FLC四日市店では過去のフォード車のカタログやセールスマニュアルを分けていただきましたが、実は販売店に残されているカタログ類は重要な物証ではないかと思うのです。たとえば店に古い車種が入庫してきた際に、当時のその車種の扱いを知ったり、仕様を確かめたりするための資料として役に立つ面があるので、私も今回、本当に譲ってもらって構わないのか?念を押した上で、必要以上に当時の手がかりを全部刈り取ってしまわない程度に受け取らせてもらいました。もちろん、いただいたものは大事な記録資料としてこれからも保管し活用していくつもりです。
往時の物証という意味では、カタログ以上に、販売サイドの思惑や姿勢が直に窺えるのがセールスマニュアルです。私もかつて愛用していたB256フィエスタのセールスマニュアルが入手できたので、そのページをいくつか紹介しながら、フィエスタを当時のフォードジャパンがどのように位置付けていたか振り返ります(注:掲載イメージが多いです)。
B256フィエスタはおそらく、フォードジャパンが初めて女性をメインターゲットと明確に位置付けた輸入車種であったと思います。ターゲットユーザーもまず女性が挙げられ、想定する人物像として「
精神的に豊かなライフスタイルを志向し、自分の感性に素直でシンプルかつスタイリッシュに生きる人です。」とされています。それって一体どんな人よ?とツッコミを入れたくなる、いかにも広告屋さんが描きそうな安直なイメージですが、そういう女性にフィエスタを選んでもらえるよう、不慣れな女性誌などもチェックすることを指示された当時の販売の前線のスタッフさんも戸惑ったことでしょう・・
ちなみに、想定ターゲットとして真っ先に挙げられたのが25〜34歳の独身の女性「
しっかりとした考えを持ち自立する独身OL」ですが、それだけでなく、同程度の年齢層の主婦にもターゲットを定めています。「
娘の送り迎えにも使いたい若奥様」で、「
家庭に入った女性は外出の機会が減るが、スタイルがオシャレで素敵なフィエスタならつい外へ出たくなってしまう」そうな。
もちろん、決して女性ユーザーだけを想定したわけではなく、マニュアルのページには30代の独身男性やリタイア世代の夫婦といった像もターゲットとして示されていますが、それらは次点的な位置付けであり、あくまでも基本は女性・それも比較的若年層の女性に売り込みたい、という姿勢が明らかです。実際に当時のフォードジャパンでは、そうした世代を強く意識したプロモーションを積極的に仕掛けていました。とはいえ投下できる予算に限りがあったフォードジャパンだけに、至ってささやかなレベルでの展開でしたけどね・・女性誌とのタイアップとか、フォードとしては相当頑張っていたなあという記憶はあります。
(フィエスタ発売当初の販促用リーフレット)
ところで、セールスマニュアルの最後のページには、フィエスタの競合他車に対する“強み”が列挙されているので、それも紹介しておきましょう。正直なところ、ここに記されているような各ポイントが、フォードジャパンが描いていたような女性層に対して強く響くようなものであったかというと、かなり疑問です。どちらかといえばやはり、一定程度自動車に関心を備えた男性の方が受け入れやすい内容ではないかと。
結局のところ、B256フィエスタも、もっぱら当時の欧州フォードをめぐるメディア論調に則した方向で評価を受けることとなり、それまで自社のターゲットとして手薄であり、フォードのブランドイメージ向上のためにもなんとしても欲しかった『未開拓ゾーンとしての若年女性』への食い込みは、思惑通りには図れなかったですね。
「
賢い自分の選択」によりフィエスタを選ぶ女性ー
最後は余談です。実は私は、2004年当時にフィエスタが売り出された時に、本当にこの車を自らの選択眼で積極的に選んだ女性が身近にいたら、ぜひ付き合いたいと本気で思っていました。フォードジャパンのセールストークはさておき、私自身は、B256フィエスタの良さを認められるような女性であれば、その価値観や美意識には間違いがないはずだと確信していたのです。若気の至りですな😂あいにく、周辺でそうした女性を知る機会もないままでしたが。
Posted at 2022/08/13 12:51:28 | |
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