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第2章 バカと刀は使いよう 14
「いざ!」
「来い!」
恭介・豪傑の2人が直接対決となった戦いは、最初から力勝負の模様を呈していた。
ガキ~ン
「おらおらおら、そんな刀でこの
紅葉狩兼光に勝てると思っているのか?」
豪傑はその名の通り、豪快に刀を振りかざし、恭介に対峙する。
対する恭介は、豪傑の攻撃の間隙を縫って反撃を試みようとするが、デカイ図体の割にすばしこい。
前半は受けの一手となった恭介。
「攻撃をかわすだけでは勝てぬダンスよ。」
「・・ふん、その勢いがどこまで続くかな。」
カキーン カキーン
あれだけの大きい斬馬刀を振り回しているのだから、いくら体力があっても、そんなの長時間の
攻勢が続く訳がない、そう考える恭介は出来るだけ受けに廻って体力を温存する戦いを展開
しようとするが、受ける側も相当な力を受け止めなければならない為、来力温存という余裕は
正直なかった。受ける側のダメージは直接キズを受ける事はないが、ガードする腕や身体には
もちろん衝撃が来る。すなわち攻撃する側の体力も受ける側の体力も同様に減っていく。
「まだこんなモノじゃないダンス。」
恭介が受け手に廻っているので、豪傑はガードを捨てひたすら攻めてくるので、その威力は
徐々に恭介の体力を奪っていく。
(このままじゃ、負けるかも…)
ここらで逆転の一手を打たなければ、恭介はガードする体力も無くなるであろう。
だが、恭介には逆転の一手があった。だが、それには条件があった。
その時が来ればチャンスはある。しかし、その前にガードで体力が奪われては意味がない。
そこで、賭けではあるが、ひるむフリをする事でそのチャンスを作ろうと決め、作戦に移る。
「むぉ~」
豪傑の攻撃を受けた時、態勢は不利になるが豪傑が恭介を押し込めるような形にもっていく。
「くっ…」
しまった、という素振りを見せる。すると、豪傑の顔がニヤリと変わる。態勢有利と思ったようだ。
(おっ、こやつ態勢が崩れてきたな。そろそろとどめをさす機会が出来そうだ)
そう思った豪傑は一気に押し込んで恭介を地面に叩きつけようとする。
だが、恭介もそのまま抑えこまれてはフリをしてる場合ではなくなるので、ここは抑え込んで
来るのを交わしにかかる。
「まだ終わらんよ!」
そう言って、押し込んでくる豪傑の斬馬刀をなんとは払いのける。
「はぁはぁはぁ…。」
恭介が肩で息をしながら、少し距離を取って豪傑と対峙する。
その容姿を見て、勝ちを意識する。
「そろそろへばって来たようダンスな。」
「…ふん、まだまだ。」
見た目は恭介の方が明らかに不利に見える。
「恭介様っ…」
2人の戦いを見ている魔耶も当然そう見えたので、恭介に対しての不安が募ってくる。
「そんな不安そうな顔をするな。」
「でも…」
「このままじゃ終わらない。そこで見ていろ。」
「…はい。」
魔耶も恭介パートナーとなって1年になるが、このような状況は初めてであった。
これまでは恭介が圧倒的に強く相手に勝ってきたからだ。それが今回は押されっぱなしである。
(もしかしたら、危ないかもしれない…)
下手をしたら危ないとかのレベルではないとも思えてしまうが、そう思う自分を必死で打ち消そうと
思う。恭介が勝てない相手に魔耶自身が勝てるのか?と。
「そろそろ勝敗を決める時が来たダンスね。」
ほぼ勝ちを確信した感じで、恭介に向けて言う。
「そうか?それは俺も同意見だ。」
「では、とどめを差すダンス。」
豪傑が上段の構えをする。
(よし、来るか!?)
豪傑が勝負を決めに来た。豪傑の押し切りをを受け止める事が出来れば恭介は勝てる算段が
あった、あとは、押し切られないようにするだけであった。
「むぉ~~~~~~~~~!」
大きな身体をめいっぱい上に向け、そこから恭介を重力をも味方にして押し斬ってしまおうとする。
「ぬぉ~、全力全開ハイパワーガードっ、【
防御陣・楓】。」
ガッキ~~~~~~~ン
全体重を掛けて押し斬ろうとする
紅葉狩兼光の振り降ろしを
三日月宗近はその刃が
折れることなくしっかりと受け止めた。
「な、なんダンス…」
まさか、抑え込めないとは思っていなかっただけに今まで全く感じなかった焦りがにじみ出る豪傑。
「あ、ありえないダンス…。なぜこの攻撃を受け止めれるダンスか?」
これまでの強気発言が影を潜める。
「よし、受け止めたぞ。」
恭介は受け止めれなかったら?という不安があった。だが、その時は=負けとなるだけの話。
考える必要もない。いま考える事は豪傑の攻撃を何としても受け止める事。そうすれば勝機は
恭介にあると思っているのだから。
「今度は俺の番だ!」
「何!?」
今度は押し返す番だ。態勢は上から押し込む形である豪傑のポジションが段々と戻されていく。
(お、押されていく…)
力では負けた事のない豪傑がどう見ても力負けしない容姿の恭介に押し返されている。
更に焦りの色が濃くなっていく。この地点で勝敗の行方は一気に変わった。
「ほらほら、どうした。」
「ううう…」
恭介は知っていた斬馬刀の弱点を。
恭介は豪傑の持つ刀を受け止めているが、それは刀の刃先であった。
大きな刀で押し込むと言っても支点の場所で力加減が変わるのだ。
刃の根元は力が入る腕や手に近い為、大きな力が入る。だが、その視点から遠くなる刃先への
力は根元ほどではない。
形としては、恭介と豪傑の刃が重なり合う位置は、恭介が根元で豪傑が刃先。これで両社の
力の差が小さくなる。そして、豪傑も知らないが、意外と恭介は力があるのだ。
それは腕っ節の力の類ではない、刀自身の持つ力である。
足利時代より著名な武将のエキスを刀自身が持っていったのだった。長年生きてきた刀が
妖刀と化しているのが原因だが、天下五剣と言われる刀は長年の中で妖刀化していた。
世間ではその事は知られていない。それもそのはず、一般市民がその刀を持つ事がないので
知らないだけなのだ。一部の学者達も刀自身が持つ妖化に気付く物もいない為、これまで
その事を知らないのである。
そうこうしてる間に鍔迫り合いしている互いの刀の位置がほぼ同じになる。
(いかん、このままでは立場が逆転するダンス。めいっぱいの力で押し返すダンス。)
「ぐぉ~~~~~~~~」
豪傑はありったけの力を振りしぼって再び恭介を押し込もうとする。
刀に大きな力が押し込められる。
(よし、今だ!)
恭介は今こそ真の逆転の時を迎えた。
秘奥義『桜武回天撃!』
そう叫ぶと、押し込もうとする豪傑の身体が一気に恭介を押し込むか!?になる。
「うっ!?」
豪傑は押し込む勢いが急激に来た形になった為、押し込みというよりも前に倒れこむようになる。
一方の恭介は豪傑の押し込もうとする力を利用して力を押し込む方にプラスして恭介自身は
その場で回転しながら廻るような態勢になる。
ピヒュン! グサッ!
「うがぁあああああああああ!?」
豪傑の例えようのない叫び声が!?
恭介の
三日月宗近が豪傑の背部に見事に食いこんでいる!
「な、何が起こった…ダンスか?」
ゆっくりと後ろを振り返る豪傑。そこには腰の部分から横に綺麗に恭介の刀が入り込んでいる
様子が見てとれた。
「豪傑よ。悪いがこの勝負、俺の勝ちだ!」
恭介が真剣なまなざしを豪傑に見せながら言う。
「…そうか、太極拳の類か。」
豪傑はこの状況で初めて自分がどうやって負けたのか理解した。
恭介の放った秘奥義『
桜武回天撃』は、対峙する相手の力を利用して自分の力に転嫁
する事で、通常の力に相手の力もプラスした攻撃力を発揮するのだが、その主な力は名前の通り
回転力である。豪傑が恭介を押し込もうとする力を加味して、恭介自身が回転の中心部となり
身体を回転する。わかりやすく言うと、突進してくる闘牛をマントでいなすのを思い浮かべて
いただければいいでしょう。相手は押し込む力がいなされる事で、態勢が崩れる。そして、
崩された身体に2つの力が加わった回転する恭介の刀に集約され、豪傑の後ろ側の腰を斬る
ような形になったのだ。
「豪傑、お主は強いな。」
恭介はしみじみと言う。
「何を言う、貴様はこうして私の身体に刃を斬りこんだではないか。」
だが、恭介は首を横に振りながら、豪傑に強いと言った理由を話す。
「この秘奥義は本来、相手の力が大きければ大きいほど攻撃を受けた相手へのダメージが
大きくなる。豪傑の力が加わっていれば、豪傑の身体は真っ二つになるはずだ。私もそう
なると思っていた。だが、この刃はお主の背骨から先を斬れなかった。お主の強さが
真っ二つになるはずの攻撃を抑えたのだ。自慢していいぞ。」
「ふっ、だが自慢するにも相手がいない…。」
「…俺が聞いてやる。」
「…そうダンスか。それはありがたい。」
そこで恭介は背骨で止まった刀を抜き取る。
ぷしゅ~!
刀を抜き取ると、斬った部分から地が吹き出す。だが、それは刀が抜ける時だけですぐに止まる。
綺麗に斬れた時にはうまくくっつけば表にそんなに血が出ない、その原理だ。
その直後に、魔耶が恭介の元に駆け寄る。
「恭介様ぁ~!」
そう言うと恭介にタックルするように抱きついてくる。
「い、痛いなぁ、魔耶は…!?」
魔耶の顔を見ると涙ぐんでいる。恭介はそれから何も言わず魔耶を抱きしめつつ携帯を取り出す。
ぷるるるるる♪
「はい、もしもし~、愛の伝道師・さとみんですよ~。」
「…。」
ガチャ ツーツーツー
恭介は呆れて電話を切る。すると当然、先方から電話がかかってくるわな。w
だいたいの予想は付くが、とりあえず電話に出る。
「おんどりゃ、何ワン切りしとんじゃ!?」
お怒りモードで電話をしてくる次田女史。まあ、この対応は当然だわな。w
「すまない、携帯を持ちかえようとしたらうっかり切のボタンを押してしまった。すまない、さとみん。」
「い、いいんですよ~。(今日はさとみんと呼んでくれたわ♥)」
すっかり次田女史の扱いに慣れた恭介である。w
「すみませんが、中央道の石川PAに回収班をよこしてくれませんか?」
「! もしかして、死亡した?」
「いえ、しばらくは大丈夫です。」
「わかったわ、回収班をよこすわ。それまでそこにいてちょうだい。」
「了解っ。」
そう言って電話を切る。
「彼を殺すのですか?」
魔耶がおそるおそる恭介に尋ねる。
「いや、回収班に任せる。」
「…そうですか。」
沈んだ様子の魔耶。
「…気になるか?」
「ええ、敵対する相手とはいえ、何だか可哀想で…。」
「わかった、回収班には治療の方向でお願いしておくよ。」
「そ、そうですか。ありがとうございます。」
魔耶の顔がぱ~っと明るくなる。やはり人が死ぬのは避けたいようだ。
表向きは恭介も笑顔を見せるが、実際はどうなるかは恭介にはわからない。
なぜなら、対決した相手をその場で殺さなかった場合以外はすべて回収班に任せる手筈である。
そして、その後の生死の判断は上層部が決める事で、麻耶にはああ言ったが実際はその後
どうなったかは不明なのである。本当は多くの場合が暗黙のうちに殺されるか、洗脳されて
使い駒にされる事が多いのが実情である。
「じゃ、帰ろうか。」
「はいっ。」
その後回収班に後を任せ、恭介と魔耶は石川PAを後にし、帰宅の途に付くのであった。
「
忌将院 豪傑はまだ帰って来ぬか?」
「はっ、あまおう様。未だ返ってくる気配はありません。」
「そうか…。」
「おそらく豪傑様はあのクルマに乗っていたヤツらにやられ…」
「それ以上言わんでもよい。」
「はっ。失礼いたしました。」
「…。」
あまおう様こと
朝乃魔央は豪傑がもう帰ってこない事は悟っていた。
「彼は私の初めての忠実な部下だったのに…。」
魔央の父・朝乃真之介の言われるがままにW・S・Cの幹部になったはいいが、陰で父の
七光りと思われている感がある中で、豪傑はそう言ったわだかまりのないすがすがしい男で
あった。ブラハムの持つ『
大和守源秀国』を確保が出来てW・S・Cの内部での評価は
上げる事が出来た。だが、その代償は魔央にとっては大きかった。(爆
翌日の午後、恭介はファミリーレストアン・イグナリアにいた。もちろん1人である、今の所は…。
「そろそろ待ち合わせの時間だな。」
腕時計の針は13:00を指そうとしていた。恭介はここでとある人物と落ち合わせをしていた。
「ごめ~ん、待ったぁ~。」
な~んて言いながらやってくるようなシチュエーションは間違ってもないだろうな、と恭介は思う。w
そして、やってきた彼女はその予想通り、甘い言葉を言ってくるようなキャラではなかった。
「よし、到着っ。」
「…。」
実にあっさりとしたもんだ。w
武道を心掛ける者はみんなそうなんだろうか?と思ったりするが、結論は出る訳がない。
「午前中は修業だったね。相変わらず親父さんは厳しい?」
「ええ、見てよこれ。少しは気を使えっちゅ~の。」
彼女は修業で負った擦り傷を見せて軽く笑う。
「ねぇ、三千里クン。今日はお話してくれるのよね。」
「ああ、その約束だからな、
都歌沙?」
そう、恭介が待ち合わせをしていたのは
花畑都歌沙であった。
そして、都歌沙と初めて会ったのは、危うく交通事故になりかけたあの時でま違いなかった事。
更に、クルマに乗れる19歳であることを告げる。だが、I・S・A・Mの一員である事は伏せている。
これだけは明かす訳にはいかなかった。それを明かす時は恭介がこの街を去る時であった。
いや、戦いで恭介が死ぬ時はそれを明かすまでもないのだが…。
「この事は2人だけの秘密にしてくれるね?」
「ええ。正直に話してくれたと思ってるから、それは必ず守るわ。」
「そっか。ありがとう。」
恭介はひとまず安堵の表情を見せる。いつの間にか恭介は都歌沙に嫌われたくない気持ちが
大きくなっていた。それが何なのかは分かっている恭介だったが、それを告げる事は出来ない。
それは、恭介自身の今の仕事が関係している。恭介の仕事は生死を賭けた争いが常に
付きまとっているからだ。
実は過去に1度だけ恭介には付き合っていた女性がいた。だが、その女性は恭介の戦いの
中に巻き込まれて亡くなっているのだ。それがどうしても頭に残っていて、思い切れない。
(まだ時間はある。焦る事はない)
そう思う恭介だったが、これだけは言っておく。
【恋愛は自分が想った時に言う方が、成否に関係なく後悔しないよ。】と。w
一方の都歌沙の方も、恭介はほぼ秘密を打ち明けてくれたと理解している。
だが、何かが引っかかるのだ。それは格闘家の勘でもあるのだが、もし、恭介はすべてを
打ち明けてくれていたのに、疑心暗鬼な事を言うのはせっかく築いた信頼関係を自らで
破棄する事になる。
【大丈夫、彼を信じよう。】
そう思う都歌沙であった。
「ねぇ、三千里くん?」
「ん、何?」
「修学旅行、楽しみだねっ。」
「…あ、そっか。」
「もう、忘れてたの~。」
「海外留学とかがあって高校の修学旅行には言った事ないんだが、まさかイケるかもしれないと
思うと、ちょっと緊張しちゃってさ。」
「うふふふ。おもしろい事言うんだね。」
クスクスと笑う都歌沙。釣られて恭介も笑う。
(もう1度恋をしてしまうかもしれない…)
それは恭介の正直な気持であった。そして、都歌沙も…。
-つづく-
第2章はここまでです。何とか年内に終わった、と言うのが正直な感想。
話のまとまりがなく読みづらい点も多く、反省材料として肝に銘じなければいけないと思ってます。
第3章ではその反省を踏まえつつも懲りずにやっていきますので、よければ読んでいって下さい。
では、また。(^-^)/