ここまで来るのに本当に長いこと掛かりましたが、やっとミニカをオールペンしました。
これを漠然と考えるようになったのは2010年頃からだったと思いますが、常日頃小さなメンテが尽きないこの車そのものと、オールペンという相場が有って無いような作業に対して想定すべき費用の目安が分からなかった為、なかなか煮え切らず長く温める状態になっていました。
色が落ちたって普通に走れますし、車体のどこぞが朽ちている訳ではないので車検に影響するでもなく、棚上げ状態になってしまうのもやむを得なかったのですが、ここ2~3年で劣化が一気に進み、気が付けばルーフはまるで日本刀の刃文のように禿げ散らかし、
ボンネットは塗装下からの浮き錆。
こちらは恐らく裏骨とアウターパネルの間を支える充填剤が劣化した部分から貫通していると思われます。
こうなってはワックスを掛けても気休めにもならないどころか、むしろ拭き上げでガンガン落ちていく塗色にため息をつくばかり。
もういい加減腹を括ろう、と言うことで、2018年の10月初旬にようやくの板金屋さんへの入庫となりました。
そして、この日のためにストックしていた外装品も全力投入していきます。
…何とまあ、このH20系前期NA車用ボンネットと、アイビーグリーンM(G47)色の左右ドアアウターハンドルは奇跡的にも2017年春の時点でメーカー在庫が残っていたんです。
特にボンネットは、当時物の板金修正に金を掛けた挙げ句に錆再発→再修理…というイタチごっこになる最悪の展開を排除できる最善の方法ですから、部品商から「三菱にラス1の在庫有り」という返答を聞いた瞬間に迷う事なく即決でした。
ただ、さすがにありとあらゆる関連部品をストック出来ていた訳ではなく、中には確実に分解交換を前提としなければならないであろう部品が既にメーカー欠品で入手不可だったり、また実際に作業を開始しないと分からないダメージ等、性質的にレストアに近い要素もあったため、必要日数・工数・金額は全て未定という恐怖のスタートです。
まずは少なくとも、ルーフは総剥離しなければならない事は素人目にも分かりきっていたことですが
今回、未入手かつメーカー欠品になっていたパーツの中にフロントガラスのアッパーモールが含まれており、ここが作業前から一番の心配事となっていた箇所でした。
それ以外のルーフ・フロントサイドモールとリアガラスモールは2010年にバックオーダー待ちをして新品を用意していたのですが、当時はフロントのアッパーモール脱着の必要性は認識しておらず、ルーフの状態の悪さから分解前提だと気づく頃には時すでに遅しとなってしまっていたのです。
しかしあれほどまで傷んでしまったルーフを、前側だけモールを外さずに作業するのはやはりいろいろと望ましくないとの事で、旧車・珍車の扱いに慣れたベテランのガラス屋さんを指名して、再利用出来るよう相当ご苦労いただいて外していただいたようでした。
その他、ウェザーストリップの単品クリップ等、分解時要交換の部品も新品供給のある物はできる限り分解し、大きな部分でメーカー欠品により分解できなかった部品は水切りモールぐらいでしょうか。
当の水切りモールは何年か前に先走って両側交換していたため経年劣化の面では交換の必要が無く、塗装作業においてもルーフに比べればまだやりようがあるとの事で先には進めそうでしたが…
今となっては「何故保管しておこうとせず、その場で交換してしまったのか」と。
ホント、後悔というのは先には立たないものです。
お次の問題は左サイドシルの損傷と、ジャッキポイント全箇所の潰れ。
写真では分かりづらいですが、左サイドシルの中程が大きくへこんでいます。
これはかつておふくろが縁石に乗り上げて潰したもので、今回の再塗装作業にあたっても入庫当初はコストの兼ね合いで修復せず無視する旨を伝えていました。
が、いざ蓋を開けてみるとピンポイントのへこみだけでなく、サイドシル全体が弓反りして歪んでおりエアロパーツの立て付けにも影響が出ているので、折角ならば朽ちかけたジャッキポイント共々修復してはどうかとの事。
…何かもう、ちょっとした事故車の修理でもしていると言うか、だんだん毒を食らわば皿までと言う気分になってきます。
ボディもフロアも錆穴だらけになっているポンコツを起こすような次元に比べたら遙かに程度は軽いでしょうが、ボディ側面のほぼ全体に板金が必要なほどの無数のへこみに始まり、1990年11月の納車から丸28年分のカスダメが蓄積した車体は予算に対する現実を容赦無く突き付けてくるので、精神的プレッシャーはかなりの物です。
そしてサイドシル修復のついで、職人さんのこだわりで追加されていたのがダンガン純正サイドステップ固定用のスクリューグロメット。
これまでサイドステップは手っ取り早くタッピングビスで直止めしていたのですが、錆の発生が懸念されるとの事で左右とも本来のエアロ装着車と同様にグロメットを介して付けられるように加工されています。
また、直止めでは走行中の振動でビスが脱落している事も何度かあったので、このグロメット化は地味に重要な加工だったかも知れません。
この他にも何カ所も板金修正が発生し、想定が甘過ぎたと言わざるを得ない手間の掛かる内容となりましたが、その結果は
こんな感じになりました
子供だった28年前の新車当時の姿の記憶は無く、かっこ良くも何ともない”カーチャンの車”になんか関心も無かったので、どうしても自分でステアリングを握るようになったここ十数年のくたびれた姿のイメージがこびりついていて、ふと目をやった瞬間のテッカテカボディの違和感が凄いです。
そして、この比較的地味なダークグリーン色のボディの中から、思った以上に自己主張してくる赤いモール。これがやりたかった。
今でこそ純正で赤いパーツをワンポイントとして取り入れた車種をよく見掛けますが、よもやモールが赤いとは、今見ても斬新というか…奇抜というか…
H20系ミニカの新車販売当時、ルーフ・リアガラスモールはオーソドックスな黒以外にも、特殊カラーの物がメーカーオプション品を含めて数種類ありました。
その中でも、ダンガンZZ系(ターボ車)の更に一部のボディ色車にのみ標準装着されていたのがこの赤モール。
とは言えダンガンのボディ色といったら、赤モール対象色の一つである『ランプブラック/アージェント』を見掛ける事が圧倒的に多いため、このモール自体はさして珍しい物ではなかったのですが、それをウチの車体色である『アイビーグリーン』というマイナー色で再現しようという、実に下らない企てがそもそもの発端でした。
(ダンガンZZのアイビーグリーンも赤モール設定車だったので、ネット上の画像であれば紛れもない本物の姿を見る事もできますが…)
だから2010年の時点でルーフ・リアガラスモールだけを買っていたのも、この赤い部分さえあれば目的は果たせるという安易な認識だったためで、水切りモールを装着してしまった件もしかり、作業の質を考慮して部品を揃えておくなどという認識が全く無かったのです。
…が、実は作業中にまた奇跡が。
前出の懸念材料であったフロントガラスアッパーモールですが、これはあくまで美観目的の化粧部品のため、最悪は表面部分だけでも再利用出来るようにとガラス屋さんに切り取ってもらっていました。
しかしこの道30年になるというベテランでもかなり骨の折れる作業だったそうで、何と、並行して三菱部販には在庫が無かったはずの新品を探索、発見していたというのです。
これで当初の不安が一転、ボディ上部のモールは全て新品を組むことが出来ました。
これらの偶然のおかげで、2018年時点で取り得た手段としてはかなり良い内容で作業が行えたと思います。
これ以上行動が遅れていたら、入手できない部品がもっと増えていたことは想像に難しくありません。
結局、いざやり始めると「この期を逃したら…」という思いに駆られるようにもなるので、悔いの残らないようやり尽くした結果、お値段は…
…この車の、平成2年当時の新車乗り出し価格がこのくらいですよ…。
参考までに、塗装箇所はボンネットとリアゲートは裏表全体、左右ドアの内側は内張りで隠れない部分まで、エンジンルームはラジエーターコアサポート部のみ、室内側は各ドア開口部まで、といった基本的には外側塗装です。
ただあの総額は”塗り”よりも、やはりルーフ剥離やサイドシル修正、その他大規模な板金等、下地のダメージの多さ故であるのは間違いありません。
…これできっと2018年の煩悩は祓えたに違いないですね。