川崎市内を走行中、沿道のヤマトの営業所にこの車がいるのが見えた時は、遠目だったこともあり、一瞬本気でトランジット?かと錯覚しました。近くの量販店の駐車場にフィエスタを停めて見に行ったところ、さすがにトランジットではなかったものの、それは見慣れないバンでした。キャブオーバーでなくボンネットが突き出した外形と、特にヘッドランプやグリル・バンパー周辺の造形が、2013年頃のV408トランジット・コネクトの印象とダブって見えたんですね。
(写真はWiki.掲載のものを借用)
その場で調べたら、ヤマトが首都圏の営業所を中心に昨年から導入を開始した、ストリートスクーター社のEVバンでした。ストリートスクーター社はドイツのEVベンチャーで、ドイツポストなど欧州の物流事業者へ多くのEVを納入した実績がある企業だそうです。日本支社もあって今年の輸入EV見本市にも出展したとか。おそらくヤマトとの関係が生じた関係で、日本にも正式なビジネスの拠点を設けたのでしょう。
ヤマトとの間では、ストリートスクーターのオリジナルEVバンをベースに、宅急便事業に合致した車両の仕様とするべく共同開発が行われたらしく、特に都市圏での配送用途に最適化された内容の車両になっているようです。電池容量なども合理的なレベルとすることでコストを抑制しているとのこと。ちょっと驚いたのは、実車を前にすると案外小型に映ったのが、実際は車幅が1,830mm程度あるということで、とてもそうは見えなかったですね。ヤマトでよく使われているウオークスルー可能なデリバリーバンと比べると車高も低いので、そこまで大柄には見えなかったようです。
土台がヨーロピアン・バンであっても、日本での宅急便ビジネスの実情に則した使い勝手が随所に盛り込まれた「ジャパン・ヤマト・バージョン」といったところですね。
ドイツのメーカーで、ちょっとトランジットっぽい印象もあったので、もしかするとフォードとの関係も何かあるのでは?と邪推し、後から少し調べたところ、2018年にトランジットをベースとしたDHL向けのストリートスクーターのEVバンが、フォードの工場で生産されていたことがわかりました。当時のフォード発の報道資料によれば、V363トランジットをベースにやはりDHLの配送業務に適したEV化の設計をストリートスクーターが行い、StreetScooter WORK XLの車名で車両生産をフォードが請け負っていました。なるほど、その当時の公式写真を見ると、車両自体のパッと見はトランジットながら、フロントグリルにはブルーオーバルではなくストリートスクーターのロゴが付けられています。
(写真はFord of Europeのプレスフォトを掲載)
おそらくこの協業は、フォードにとっても来たる商用車の電動化推進に向けた足掛かりとする意図があったと思われます。結果としては、使い勝手やコストでまだ当時のディーゼルの牙城を崩すほどではなく、両社間の関係は継続されることなく、車両製造も打ち切られたようです。ちなみに現在フォードではE-トランジットの開発が、2022年の販売開始をめざして急ピッチで進められていますが、そこでは特にストリートスクーターとの関係をうかがわせるものはありません。
あと、私としてはデザインのことが気になるので調べてみました。ストリートスクーターのような規模のベンチャーで自社内にデザイナーを擁しているケースは少ないはずなので、おそらく社外のデザイン事業者が関与していると予想したところ、やはり車両デザインを主な業務とするドイツの専門会社が関わったようです。その会社の代表者であるデザイナーが、もしかするとフォード出身かも?などと期待したのですが、そうではなく、VWでのデザイナーとしてのキャリアがある方でした。
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Posted at
2021/06/30 17:01:00