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第1章 刀を狩るモノ 14
「な、何だ、君は!?」
驚きの表情を見せる神鳴教頭。
まさか教頭室に自分以外の人がいるなんて思ってもいなかったからだ。
「今、あなたが持っていこうとしている刀は、本来のルートで流出していない刀で国際的に
捜索されている刀です。一体どこから入手したものですか?」
毅然とした態度で恭介は神鳴教頭に突っかかる。
「こ、これは兄からもらったものだ。一世とである君にあれこれ言われる筋合いはない!」
動揺しながらも、相手は生徒だから強気に言えばなんとかなると思っていた神鳴教頭であったが
相手が普通の生徒ではなかったのが敗因である。
「今何も言わずその刀を渡してくれれば、盗難の罪については不問にしましょう。」
恭介も堂々とした口調で、神鳴教頭と相対する。
普通の高校生はこんな口調や態度が取れる訳がない。そこはI・S・A・Mという組織で
培われた経験がモノを言ってるのだろう。
「つ、罪だって!? 俺はなにもしていない。ただ、兄の骨董品から拝借しただけだ。」
「その地点であんたは罪を背負っている。」
「し、仕方ないだろう。お金があるんだから。」
「あんたがどんな借金をしてるかは知らないが、まっとうに生きてればそうそう借金を背負う事は
ないんだ。すべては自分の犯した過ち。素直に罪を認め謝罪する事が先決だ。」
段々とおろおろしてくる神鳴教頭。
「う、うるさいっ。俺は教頭だ。お前よりも偉いんだ。口を慎め。」
「はぁ。どうやら最後通告が必要ですかねぇ。」
「な、何を言ってる? 最後通告とはどういう事だ?」
更に動揺する神鳴教頭。だが、恭介も緩めるつもりはない。
「もう1度だけ言います。その刀をおとなしく私に渡しなさい。」
完全に上から目線で話を進める恭介。もう神鳴教頭はテンパっている。
「お、お前に渡すくらいなら、こうしてやる。」
そう言うと、神鳴教頭は持っているロンバルディアを恭介めがけて構える。
(な、何て事をするの、あのおっさん…)
陰で様子を見ている愛生はまさか神鳴教頭が刀を抜くとは思ってなかったので、
恭介のサポートにで出ようかと思ったがさすがに躊躇する。
だが、刀を向けられた恭介に全く同様がない。
(あの子、刀を向けられて一切焦りがないなんて、どんな人生送ってんのよ!?)
愛生も驚くばかりである。そんな愛生を尻目に恭介がプレッシャーをかける。
「さあ、さあさあさあさあ、どうする、おっさん?」
「お、俺はおっさんじゃない、神鳴教頭と呼べぇ~!」
おっさんと呼ばれ、完全にテンパった神鳴教頭は、持っていた刀をついに恭介に振りかざす!
ダメ~!!!
神鳴教頭の思い余った行動に、たまらず叫ぶ愛生。
カッキーン!
人に斬りかかった時にする音ではない音が教頭室にこだまする。
「…な、なぜ?」
斬りかかった神鳴教頭の顔面が真っ青になっていく。
それは人を斬ってしまったからだけではない。
「なぜ、斬れない?」
確かに恭介の肩から刀が入るはずであったが、ロンバルディアはその肩で刃が止まっている。
どうした事はわからない表情をする神鳴教頭に対して、恭介は平然と答える。
「斬れませんでしたねぇ。」
不敵な笑いと共に一言だけ告げる。
「あ、ありえない、刀で人が斬れないなんて。」
「そうでしょうねぇ。その謎を知りたいでしょう。」
「あ、ああ。どういう事なんだ?」
許しを乞う子供のような表情で尋ねる神鳴教頭。
「だが、それを知ることなくあなたは死ぬ事になる!」
「な、何だって…」
肩で止まったロンバルディアはおろおろする神鳴教頭から恭介はあっさり奪い取れた。
「死を持って己の罪を償いなさい!」
ぷしゅー!!!
教頭室に飛び交う鮮血。
なんと、一切のためらいなしで、恭介は神鳴教頭を斬ってしまう。
「
査殺完了。」
そう呟いて血に染まったロンバルディアを教頭室にあるカーテンで拭き取る。
そして、何事もなかったかのように教頭室を出ようとする。だが、それに待ったをかける人が。
「ち、ちょっと、三千里。あんたなないやったのかわかってるの?」
陰で2人のやり取りを見ていた愛生である。
「…。」
恭介は何も答えない。ただ、愛生をじっと見つめる。
「いくら神鳴教頭が悪い事をしてたって言っても、殺す事ないでしょう。」
「あやめさんも見てたならわかるでしょう。教頭は私を斬ったのですよ。」
そう言うと、最初に神鳴教頭が恭介を斬った際に斬れた服の部分を指差す。
「でも、あんた斬れてないじゃない。」
「それは私が普通じゃないからです。でも、もし生徒会長、あなたが斬られていたとしたら
間違いなく、真っ二つに斬られていたのですよ。」
「そ、そうかもしれないけど、でも…」
そこまで言うと、恭介は愛生の唇に指をそっと当てる。
そして、愛生もそこで言葉が詰まる。
「つらい出来事を目撃してしまいましたね。」
「…。」
そう恭介が言うと、無言のまま愛生は涙を流す。
「その悲しさを取り除いてあげます。」
「え?」
そう言うと、恭介は愛生の首の後ろをトンと叩く。
「そ、そんな…。」
愛生は恭介の手刀で気絶する。そしてその直後、教頭室に誰かが入ってくる。
「片付きましたか、恭介様?」
「ええ。血でちょっと汚れましたが、ね。」
突如やってきた女性に恭介が答える。
「ちょうどいい所に来ました1つ頼まれてくれますか?」
「何でしょう?」
「この女性の今日の記憶を消して下さい。」
「ええ、お安い御用ですわ。」
そう言うと、愛生に軽くおまじないというか呪文のようなものを唱え、額にキスをする。
すると、そこが光輝く。そして、その光はほどなく消えていく。
「恭介様、無事記憶を消しましてございますわ。」
「ご苦労様です、魔耶(まや)。では、そのまま保健室に彼女を運んでいてください。」
「了解いたしました、恭介様。」
「じゃ、後ほど。」
そう言うと、恭介は2年B組の教室へ、魔耶という女性は愛生を抱えたまま保健室へと向かう。
き~ん こ~ん か~ん こ~ん ♪
恭介が教室に戻るちょっと前に終業のチャイムが鳴る。
「それではみなさん、帰る人は寄り道をしないように、部活の人は怪我をしないように、ね。」
今日最後の授業をしていた国語の浅井真央先生が教室を去る時そう言って生徒達と別れる。
そして、それとすれ違うように恭介も教室に戻る。
恭介の姿を見つけた都歌沙が恭介の元にやってくる。
「ちょっと、三千里クン。授業サボってどこに行ってたの?」
「あ、ごめん。屋上で寝てた。で、気付いて戻ったらこの時間だった。」
「何やってんのよ。シャキッとしなさいよ。」
「ああ、ごめん。」
何事もなかったのように都歌沙と話す恭介。もちろん、血が付いた服はさっきやってきた女性が
持ってきていた汚れる前と同じ服に着替えて戻っていたので、さっき恭介がやった出来事など
知る由もなかった。
その後、教頭室で神鳴教頭が死んでいるのを他の教員が発見した。警察の捜査で、
神鳴教頭の家宅操作により多額の借金が判明し、それによる自殺と断定された。
そして、その事件は神鳴教頭の兄・権造の裏工作でニュースになることなく終結した。
兄・権造も弟のていたらくに苦労していたようで、事件が表ざたになる事で自身に
影響が出ないように仕向けたようだ。
「…ん、あれここはどこ?」
ベットで目が覚める愛生。
「あ、生徒会長さん起きた、ここは保健室よ。廊下で倒れてたのを連れてきてくれてたのよ。」
校医・友野友子が答える。
「そ、そうなんですか。えっと、今日の記憶が全然ないわ。」
「まあ、疲れてるんでしょう。今日は早く帰りなさい。」
「そ、そうします。」
そして、愛生は1時間後保健室を後にし、下校した。
「ただいま~。」
恭介がこの街での家である聖(セント)・バーナード教会に帰ってきた。
「お・か・え・り・な・さ・い。」
教会の主人であり、I・S・A・M日本支部の一員でもある「次田里美」女史が恭介をアツく出迎える。
「だ、抱きつかないでください。」
「もう、誰も見てないんだから恥ずかしがらなくていいのにぃ。」
「だれも見てなくても恥ずかしいんですってば!?」
次田女史に抱きつかれてすりすりされる恭介。(爆)
「今日はお疲れ様。」
「ええ、色々と疲れました。で、ロンバルディアは?」
「あ、恭介クンが帰ってくるちょっと前に魔耶さんが持ってきてくれました。」
「そうですか。では、この件はこれで終了ですね。」
「ええ、無事任務完了ですわ。」
「じゃ、この街ともお別れか。」
今回、恭介がこの街に来たのは、ロンバルディアの捜索が目的であった。
こうして、ロンバルディアが戻ってきた以上、任務は完了となり、次の任務があれば
どこであろうが行かねばならない。たったの4~5日しかいなかっただけにもうちょっとこの街が
どんな街なのか探索したかったという気持ちも恭介にはあった。
「そんな、寂しいですわ。」
そう言うと、また次田女史が抱きついてくる。
「うわ~、だからいちいち抱きつかないでください。」
「だって、まだ恭介クンとは夜を共にしてないし、あとエッ…」
バシッ!
「それ以上言うな!」
「痛った~。恭介クン、冷たい。」
「誰かが聞いたら誤解するような事を言わんでくださいっ。」
「もう、恭介クン照れ屋なんだから。」
「…。」
それ以上突っ込む気力はなかった。w
トゥルルルルル ♪
「あ、電話ね。」
そう言うと、次田女史は電話のある所へ行く。
依頼を終え、のんびりとコ-ヒーを飲む恭介。
「さて、今度はどこで仕事をするんだろうなぁ?」
そんな事を考えてると、次田女史が受話器を持ちながら部屋に戻ってきて恭介を呼ぶ。
「恭介クン、電話よ。」
「え、誰からです?」
「山本澄香さんって方からだけど、誰? もしかして浮気?」
バシッ
「浮気言うな、浮気って。」
とりあえず突っ込む。w
「はい、もしもし、三千里ですが?」
「あ、恭介っち。元気?」
電話の主は確かに山本澄香であった。
「今週末ってなにか予定ある?」
「今週末? 何もないけど。」
とりあえず依頼も終わったかたひとまずは時間あるけど…なんだろう。
「じゃ、土曜日朝10時に恭介っちの家に行くね。」
「え、どういう事?」
「じゃ、詳しくは明日学校で、ね。」
ガチャッ ツーツーツー
「あ、用件だけ言って電話切りやがった!」
(それにしても、いきなり来るって何かあったっけ?)
色々と考えてみるがなにも思いつかない。
まあいっか。それよりも聞いておかないといけない事があった。
「ねえ、次田女史。」
「もう、忘れたの。『
さとみん』って呼んでっていったじゃない。」
うわっ、めんどくせぇ。w
「さ、さとみん、1つ聞いていい?」
「何かしら?」
さとみんと呼ばれて返答が1オクターブ高い。♪
うわっ、超めんどくせぇ。
「次の依頼があるまで、自分はどうなるんですか。」
「指示があるまではここにいていいのよ。」
「つまり、「ここで待機って事ですか。」
「そうよ。」
「了解。ありがとう。」
「どういたしまして。」
(なるほど、次田女史も返事が明るいのは待機中は俺がここにいるからって事か)
「じゃ、今週末お客さんが来ますんで、宜しく。」
「ええ、わかったわ…って誰が!?」
「さっきの電話の娘。」
「では、却下ですわ。」
「あんた、子供か。」w
(まあ、居候なんで、一応家主の次田女史に断っておかないとな。)
軽く返事をした恭介であったが、まさかその返事の結果、今週末にあんな事になるなんて!?
- 第1章 終了 -
ひとまず第1章が終わりました。手探りで始まった為、支離滅裂な部分もあった事を
ここでお詫びいたします。
第2章はもうちょっとしっかりとした作品にしていきたいと思ってますので、
引き続きお付き合いいただける方は今後も宜しくお願いいたします。