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龍聖のブログ一覧

2010年05月21日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  6

 
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    第1章   刀を狩るモノ   6
 
 
 
 「お邪魔しま~す。」
 
 形はともあれ招待されたはずなのに、恭介は恐縮する感じで都歌沙の家にお邪魔する。
 
 「お兄ちゃん、いらっしゃい。」
 
 どこかツンケンする雰囲気を持つ姉・都歌沙とは対象的に優しくどうぞと言う妹・香織。
 
 (本当に姉妹なのかなぁ?)
 
 そんな気も思ってしまう恭介であった。w
 
 「何か言いたい事でもあって?」
 「あ、い、い、い、いや、別に…。」
 「ふ~ん…。まあいいわ。」
 
 その恭介の雰囲気を察してかどうかは不明だが、不意に都歌沙がツッコミを入れてくる。
 
 (心の中、読まれてないよな!?)
 
 そう思ってもおかしくないくらいタイミングが良すぎる。w
 そんな感じを持ちながら玄関から廊下を歩こうとした。
 
  ズキーン
 
 だが、その時恭介は身体に妙な異変を感じ、その場にうずくまる。
 
 「な、何だ、この違和感は!?」
 「え、どうかしたの、三千里クン?」
 
 急にしゃがみ込む恭介に驚く都歌沙。
 恭介はこれまでにない感覚にわずかながら戸惑いを感じる。
 
 「ねえ、大丈夫、お兄ちゃん?」
 
 香織も不安そうな顔を見せる。
 
 「あ、ああ。ごめんごめんちょっと立ちくらみになっただけだよ。」
 
 そう言いながら立ち上がる恭介。
 
 「ねえ、本当に大丈夫なの、顔色悪いよ。ちょっと横になっていきなさいよ。」
 「いや、そこまで変な訳じゃないと思うから。」
 「お兄ちゃん、せっかくだから休んでいってよ。」
 
 都歌沙も心配しているようだが、香織も心配して恭介に休んでいくよう言う。
 
 「…わかった。そうさせてもらうよ。」
 
 恭介も急に気分が悪くなった原因がわからないので、ちょっと休んでみる事にした。だが、
 
 「ちょっと、私の助言は無視して香織の助言だと素直に聞くってのはどういう事!?」
 
 都歌沙の怒りが辺りに異様な空気をまとわりつかせつつ、恭介の前につかつかと迫る。
 
 「おい、ちょっと待て。何を怒ってるんだ、都歌沙さ…ん?」
 
  ガツン!
 
 「痛って~。」
 「痛いって、ちょっと頭を小突いただけでしょ。」
 「そうは言ってもなぁ、小突く事はないだろう。」
 「小突かれるこうな事をしたからでしょ。」
 「俺は、体調不良になっただけだぞ。」
 「そこまで、身体を競り出して文句を言えるようになったなら、もう大分良くなったかしら?」
 「あ…。」
 
 恭介・都歌沙のやりとりは一種独特な雰囲気をかもし出す。
 
 「お姉ちゃんとお兄ちゃん、夫婦みたい。」
 
 そんな2人のやりとりをクスッと笑いながら香織が見てそう言った。
 
 「何でこんな女と夫婦だって!?」
 「何でこんな男と夫婦ですって!?」

 
 綺麗に2人の言葉がハモる。w
 
 「でも、お似合いだと思うよ、お2人とも。」
 「もう、香織ったら~。」
 
 小悪魔的な表情で言う香織に困った顔の都歌沙。何だかんだで仲の良い姉妹なんだな~、と
 思わせる光景だ。
 
 「…。」
 
 そして、1人取り残される恭介。w
 
 だが、恭介は考える。なぜ急に異変を感じたのか?
 
 (そう、この家に入って感じた違和感。今、思いだしたが同じような感覚を以前感じた事がある)
 
 恭介は同じような違和感を覚えたのがいつか思いだそうとする。
 
 
 「ねえ…」
 「…。」
 「ちょっと…」
 「…。」
 「三千里クンっ!」
 「おわっ!?」
 
 それがいつか思い出そうと考えていた時、都歌沙が声をかけていたのにすぐに気付かなかった。
 だから、不意に現実に戻った時、都歌沙がちょうど大きな声で呼びかけて来たときだったので
 驚く形になったのだ。
 
 「もう、三千里クン。何考えてたの?」
 「あ、ああ。何でもない。」
 「何でもないって事はないでしょう。」
 「あ、すまない。心配してくれてたんだったな。ありがとう。」
 「あ…。♥」
 
 その時出た恭介の素直な感謝の言葉と表情に一瞬ドキッとする都歌沙であった。
 
 「じゃ、せっかくだからお茶でも飲んでってよ、三千里クン。」
 「あ、ああ、そうだな。じゃ、そうさせてもらおうか。」
 
 そう言って都歌沙は応接室に恭介を案内する。
 
 「お茶は私が入れるね、お姉ちゃん。」
 「ええ、お願い。」
 
 そして、都歌沙は恭介を応接室に案内し、香織は台所へお茶の準備に行き姉妹は別れる。
 
 
 
 「ここよ、三千里クン。」
 
 都歌沙に案内された応接室は、珍しく純和風の応接室であった。
 当然、畳張りの部屋に木製の応接テーブルの前に座布団、掛け軸と伝統品を置けるスペースと
 高級旅館の和室とほぼ同じな間取りだ。
 
 「へぇ~。」
 
 旅行番組でよく出てくる高級旅館の和室が今目の前にデンとそびえ立つ。
 
 「凄いでしょう。自慢の部屋なんだよ。」
 
 都歌沙の表情が明るい。どうやら本当にお気に入りなんだろう。
 
 「ささ、座って座って。」
 「お、おいおい…」
 
 都歌沙は恭介を押し込むように部屋に招き入れ座布団に座らせる。
 
 「じゃ、香織がお茶を持って来るまでここで待っててね。」
 「あ、ああ…。」
 
 そう言うと、都歌沙は応接室を出る。そして、応接室には恭介1人となる。
 
 「はぁ…。」
 
 ポツンと取り残された恭介は、仕方なく応接室を見まわす。
 
 「何か色々と凄いモノばっかだなぁ。」
 
 目の前の応接テーブルも木製ではあるか、素人目に見ても高そうな木を使ってるだろう。
 今座ってる座布団もフカフカで肌触りもこれまで触った座布団とは全然違ってサラサラだ。
 そこの掛け軸も何やら御大層な文字が書かれている。そして、その横の床の間には
 何やら長いモノが・・・って、コレは!?
 
 「な、何で、コレがここにあるんだ!?」
 
 恭介がそこで見たモノとは刀であった。しかも、
 
 「どうして天下五剣の1つ【鬼丸】がここにあるんだ!?」
 
 そして、再び恭介の身体に激痛が走る!
 
 
  -つづく-
 
2010年05月14日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  5

 
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    第1章   刀を狩るモノ   5
 
 
 (一体、どういう事?)
 
 そう思わずにいられない展開。
 それもそのはず。不慮の出来事とはいえ、恭介は都歌沙を轢きそうになったのだ。
 それが、短期間で家に呼ばれるなんて!?
 
 (いい意味での招待ではないことだけはいえるな…)
 
 まあ、そうだろう。w
 
 
 (あれ、なんでこうなったの?)
 
 実は、誘った当の本人が1番困惑していた。(爆)
 
 そう、元々都歌沙は恭介を家に誘う考えなんて毛頭なかった。
 では、なんでそんな事になったのか?
 
 (何か気になるんだよね)
 
 きっかけがあわや大惨事になったかもしれないというある意味衝撃的だったので、
 なおさら印象が大きいのだろう。
 
 そんな中で、ふと話になったマクドムドムの店員の件で思わず口に出たようだ。w
 
 
 いずれにしても色々な思案を思い浮かべながら、恭介と都歌沙の2人は一緒に歩く。
 むろん、沈黙の中。w
 
 「花畑さん?」
 
 そんな中、ふと恭介が都歌沙に声をかける。
 
 「え、何?」
 「澄香さんってどんな人?」
 「え、どんな人って?」
 「ああ。めっちゃフレンドリーに話してくれるけど、いつもああなのかなぁ、って。」
 「あ、そう言う事。えっとね、澄香はね…。」
 
 恭介は澄香の人柄について尋ねたが、正直澄香に興味はなかった。
 ただ、恭介も都歌沙が気になってきて、何か話を振ろうかと試行錯誤した末やっと思いついた
 話のネタが、都歌沙と一緒にいる澄香であっただけだ。
 
 「…なのよ。」
 「そうなんだ、ありがとう。」
 「ねぇ、三千里クン?」
 「ん、何?」
 「澄香に興味があるの?」
 「う~ん、特に。」
 「何それ。 じゃ、何で澄香の事聞いたのよ?」
 
 都歌沙は丁寧に澄香の事を恭介に教える。だが、恭介の反応が薄いのに不満を覚える。
 しかし、先にも述べたように澄香の事を聞いたのはあくまできっかえにすぎない。
 真の興味は都歌沙にあるのだから…。
 
 「いや、都歌沙さんと仲が良さそうだから、どんな人なのかな、って思っただけさ。」
 「ふ~ん…。じゃ、私は話損って事ね。」
 
 そう言うと、都歌沙はすこしふてた顔を見せる。
 
  ドキッ☆
 
 そのふてたしぐさが何気にかわいい。♥
 
 「あ、いや、その~、何だ…」
 
 その表情に慌てた恭介はしどろもどろになる。
 
 「ぷっ。w 何、その反応。」
 
 クスクスと笑う都歌沙。
 わずかだが、2人の間に柔らかい空気が流れる。
 
 「おもしろい子だね、三千里クン。」
 「は?」
 
  ポンポン
 
 軽く恭介の肩を叩く。
 
 「ちょっとだけ気に入った。これからも宜しくね。」
 「あ、ああ…。」
 
 恭介はキョトンとしている。
 
 (そっか、私この人に何かを感じたんだね)
 
 都歌沙は初めて運命のいたずらというものを知った気になった。w
 
 「さて、着いた。」
 「え、着いたって?」
 「そう。」
 
 都歌沙が歩みを止め指差す先には、1軒の大きな屋敷がそびえたつ。
 
 (古っ)
 
 その大きな屋敷を見た恭介の最初の感想が「古い」だった。
 
 「ここが私の家。ようこそ【花畑道場】に。」
 
 満面の笑みで言う都歌沙。
 
 「は、はぁ…どうも。(どっかできいたような名前だな…なんとか牧場だったっけ?)」
 
 都歌沙の案内の元、家兼道場のある屋敷に入る。
 古いが大きな門構えで歴史を感じる邸宅のようだ。
 
 (うわ~、やっぱ古っ)
 
 中に入ると小さな家と大きな道場が1軒ずつある。
 家の方はまあ新許せるが、道場の方は古さを隠しきれない。
 
 「どう、古いでしょう。」
 「え、あ、ああ、じゃなかった…」
 
 思わず古いというのに反応してしまう恭介。
 
 「ご、ごめん。」
 「うん、いいのよ。実際古いんだから。」
 「えっと、この道場って何を教える道場?」
 
 とりあえぅ、古さを誤魔化す為に別の話題を降る恭介。
 
 「ここは空手道場。古武術の系統も兼ねた【花柳流】という流派になるの。花柳流って知ってる?」
 「花柳、生け花の流派じゃなくて?」
 
  ポカッ
 
 都歌沙は軽く恭介をこづく。
 
 「誰がそこでボケを入れなさい、って言ったの。」
 「え…(花柳って言う感じだと生け花か何かしか浮かばないと思うけどなぁ)。」
 「まあ、いいわ。この機会だからちゃんと教えてあげるわ。」
 「は、はぁ…。」
 「この花畑道場は江戸時代に端を発し、徳川家からも優遇された由緒ある家流で…」
 
 ここから話は30分ノンストップで都歌沙がしゃべり続けるのであった。w
 
 「…って事なのよ。わかったかしら?」
 「…。」
 「…、ねぇ三千里クン?」
 「……。」
 「ちょっと、三千里クン??」
 「………。」
 
  ドカッ!
 
 「げほっげほっ…」
 「目は覚めましたかしら、三千里クン。」
 「え、ええ、とっても…。」
 
 話が長くなり、いつの間にか寝ていた恭介であった。(爆)
 
 「ねぇ、お姉ちゃん。何してんの?」
 
 小さな家の方から1人の少女がやってくる。
 
 「もう、家に帰ってきて挨拶もなしに…って、あ、お客さまでしたか。」
 
 都歌沙に諭そうとした少女が恭介の存在に気づく。
 
 「あ、三千里クン紹介するわ。この娘は私の妹『花畑 香織』。」
 「あ、どうも。三千里恭介です。」
 
 都歌沙が恭介に妹・香織を紹介する。
 
 「花畑香織です。香織と呼んでください。」
 「うん、香織ちゃん宜しくね。」
 
 香織も満面の笑顔で恭介を見つめる。
 
 (この笑顔、さっきの都歌沙さんと同じだ。さすが姉妹)
 
 そんな印象で香織を見る恭介。
 
  ビシッ 
 
 すぐ横にいる都歌沙が軽く恭介に肘鉄を入れる。
 
 「痛っ、何すんだよ。」
 「うちの妹をたぶらかすとこれだけじゃ済まないわよ。」
 「しないよ。」
 「へぇ、どうだか。」
 「ぷっ。w」
 「何がおかしいのよ。」
 「いや、妹想いなんだな、と思ったからさ。」
 「…うん。」
 「?」
 
 その時の都歌沙の表情が一瞬陰ったように見えたが、深く考えなかった。
 
 「お茶でも入れるから、家の中へどうぞ。」
 
 香織が2人に家の中に入るように提案する。
 
 「そうね。せっかくだから入れてあげるわ。」
 「あ、ああ。」
 
 家に誘ったのはあんたでしょうが!?
 
 とはさすがに言えない恭介であった。w
 
 
   -つづく-
 
2010年05月02日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  4

 
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     第1章   刀を狩るモノ   4
 
 
 「今回の任務は、名刀【ロンバルディア】が日本にあるとの情報を得たので
 それを捜索して発見し、奪還するのが命として伝言に参った次第です。」

 
 今から2か月前、スイスで修業をしていた恭介はインターポール経由でI・S・A・M欧州支部の
 ボリシュビッツ捜査官よりその任務を聞いた。
 
 「ロンバルディアが日本にあるって!?」
 
 恭介は修業の手を止め、ボリシュビッツ捜査官に問う。
 
 「はい、一時はドイツにあったとの情報を得たのですが、そこから取り引きで日本人が
  闇ルートで【ロンバルディア】を引き取ったとの新情報を得る事が出来ました。」
 「そうですか…わかりました。その任務、引き受けましょう。」
 「お~、ありがたい。ドイツ騎士修道会の伝統と格式をどうか取り戻して欲しい。」
 
 【ロンバルディア】とは、1520年にドイツ騎士修道会が滅亡した後も少数が生産され、
 ドイツ騎士修道会に所属していた騎士達、そしてその子供達へと伝えられていった剣。
 この剣を手にした者達の多くは辛い人生を送るという言い伝えがあるが、500年前の
 剣が現存するモノは非常に少なく、歴史あるカッツバルゲルとして貴重な品であった。
 
 イタリア・ロンバルディアで現存する事でその名を持つ剣は、欧州では家宝や血筋の大事な
 伝統品でもあるので、単なる財産という枠を超えている。
 
 今回、I・S・A・Mにその剣の捜索が依頼され、その所在がわかるまで2年もの月日が経った。
 
 日本と言う事でちょうどスイスにいた恭介に白羽の矢が立ったとはいえ、事は慎重に
 運ばねばならない。
 
 「ところで、恭介とやらにこの任務を与えてよいのか?」
 
 I・S・A・M欧州支部でボリシュビッツ捜査官は若干19歳の輩にこういう任務は無理では
 ないか?との認識があった。普通ならそれは至極当たり前の発想であった。
 ただ、1つだけ違うのが、恭介は世界で3人しかいない、
 
  『体内に刀を収める事の出来る術者』であった。
 
 体内に刀を収めるとはどういう事か?
 
 ちなみに、どの刀でも体内に収める事は出来ない。それが出来る刀は世間でよく言われる
 妖刀とも呼ばれる部類の刀である。つまり、昔から伝統があり刀に何かしらの霊的なモノが
 宿っている刀に限られる。
 
 ちなみに、恭介が体内に持つ刀はまた後に話す事にしよう。
 
 

 
 マクドムドムバーガー・八九寺支店で突如起こった傷害事件に偶然出くわしてしまった
 恭介であったが、その切られ方からもしかしたら、という想いがあった。
 
  (もしかしたら、ロンバルディアかもしれない)
 
 I・S・A・M日本支部では、八九寺市のとある豪商がロンバルディアを闇ルートで得た情報を
 極秘に知っていた。ただ、証拠がない為、恭介と並行してその情報収集もやっていた。
 
 「第1発見者は君たちだね?」
 
 やがて、警官もやってきて事情徴収が始まっていた。
 聞き込みは個々で行われ、最初に恭介、次に都歌沙、最後が澄香という順番であった。
 聞き込みを担当する警部の所で話をする事になった。
 
 実際は偶然出くわした事件なので、特に長い時間を取られる事はなかったので、恭介も
 数分で事が終わる。そして、都歌沙も当然短い時間で終わる。
 
 そして、澄香の番が来て澄香がいなくなった時、都歌沙が恭介に声を掛ける。
 
 「三千里クン、意外と冷静なのね。」
 「え?」
 
 都歌沙がさりげなく恭介を分析しているのに驚く。
 
 「私の家は空手道場をしていて、戦う相手を短い時間で把握する訓練も必然的にしてるの。
  普通あんな事件の時は動揺するとか取り乱すのがごく一般的な人の反応なの。
  でも、三千里クン全く動揺するとかの気配がないの。もしかして…」
 
  ドキッ!!
 
 もしかして任務の事がバレタたのか!?

 そんな衝動にかられ、どう説明しようかと考えてようとしてが、
 
 「もしかして、三千里クンも空手か何かやってる?」と聞かれた。
 
 「いやいや、空手とかはやってない。」
 
 ちょっとしどろもどろながら弁解する。
 
 「ふ~ん、そうなんだ…。」
 
 都歌沙の目は明らかに不信的な目で恭介を見ていたが、それ以上は尋ねなかった。
 なぜなら、ちょっと時間はかかったが澄香の事情徴収が終わったからだ。
 
 「おまたせ~。」
 
 澄香が警部と共に戻ってくる。
 
 「お3人様、ご協力どうもありがとうございました。」
 「いえいえ。」
 「あまりお役に立てずにごめんなさい。」
 
 恭介・都歌沙も一応遠慮気味に言う。
 
 「あとはもう帰っていただいてもかまいません。」
 
 警部がそう言ったので、帰る事にする。
 
 「じゃ、帰ろっか。」
 「ああ。」
 「私はちょっと…。」
 
 都歌沙が帰ろうと促し、恭介も用事はないので帰ろうとしたが、澄香が軽く拒絶のサインを出す。
 
 「え、どうして?」
 
 都歌沙が尋ねると、
 
 「さっきの人が送ってくれるって言うから。」
 
 澄香がそう言ってきた。
 
 一体、さっきの事情徴収で何が起こった!?(驚)
 
 
 
 仕方なく、恭介と都歌沙の2人が帰路につく。 
 
 「…。」
 「…。」
 
 重苦しい雰囲気が2人を取り巻く。恭介は重圧で潰れる感じを覚える。
 まあ、それも当然だろう。都歌沙の視線が重いからだ。それも疑惑の念が詰まったヤツだ。(爆)
 
 (彼女の洞察力は相当なモノなだけにやりにくい…)
 
 さすがに年齢詐称まではわからないだろうが、都歌沙が恭介に対してどう思っているかは
 間違いなく「疑惑の総合デパート」並だろう。w
 
 「…ねぇ、三千里クン?」
 「…。」
 「三・千・里・ク・ン!」
 「おわっ!?」
 
 色々思案をめぐらせている時に、急に都歌沙が声をかけてきたので思わずのけぞる恭介。
 
 「何でのけぞるの?」
 「い、いや、特に…」
 「まあいいわ。ところで、今日時間ある?」
 「え、ああ、特に用事はないけど。」
 「じゃあ、うちに来る?」
 「あ、ああ別にいい…って、え~!!!
 
 予想外の言葉に思わず大声になる恭介。
 
 (ま、マジですか?)
 
  -つづく-
2010年04月18日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  3

 
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     第1章   刀を狩るモノ   3
 
 
 
 八九寺市は近代化と高齢化を踏まえ、近代技術を推奨しつつも高齢の方が安心出来る
 昭和の面影も残しながら街作りが行われた。
 
 3人が向かった先は学校からほど近い「魔宵(まよい)」駅前商店街。
 この商店街は見た目は昭和の頃の商店街を思わせる雰囲気を漂わせているが、その店は
 随所で近代化によって効率的に展開されている。
 
 今から恭介らが行こうとする『マック』とはこの商店街にある『マクドムドム』という奇妙な店。
 一応言っておくが、マクドナルドとドムドムバーガーを足して2で割った訳ではない。w
 その名を略して『マック』である。
 
 「到着ぅ~。」
 
 先頭を行く澄香がそのマックに着いたと言う。都歌沙は澄香とよく来るので知っているが、
 恭介にとっては初めてなので少々困惑気味だ。
 
  いらっしゃいませ~
 
 お店に入ると元気の良い店員の声が聞こえる。
 そして、そのままカウンターへ向かう3人。
 
 「ようこそ、マクドムドムへ。」
 
 女性店員がとびっきりの笑顔で言う。
 
 (へぇ、さわやかな笑顔だなぁ)
 
 恭介はそう思いながら店員を見ていると、澄香がそれを察知したのか
 
 「ふ~ん、恭介っちはこういう娘が好みなのかな~?」
 
 といたずらっぽく言う。
 
 「何か違ってないか、どうしてこんな会話になる?」
 「だってね、お花ちゃんが恭介っちを睨んでるからさ。」
 「え!?」
 
 恭介がその言葉で都歌沙を見ると、なぜか恭介を冷ややかな目で見ている。
 
 「あのぅ、何か…」
 「…何でもないっ。」
 
 そう言うと隣のカウンターに行き自分の商品を注文し始める。
 
 「何で怒ってるんですか?」
 「恭介っち、隠しごと出来ないタイプでしょう?」
 「え!?」
 「どうやら図星の様ね。」
 「えっと…」
 「何を隠してるかは知らないけど、お花ちゃんと仲良くしたいならもっと上手に嘘を付く事ね。」
 
 そう言うと、恭介を押しのけて正面の女性店員に注文をする。
 
 どういう事だ?、と恭介は考えてみる。思い当た節はただ1つ、
 
 (先日の轢かれそうになったあの事だろうな。)
 
 ただ、恭介としてもあの場ではそう言うしかなかった。
 どう考えてもあの場で「はいそうです。」なんて言ったら、その理由やら年が2つ違う事も
 説明しないといけなくなる。どうせずっとこの学校にいる訳ではないので、ここでこの2人に
 嫌われてもちょっとだけ我慢すればいいだけだし、それがこの仕事の宿命だと自分に
 言い聞かせる恭介であった。
 
 「あのぅ、お客様?」
 「…」
 「もしもし~?」
 「…」
 「お客様っ!」
 「どわっ!?」
 
 考え事をしていた間、カウンターの前でずっと突っ立ってる形になってたようで、心配して
 店員が呼んでいたが、最後の大声まで全く気付かなかったようだ。
 
 「そんなにメニューが決まりませんか?」
 「あ、ああ、えっと…どうしましょう?」
 
  ぷっw
 
 その女性店員は思わずプッと吹き出し笑いをしてしまう。
 
 「す、すみません。笑ってはいけないのに…」
 「い、いえ。こちらこそすみません。」
 「では、宜しければこのAセットがお手頃でお勧めですが?」
 「あ、ではそれで。」
 「はい、かしこまりました。」
 
 最後はまたとびっきりの笑顔で返す女性店員。
 
 
 
 「恭介っち、遅~い。」
 
 さっさと注文を済ませ2Fの席で待っていた澄香が文句を言う。
 
 「あ、すんません。」
 
 恐縮する恭介。
 
 「突っ立ってないで、さっさと座りなさいよ。」
 「あ、ああ。」
 
 強めな口調で言う都歌沙。言われるがままに2人が座る向かい側に恭介も座る。
 
 「さて、私のマスコット嬢のお花ちゃんが失礼した件のお詫び会を開催したいと思います。」
 
 澄香がその場を立ち、司会っぽい感じで仕切りに入る。w
 
 「…。」
 「…。」
 
 その動作が想定外だったので、都歌沙と恭介は唖然としていた。
 
 「はい、そこの2人、ちゃっちゃと盛り上げる!」
 
 「わ~わ~。」
 「いよっ、山本屋。」
 
  パシッ! パシッ!
 
 「棒読み、禁止っ。ちゃんと盛り上げる事!」
 「はい。」
 「はい。」
 
 そんなやりとりは、注文したのが来るまでの5分も続くのであった。(爆)
 
 
 
 「では、ゆっくりしていってネ。♥」
 
 注文した品を持ってきた店員のゆっくりスマイルを残り香に、3人の前に各種バーガー類が並ぶ。
 
 「さっ、食べよっ。」
 
 そう言うと、澄香は1番に恭介のAセットにあるフライドポテトに手を伸ばす。
 
 「いっただきま~す。」
 
 なぜか都歌沙もその動きに同調するように恭介のフライドポテトをつまむ。
 
 「え、え、え?」
 
 動揺しまくる恭介に澄香が一言。
 
 「これがこの会合の儀式よ。」
 「そうそう。」
 
 都歌沙もそう言って頷きながら更に恭介のフライドポテトをつまむ。
 
 「大丈夫よ恭介っち、ここは私のおごりだから。」
 
 更に恭介のフライドポテトをつまみながら、ニコニコ顔でそう言う。
 
 「おい、このAセットの勘定は俺が出したんだがなぁ。」
 
 ちょっと怒り気味に言う恭介。
 
 「ダメダメ。恭介っちにそういう顔は似合わないぞ。」
 「そうそう。」
 「はぁ…」
 
 そして、恭介のフライドポテトはあっという間に無くなった。
 
 「さて、ここからが本番。」
 「そうそう。」
 
 そう言うと、今度は澄香・都歌沙が頼んだフライドポテトを恭介のトレイに載せる。
 
 「さあ、お食べ。♥」
 「そうそう。」
 「えっと、これは…」
 
 2人がどういう考えでこういう態度を取るのか理解できない恭介。
 すると、さっきまでそうそうとしか言わなかった都歌沙が話し始める。
 
 「さっきも澄香が言ったと思うけど、三千里くんが何かを隠してるのはわかったわ。でも、今は
  その事を聞かない。少なくとも1年間は同じクラスなんだから、いつか私達が信用に値する
  クラスメイトだと思った時は話してね。」
 
 都歌沙から言われたセリフは恭介の心に大きく響く。
 
 「そっか、俺は隠しごとが下手だったのか。」
 
 恭介は2人にそれだけ言う。都歌沙が言った1年の間入れないとは思うが、この学校での
 生活はきっと楽しいだろうな、と思うと自然と笑みがこぼれる。
 
 「うん、いい絵がいだよ三千里くん。」
 「その時を楽しみにしてるよ、恭介っち。」
 
 澄香も優しい笑顔で言う。
 
 (本当は1年もここにいられないだろうが、居れる間はこの空間を大事にしよう)
 
 そう思う恭介であった。
 
 
 
 そして、その笑顔のまま本命のハンバーガーを食べようとした時、
 
   ガッシャ~ン!
 
 1Fから何かが割れるような大きな音がする。
 
 「一体何なの!?」
 
 その音を聞いた恭介達はすぐさま1Fに降りる。
 
  きゃ~!!!
 
 恭介がオーダーを注文した女性店員の声が聞こえるが、その声はどう聞いても叫び声だ。
 
 そして、悲鳴のする店の玄関には血だらけの男が店の正面玄関のガラスドアをぶち破って
 飛びこんできた様子であった!
 
 「何なの、これは!?」
 「澄香、見ちゃダメ。」
 
 そう言うと都歌沙は澄香の目を隠す。都歌沙がその光景に驚きはしてるが、
 大きな動揺は見せていない。
 
 (まさか、この男の怪我の様子は!?)
 
 その男の怪我の具合を見て、恭介の脳裏に浮かんだのは
 
 (刃物による切り傷。しかもただの刃物でない。これは間違いなく刀により切られ傷だ!)
 
 「ついに、私がここへきた本当の目的が表面化してきたか。」
 
 恭介にはさっきまでの柔らかな雰囲気はなく、彼が任務に向かう時の顔になっていた。
 立ち位置からその顔の表情が都歌沙達に見えないんが救いだったろう。
 
 
   -つづく-
 
2010年04月06日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  2

 
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     第1章   刀を狩るモノ   2
 
 
 
 「あ~、あの時のクルマの運転手だ!」
 
 都歌沙は入ってきた男子生徒に驚き、その男子生徒の所に駆け寄る。
 
 「ちょっと、お花ちゃん、どうしたの?」
 
 澄香はその場においてけぼりとなる。
 
 「ねえ、そこのあなた?」
 
 都歌沙がその男子生徒の元に着くとすぐさま話しかける。
 
 「は?」
 「は?…じゃないわよ。先週会ったでしょ?」
 「えっと…」
 
 その男子生徒は考え込む。
 
 「ほら、教会近くの四つ角出た所でさ、あんたクルマで私を轢きそうになったじゃない。」
 
 都歌沙は自分がその時遭遇した経緯をその男子生徒に説明する。
 
 「あのぅ、もし私がそのあなたが言う運転手だとしても僕は高校2年生なんですから
  クルマの運転は出来ませんけど…。」
 「え、ああ…そっか。」
 
 今度は都歌沙が考え込む番だ。
 そう、確かにあの時の運転手なら普通に考えたらクルマを運転するには18歳になっていないと
 免許を取得出来ないのだから、同級生の彼が運転出来る訳がない。
 
 (やっぱり似てるけど他人なのかなぁ?)
 
 空手の修業を積む者なら動体視力も人より確実にいいのだが、当の本人が違うと言うのだから
 似てるけど違うのだろう、都歌沙自身はまだ納得いかないが…。
 
 「あなた、お兄さんいる?」
 「いないよ。」
 「あ、親戚にお兄さんがいるとか…」
 「この町に親戚はいないよ。」
 「わかった、お父さんだ。」
 「ごめん、言ってる事がよくわからないんだけど…。」
 「えっと、じゃあねぇ…」
 
 まだどうにも納得出来ないので、色々と質問を投げかけるのだが、それを澄香が止めに入る。
 
 「もう、どうしたのよ、お花ちゃん?」
 「え、まだ確認しきれてないのよ。」
 「お花ちゃんが何言ってるのかわかんない。詳しく教えて?」
 
 そして、都歌沙が先週の経緯を澄香に話す。
 
 「そう言う事か。でも、彼は違うって言ってるんでしょ。」
 「うん、そう。」
 「しかも、私達と同級生ならやっぱりクルマの免許取れないじゃない。」
 「うん、そうなんだけど…」
 「じゃ、やっぱり違う人なんじゃないかなぁ。」
 「もしかしたら、無免許うんたん…」
 
  ポカッ
 
 「お花ちゃん、それは飛躍しすぎ!」
 「あ…。」
 
 あまりに突飛押しもない展開になりそうなので、澄香は軽く都歌沙の頭をこづく。
 いくらなんでも、無免許は言いすぎだろう。w
 
 「あのぅ、もういいかなぁ?」
 
 男子生徒が都歌沙と澄香に言う。
 
 「あ、ごめんね。お花ちゃんってしっかりしてるように見えて天然だから。」
 
 照れ笑いを浮かべながら両手を合わせ軽くゴメンのポーズを取りながら澄香が代表で彼に謝る。
 
 「え~、私天然じゃないよ、澄香。」
 
 (自覚してないのが1番やっかいだわ)
 
 さすがの澄香も都歌沙のこの点だけはちょっと呆れる所であった。w
 
 
 気を取り直して、澄香がその男子生徒に声をかける。
 
 「話がややこしくなったけど、この教室に入ってきたって事はこのクラスだよね?」
 「ああ、今日から2年B組と掲示板に書いてあったからな。」
 「挨拶が前後したけど、私は山本澄香でこの娘が花畑都歌沙って言うの、宜しくね。で、君は?」
 「ああ、俺の名前は三千里恭介だ。」
 「じゃ、君は『恭介っち』で呼ぶわね。」
 「は?」
 
  キーンコーンカーンコーン♪
 
 その瞬間、始業のチャイムが鳴る。
 
 「あ、チャイムが鳴ったからまた後でね。いくわよ、お花ちゃん。」
 「あ、あああ…」
 
 澄香はそう言うと都歌沙の腕を取り、教室のドアの前から反対側の窓際の席に戻る。
 
 「はぁ…」
 
 何か一方的に話をされそのまま押し切られた形となった恭介はとりあえずため息しか出なかった。
 
 
  ガラガラガラガラ~
 
 「は~い、みなさん席についてくださ~い。」
 
 チャイムの後そう時間の経たない間に先生が教室にやってきた。
 そして、早い者順で席を取った生徒たちは当然後ろから席が埋まり、都歌沙達に足止めを
 食らった恭介は残った1番前の中央、先生の真ん前に残る席にしぶしぶ座る。w
 
 (始業式早々運がない…)
 
 先行き不安な恭介であった。(爆)
 
 
 
 「はい、みなさん席に着きましたね。では、先生の自己紹介から始めます。」
 
 そう言うと、黒板に先生自身の名前を書いていく。
 
   菅波 朋子
 
 「すがなみともこと申しますが、何人かはご存じですね。担当は国語です、どうぞ宜しく。」
 
 去年赴任した新人の先生で、童顔に巨乳と言うアニメのようなスタイルの先生だ。w
 気になる方もいると思うので3サイズも言っておこう。
 
  B94・W59・H88
 
 赴任1年目は右往左往する毎日であっという間に過ぎた1年だったが、今年は初の担任も
 受け持つ事となり、新たな気持ちで頑張ろうという気持ちで今日を迎えたとか。
 
 「では、始業式が講堂で始まりますので、みなさん移動してください。」
 
 簡単な挨拶が済むとすぐさま始業式となった。
 
 
  え~、新学期を迎え、みなさんも1年上の学年になったという事で気を引き締め…
 
 講堂では校長先生の演説が延々と続くが、その話をもともに聞く生徒は皆無であろう。w
 もちろん、都歌沙もその1人であった。
 
 (絶対彼はあの時の運転手で間違いないと思うんだけどなぁ…)
 
 まだ都歌沙は納得してなかった。
 
 (始業式が終わったら、もう1度聞いてみよう)
 
 そう思う都歌沙はであった。
 
 
 
 (ふぅ、まさかあの時の娘が同級生だったとは…)
 
 一方で、恭介も焦りを必至で隠していた。
 まさか、未遂とはいえ偶発的な事故だった時の娘とこんなトコで出くわすなんて思ってもいなかった
 ので、これからどう対処するかこの始業式の間で考える事となる。
 
 (彼女が何と言おうとスタを切り通すしかないんだけど…)
 
 何か後ろめたさも感じずにはいられない恭介であった。
 
 
 
 そして、始業式が終わり、各生徒が教室に戻る。
 
 「あ~、相変わらずかったるい校長先生の演説だったわね、ってお花ちゃんどうしたの?」
 「え、ああごめん。何?」
 「もう、また彼の事を考えてるの?」
 「うん…」
 
 始業式が終わっても都歌沙は納得いってない様子だ。
 
 「わかった、彼が気になるんでしょう?」
 「うん、気になる。」
 「うわ~、お花ちゃんだいた~ん!♥」
 「…え、何の事?」
 「もう、隠さないの。気になるって言うか好きなんでしょ?」
 「え、ええええええ!?」
 
 思いもよらぬ言葉につい大声になった都歌沙。
 
 「ち、ちょっとお花ちゃん、声大きい。」
 「あ、ごめん。」
 
 素直に謝る都歌沙。
 
 「ねえ、お花ちゃん、やっぱりおかしいよ。いつものお花ちゃんじゃないもん。」
 「う~ん…」
 
 再び考え込む都歌沙。
 
 「ごめん、澄香。もう1回だけ確認させて。」
 「ふぅ…、わかったわ。好きにするといいわ。」
 「ありがとう、澄香。」
 
 (もう1回だけ確認してそれでも違うならやっぱり他人だと思う事にするっ)
 
 そう自分自身に言い聞かせて、恭介の元に向かう。
 
 「ねえ、三千里くん。」
 「はい?」
 「またで申し訳ないんだけど、もう1回だけ確認させてくれる?」
 「…いいよ。」
 
 1度深呼吸おして気を引き締めつつ話をしようとする都歌沙。
 その横にす~っと澄香も陣取る。
 
 「先週、クルマを運転してて私とぶつかりそうにならなかった?」
 
 まるで愛の告白をするかのような雰囲気で尋ねる都歌沙。
 
 「ごめん、何回聞かれてもその人じゃないよ、ごめん。」
 「そっか。…ありがとう。」
 
 完全ではないがなにかふっきれた様子の都歌沙であった。
 
 (ごめんね、都歌沙さん、本当の事を言えなくて…)
 
 都合上、その事を隠さなければならない事に負い目を感じながらも、嘘を貫き通さないといけない
 恭介の任務の事情もあったのは事実である。
 
 「何か、好きだ、って告白してフラれた感じだね、お花ちゃん。w」
 「え、ええええ、もう、何おかしな言ってるのよ、澄香。」
 「あはははは。」

 照れて顔が真っ赤になる都歌沙。
 どこまでも仲がいい2人である。
 
 「で、恭介っち、始業式の後何か用事ある?」
 「え、あ~特にないけど。」
 「じゃあ、お花ちゃんが失礼した件のお詫びも兼ねて私が奢るからマックでお話しない?」
 「え、え、え、え…」
 
 急に澄香のお誘いが入り戸惑う恭介。
 
 「あ、当然お花ちゃんは失礼の根源だから強制参加、ね。」
 「え、え、え、え…」
 「あはははは。じゃ、行くわよっ。♥」
 
 きょとんとする2人を尻目にルンルン♪で先頭を歩く澄香であった。
 
 
   -つづく-
 

プロフィール

「ホンダの頭にホンダ」
何シテル?   05/13 16:39
再び色々ありまして、乗り換えです。 2回目のホンダ車でまた白に戻りました。 引き続き宜しくお願いいたします。。♪   一般人からみたらオタク系だと思...
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