
6月の話になりますが、何年も前から不具合の出ていたビートのクラッチをようやく交換しました。
本当は、クラッチ同様に劣化により不調になっている機械式LSDのオーバーホールを本題にして、ミッションまで込みの駆動系総オーバーホールをしたかったのですが…
昨年にチャリンコと事故った際の修理費が、MTオーバーホール2回にお釣りがくる程掛かっていた事。
更に、現在組んでいるLSDがクスコの20年前のモデルで、その後のモデルチェンジによる旧型化で既にOHキットが廃番になっている可能性があり、LSD自体の新品買い替えまで想定して予算を組まなければいけなかった事とで、今はとてもミッションを開けている場合ではないという事であえなく先送りに。
まずは異音の出ているクラッチだけでもさっさと直しておかないと、ミッションに要らんダメージを与えかねません。
…で、これまで使用していたホンダ純正クラッチの使用距離は交換時で約7.5万km。
3.5万km程使用していた2017年頃から切れ不良の症状が出始めており、クラッチマスター、スレーブシリンダーを新品交換しても改善しない事を確認したのが2020年。
そして良くある3,000rpm付近での異音については少なくとも6万km台からしていたはずで、これをまたホンダ純正品に交換した所で同様の異常が出るのは目に見えています。

この頃の世代は皆こんな物なのか、メーカー純正クラッチディスクの信頼性の低さはミニカでもさんざん経験しました。
かと言ってビートの場合、社外ブランドのノーマル互換クラッチキットについても経験上、アイシン製にて煙が出る程盛大に滑らせた事があるのが一抹の不安でした。
そこで流用したのがジムニー用のエクセディ強化ディスク(SD08H)と、660cc新規格以降のアクティ系4WD用純正カバー。いわゆるクラッチのφ180化構成です。

後々の部品再調達時にも困らないよう、ビート系ショップ独自の強化クラッチキットの導入ではなく、個別の部品番号を把握した単品で揃えました。
その中で一つ気になっていたのが、事前に供給状況がいまいち良く分からなかったE07A用クランクシャフトのリアオイルシール。
オリジナル品番である91214-679-024はネット上で十年程前から入手困難の噂が出ていた痕跡があり、パーツリストサイトを覗いても複数サイトで廃止扱い、代替品の案内が無い状態になっています。
しかし、エンジンOH需要もまだまだ旺盛なはずのビート界隈でそんな騒ぎになっていた印象もありません。
純正品製造元のNOKでは、回転軸用の汎用オイルシールとしてE07A用と同寸の物がラインナップされているのでどうにかなるだろうとは思っていましたが、一応ホンダディーラーにオリジナル品番で確認してみたところ…

「鈴鹿に在庫あるよ」(2026年3月時点)とあっさり。
ところが2026年4月に実際に受け取った部品は91214-PE9-004で、しかもありがたい事にしれっと見積金額よりも安くなっていました。

そしてこの品番で改めて調べてみると、とうの昔に91214-679-024から品番変更されていた物のようで、どうりで騒ぎにならない訳です。
交換作業は整備工場での車検時に一緒に頼みましたがマッチングのトラブルも無く、実走してのクラッチフィールも想像以上に良かったです。


とにかくクラッチの切れが鋭く、シフト操作のタイミングまでがかなり変わってくる感じ。
裏を返せばビート純正の長すぎる半クラ領域が一気に短くなるものの、繋ぎづらさは全く無く、半クラ操作自体は数分で慣れるレベルです。
むしろアクティ純正カバーの程よい重さと相まって非常に小気味良く、個人的にはこの流用クラッチの方がよほどビートのキャラクターに合っているとすら感じている程。
ただ、これまで切れ不良からのシフトダウンミスで相当な回数肝を冷やしていた事もあってか、無意識にクラッチペダルを床まで踏みつけてしまう癖がなかなか抜けないのが今の困り事でしょうか。
プロサービスさんの12mm厚のペダルストッパーも装着してみたものの、恐らく純正クラッチの半クラ領域が前提と思われるそれでは全く足りない半クラ領域の短さに、残念ながらあまり効果を得られませんでした。
とは言え、フィーリングに関しては個人的には◎。
あとはダンパースプリング周りがどのくらい持ってくれるかが寿命のカギになってくると思いますが、こればかりは距離を走っていくしかありません。
さて、この流用クラッチにおいて気になるのがアクティ純正カバーの圧着力。
ネット上では、「アクティ用クラッチは弱い」とする言説を一部で見かけます。
三菱車であればこういった部品スペックは販売店用の公式資料に詳細に書かれている事が多く、ある程度型落ちになった車種であれば資料の中古流通も多いので情報収集は比較的容易なのですが、ホンダはあまり公表していないのか私が知らないだけか、公式の設定数値も現物での相対比較数値も見た事が無く、真相は正直知りません。
ただ「アクティの方が弱い説」も、比較対象の年式、グレード、品番、ビート用との相対値等の具体的な情報や根拠が示されている訳ではなく、単にスポーツカーと貨物車のイメージから語られているような話に思えてなりません。
そこで、簡単に拾える客観的な情報から推測するならば…
ビートと新規格アクティ(E07Z)ではエンジンの最大トルクこそ大差ありません。
しかし、22300-PFE-901のクラッチカバーが適用されるアクティ系最重量モデルはバンの4WDやバモスホビオの4WDで、その車両総重量は実に1.4t超。
車両総重量870kgのビートに対し500kg以上重くなるこの条件下では、エンジンと駆動系との回転数同期に時間が掛かり(半クラ時間が長い)、摩擦と熱的な負荷が大きくなります。
これに対してカバーの圧着力を高めてなるべく半クラ時間を短く抑え、クラッチの大径化も併せて伝達力に余裕をもっておく事で熱での摩擦力低下対策等が施されていると考えられるので、新規格アクティ系4WDには相応の強力なクラッチが奢られていると見るのが自然です。
一方ビート純正クラッチは、エンジンレスポンスやミッション側シンクロの機能を損なわないよう、なるべく回転慣性の小さな小径クラッチに必要充分な伝達能力は持たせつつも、高回転仕様エンジンの高速回転そのものと、高回転シフトによるクラッチミートのインパクトに耐えられるバースト耐性を重視されていたのではないかと考えられます。
なので、少なくとも22300-PFE-901の流用においてはビート純正より伝達能力が下がるという事は考えづらく、かと言ってあくまで純正カバーなので過度に強力なダイヤフラムでもなく、トルク容量は微増するものと考えて良いのではないかというのが個人的見解です。
加えて今回使用したディスクはエクセディのウルトラファイバーですので、バースト耐性も純正に劣るという事は無いでしょうから、流用部品の寄せ集めなのにむしろストリート向けのスポーツクラッチとしてかなり良い塩梅になっているのではないかと思います。
以下は余談。
これはヘビー級車両のやや極端な事例ですが、下は10年程前に友人所有のランクル100のフライホイール修正と、クラッチセンタリングツールを作った時の画像。

バーストによってフェーシング材が完全に吹っ飛んだ後のセンタープレートが転がっています。
正規には存在しない2UZのMT車というファンキーな車で、恐らくトルク容量的には問題無いはずのオーストラリア仕様のクラッチディスクが木っ端微塵に粉砕し、その凄まじい負荷と衝撃を物語っています。
クラッチバーストと言うとスポーツカーでの競技走行で起きるイメージがありますが、ランクルのような超重量級マシンでは負荷が大きすぎて、乗り方次第でストリートでもブッ飛んでしまう、ある意味ヘタなスポーツカーよりも余程ヘビーデューティなクラッチが必要だという好例ではないかと思います。