。
 
 やな予感しかしない。
 そう思いながらも電話に出る恭介。
 
 「おい恭介。何途中で電話切っとんねん!」 
 
 あっちゃ~、次田女史めっちゃお怒りですな。(爆)
 
 「恭介、今度は何? 急に携帯電話を耳から離すわ、そこから大声は漏れるわ。」
 「あ、いや…ちょっと席を外す。」
 「え、ちょっと恭介っち。もうちょっとしたらHRだよ。」
 「それまでには帰る。」
 
 そう言うと、恭介は教室を飛び出す。
 
 
 「ちょっと次田さん、どうしたんですか、こんな時間に電話してきて?」
 
 電話の主は今更言うまでもなく次田女史である。
 
 「こら、ちゃんとさとみんと呼びなさいと言ってるでしょ。」
 
 うわっ、めんどくせぇを飛び越えてマンドクセェだわ。(爆)
 
 「さとみん、一体どうしたんです、こんな時間に電話してきて。」
 「さっき、I・S・A・M日本支部から電話があって…」
 「日本支部から電話って、先日の件ですか?」
 「ええ、それもあるんだけど…」
 「何か歯切れが悪いっすけどどうしたんです?」
 「支部長が今日の夜、来るって。」
 「どこに?」
 「私の教会に。」
 「…。」
 「…。」
 「ええッ!?」 
 
 恭介はその状況に驚き、次田女史はその恭介の声に驚く。
 
 「で、支部長って一体誰なんです?」
 
  ガクッ
 
 ずっこける次田女史。(笑)
 
 「会った事ないんですか、支部長に?」
 「ええ、3年前の前支部長の山田のおっさんなら知ってるけど。」
 「ああ、あのスケベ親父ですか。私あの人が交代するのを聞いてガッツポーズしちゃったわよ。」
 「へぇ、やっぱあのおっさん手が悪かったんだ。」
 「もう、訴えてやろうかと思った事もあったのよ。」
 「へぇ、そうだったんだ。」
 
 そうこうして5分間無駄話。(爆)
 
  キーン コーン カーン コーン ♪
 
 「あ!? こうしてる場合じゃなかった。」
 「何かチャイムの音が聞こえたわ。」
 「学校なんだから当然です。」
 「では、授業があるんで切りますよ。」
 「あ、切らないで。」
 「え、もう時間がないんですけど。」
 「1つだけ言い忘れてたわ。」
 「え、何ですか?」
 「昼休み時間、保健室に行ってね。
 「ほ、保健室ですか。」
 「そう、保健室。」
 
 唐突に保健室に行けってどういう事なんだ?
 
 「で、その時間に保健室に魔耶さんがいるから彼女に会ってね。」
 「へ? 魔耶に?」
 「そうよ。」
 「何で?」
 「行けばわかるわ。」
 「は、はぁ…。」
 「ところで、時間大丈夫なの?」
 「あ!?」
 
 恭介は電話を切るとダッシュで教室に戻る。
 
 
  -つづく-
 
2010年07月28日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  14

 
 バックナンバー⇒第1章、 
 
 
 
       第1章   刀を狩るモノ   14
 
 
 
 「な、何だ、君は!?」
 
 驚きの表情を見せる神鳴教頭。
 まさか教頭室に自分以外の人がいるなんて思ってもいなかったからだ。
 
 「今、あなたが持っていこうとしている刀は、本来のルートで流出していない刀で国際的に
 捜索されている刀です。一体どこから入手したものですか?」
 
 毅然とした態度で恭介は神鳴教頭に突っかかる。
 
 「こ、これは兄からもらったものだ。一世とである君にあれこれ言われる筋合いはない!」
 
 動揺しながらも、相手は生徒だから強気に言えばなんとかなると思っていた神鳴教頭であったが
 相手が普通の生徒ではなかったのが敗因である。
 
 「今何も言わずその刀を渡してくれれば、盗難の罪については不問にしましょう。」
 
 恭介も堂々とした口調で、神鳴教頭と相対する。
 普通の高校生はこんな口調や態度が取れる訳がない。そこはI・S・A・Mという組織で
 培われた経験がモノを言ってるのだろう。
 
 「つ、罪だって!? 俺はなにもしていない。ただ、兄の骨董品から拝借しただけだ。」
 「その地点であんたは罪を背負っている。」
 「し、仕方ないだろう。お金があるんだから。」
 「あんたがどんな借金をしてるかは知らないが、まっとうに生きてればそうそう借金を背負う事は
 ないんだ。すべては自分の犯した過ち。素直に罪を認め謝罪する事が先決だ。」
 
 段々とおろおろしてくる神鳴教頭。
 
 「う、うるさいっ。俺は教頭だ。お前よりも偉いんだ。口を慎め。」
 「はぁ。どうやら最後通告が必要ですかねぇ。」
 「な、何を言ってる? 最後通告とはどういう事だ?」
 
 更に動揺する神鳴教頭。だが、恭介も緩めるつもりはない。
 
 「もう1度だけ言います。その刀をおとなしく私に渡しなさい。」
 
 完全に上から目線で話を進める恭介。もう神鳴教頭はテンパっている。
 
 「お、お前に渡すくらいなら、こうしてやる。」
 
 そう言うと、神鳴教頭は持っているロンバルディアを恭介めがけて構える。
 
 (な、何て事をするの、あのおっさん…)
 
 陰で様子を見ている愛生はまさか神鳴教頭が刀を抜くとは思ってなかったので、
 恭介のサポートにで出ようかと思ったがさすがに躊躇する。
 だが、刀を向けられた恭介に全く同様がない。
 
 (あの子、刀を向けられて一切焦りがないなんて、どんな人生送ってんのよ!?)
 
 愛生も驚くばかりである。そんな愛生を尻目に恭介がプレッシャーをかける。
 
 「さあ、さあさあさあさあ、どうする、おっさん?」
 「お、俺はおっさんじゃない、神鳴教頭と呼べぇ~!」
 
 おっさんと呼ばれ、完全にテンパった神鳴教頭は、持っていた刀をついに恭介に振りかざす!
 
  ダメ~!!!
 
 神鳴教頭の思い余った行動に、たまらず叫ぶ愛生。
 
  カッキーン!
 
 人に斬りかかった時にする音ではない音が教頭室にこだまする。
 
 「…な、なぜ?」
 
 斬りかかった神鳴教頭の顔面が真っ青になっていく。
 それは人を斬ってしまったからだけではない。
 
 「なぜ、斬れない?」
 
 確かに恭介の肩から刀が入るはずであったが、ロンバルディアはその肩で刃が止まっている。
 どうした事はわからない表情をする神鳴教頭に対して、恭介は平然と答える。
 
 「斬れませんでしたねぇ。」
 
 不敵な笑いと共に一言だけ告げる。
 
 「あ、ありえない、刀で人が斬れないなんて。」
 「そうでしょうねぇ。その謎を知りたいでしょう。」
 「あ、ああ。どういう事なんだ?」
 
 許しを乞う子供のような表情で尋ねる神鳴教頭。
 
 「だが、それを知ることなくあなたは死ぬ事になる!」
 「な、何だって…」
 
 肩で止まったロンバルディアはおろおろする神鳴教頭から恭介はあっさり奪い取れた。
 
 「死を持って己の罪を償いなさい!」
 
  ぷしゅー!!!
 
 教頭室に飛び交う鮮血。
 
 なんと、一切のためらいなしで、恭介は神鳴教頭を斬ってしまう。
 
 「査殺完了。」
 
 そう呟いて血に染まったロンバルディアを教頭室にあるカーテンで拭き取る。
 そして、何事もなかったかのように教頭室を出ようとする。だが、それに待ったをかける人が。
 
 「ち、ちょっと、三千里。あんたなないやったのかわかってるの?」
 
 陰で2人のやり取りを見ていた愛生である。
 
 「…。」
 
 恭介は何も答えない。ただ、愛生をじっと見つめる。
 
 「いくら神鳴教頭が悪い事をしてたって言っても、殺す事ないでしょう。」
 「あやめさんも見てたならわかるでしょう。教頭は私を斬ったのですよ。」
 
 そう言うと、最初に神鳴教頭が恭介を斬った際に斬れた服の部分を指差す。
 
 「でも、あんた斬れてないじゃない。」
 「それは私が普通じゃないからです。でも、もし生徒会長、あなたが斬られていたとしたら
 間違いなく、真っ二つに斬られていたのですよ。」
 「そ、そうかもしれないけど、でも…」
 
 そこまで言うと、恭介は愛生の唇に指をそっと当てる。
 そして、愛生もそこで言葉が詰まる。
 
 「つらい出来事を目撃してしまいましたね。」
 「…。」
 
 そう恭介が言うと、無言のまま愛生は涙を流す。
 
 「その悲しさを取り除いてあげます。」
 「え?」
 
 そう言うと、恭介は愛生の首の後ろをトンと叩く。
 
 「そ、そんな…。」
 
 愛生は恭介の手刀で気絶する。そしてその直後、教頭室に誰かが入ってくる。
 
 「片付きましたか、恭介様?」
 「ええ。血でちょっと汚れましたが、ね。」
 
 突如やってきた女性に恭介が答える。
 
 「ちょうどいい所に来ました1つ頼まれてくれますか?」
 「何でしょう?」
 「この女性の今日の記憶を消して下さい。」
 「ええ、お安い御用ですわ。」
 
 そう言うと、愛生に軽くおまじないというか呪文のようなものを唱え、額にキスをする。
 すると、そこが光輝く。そして、その光はほどなく消えていく。
 
 「恭介様、無事記憶を消しましてございますわ。」
 「ご苦労様です、魔耶(まや)。では、そのまま保健室に彼女を運んでいてください。」
 「了解いたしました、恭介様。」
 「じゃ、後ほど。」
 
 そう言うと、恭介は2年B組の教室へ、魔耶という女性は愛生を抱えたまま保健室へと向かう。
 

 
 
  き~ん こ~ん か~ん こ~ん ♪
 
 恭介が教室に戻るちょっと前に終業のチャイムが鳴る。
 
 「それではみなさん、帰る人は寄り道をしないように、部活の人は怪我をしないように、ね。」
 
 今日最後の授業をしていた国語の浅井真央先生が教室を去る時そう言って生徒達と別れる。
 そして、それとすれ違うように恭介も教室に戻る。
 恭介の姿を見つけた都歌沙が恭介の元にやってくる。
 
 「ちょっと、三千里クン。授業サボってどこに行ってたの?」
 「あ、ごめん。屋上で寝てた。で、気付いて戻ったらこの時間だった。」
 「何やってんのよ。シャキッとしなさいよ。」
 「ああ、ごめん。」
 
 何事もなかったのように都歌沙と話す恭介。もちろん、血が付いた服はさっきやってきた女性が
 持ってきていた汚れる前と同じ服に着替えて戻っていたので、さっき恭介がやった出来事など
 知る由もなかった。
 
 その後、教頭室で神鳴教頭が死んでいるのを他の教員が発見した。警察の捜査で、
 神鳴教頭の家宅操作により多額の借金が判明し、それによる自殺と断定された。
 そして、その事件は神鳴教頭の兄・権造の裏工作でニュースになることなく終結した。
 兄・権造も弟のていたらくに苦労していたようで、事件が表ざたになる事で自身に
 影響が出ないように仕向けたようだ。
 
 
 
 「…ん、あれここはどこ?」
 
 ベットで目が覚める愛生。
 
 「あ、生徒会長さん起きた、ここは保健室よ。廊下で倒れてたのを連れてきてくれてたのよ。」
 
 校医・友野友子が答える。
 
 「そ、そうなんですか。えっと、今日の記憶が全然ないわ。」
 「まあ、疲れてるんでしょう。今日は早く帰りなさい。」
 「そ、そうします。」
 
 そして、愛生は1時間後保健室を後にし、下校した。
 
 
 
 
 「ただいま~。」
 
 恭介がこの街での家である聖(セント)・バーナード教会に帰ってきた。
 
 「お・か・え・り・な・さ・い。」
 
 教会の主人であり、I・S・A・M日本支部の一員でもある「次田里美」女史が恭介をアツく出迎える。
 
 「だ、抱きつかないでください。」
 「もう、誰も見てないんだから恥ずかしがらなくていいのにぃ。」
 「だれも見てなくても恥ずかしいんですってば!?」
 
 次田女史に抱きつかれてすりすりされる恭介。(爆)
 
 「今日はお疲れ様。」
 「ええ、色々と疲れました。で、ロンバルディアは?」
 「あ、恭介クンが帰ってくるちょっと前に魔耶さんが持ってきてくれました。」
 「そうですか。では、この件はこれで終了ですね。」
 「ええ、無事任務完了ですわ。」
 「じゃ、この街ともお別れか。」
 
 今回、恭介がこの街に来たのは、ロンバルディアの捜索が目的であった。
 こうして、ロンバルディアが戻ってきた以上、任務は完了となり、次の任務があれば
 どこであろうが行かねばならない。たったの4~5日しかいなかっただけにもうちょっとこの街が
 どんな街なのか探索したかったという気持ちも恭介にはあった。
 
 「そんな、寂しいですわ。」
 
 そう言うと、また次田女史が抱きついてくる。
 
 「うわ~、だからいちいち抱きつかないでください。」
 「だって、まだ恭介クンとは夜を共にしてないし、あとエッ…」
 
  バシッ!
 
 「それ以上言うな!」
 「痛った~。恭介クン、冷たい。」
 「誰かが聞いたら誤解するような事を言わんでくださいっ。」
 「もう、恭介クン照れ屋なんだから。」
 「…。」
 
 それ以上突っ込む気力はなかった。w
 
 
  トゥルルルルル ♪
 
 「あ、電話ね。」
 
 そう言うと、次田女史は電話のある所へ行く。
 
 依頼を終え、のんびりとコ-ヒーを飲む恭介。
 
 「さて、今度はどこで仕事をするんだろうなぁ?」
 
 そんな事を考えてると、次田女史が受話器を持ちながら部屋に戻ってきて恭介を呼ぶ。
 
 「恭介クン、電話よ。」
 「え、誰からです?」
 「山本澄香さんって方からだけど、誰? もしかして浮気?」
 
  バシッ
 
 「浮気言うな、浮気って。」
 
 とりあえず突っ込む。w
 
 「はい、もしもし、三千里ですが?」
 「あ、恭介っち。元気?」
 
 電話の主は確かに山本澄香であった。
 
 「今週末ってなにか予定ある?」
 「今週末? 何もないけど。」
 
 とりあえず依頼も終わったかたひとまずは時間あるけど…なんだろう。
 
 「じゃ、土曜日朝10時に恭介っちの家に行くね。」
 「え、どういう事?」
 「じゃ、詳しくは明日学校で、ね。」
 
  ガチャッ ツーツーツー
 
 「あ、用件だけ言って電話切りやがった!」
 
 (それにしても、いきなり来るって何かあったっけ?)
 
 色々と考えてみるがなにも思いつかない。
 まあいっか。それよりも聞いておかないといけない事があった。
 
 「ねえ、次田女史。」
 「もう、忘れたの。『さとみん』って呼んでっていったじゃない。」
 
 うわっ、めんどくせぇ。w
 
 「さ、さとみん、1つ聞いていい?」
 「何かしら?」
 
 さとみんと呼ばれて返答が1オクターブ高い。♪
 
 うわっ、超めんどくせぇ。
 
 「次の依頼があるまで、自分はどうなるんですか。」
 「指示があるまではここにいていいのよ。」
 「つまり、「ここで待機って事ですか。」
 「そうよ。」
 「了解。ありがとう。」
 「どういたしまして。」
 
 (なるほど、次田女史も返事が明るいのは待機中は俺がここにいるからって事か)
 
 「じゃ、今週末お客さんが来ますんで、宜しく。」
 「ええ、わかったわ…って誰が!?」
 「さっきの電話の娘。」
 「では、却下ですわ。」
 「あんた、子供か。」w
 
 (まあ、居候なんで、一応家主の次田女史に断っておかないとな。)
 
 軽く返事をした恭介であったが、まさかその返事の結果、今週末にあんな事になるなんて!?
 
 
   - 第1章 終了 -
 
 
 ひとまず第1章が終わりました。手探りで始まった為、支離滅裂な部分もあった事を
 ここでお詫びいたします。
 
 第2章はもうちょっとしっかりとした作品にしていきたいと思ってますので、
 引き続きお付き合いいただける方は今後も宜しくお願いいたします。
 
2010年07月22日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  13

 
  バックナンバー⇒第1章、
 
 
       第1章   刀を狩るモノ   13
 
 
 「しょうがない、こいつで開けよう。」
 
 そう言って愛生が取り出したのが、部屋のカギであった。
 
 「そ、それって…」
 「そうじゃ、この部屋のカギじゃ。」
 「持ってたんすか!?」
 「ああ、持ってた。」
 「なんで、あやめさんが教頭室にカギを持ってるんですか。」
 「禁則事…(ry
  
 慌てて愛生の口を抑える恭介。
 
 「何をする!?」
 「それ以上、言っちゃいけませんよ。」
 「なぜじゃ?」
 「あなたが1番ご存じでしょうが!?」
 「…確かに、まずいわな。最近は盗作問題で揺れておるからな。」
 「もしもし? あやめさん、何の話をしてるんですか?」
 「これを読んでる読者がわかればいいんじゃ。」
 「…。」
 
 これ以上はまずいわな。w
 
 「それは一旦おいといて、何でカギを持ってるんですか?」
 「そこはそれ、生徒会長特権ってヤツなのでね、ウフッ。」
 「ウフッ、じゃないですよ。無茶なんだから。」
 「まあ、いいわ。これでカギを開けてみて。」
 「はいはい。」
 
 そう言って愛生から渡されたカギで教頭室に部屋のカギを開ける。
 
  パシャ!
 
 「ななな、何ですか!?」
 
 カギを開けた所を写真に撮る愛生。
 
 「これで三千里も共犯よ。w」
 「あんた、やる事無茶苦茶だ!」
 
 さすがに恭介も怒り気味になる。
 
 「何だ、三千里は肝っ玉が小さいなぁ、ナニのピーもちいさ…(ry
 「あやめさん、それ以上の発言はこの作品の存続にかかわるので、勘弁してください。」
 
 その声を発したのは恭介ではない。いわゆる【天の声】ってヤツだ。w
 
 
 「まあ、カギも開いた事だし、早速入りましょう。」
 
 そう言うと、愛生が先に教頭室に入る。
 
 「あ、待って下さいよ。」
 
 続いて恭介も入る。
 
 教頭室に入った2人は室内を見渡す。
 一見、特に変わった様子はない。
 
 「校長室とそう変わらないな。」
 
 愛生がつぶやく。
 
 「あのぅ私校長室に行った事も入った事もないので、違いがわかりません。
 
 恭介がそう言うと、悲しそうな表情で愛生が言う。
 
 「そうか、残念な話だわ。校長室に入った事ないなんてここの学生としての自覚はないの?」
 「この前転校してきたばっかでわかるはずがないでしょうが!?」
 「…そうだったわね。忘れてたわ。」
 「覚えてて下さい。…ドッと疲れるわ。」
 
 そういう言い合いながら部屋を物色する2人。
 だが、ロンバルディアと思しき刀どころか、骨董品らしきうモノも見当たらなかった。
 
 「この部屋には置いてないんんじゃないかしら?」
 「う~ん、やっぱり教頭の家に行かないとダメなんだろうか。」
 
 部屋中探し回ったが、もう手詰まり状態だった。
 
 「仕方ない、今日は出直すしかなさそうね。」
 「そうですね、あやめさんありがとうございました。」
 
 どうやら空振りに終わりそうだ。だが、この部屋を調べる事が出来た収穫は大きい。
 経緯はともあれ生徒会長・愛生さんには感謝の弁をしておいた。
 
 「お礼は今度、生徒会の仕事の手伝いで手を打ちましょうか。」
 「…。」
 
 しっかりと見返りを要求された。
 しかも、いつ爆発するか分からない【生徒会の手伝い】と言う名の時限爆弾が。(爆)
 
 そうして、教頭室を出ようとしたが、部屋を出た廊下の向こうに怪しき人影が。
 
 「ちょっと、あれ教頭先生じゃ?」
 「やばい、それはやばい!?」
 
 教頭室から教室に戻る廊下は1本しかない。今、教頭室を出て戻ろうとすると向こうから
 やってくる教頭先生と出くわしてしまう。やり過ごすか?いや、待ちないなくバレるであろう。
 
 「一旦、教頭室に戻るわよ。」
 「でも、戻ったって…」
 「廊下でバッタリで完全にバレるって。」
 
 愛生がそう言うと、恭介の手を取って再び教頭室に入る。
 
 「戻ってしまって、ど、どうするんですか?」
 「どっかに隠れるわよ。」
 「どっかって…」
 「とりあえず、2部屋ある教頭室の奥の部屋に移動よ。」
 
 そう言って、恭介の手を取ったまま奥の部屋に流れ込む。
 
 (普通に廊下で教頭と出くわして、教頭先生に会いに来たと言っても良かったんじゃないですか?)
 
 そう思った恭介だが、なぜ教頭室に来たか?の理由がないので、結局は同じである。
 
  ガチャ
 
 教頭室の扉が開く音がする。
 
 (お願い、こっちの部屋には来ないで)
 
 そう願う2人であった。
 
 「うむ、今日もヒマであった。まあ、ここの仕事は道楽みたいなモンだからな。」
 
 教師にあるまじき言葉である。(爆)
 
 「さてと、今日の夜にいくつか骨董品を持っていって換金しないと、アリスちゃんのお土産代が
  出せないからな。ちょっと売って資金源にしよう。」
 
 (何だって!?)
 
 神鳴教頭の口から予想外な言葉が出た。
 教師の身でありながら、アリスちゃんという歓楽街のナントカ嬢にお熱なようだ。(爆)
 
 「(何て事なの!? あのムッツリスケベ教頭め。)」
 「(まあ、見るからにまともじゃないと思ったが、やっぱりそうだったか。)」
 
 恭介は今日初めて神鳴教頭を見たのに、酷い言い様である。w
 
 罵りも一旦終了し、隣にいる教頭に聞こえないように小声で話す2人。
 
 「(もし、その様子が確認できれば決定的な証拠になるわね)。」
 「(ええ。でも、ここをうまくやり過ごせるかどうかがポイントですけどね。)」
 「(きっと、大丈夫よ。)」
 「(お~、凄い自信ですね。)」
 「(根拠なんかないわ、何となくよ。)」
 「(がくっ。)」
 
 などと、訳分からない問答をしてる間に教頭のいる側の方から何かが動く音がする。
 
 「(ねえ、三千里、あの音何だと思う?)」
 「(わかりませんよ。でも、何かが擦れて動いてる音だと思いますが…)」
 「(もう三千里はエッチじゃなぁ。)」
 「(ちょっとあやめさん、何か勘違いしてませんか?)」
 「(擦れて動くなんてアレしかないじゃん。まあ、キミも健全な男の子だじゃもんねw)」
 
 明らかに勘違いしてる…。
 
 「(で、何が起こってるかわかんないからちょっと様子を見てきて。)」
 「(え~、今動いたらバレますって!?)」
 「(その時は三千里を足蹴に逃げるから大丈夫。)」
 
 大丈夫じゃねぇ!(爆)
 でも、気にはなるので、結局様子は見に行く。w
 
 壁┃ω・) じ~…
 
 Σ(゜Δ゜*) あ、あれは!?
 
 教頭室にある本棚が動いているではありませんか!?
 そして、そこには大きなガラスケースがあり、骨董品の数々が陳列されていた。
 その中に、例のロンバルディアも見受けられた。
 
 「う~ん、惚れ惚れしますねぇ。」
 
 教頭はそれらを見てうっとりしている。
 
 バレない様に愛生の隠れる場所に戻る。
 
 「(何があったの?)」
 
 当然、愛生が尋ねてくる。
 
 「(あやめさん、ビンゴですよ。)」
 「(ビンゴって?)」
 「(隣にあった本棚が動く仕組みになっていてその奥に隠してました。)」
 「(へぇ、そうだったんだ。どうりで見つからない訳じゃ。)」
 
 後は教頭がさっさとブツを持って出て行くのを祈るのみである。
 
 …。
 ……。
 ………。
 
 (何やってんだ、あの教頭は!?)
 
 それから10分、神鳴教頭は骨董品をじ~っと眺めていただけであった。
 
 「(いいかげんにして欲しいんじゃ、ボケ)」
 
 怒りモードに入ると方言が出て男っぽい言葉になる愛生。
 
 「(ちょっとあやめさん、言葉が荒っぽいっすよ。)」
 「(あら、私とした事がおほほほ。)」
 
 あくまで小声で話す2人。
 
 「おっと、こうしている時間はないな。」
 
 そう言うと、神鳴教頭は骨董品を数点持って部屋を出ようとする。そこで恭介が目にしたのは、
 その中の1つである『ロンバルディア』を持って出ようとした神鳴教頭の姿。
 
 「それを持っていくな!」
 
 その行動を見て、思わず恭介は教頭の前に飛び出してしまった。
 
 「だ、誰だ、お前は!?」
 
 「(あちゃ~)」
 
 愛生は呆れ顔をしていたが、まだ隠れているのでその姿は教頭に目には見えていない。
 
 
   -つづく-
 
2010年07月08日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  12

  
  バックナンバー⇒第1章、
 
 
       第1章   刀を狩るモノ   12
 
 
 一見、何事もなく始まった3時限目であったが、恭介の周りではそうではなかった。
 
  トントン
 
 恭介の後ろにいる花畑都歌沙が恭介の肩を指で叩く。
 
 (やっぱり、聞いてきたか)
 
 恭介の不安と共に、予想通り都歌沙が尋ねてくる。
 
 「あんた、ああああとか言って教室を出て行ってどこに行ってたのよ?」
 
 授業中なので、さすがに怒鳴る訳にもいかず小声で恭介に尋ねてくる。
 
 「ああ、大した用事じゃない。」
 「大した用事じゃないなら授業の合間にいなくなってやる事じゃないでしょう。」
 
 まさか、教頭室を探しに行ったらお宙で生徒会長に出会ってうんたらくんたら…とは言えず、
 適当に誤魔化そうとする恭介。だが、全然誤魔化せてないので、更に都歌沙が尋ねてくる。
 
 「普通に考えてもおかしいでしょう。三千里クン、隠しごとが多過ぎだよ。」
 
 いきなり直球で怪しまれている。
 
 「せっかく出会ったんだから、もちょっと友達らしくしようよ。」
 「え?」
 
 これには恭介も驚いた。まさか、彼女から友達と思われているとは…。
 正直、恭介自身友達になろうという感覚もなければそういった努力もしていない。
 なぜなら、恭介がここに来たのはあくまで『任務』の一環なのだから。
 
 「三千里クンと一緒にいると何だか楽しいから。」
 
 笑顔で言う都歌沙にドキッ♥とさせられる。そんな風に俺を見てたのか。
 
 買いかぶり過ぎだよ、つかちゃん。(爆)
 
 「それが友達の理由か?」
 「そうよ。」
 「…。」
 「…。」
 
 一呼吸おいて恭介が言う。
 
 「恥ずかしいから、二度と言わないでくれ。」
 
  あはははは。
 
 照れながらそう言うと、都歌沙はバカウケしたらしく大笑いする。
 
 「こら、そこ何笑っとるか!」
 
 先生から怒られる。
 まあ、授業中大爆笑すれば怒られて当然であろう。
 
 「2人とも廊下に立ってろ!」
 
 こうして、廊下に立たされる恭介と都歌沙。
 
 
 「はぁ、何で俺まで。」
 「何言ってるのよ、三千里クンがおかしい事言うからでしょ。」
 「俺が何言ったよ?」
 「恥ずかしいなんて言葉が三千里クンから出た事よ。あれはないわ、君のキャラじゃないもん。」
 「はぁ、酷い言われようだな…。」
 
 廊下に立たされる恭介と都歌沙は、廊下でも言い合いが絶えない。
 
 「はぁ、何やってんだか…。」
 
 廊下に近い席の澄香にも話の内容はわからないが、声がするのはわかるようだ。
 
 
  き~ん こ~ん か~ん こ~ん
 
 「はい、午前の授業はここまで。」
 
 チャイムと同時に午前中の授業時間の終わりが来る。
 各人それぞれ昼食の準備に入る…が、
 
 「どうにも納得がいかないのよ。」
 「そんなら家に来ればいいだろう。」
 
 廊下では、まだ恭介と都歌沙が言い合っていた。
 
 「はい、そこで終了。」
 
 2人を止めたのは、澄香であった。
 
 「あんた達、昼食前なのに元気いいわね。」
 
 澄香が2人にいきさつを尋ねる。
 
 「だって、三千里クンが朝突然いなくなるから…」
 「仕方ないだろう。用事があったんだから。」
 「だから、その用事が何だったのか、って聞いてるのに答えてくれないから。」
 「別に大した事じゃないし、つかちゃんには関係ないからと思ったからだよ。」
 「関係ないって、冷たい事言うじゃない?」
 「そう言うんじゃないってば。」
 「だった三千里クンとは…」
 
 「はい、そこまで。」
 
 2人の言い合いが終わりそうにないので、澄香が強制的に話を終了させる。
 
 「じゃ、3人で昼食にしましょう。」
 「え~!?」
 「何でぇ!?」
 
 突然の話に驚く恭介と都歌沙。
 
 「別に予定はないんでしょ?」
 「ま、まあ、ね。」
 
 都歌沙は断らない。
 
 「恭介っちは?」
 「ああ、別にかまわないが。」
 「じゃ、決定。」
 
 そう言うと、恭介と都歌沙の間に入り2人の肩を組もうとする、が2人とも身長が高いので、
 
 「とどかねぇ!」
 
 1人でキレていた。(爆)
 
 その後、3人で食堂に向かい、それぞれ昼食を頼み、この前のマクドムドムのように
 和気あいあいに話ながら食事を済ませる。
 そして、話混んでいたらもう昼食の時間が終わろうとしていた。
 
 「あ、もうこんな時間だね。」
 「教室に戻ろうか。」
 
 都歌沙と澄香は教室に戻ろうとするが、恭介はそういう訳にはいかなかった。
 
 「あ、ちょっと用があるんで、俺はここで。」
 「ちょっと、もう10分もしないうちに午後の授業は締まるんだよ。」
 「え~、どこ行こうとしてんの恭介っち。」
 「あ、えっと…」
 
 どうにも断りにくい空気が立ち込める。
 
 (どうやってこの場を逃げようか?)
 
 簡単に言えば、ダッシュで逃げるのが1番だが、その後の処置がめんどうだし。
 決定的な返答が見つからないこの状況に助け舟を出してくれる方が登場する。
 
 「やあ、ここにいたんじゃな。」
 「あ、生徒会長。」
 「え、生徒会長!?」
 
 なぜここに生徒会長が、と思う都歌沙と澄香。だが、平然と恭介を名指しで誘う。
 
 「ど、どうして生徒会長が…。」
 
 戸惑う都歌沙に生徒会長・愛生がさらっと答える。
 
 「2年の学生主任から彼に学校に慣れてもらう一環として生徒会の仕事を手伝わせる旨の
 依頼があったので、こうして呼びに来たんじゃ。」
 「あ、そうなんですか。」
 「まあ、先生が依頼されたのなら。」
 
 2人も納得したようだ。
 
 「じゃ、そういう事で。」
 
 愛生と恭介は都歌沙と澄香と別れる。
 
 「生徒会長。」
 
 恭介は愛生に歩みよる。
 
 「なぜ、あの場所に私が来たのか気になるのじゃろう?」
 「そうです。なぜあの絶妙なタイミングで出てきてくれたのです。」
 「それは…」
 「それは?」
 「私も食堂で昼食を食べていたんじゃ。そこにお前の姿を見つけたので、やってきた。
 ただそれだけじゃ。」
 「え? って事は…」
 「ただの偶然じゃ。」
 
  ミ(ノ_ _)ノ=3 ズコーwww 
 
 
 「ここが教頭室じゃ。」
 
 恭介はコケた時に打った脚をさすりながら、探していた教頭室の前に立つ。
 
 「鍛え方が足らないんじゃないか?」
 「誰もずっこける練習なんかしませんって。」
 「まあいいわ。で、今はこの部屋に教頭はいない。」
 
 そういうと教頭室のドアをノックする。
 
 「あ、あやめさん!?」
 
 突然の行動にビックリする恭介。
 だが、ドアの向こうから反応はない。
 
 「ほら、いないじゃろ。」
 「本当ですね。」
 
 そう言いながら、念のため恭介自身もドアをノックしてみる。
 当然、返答は帰ってこないと高をくくっていたら、
 
 「はいどちらさん?
 
 愛生が恭介の耳元にてだみ声で言う。
 
 「おわっ!?」
 
 想定外の行動に驚く恭介。
 
 「びっくりするじゃないですか!」
 「なんでそんなに驚くんですか?」
 「中に教頭がいると思ったからじゃないですか!?」
 「あははははは。おもしろいヤツじゃ。」
 「あやめさん、本当に生徒会長ですか。」
 
 色々と不安になる恭介であった。
 
  ガチャガチャ…
 
 恭介は教頭室に入ろうとするが、ドアが開かない。
 
 「あやめさん、ドアが開きません。」
 
 大声で訴える恭介。
 
 「アホか、お前は!教頭がいないのにドアが開いてる訳ないだろう。」
 「あ、そっか。」
 「お前、本当に17歳か? アホ過ぎる…。」
 
 (すみません、これでも本当は19歳ですが…)
 
 とは言えなかった恭介であった。(爆)
 
 
   -つづく-
 

プロフィール

「ホンダの頭にホンダ」
何シテル?   05/13 16:39
再び色々ありまして、乗り換えです。 2回目のホンダ車でまた白に戻りました。 引き続き宜しくお願いいたします。。♪   一般人からみたらオタク系だと思...
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