バックナンバー⇒第1章、
①・
②・
③・
④・
⑤・
⑥・
⑦・
⑧・
⑨・
⑩・
⑪・
⑫・
⑬・
⑭
第2章、
①・
②・
③・
④・
⑤・
⑥・
⑦・
⑧
第2章 バカと刀は使いよう 9
ドロドロドロドロドロドロドロ・・・
スバル独特の重低音をなびかせて、恭介の愛車スバル・インプレッサR205は八九寺ICから
羽田ICまでの約70kmの距離をめいっぱい飛ばしながら走る。
「恭介様。アルピナ様が到着する時間まで1時間ちょっとしかありませんよ。」
「あ、ああ。」
「…。」
恭介の愛車の助手席に座るのは、恭介のサポーターである魔耶。
直前まで都歌沙といた事はもちろん黙っている。魔耶には歓迎会で遅くなったと伝え魔耶も
それ以上は詮索してこなかったというのもあったが、車内は少々気まずい雰囲気だ。
圏央道にある八九寺ICから八王子JCTを経由して中央自動車道に入り首都高を目指すが、
国立府中ICあたりから徐々にクルマが増え、車線が混んできた。
そして、稲城あたりからは完全にノロノロ運転になっていた。
渋滞がなければ1時間かからない今回のルートも通勤ラッシュと重なる夕方だとやはり混んで
きてこの辺りでいつものように渋滞が起こる。
その渋滞のせいで車内の空気が更に重くなる。
(何だ、このプレッシャーは!?)
そう感じずにはいられない雰囲気だったと、後に恭介は語った。w
高井戸ICを抜け首都高4号新宿線に入った辺りから段々とクルマの流れが戻っていく。
「恭介様。あと30分しかありません。」
渋滞から抜けその気になれば飛ばせそうになったので、恭介は重苦しい雰囲気を打破する
意味も含め、警察には言えないスピードで羽田に向けてぶっ飛ばす事にした。
「魔耶、ちょっと飛ばすから、しっかりと乗っててくれ!」
「…わかりました。」
恭介は魔耶にそう言うと、アクセルをぐぐっと踏む。もちろんSI-DRIVEは『
S#』である。
ドッドッドッドッドッドッドッドッ・・・
水平対向4気筒DOHC16バルブAVCSツインスクロールターボが激しく唸る。
メーターは通常とは違う300kmメーターだが、普通ならリミッターで190kmくらいまでしか出ない。
今、恭介の乗るR205が示すメーターの針は200kmをちょっと越えた辺りだ。
「きょ、恭介様。ちょっととばしっ…すっぎっ…」
さすがに魔耶もこれまで体験した事のない速度に身体が硬直しつつある。
「すまん。時間に間に合わせるからもうちょっと我慢してくれ。」
そう言いながらアクセルを緩める事なく、クルマを走らせる。
それまでの重苦しい車内の雰囲気のうっぷんを晴らす意味もあって、恭介はまだクルマの多い
首都高を半ば強引に走らせていく。さながら『首都高バトル』というゲームのような感じだ。ミ☆
ただ、目的地・羽田周辺にレモンフレーバーの乗るスープラはいない。www
首都高4号新宿線から三宅坂JCTを経由し首都高都心環状線に入り浜崎橋JCTから首都高
1号羽田線⇒首都高速11号台場線をひた走り、有明JCTから首都高速湾岸線(東京線)に入り
目的地・空港中央ICで高速を降りると、すぐ羽田空港である。第1立体駐車場が満車だったので
第2立体駐車場に愛車を止めると、速攻で空港ターミナルを目指す。
先ごろ羽田空港の国際便が復活した為、成田より近い羽田を選ぶ事となった訳だが、
もし、成田だったら間に合わなかったであろう。そう言う意味では羽田で良かった。w
「ふぅ、何とか間にあったぜ。なぁ、魔耶…って、あれ?」
駐車場に到着し安堵の表情で助手席に座る魔耶を見ると半眼でぐったりとしていた。
「きょ、きょうすけさま~、そんなに飛ばさないで~・・・」
「す、すまなかった。さすがに200kmオーバーの世界は負担がかかったようだ。」
恭介自身は、I・S・A・Mドイツ支部にいた時、ニュルブルクリンクでもクルマを走らせた経験が
あるのでそうでもなかったが、普通の人は200kmオーバーの世界を経験いる人は皆無であろう。
仕方なく魔耶をクルマに残し、恭介はターミナルへと急ぐ。
「思ったより早く着いたでござるな。」
到着が20:20の予定だったパリ発羽田行きのJAL4989便は、当初の到着予定時間よりも
20分近く早く到着していた。日本は3度目の来日であるアルピナだったが、前の2回はいずれも
成田空港着だったので、羽田は初めてであった。なので、どこをどう行くのかわからなかった。
「全く、英語や中国語・ハングルの表示ばかりで、なぜドイツ語の表示がないんだ。」
彼自身、英語を知らない訳ではなかったが、母国語を重んじる気質がある為か、その事で
怒っていた。w
「だいたい、日本への直行便でもドイツからの便がないから仕方なくパリから来たが、不満だ。」
一人でぶつくさぼやいていた。そんなアルピナの元に1人の女性が近づいてくる。
「あのぅ、ドイツ支部から来られた方ですか?」
「ええ、そうでござるが、何か?」
アルピナに話しかけてきた女性は清楚な雰囲気で着物を来ていた。
「お待ちしておりました。では、こちらへ。」
「それはかたじけない。」
その女性に案内されるがままに、一緒に歩むアルピナ。
(なかなかに美人な日本人だな。味見してみるかな。)
アルピナはI・S・A・Mに所属するメンバーの中でも1・2を争う女好きであった。w
それは任務の途中でも、いい女と思えば言葉巧みに誘いをかける。
この前もアメリカでの任務の際、好みのアメリカ娘に声を掛け食事やら
ピーをしてみたら、
ナント地元のマフィアのボスの娘だった事もあったが、そんな事でめげるアルピナではなかった。
(せっかく日本に来たんのだから日本人女もいただいていくでゲス)
そんな邪な想いがあった為に、このあと散々な目に遭う。(爆
「こちらで一緒にお待ちください。まもなく同志が到着します。」
「ああ、そうでござるか。」
いささか語尾がおかしいが、日本語を覚える際『
木枯し紋次郎』や任侠映画を活用
したのでその辺はやむなし、というヤツだ。w
「ところで、飛行機に乗る際はさすがに武器を持ちこめなかった故、早く手配した武器をござれ。」
アルピナがそう言った途端、着物女の表情が少しだけ変わる。
「【大和守源秀国】を持って来られたのではないのですか?」
「飛行機にそんな物騒な刀を持ちこめる訳がないでござろう。おかしな事を聞くなぁお主。」
「そ、そうですか。それは失礼いたしました。」
「そう言う訳でござるので、早く持ってきてごじゃれ。」
「そうですか、持ってませんか。」
「ああ、持ってない。だから早く手配をしてくれ。」
「わ、わかりました。ではその場所へ案内をいたします。」
そう言うと、着物女はアルピナを連れて別の場所へ行こうとする。
(うむ、なんだかおかしい…)
ひとまずは着物女に付いて行くアルピナであったが、段々とおかしいと感じてきていた。
「ところで、
愁作は元気にやってるでござるか?」
「え、ええ。彼は元気でやってますよ。」
「…あんた誰だ?」
「え?」
不穏に感じたアルピナはここに来るはずの恭介の名前ではなく、全く関係ない人物の名前を
使ってみる事で、相手の反応を観ようと思ったが、あっさりとボロを出してきた。
「愁作という人物は存在しないぜよ。あんた、一体誰なんじゃ?」
「…うふふふ。随分簡単に騙せる人だなと思いましたが、フェイクでしたか。」
「ふっ、いい女には騙すより騙されたいと思うタチでしてね。」
「ふ~ん、だったら最後まで騙されてくれればよかったのに。」
「俺もそうしたかった所でござるが、本能がそれを許さなかったってもんよ。」
「あんた結構いい男だね。あんたになら抱かれてもよかったかも、ね。」
「何なら今抱いてやろうか。」
「…、いいわよ。」
敵ではないかと思う女をなぜか抱く展開になる!?
(俺も好き者だなぁ)
そう思いながらも、いい女を見逃すのはもっと嫌な性分であった。w
だが、ここではそれが災いとなる。
「ギュッと抱いて。」
そう言って思いっきりアルピナの元へ飛び込んでくる着物女。
「おっと。♥」
軽い気持ちで飛び込んでくる着物女を受け止める。
グサッ!
「うっ…」
「遅ればせながら、確かに武器はお渡ししました。残念ながら【大和守源秀国】ではありません
けどね。うふふふ。」
そう言うと、着物女はアルピナを置いて静々とその場を離れる。
「…
Sie Arschloch !?」(くそったれ !?)
着物女は抱きつく時、懐に忍ばせていた短刀をアルピナに飛びつく際器用に刃をアルピナに向けて
いたのであった。その為、飛び込んでくる着物女を受け止めた時見事にその短刀がアルピナに
刺さってしまったのだった。
「抱き合ってから何か仕掛けると思っていたが、まさか抱き合う瞬間に仕掛けてくるとは…」
自身も焼きが回ったな、と思いながらも、その傷は決して浅くない。
(ちょっと痛いな…)
そう思いながら、空港内を歩くアルピナ。
「そろそろ三千里恭介が来る頃でござるな。待ち合わせ場所を確認せねば。」
そう思ったアルピナはたまたま傍を歩く女性に声をかける。
「ちょっとよろしいでござるか?」
「は、はぁ…」
白人に声をかけられた女性は一瞬おっと思うが、その口調に違和感を覚える。
そりゃ、白人が~でござるなんて言うのはおかしいの一言に尽きる。w
どんな人なんだろう?と思い、顔からず~っと下に向けて容姿・服装をチェックしようとする。
「…えっ!?」
ちょうどお腹の辺りを見た時、その周辺の衣装が赤く染まっている事に気づく。
「ど、どうされたんですか、それは?」
「
Werden Sie einen Krankenwagen rufen?(救急車を呼んでくれませんか?)」
バタッ・・・
アルピナの傷は結構深く、思わずドイツ語で救急車を読んで欲しいと言ってしまう程であった。
キャー!? 誰か来て~!
「キャー!? 誰か来て~!」
発着ターミナルへと急ぐ恭介の元へ何やら叫び声が聞こえてくる。
「ん、何だ? 誰か叫んでいる。」
遠目の前方で聞こえた叫び声の所へ駆け寄る恭介。
「誰か、救急車を読んでくださいっ。」
とある女性が倒れている人物の横で助けを求めている。
その倒れている人物の髪の毛の色がどことなく見覚えのある人物にような気がして、すぐさま
そのもとに駆け寄り、その女性に話しかける。
「どうしました?」
「この男性がお腹から血を大量に流しているんです。」
「何ですって?」
そう言ってその男性を見ると、間違いなく恭介の知る人物であった。
「あ、アルピナ!?」
思わず叫ぶ恭介。
「救急車を読んだ方がいいですよね?」
「そ、そうですね。えっと、どうすっか…」
確かに救急車を呼ぶのが先決であるが、アルピナを普通の病院へ連れていくのは色々と
問題があるので、どうするかためらう恭介であった。そこに、やっと体調が戻った魔耶が合流する。
「お待たせしました…って、どうしたんですか、恭介様?」
「あ、魔耶、いい所に来た。俺はコイツを担いで自分のクルマに連れていくので、その間に
次田女史に連絡して、アルピナをどの病院へ連れていったらいいのか、確認を取って欲しい。」
「わ、わかりました。」
そして、アルピナを背負うとアルピナの傍にいた女性に声を掛ける。
「しまないが、あなたも一緒に来てくれませんか?」
「あのぅ、それよりもどうして救急車を呼ばないんですか?」
「話は後で説明しますので、とにかく一緒に来てください。」
「は、はぁ、わかりました。」
こうして、恭介はアルピナと合流を果たすが、その形は非常に宜しくない形で会う事となった。
-つづく-
< 主な登場人物プロフィール 2 >
☆
魔耶(まや) CV:新井里美
I・S・A・M日本支部所属。三千里恭介直属のサポーターとして恭介の仕事を補佐している。
見た目は20歳くらいに見えるが、実年齢は不詳。169cm 52kg B88・W59・H86。
なぜかメイド服で活動する事が多く、特殊作戦であろうがその基本姿勢は変わらず、
メイド服の戦闘モード版等5種類のメイド服がある、と本人も言っている。
だが、恭介自身が知ってる別バージョンのメイド服でも2つまだ見た事がないモノがあるらしい。w
恭介の事は『恭介様』と呼ぶ。
☆
朝乃魔央(あさの まお) CV:伊藤静
剣道部に所属する3年の女性先輩。その実力は非常に高く全国大会に出るほどの腕前を持つ。
武道をする身でもある為、スタイルは良い。163cm 47kg B85W57H87。
だが、それは表の顔。裏の顔は恭介の所属するI・S・A・Mとは反対の組織・W・S・Cの
日本支部長・朝乃真之介の娘にしてその幹部でもある。
支部内では「
あまおう様」と呼ばれ、組織員の中でもファンは多い。
あまおうという謂われは、朝乃の「あ」と魔央を「まおう」というのを掛けて「あまおう」となった。w
恭介の事は『恭介氏』と呼ぶ。
☆
ブラハム・B・アルピナ CV:福山潤
恭介の所属するI・S・A・Mのドイツ支部の所属で、恭介が2年間ドイツにいた時にコンビを
組んでいた事もある人物である。ちなみに、仲は良くない。w
いい女には目が無く、時には痛い目にもあったりするが、その性癖はいまだ治らず。(爆
美形でスタイルもいいので女性からの受けも良い為、やりこんだ女性の数も相当なものだとか。w
☆
丹下鉄平(たんげ てっぺい) CV:下野紘
恭介と同じ2年B組のクラスメイト。なぜか恭介につきまとう。今は朝乃先輩に惚れこんでいるが、
基本的に女性好きである。w ただ、1度も女性と付き合った事は無い。
実家はお金持ちだが、それを鼻にかけないのが唯一の救いか。¥
恭介らの財務省と化する危険もはらむ。
☆
北山有希(きたやま ゆき) CV:茅原実里
恭介のクラスメイト。物静かでおとなしい娘。密かに転校してきた恭介に好意を持つ。
ちょっとぽっちゃり体型なのを気にしている。お菓子類には目がなく、お菓子作りはかなり上手い。
158cm 57kg B93W65H97。
恭介の事は竹嶋 由布子同様『恭介さん』と呼ぶ。
簡単ではありますが、第1章⑪以来のキャラ紹介をさせていただきました。
最後に、CVは脳内妄想ですので…念のため。w