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2011年12月29日 イイね!

F30 新型3シリーズ320d、320i、328iのどれを選ぶか

F30 新型3シリーズ320d、320i、328iのどれを選ぶか来年2月11日(土)には、いよいよ新型3シリーズ、F30が世界同時発売されるが、日本では、オートックワンcarviewwebCGなどに続々と海外試乗記が発表されている「328i」のみの発売となりそうだ。

その数ヶ月後には「320i」も発売となるが、それと同時 この秋※1 に「320d」が日本にもデビューするという噂がある。ヨーロッパでは、ディーゼル乗用車はすでに5割を超えているという。東京モーターショーには「X5 xDrive35d」(本国では「30d」)が展示されたが、「320d」の日本発売こそが、BMWのディーゼル導入の目玉となることは間違いない。

(※1 まだBMW Japanによる正式発表はないが、2012年10月頃に日本発売という情報がある。)

そこで今回は、同じ3シリーズと言っても、それぞれ独特に個性の異なる「320d」、「320i」、「328i」を比べ、特に、最高出力が同じ135kW(184ps)となる「320d」と「320i」の違いを見ながら、これら三車種のどれを選ぶかを考えてみたい。

主要諸元 320d 320i 328i
サイズ 全長×全幅×全高 = 4,625×1,800×1,440mm (全幅は日本仕様車)
ホイールベース 2,810mm
トレッド1,530(前) / 1,570mm(後) 1,520(前) / 1,560mm(後)
タンク容量 57L 60L
車両車重 1,505kg1,500kg 1,560kg
エンジン 直列4気筒ディーゼルDOHCターボ (N47D20異種型) 直列4気筒ガソリンDOHC ターボ (N20B20B) 同左 (N20B20A)
総排気量 1,995cc 1,997cc
内径/行程 84.0 / 90.0mm 84.0 / 90.1mm
圧縮比 16.5 : 1 11.0 : 1 10.0 : 1
最大出力 135kW〔184ps〕/4,000rpm 135kW〔184ps〕/5,000rpm 180kW〔245ps〕/5,000rpm
最大トルク 380Nm〔38.7kgm〕/1,750-2,750rpm 270Nm〔27.5kgm〕/1,250-4,500rpm 350Nm〔35.7kgm〕/1,250-4,800rpm
ギア 8速AT
変速比 1速~後退 = 4.714/3.143/2.106/1.667/1.285/1.000/0.839/0.667/3.295
ファイナルギア 2.813 3.154
P/Wレシオ 8.18kg/ps 8.15kg/ps 6.37kg/ps
加速 7.6sec (0-100km/h) 6.1sec (同左)
燃費 4.4-4.5l/100km = 22.7-22.2km/l 6.0-6.2l/100km = 16.7-16.1km/l 6.3l/100km = 15.9km/l
走行費 5.5-5.6\/km (124.4\/l) 9.3-9.6\/km (154.4\/l) 9.7\/km (同左)
CO2量 117-118g/km 139-144g/km 147g/km
減税・補助
予想価格 510 470万円 450万円 570万円

上の表を細かく読み取るまでもなく、タイトル画像のdyno(出力特性)グラフをチラ見しただけで、「328i」の圧倒的優位は明らかだ。その短所はと言えば、燃費、走行費、CO2排出量、減税・補助、そして価格だけで、つまり、「328i」は動力性能は最も優れるが、経済性・環境性は最も劣る、ということになる。

けれどももちろん、経済性や環境性が切実な問題であることは、改めて言うまでもない。標準装備が多少豊かであったとしても、「328i」の 予想価格「560 価格「570万円」は本体のみのベース価格だから、これにM-Sportパッケージや19インチ・ホイール、それにヘッドアップ・ディスプレイなんてオプションも欲しい…などと考え出したら、ため息混じりのCO2と価格はどんどん上がっていく。

そこで出番を迎えるのが、耳慣れた「320i」と、新たで未知の領域を含んだ「320d」である。そもそも、BMWのディーゼル乗用車とはどんな車で、ガソリン乗用車とはどのように違うのだろうか。それを考える一つの手段として、下のようなdynoグラフを作ってみた。タイトル画像の一部を拡大して、さらに比較のために愛車120iカブリオレのエンジン(現行のE90/91/92-320iの前期型と同じN46B20B)のデータも加えた。



このグラフを見て、皆さんはどう思われるだろうか。

「やっぱりディーゼルは回転数が低いから面白くないなぁ」 =上限が4,000回転しかない…
「だけど最初はトルクもパワーも328iより上だなぁ」 =常用域の2,000~3,000回転までが凄い!
「新しいガソリン・ターボは古いNAに比べると随分進歩したなぁ」 =320iが最も自然で楽しい?
「だけどガソリンでも5,000回転で頭打ちじゃ面白くないなぁ」 =ターボ・エンジンのデメリット…
 (※ カタログ値では上限5,000回転だが、レブリミットは6,400回転とみなしてグラフを描いた)
「やっぱり変なオプションを削ってもパワーの328iだな」 =最高の4気筒ターボが欲しい!

私はこんなことを考えながら、じっとグラフに見入ってしまう。

しかし、以前も書いたことがあるが、「エンジン音や加速感さえ良ければ、ドライバーの感覚にとって、エンジン回転数は絶対値ではなく、拡大や縮小が可能な相対値に過ぎない」という思いがある。具体的に言えば、「320d」の赤ラインは、運転の感覚上そのまま右に1,000回転くらいは引き伸ばせるし、そうすることで「320i」を大きくしのぐトルクの分だけ、「320d」が優位に立つのではないか、と思うのだ。

「320d」のメリットは他にもある。ちょうど「328i」に勝っていた「経済性・環境性」が、同じように「320i」に対しても勝っている。特に優れた燃費と、軽油・ガソリンの価格差が重なる「走行費」の差は二倍に近い。また、優れた環境性能によって、「減税・補助」はおそらく最大となるだろう。ディーゼル車は、エンジンや機構の複雑化のために「予想価格」が「320i」より高いが、「減税・補助」によって価格差は相殺されると思われる。ため息も減って、排出ガスとともに環境にも優しいというものだ。

現代のディーゼル・エンジンは、特にBMWの技術(CM動画)によって、騒音や振動、排気などの欠点が最小限に抑えられている。停車中やアクセルを踏み込んだ時のエンジン音にはいくらか難はあるが、そのデメリットを抑えて余りあるメリットに満ちているのではないか…そう考えることで、この「320d」という、日本には新たで未知の存在を歓迎したいと思う。


※ その後試乗した、F30-328iのインプレはこちら、320iのインプレは こちら 、320dのインプレは こちら


※ 1/15追記 … RANちゃんさんの資料提供、kuribaaさんのご要望により、BMWの最近の2リッター4気筒ディーゼル・ターボエンジン搭載車6種のグラフを追加した。比較参照のために、ガソリン・エンジン搭載車3種(モノクロのライン)も描き加えた。


グラフの「M47D20」エンジンは、正確には「M47TU2 D20」(出典はこのサイト)。最大出力は120kW(163ps)/4,000rpm、最大トルク340Nm(34.7kgm)/2,000rpmで、グラフ凡例の「M47-320d」つまりE90/91-320d(2005~2008)の他にも、E87-120d(2004~2007)、E60/61-520d(2005~2007)などに搭載された。現行の「N47D20」型の先代にあたる。

これ以外の5つのカラー・ラインは、すべて「N47D20」のバリュエーションだ。これだけ出力が異なるのは、「123d」以上がツイン・ターボ、「320d」以下がシングル・ターボのツイン・パワーという機構の差による。ここで言う「ツイン」とは、低回転域と高回転域の2ステージを指しているが、グラフをよく見ると、やはりツイン・ターボはそれぞれのステージでの働き方が明瞭だ。なお、ALPINAの「D3BiTurbo」と重なる実力を持つ「525d」のエンジンは、つい最近、F20型125dにも積まれると報道された。おそらくF30型3シリーズにも採用されるだろう。日本での発売を期待したい。
* 「X3-20d」は旧型E83のもので、新型F25には、グラフ中の「320d」と同じエンジンが積まれている。


※ 1/30および4/9および6/6追記 … BMW Japanのサイトに新型3シリーズ(320i、328i)の詳細が掲載された。その内容に従って上記表の一部を修正した。
Posted at 2011/12/29 23:59:05 | コメント(21) | トラックバック(0) | F30/31 3シリーズ | クルマ
2011年12月18日 イイね!

F30 新型3シリーズのサイズ変更について

F30 新型3シリーズのサイズ変更について期待される新型の3シリーズ、F30の世界同時発売まで、はやくも二ヶ月を切った。WEB上でも評論家の試乗記が見られるようになったが、中でも島下泰久氏の書かれたものはとても面白かった。

詳細はリンク先を読んでいただければわかるが、特に私の興味を惹いたのは
「(F30の)ホイールベースは(F30の)トレッドの拡大に合わせてスタビリティ(安定性)確保のために(E90よりも)50mm伸ばした」(カッコ内は私が補足)
という、島下さんがBMWエンジニアから取ったコメントだ。

そこで、まずは改めて新旧3シリーズの各部サイズ(ディメンション)と、それらの差異を確認したい。

[F30 次期3シリーズ]
全長×全幅×全高:4,624mm×1,811mm×1,429mm
ホイールベース:2,810mm
トレッド(前/後):1,531mm/1,572mm (328i、335i)

[E90 現行3シリーズ]
全長×全幅×全高:4,540mm×1,800mm×1,425mm
ホイールベース:2,760mm
トレッド(前/後):1,500mm/1,530mm (325i、335i)

[E90をもとにしたF30ディメンションの拡大量
全長、全幅、全高:+84mm、+11mm、+4mm
ホイールベース:+50mm
トレッド(前、後):+31mm、+42mm

言うまでもなく「ホイールベース」とは、前輪の中心から後輪の中心までの長さのこと、「トレッド」とは、左タイヤの中心から右タイヤの中心までの幅のことである。そして一般に、この二つの長さは車両の挙動を決める大きな要素と言われている。つまり、ホイールベースが長いと前後の揺れ(ピッチング)や蛇行(ヨーイング)が抑えられて直進安定性が優れ、トレッドが広いと左右の揺れ(ローリング)が抑えられて旋回安定性が優れた車となる。

さて、先のエンジニアの言葉にあった「トレッドの拡大」とは、前後それぞれ31mm、42mmも幅広くなったことを指している。これは現行の後期型3シリーズとの差だが、前期型との差はさらに大きく、特にリアは57mmにもなる。それに比べれば、50mmというホイールベースの拡大自体は、そう大きな数値にも感じられなくなるが、ここで問題にしたいのは、その理由が「トレッドの拡大に合わせてスタビリティ確保のため」だ、ということだ。

車を便利な道具としか見ない昨今の風潮のもとでは、ホイールベースの拡大の理由は居住性の確保に尽きる。ところがBMWのエンジニアには、居住性の優先順位は低いようだ。

第一に、旋回安定性をさらに向上させること。第二に、そのために直進安定性が損なわれないこと。そんなエンジニアの言葉を聞いただけでも、F30、新型3シリーズの「走る、曲がる、停まる」快感の大きさは、容易に想像が付く。


※ 12/23追記 …
車 種ホイールベーストレッド平均比率面積順 
F20・1er2,690mm1,537.5mm1.74966
E88・1er2,660mm1,497.5mm1.77639
E87・1er2,660mm1,490mm1.785210
F30・3er2,810mm1,551.5mm1.81123
E30・3er2,570mm1,410mm1.822712
E90・3er2,760mm1,507.5mm1.83085
E60・5er2,890mm1,570mm1.84082
F10・5er2,970mm1,612.5mm1.84191
E46・3er2,725mm1,475mm1.84758
E39・5er2,830mm1,515mm1.86804
E34・5er2,765mm1,477.5mm1.87147
E36・3er2,700mm1,415mm1.908111
皆さんへのレスの中で、歴代1・3・5シリーズ各車種のディメンションを調べ直した。特にRANちゃんさんからは「ホイールベースとトレッドの比率」の比較を促すコメントをいただいた。そこで改めて「トレッドを1とした場合のホイールベースの比」を調べ、各車種をその逆順で並べ直したものが左の表である。

この表からは、おおむね、1・3・5シリーズの順で、しかも新しい車種ほど、ホイールベース比が低いこと、つまり直進安定性よりも旋回安定性が重視されていることがわかる。ちなみに、2シーターのE89Z4は「1.6254」で、いわゆる「スポーツ・カー」の比率となる。

なお、「ホイールベース×トレッド」の値を「面積」として、その順位も記した。F30は、ついにE39の5シリーズを抜いたことがわかる。また、F20の大きさも注目に値する。
Posted at 2011/12/18 01:52:18 | コメント(16) | トラックバック(0) | F30/31 3シリーズ | クルマ
2011年12月15日 イイね!

BMWヘッドアップ・ディスプレイ

BMWヘッドアップ・ディスプレイM6カブリオレに試乗した時、とても面白くて印象深かったものの一つが、ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)だった。先代5シリーズでは、確か530i以上で初めてオプション注文できるような、贅沢な装備だった。

それがついに、次期型F30の3シリーズでも選べるようになりそうだ。そこで今回は、BMWのプレス・リリースに掲載された英文解説を、意訳してみた。

BMWヘッドアップ・ディスプレイ:ジェット戦闘機に装備されるほどの精度。このシステムは、はじめ航空機用に開発されたが、現在では安全運転のために大きく貢献している。

ーロファイター・ジェット戦闘機のコックピットの中では、時速約800キロメートルもの丘陵地形上の低空飛行は、軍のほとんどのパイロットたちにとって最も厳しい訓練である。
「わずか木の梢の上ほどの高さを、ほぼ毎秒220メートルの速度で飛行するような時には、唯一非常に正確なヘッドアップ・ディスプレイの技術だけが、必要な心の平静を与えてくれる。」
航空機技術・耐空センターのテスト・パイロットを務めるロバート・ヒールル中佐は、そうコメントする。

ロントパネルのプロジェクターによって、飛行管理システムからのあらゆるフライト関連データはもちろん、ミッションに重要な信号や情報も、コックピット内に垂直に置かれたパネルに表示される。パイロットの不注意を防ぐために、すべての情報は、可視範囲内の目の高さに仮想フォームで表示され、それによってパイロットとマシン双方の集中、統率と安全性は最高度に保証される。


BMWは、ヘッドアップ・ディスプレイの技術――はじめ航空機に装備され、その後数十年以上にわたって開発され続けてきたシステム――を、量産車用に採用した、最初のヨーロッパ車ビルダーだ。2004年1月以来、この革新的なドライバー支援システムは、BMW5シリーズに提供されるBMWコネクテッド・ドライブの不可欠な一部となっている。さらなる開発と最適化の継続によって、今やそれは、フルカラー・ヘッドアップ・ディスプレイとなり、ほぼ全シリーズのオプション装備として利用可能となった。

のグラフィックの表現性、機能性、そして柔軟性の面では、この独自で新しいヘッドアップ・ディスプレイ機能は、ドライバーに関わる情報を、その可視範囲内に高品質の解像度で表示し、ドライバーが道路から目を離す必要がなくなることで、アクティブ・セーフティに多大に寄与する。その安全面での大きな恩恵に関して、研究者は次のように言う。
「普通のドライバーは、インストルメント・パネル内のスピード・メーターを見たり、ナビゲーション装置を一瞥するのに、丸一秒はかかる。そのような、ドライバーの注意がおろそかな間、つまり目が道路に向いていない間に、街中を時速50キロで走行していれば、車両の移動距離は約14メートルにも及ぶ。それは事実上の〈無視界飛行〉だ。」

ッドアップ・ディスプレイによって、情報を得るためにドライバーが要する時間は、半分以下に減少する。集中力の注がれた運転に対する、決定的な貢献を生み出すシステムだ。フロントガラスに投影された仮想イメージは、ボンネット上の目の高さに、あたかも「浮かび上がる」ように知覚され、しかもそれはドライバーにしか見えない。また、このディスプレイ方式はほとんど疲れない。目の焦点を、近距離と遠景の間で変え続ける必要がないからだ。さらにまた、画像の明るさは周囲の光量に完全に調整されるために、瞳の開き具合をその都度が調節する必要もない。

ータの再生は、インストルメント・パネル内部に設置された強烈な光源が、半透明のTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)ディスプレイを照らし出し、特殊形状のミラーを経由して、フロントガラスに画像が転送されることによっておこなわれる。凸形状とガラスの物理的特性のために、フロントガラスをスクリーンとして使用するのは、極めて複雑なプロセスをたどる。フロントガラスでは、光線は普通屈折して二重画像となってしまうからだ。

ーロファイターの場合、この問題は、パイロットの視界に追加パネルを直接設置することで解決される。BMWはこの物理現象に対して、フロントガラスに組み込んだ非常に薄い金属箔により、投影画像の重ね合わせを確実にした結果、完璧で歪みのない表現を獲得したのだ。
フルカラー・ヘッドアップ・ディスプレイは、ドライバーに驚異的な読みやすさを提供する。完全な色のスペクトルは、画像や図像のリアルで、それゆえにより直感的な表示を容易にする。これらは素早く知覚され、読み替えたり判断したりする必要がないほど明らかだ。ユーロファイターのテスト・パイロット、ロバート・ヒールルさえ、非常に感銘を受けている。
「我々のモノクロ・ヘッドアップ・ディスプレイでは、こんなに鮮やかな表示はまったく無理だ。」

             *       *       *       *       *

私がヘッドアップ・ディスプレイに期待する、もう一つの理由がある。私はシートを最大限下げ、同時にステアリングもできるだけ下げるようなドライビング・ポジションが好きなのだ。ところが下げたステアリングによって、スピード・メーターの一部が見えなくなってしまう。特に、一般道でも高速道でも重要な、数十キロ~百数十キロの部分がちょうど隠れるのだ。それが嫌で、ステアリングの高さはメーターの可視範囲で決めざるを得ない。ヘッドアップ・ディスプレイがあれば、この問題からも解放されて、身体に自然なステアリング・ポジションを作ることができるようになる。


※ この記事は、【近未来予想】カーナビはヘッドアップディスプレイに表示されるについて書いています。
Posted at 2011/12/15 21:21:19 | コメント(12) | トラックバック(1) | パーツ・整備 | クルマ
2011年12月12日 イイね!

ALPINA D3 BiTurbo のインプレッション

ALPINA D3 BiTurbo のインプレッション先日の「 BMWの8速ATと6速ATを見比べる(2)―320d Efficient Dynamics Edition」という記事に、見知らぬ「RANちゃん」という方から、鋭い怒濤のコメントをいただいて、冷や汗もののレスをタジタジと書いているうちに、「機会がありましたらALPINA D3 Biturboに試乗されますか?」とありがたいお誘いをいただいた。なんとこの方は、日本に150台しかない最新のディーゼル・ターボ・エンジンを積んだ、BMW ALPINA D3 BiTurboのオーナーだったのである。

試乗の機会は(というよりRANちゃんさんは)すぐにやってきた。彼はALPINAという名車に積まれた、ヨーロッパでは名高いBMWのディーゼル・エンジンの優秀さを、こうやって日本全国を行脚(というか長距離走行)して広く知らしめんとする、伝道の師なのである。その証拠に、彼の健脚(というかODOメータ)は、納車二年を経ずしてすでに「9万キロ」になんなんとするのだ。

さらに驚いたことには、彼はやまどり@B3さんという、やはりALPINAのB3 Sにお乗りの方まで引き連れてきた。しかも彼らはみんカラ友達でさえなくて、この時が初対面なのである…さすが伝道師だけあって、RANちゃんさんはただ者ではない。やまどりさんは、E91-325i後期Mspoにお乗りでご近所にお住まいの青波さんを連れてこられ、こうして伝道集会(というかプチ・オフミ)は、皆で運転席を交代してちょうど良い4人でおこなわれることとなった。

前置きが長くなってしまったが、インプレを書く前に、この「ALPINA D3 BiTurbo」という車の特徴を少しだけ確認したい。

左はそのパワー・グラフだ。最大出力は157kW(214ps)/4100rpm、最大トルクは450Nm(45.9kgm)/2000-2500rpmで、理由は後に述べるが、グラフにはトルクの厚い部分を赤のグラデーションで示した。

「BiTurbo(ビ・ターボ、バイ・ターボ)」とは、小型のターボ・チャージャーを2個装備する、という意味である。緑ラインがそれで、青ラインのシングル・ターボのD3と対照できる(この二つのエンジンの詳しい解説はRANちゃんさんの記事を参照)。緑ラインは低回転トルクの立ち上がりが早く、実際の所、出足が軽快でとても扱いやすい。

下のグラフは例の通り、この車の6速AT各ギアごとの、エンジン回転数と速度の関係を表したものだ。これも同じように、トルクの厚い部分を赤のグラデーションで示してある。面白いことに各速のギア比は、6速AT版の1・3シリーズなどと共通だが、ファイナルギア比だけは、新しい8速AT版と同じとなっている。



最初は高速道路を走った。かねて聞いていたように、下からの太いトルクでグングン加速していく。しかも、中高速域からの加速も同じように力強くて衰えがなく、どこまでも伸びていくように感じる。214psといえば、ほぼ325iクラスのパワーだが、45.9kgmものトルクの方は335iさえ軽く上回っている(実はRANちゃん号は謎の改造によってさらにパワーがある)。途中覆面らしき車を軽く追越し、すかさず左車線に戻ってからの余裕のトレイン走行を支えたのは、効きの良いエンジン・ブレーキとALPINAの軽快な足だった。

しかし高速を降りて、川沿いのくねった道を走った時に、この車の真の姿が現れ始めた。何があっても不思議ではないような、細く続く見通しの良くないカーブでは、次の瞬間に備えた慎重なアクセル・ワークが必須だ。ところがこの車はすべてが軽いのである。ステアリングも減速も加速も軽い。「前輪にグッと荷重移動してハンドルを回して…」などと考える余地がない。スイッスイッと走りながら、いつでも避けたり停まったりできる、というような安心感がある。こういう「良い軽さ」というものは、ほとんど体験したことがない気持ちよさで、思わず笑みがこぼれてしまう。

昼食を挟んで、また同じような道を走った。伝道集会のハプニングを期待するかのように、慌ただしい師走の路地にひっそりと潜む白黒ツートンの車に流し目を送りつつ、今度はRANちゃん師の教えに従って、「3,000回転まで」と「3速キープ」を意識して走ったら、この「ALPINA D3 BiTurbo」という車は、また新たな貌を見せ始めた。今日の試乗インプレッションに、上のようなグラフを付けたくなった理由がそれだ。

低速からの豊富なトルクは、いたずらな回転数やギア・チェンジを必要としないのだ。「3速」の有効幅がきわめて広く、しかも速くて静かだ。たぶん、この感覚はガソリン・エンジンには求められないものだろう。日頃エンジンを回して力を稼ぎ出していた自分の運転が、この本来優雅な車を、いかにギクシャクと動かしていたかを痛感した。そんな意識はまったくなかったのに、まるでそれまでの自分が粗野な乱暴者だったように思えてくる。

もっとも、それが「ALPINA」という車の手口なのかもしれない。オスカー・ワイルドの「自分の好みは最も単純なもの」、「常に最高のもの」という言葉を引用しながら、この「高性能車をそれにふさわしい技術的感性、注意、および責任感をもって操縦」することをユーザーに求める、創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンのプライドに満ちた署名を見るにつけても、仮に、F30の3シリーズにラインナップされたディーゼル車を試乗したとしても、今日と同じような感動が味わえるとは限らない、と思わないわけにはいかない。だからこそ、見果てぬ夢を追い求めて、今日も、そして明日もまた、妖しく不思議な「車」の世界の奥に分け入っていくのだけれど。

最後になりましたが、お仕事の合間の忙しい時間を削って、こちらまでお出でいただいたRANちゃんさん、場所も時間も決まっていたオフ会にお付き合いいただいた、やまどりさん、青波さん、どうもありがとうございました。


※ 12/14追記 … フォトギャラリーに当日の参加車両写真を掲載。
Posted at 2011/12/12 02:25:18 | コメント(22) | トラックバック(0) | 試乗 | クルマ

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「[整備] #ケイマン 2024/7/12:12ヶ月法定点検:走行距離 9,593km https://minkara.carview.co.jp/userid/224462/car/2612759/7865831/note.aspx
何シテル?   07/14 02:42
Porsche Cayman GT4に乗っています。他にBMW320dツーリング(G21)が妻の車です。 ハンドルネームの「スパグラ」は、初めてのBMW車...
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