
自験の「実録」を「どぶろっく」バージョンでご紹介します。
靖国神社の脇を抜け、皇居のお堀を右手に見ながら、九段下に向かう長い下り坂を歩いていると、直ぐに、何の日なのかが分かりました。道中に、白スーツやリーゼント姿が溢れかえっていたのです。武道館への入場を待つ熱心なファンの方々でした。念のため、自分の目で答え合わせをすると、所持しているタオルに、派手な「YAZAWA」の文字がありました。公道でも割と頻繁に見かけるステッカーだらけの車の、あのデザインです。
75歳になられたそうですが、いまだに武道館や東京ドームでの公演が盛況のようで、素晴らしいと思います。
これまで、私の交友関係で熱烈な矢沢永吉ファンと出会ったことがなく、矢沢氏の音楽に関しては、人並みにしか分かりません。ところが、特定の条件が整うと、ある曲が、脳内のスピーカーでBGMとなって流れ続けます。――そうそう、この感覚だよ。きた、きた、この感覚だよね、という具合に自問自答します。
やがて、一歩引いた位置から見つめている冷静な自分が、最終段階へと進みます。――浸っちゃえよ。歌の主人公になりきっちゃえよ。
すると、ウルトラマンがスペシウム光線を繰り出す直前に見せる躊躇のような動きが、心の中で生じます。あるいは、宇宙戦艦ヤマトが艦首波動砲を発射する直前に生まれる静粛のようでもあります。
コンマ数秒くらいの迷いに過ぎません。自らの意思で冷静さを捨て、刹那の出来事になると分かっていながら、歌の世界観に浸ることを受容するのです。
1978年、山川啓介作詞による共作で、かなり古い作品なのですが、これほど自分と一体化できる音楽は貴重だと思っています。握手であったり、ごく簡単な会話だったり、数年に一度訪れる彼女との「えっ見」の場です。これが、最後の機会になるかもしれないという強い覚悟を背負い、その名曲をかみしめながら、歩みを進めていきます。自分の番が近づき、目の前で、この世のものとは思えない美しさを誇る、あの方が微笑んでいます。
――幻で構わない。時間よ、止まれ。生命の、めまいの中で。
実録は、以上です。
ここで、「どぶろっく」師匠の登場です。
――もしかしてだけど、桃子のほうも本気だから、生命がめまいを起こすほどになるんじゃないの~。
夏の日の恋なんて、
幻と笑いながら、
このひとに賭ける。
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2025/06/06 07:48:37