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龍聖のブログ一覧

2010年06月03日 イイね!

【小説】刀をたずねて三千里  8

 
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       第1章   刀を狩るモノ   8
 
 
 
 「ん、都歌沙、誰だねこの男は?」
 
 都歌沙の父と思われる男性は、開口一番都歌沙に恭介の事を聞いてきた。
 その表情は実に険しい。
 
 「え、えっと、クラスメイトです、お父様。」
 
 都歌沙は父にそう告げる。間違った事は言ってないが、何か後ろめたさを感じる。
 
 「そうか…」
 
 じっと都歌沙の顔を見る都歌沙の父。
 都歌沙も父の顔を見る。だが、その様子はさながら外敵におびえる小動物に近いモノがある。
 
  パチン!
 
 都歌沙の父は何も言わず都歌沙の頬を叩く。
 
 「お、お父様…」
 
 都歌沙は叩かれた頬を抑えながらおろおろとした様子。
 
 都歌沙の父・将庵(しょうあん)は花畑流第5代総師範で、その威厳を纏ったオーラが凄い。
 都歌沙は幼いころから父・将庵より恵稽古を付けてもらっていたが、徐々に大きくなるにつれ
 その威圧感が心地悪さを感じるようになっていく。
 心身は鍛えられたが父と言う感覚はほとんどなく、段々と疎外感を感じていたのであった。
 
 「なぜ、知らぬ者を家に上げた?」
 「い、いえ。彼はクラスメイトとして招待をしたのであって…」
 
 都歌沙は弁明をしようとしたが、そこから先の弁明は不可能となった。
 
 「ここは吾輩の家であって、お前の家ではない。」
 
 面と向かってそう言われると、都歌沙としてもツライ心境であった。
 
 「…わかりました。以後、このような事のない様いたします。」
 
 都歌沙はただ謝るしかなかった。
 
 「お父さん、そこまで言う事ないじゃない?」
 
 将庵と都歌沙のやりとりにガマンが出来なかった妹・香織が父に食ってかかる。
 
 「何だと!?」
 「だって、お姉ちゃんは普通に家にお友達を招待しただけじゃない、何でそれでここまで言うの?」
 
 香織も大好きな姉・都歌沙が父にガミガミ言われるのを見るのはつらいので、
 色々と反論を試みる。
 
 「未熟者が何を言おうと全然事足りぬわ。下がっておれ!」
 
 そう言うと、将庵は香織を払いのけ、奥の自身の部屋に向かう。
 
 「大丈夫、香織?」
 
 払いのけられて玄関横に倒れた香織に心配をする都歌沙。
 
 「なあ都歌沙、今のが親父さんなのか?」
 「…ええ。」
 
 しぶしぶ返事をする都歌沙。
 
 「香織ちゃんをはね飛ばすなんて、本当に父親なのかねぇ。」
 「…。」
 「…。」
 
 2人の口が止まる。
 
 「え?」
 
 その雰囲気に戸惑う恭介。まさかとは思うが、この2人はさっきの親父さんと血が繋がって
 いないのではなかろうか?という不安が拭き出る。
 
 「ごめんね、三千里クン。今日はこのまま帰って。」
 「…ああ。」
 
 どうやらそのまさかはビンゴだったようだ。だとしたら、心の問題にもなるのでそれ以上は
 詮索すべきではないだろう、と恭介は判断する。
 
 「じゃ、今日は帰るわ。」
 「ええ、ごめんなさいね。」
 「お兄ちゃん、またね。」
 「ああ。」
 
 こうして、恭介は花畑邸を後にする。
 
 
 「ただいま~。」
 
 恭介はこの地での住居である聖(セント)・バーナード教会に帰ってきた。
 
 「お・か・え・り~。
 
 帰ったと同時に修道女(シスター)でもあり教会の家主でもある次田女史が帰ってきた恭介に
 飛びつきながら抱きついてくる。
 
 「ちょ、ちょっと、次田さん。どうしたんですか、急に抱きついてきて!?」
 「もう、学校から寄り道なんかしてどうしたの。私、寂しかったんだから~。」
 「ちょっと~、当たってますよ、次田さん。」
 「え~、何が?」
 「何がって…む、胸が当ってるんですってば!?」
 
 いきなり、抱きついて来てしかも恭介の腕を取って胸にグイグイ当ててくる。
 
 「恥ずかしがる事はないわよ。」
 「はっ、恥ずかしいんだってば。」
 「ちゃんと、私の事『さとみん』って呼んでくれるなら離してあげるわ。」
 「え、えっと…さっ、さっ、さっ」
 「ねえ、ちゃんと呼んでってば~。」
 
 艶めかしい目と態度で迫ってくる次田女史。
 
 「さっ、さとみん。
 「え~、声が小さくて聞こえないなぁ。」
 「あ~、もうやけだ、さとみんっ。」
 「は~い。
 
 なんかもうどっと疲れるわ…。
 
 
 「ちゃんと遅くなるなら前もって連絡ちょうだいね。」
 「はい、ごめんなさい。」
 「うん、よろしい。」
 
 どうやら、都歌沙の家に行って遅くなったので怒っていたようだ。子供かっ、女史は。w
 
 「ところで、次田さん。」
 「さ・と・み・ん、でしょ。」
 「はいはい。ところでさとみん。」
 「なあに?」
 
 なんだ、この寸劇は!?
 
 「その都歌沙の家に行った時に、天下五剣の1つである【鬼丸】があったんだ。」
 「え!? その都歌沙さんって方の家ってどこにあるの?」
 「花畑道場って知ってる?」
 「花畑道場? いいえ、知らないわ。」
 「そっか。まあいいや、とにかくその家にあったんだ。」
 「そうだったの。それは重要な情報ね。それについてはI・S・A・Mにも報告しておくわ。」
 「あ、お願いします。あそこの父親がやっかいな感じだから。」
 「やっかい?」
 
 そこで、都歌沙の父が帰ってきた時のいきさつを次田女史に伝える。
 
 「そうなの。花畑道場と合わせて情報を調べてもらうわね。」
 「次田女史、お願いします。」
 「もう何度言わせるの、恭介クン。」
 「はいはい。お願いします、さとみん。」
 「うん、いい子ね。」
 
 目いっぱい可愛く言う次田里美女史であった。
 まあ、可愛かった片鱗はあるが、今はそれ相応の年齢だろうに…。w
  
 「あ、忘れてたわ。」
 「何でしょう?」
 「女の子を口説く時は、手を取ってお話されると良いでしょう。♪」
 「えっえっ!?」
 「手は口ほどにモノを言うと言うでしょう。」
 「あのぅ、それを言うなら目は口ほどにモノを言う、じゃなかったっけ?」
 「男の子は細かい事に気を配り過ぎると嫌われますわよ。」
 
  ぎゅ~
 
 「痛たたたたたたた…」
 
 お尻をつねられた恭介であった。w
 
 
 「あ、忘れてたわ。」
 「まだ、何かあるんですか?」
 「先日、I・S・A・M欧州支部から依頼のあった『ロンバルディア』の件ですが…」
 「ロンバルディア…、あ、この前の事件の時のヤツか。」
 「ええ、やはりあの事件で使われた刃物はロンバルディアで間違いないようね。」
 「そうか…。」
 
 マクドムドムバーガー・八九寺支店で突如起こった傷害事件で、世間のニュースでは
 ホームセンターで売られてる長包丁が凶器と報道されたが、実際は伝説のドイツの剣である
 『ロンバルディア』が凶器であるとの事だ。
 
 「そして、それを所有している人物も判明しました。」
 「何だって!? 次田女史、所有者は誰なんですか?」
 「さ・と・み・ん、でしょ?」
 
 まだそこにこだわるんかいっ!?
 
 「さとみん、所有者は誰なんですか?」
 「ええ、その人物は『丹下愁作』という方だそうです。」
 「『丹下愁作』?どこかで聞いたような…」
 
 確か、恭介はその名をどこかで聞いたような覚えがあった。だが、今それを思い出せなかった。
 
 「まあいっか。そのうち思い出すだろう。」
 
 安易なもんだ。w
 
 「じゃ、夕食にいたしましょう。」
 
 話もひと段落し、夕食にしようと次田女史が言う。
 
 「それですね、じゃ私がお作りします。」
 「え~!? いやいやいやいやいやいや…」
 「え、どうかいたしまして?」
 「きょ、今日は外食したい気分なんで、外に出ませんか?」
 「え~、私の手料理はお嫌いですか?」
 「いえ、その~今日は外食したい気分ってヤツですわ。」
 「そうなんですか…」
 
 昨日、恭介は次田女史の作るカレーを食べたのだが、見た目は普通のカレーだったのだが、
 食べると「何じゃこりゃ!?」って味だったそうだ。w
 
 カレーもロクに出来ないとなると、他の料理もロクなモンじゃないと思われた。(爆)
 そんな訳で、料理を作ろうという提案をなんとしても回避せねばならなかった。
 
 「お世話になってるんで、今日は私が奢りますよ。」
 「え~、そんな~年下の仔に踊られるなんて、何か悪いし…」
 「目いっぱいおめかししてください。そして、一緒に行きましょう。ミ☆」
 
 ちょっと上目づかいで懇願する雰囲気をかもしながら言う恭介。そのしぐさにキュン。とした
 次田女史は、即座に反応する。
 
 「わかりましたわ。すぐに着替え等準備いたしますのでお待ちくださいませ。」
 
 そう言うと、一目散に自室に戻り着替えを始める。
 
 (次田女史、鼻息が荒いですよ…)
 
 「はぁ…。2年ぶりの日本だけど、こんなに疲れる国だったっけ?」
 
 気を配る事の苦労をひしひしと思う恭介であった。
 
 
 
 
   -つづく-
 

プロフィール

「ホンダの頭にホンダ」
何シテル?   05/13 16:39
再び色々ありまして、乗り換えです。 2回目のホンダ車でまた白に戻りました。 引き続き宜しくお願いいたします。。♪   一般人からみたらオタク系だと思...
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