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第1章 刀を狩るモノ 2
「あ~、あの時のクルマの運転手だ!」
都歌沙は入ってきた男子生徒に驚き、その男子生徒の所に駆け寄る。
「ちょっと、お花ちゃん、どうしたの?」
澄香はその場においてけぼりとなる。
「ねえ、そこのあなた?」
都歌沙がその男子生徒の元に着くとすぐさま話しかける。
「は?」
「は?…じゃないわよ。先週会ったでしょ?」
「えっと…」
その男子生徒は考え込む。
「ほら、教会近くの四つ角出た所でさ、あんたクルマで私を轢きそうになったじゃない。」
都歌沙は自分がその時遭遇した経緯をその男子生徒に説明する。
「あのぅ、もし私がそのあなたが言う運転手だとしても僕は高校2年生なんですから
クルマの運転は出来ませんけど…。」
「え、ああ…そっか。」
今度は都歌沙が考え込む番だ。
そう、確かにあの時の運転手なら普通に考えたらクルマを運転するには18歳になっていないと
免許を取得出来ないのだから、同級生の彼が運転出来る訳がない。
(やっぱり似てるけど他人なのかなぁ?)
空手の修業を積む者なら動体視力も人より確実にいいのだが、当の本人が違うと言うのだから
似てるけど違うのだろう、都歌沙自身はまだ納得いかないが…。
「あなた、お兄さんいる?」
「いないよ。」
「あ、親戚にお兄さんがいるとか…」
「この町に親戚はいないよ。」
「わかった、お父さんだ。」
「ごめん、言ってる事がよくわからないんだけど…。」
「えっと、じゃあねぇ…」
まだどうにも納得出来ないので、色々と質問を投げかけるのだが、それを澄香が止めに入る。
「もう、どうしたのよ、お花ちゃん?」
「え、まだ確認しきれてないのよ。」
「お花ちゃんが何言ってるのかわかんない。詳しく教えて?」
そして、都歌沙が先週の経緯を澄香に話す。
「そう言う事か。でも、彼は違うって言ってるんでしょ。」
「うん、そう。」
「しかも、私達と同級生ならやっぱりクルマの免許取れないじゃない。」
「うん、そうなんだけど…」
「じゃ、やっぱり違う人なんじゃないかなぁ。」
「もしかしたら、無免許うんたん…」
ポカッ
「お花ちゃん、それは飛躍しすぎ!」
「あ…。」
あまりに突飛押しもない展開になりそうなので、澄香は軽く都歌沙の頭をこづく。
いくらなんでも、無免許は言いすぎだろう。w
「あのぅ、もういいかなぁ?」
男子生徒が都歌沙と澄香に言う。
「あ、ごめんね。お花ちゃんってしっかりしてるように見えて
天然だから。」
照れ笑いを浮かべながら両手を合わせ軽くゴメンのポーズを取りながら澄香が代表で彼に謝る。
「え~、私天然じゃないよ、澄香。」
(自覚してないのが1番やっかいだわ)
さすがの澄香も都歌沙のこの点だけはちょっと呆れる所であった。w
気を取り直して、澄香がその男子生徒に声をかける。
「話がややこしくなったけど、この教室に入ってきたって事はこのクラスだよね?」
「ああ、今日から2年B組と掲示板に書いてあったからな。」
「挨拶が前後したけど、私は山本澄香でこの娘が花畑都歌沙って言うの、宜しくね。で、君は?」
「ああ、俺の名前は三千里恭介だ。」
「じゃ、君は『恭介っち』で呼ぶわね。」
「は?」
キーンコーンカーンコーン♪
その瞬間、始業のチャイムが鳴る。
「あ、チャイムが鳴ったからまた後でね。いくわよ、お花ちゃん。」
「あ、あああ…」
澄香はそう言うと都歌沙の腕を取り、教室のドアの前から反対側の窓際の席に戻る。
「はぁ…」
何か一方的に話をされそのまま押し切られた形となった恭介はとりあえずため息しか出なかった。
ガラガラガラガラ~
「は~い、みなさん席についてくださ~い。」
チャイムの後そう時間の経たない間に先生が教室にやってきた。
そして、早い者順で席を取った生徒たちは当然後ろから席が埋まり、都歌沙達に足止めを
食らった恭介は残った1番前の中央、先生の真ん前に残る席にしぶしぶ座る。w
(始業式早々運がない…)
先行き不安な恭介であった。(爆)
「はい、みなさん席に着きましたね。では、先生の自己紹介から始めます。」
そう言うと、黒板に先生自身の名前を書いていく。
菅波 朋子
「
すがなみともこと申しますが、何人かはご存じですね。担当は国語です、どうぞ宜しく。」
去年赴任した新人の先生で、童顔に巨乳と言うアニメのようなスタイルの先生だ。w
気になる方もいると思うので3サイズも言っておこう。
B94・W59・H88
赴任1年目は右往左往する毎日であっという間に過ぎた1年だったが、今年は初の担任も
受け持つ事となり、新たな気持ちで頑張ろうという気持ちで今日を迎えたとか。
「では、始業式が講堂で始まりますので、みなさん移動してください。」
簡単な挨拶が済むとすぐさま始業式となった。
え~、新学期を迎え、みなさんも1年上の学年になったという事で気を引き締め…
講堂では校長先生の演説が延々と続くが、その話をもともに聞く生徒は皆無であろう。w
もちろん、都歌沙もその1人であった。
(絶対彼はあの時の運転手で間違いないと思うんだけどなぁ…)
まだ都歌沙は納得してなかった。
(始業式が終わったら、もう1度聞いてみよう)
そう思う都歌沙はであった。
(ふぅ、まさかあの時の娘が同級生だったとは…)
一方で、恭介も焦りを必至で隠していた。
まさか、未遂とはいえ偶発的な事故だった時の娘とこんなトコで出くわすなんて思ってもいなかった
ので、これからどう対処するかこの始業式の間で考える事となる。
(彼女が何と言おうとスタを切り通すしかないんだけど…)
何か後ろめたさも感じずにはいられない恭介であった。
そして、始業式が終わり、各生徒が教室に戻る。
「あ~、相変わらずかったるい校長先生の演説だったわね、ってお花ちゃんどうしたの?」
「え、ああごめん。何?」
「もう、また彼の事を考えてるの?」
「うん…」
始業式が終わっても都歌沙は納得いってない様子だ。
「わかった、彼が気になるんでしょう?」
「うん、気になる。」
「うわ~、お花ちゃんだいた~ん!♥」
「…え、何の事?」
「もう、隠さないの。気になるって言うか好きなんでしょ?」
「え、ええええええ!?」
思いもよらぬ言葉につい大声になった都歌沙。
「ち、ちょっとお花ちゃん、声大きい。」
「あ、ごめん。」
素直に謝る都歌沙。
「ねえ、お花ちゃん、やっぱりおかしいよ。いつものお花ちゃんじゃないもん。」
「う~ん…」
再び考え込む都歌沙。
「ごめん、澄香。もう1回だけ確認させて。」
「ふぅ…、わかったわ。好きにするといいわ。」
「ありがとう、澄香。」
(もう1回だけ確認してそれでも違うならやっぱり他人だと思う事にするっ)
そう自分自身に言い聞かせて、恭介の元に向かう。
「ねえ、三千里くん。」
「はい?」
「またで申し訳ないんだけど、もう1回だけ確認させてくれる?」
「…いいよ。」
1度深呼吸おして気を引き締めつつ話をしようとする都歌沙。
その横にす~っと澄香も陣取る。
「先週、クルマを運転してて私とぶつかりそうにならなかった?」
まるで愛の告白をするかのような雰囲気で尋ねる都歌沙。
「ごめん、何回聞かれてもその人じゃないよ、ごめん。」
「そっか。…ありがとう。」
完全ではないがなにかふっきれた様子の都歌沙であった。
(ごめんね、都歌沙さん、本当の事を言えなくて…)
都合上、その事を隠さなければならない事に負い目を感じながらも、嘘を貫き通さないといけない
恭介の任務の事情もあったのは事実である。
「何か、好きだ、って告白してフラれた感じだね、お花ちゃん。w」
「え、ええええ、もう、何おかしな言ってるのよ、澄香。」
「あはははは。」
照れて顔が真っ赤になる都歌沙。
どこまでも仲がいい2人である。
「で、恭介っち、始業式の後何か用事ある?」
「え、あ~特にないけど。」
「じゃあ、お花ちゃんが失礼した件のお詫びも兼ねて私が奢るからマックでお話しない?」
「え、え、え、え…」
急に澄香のお誘いが入り戸惑う恭介。
「あ、当然お花ちゃんは失礼の根源だから強制参加、ね。」
「え、え、え、え…」
「あはははは。じゃ、行くわよっ。♥」
きょとんとする2人を尻目にルンルン♪で先頭を歩く澄香であった。
-つづく-