
それでは、2GR-FSE V6-3.5L エンジンの素性について掲載したいと思います。
搭載されている現行車種は LEXUS GS450h、LEXUS IS/GS350、CROWN HYBRID、CROWN ATHLETE 3.5、MARK-X 3.5 とかなり多種にわたります。
←これは CROWN ATHLETE +M Supercharger
前身モデルは2GR-FE BEAMS V6-3.5L Dual VVT-i (バンク角60度)で、これの搭載車種はハリヤー、ブレイドマスター等の他、海外仕様ではカムリ、アバロン、など。横置きが前提であり、主としてFFベースの車種に搭載されていました。2008年からはロータスエボラにも供給しています。
2GR-FE は一般的なポート噴射で、D-4S(直噴兼用)は採用されていません。
2GR-FSEが初めて登場したのは2005年、LEXUS GSからで、同年CROWN ATHLETEにも搭載されました。日本では、最近の排ガス規制等との兼合いや、メンテナンスの難しさ(カーボン発生による不具合の頻発)などから、各社とも再びポート噴射型のエンジンに戻したりという現象が起きています。
また、直噴採用メーカーに於いてもポート噴射併用タイプとし、直噴エンジンの燃費のよさを活かしつつ、カーボンの発生を抑えて、不具合の減少を図っているそうです(ノッキングを起こさない程度の燃料を予混合し均質化した空気をシリンダに吸入させ、シリンダー内のインジェクタノズルによって噴射した微量の燃料に点火することによって燃料を完全燃焼させるという方法)。
海外では日本とは逆に、2000年代以降、年々厳しくなる排ガス規制や燃費基準に対応するために、直噴エンジンを採用するメーカーが増えているそうです。
更に、大排気量NAエンジンをやめて小排気量過給器付きエンジンに換装し、パワーと燃費をバランスさせる動きが欧州メーカーを中心に加速しています。際過給器との相性が良く燃費の向上も図ることが出来るのが直噴のメリットで、今後この動きは更に加速すると言われています。
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2GR-FSEベースのチューンドカーの紹介。
【MODELISTA +M スーパーチャージャー】
200系クラウンの登場に伴い、モデリスタから発売になったコンプリートカー、「クラウン・アスリート+M スーパーチャージャー」のエンジン展示画像です。
チューン内容は、3.5L-V6のボア/ストローク、排気量、圧縮比に手は加えず、スーパーチャージャーを付加して最高出力360ps/6400rpm、最大トルク50.8kgm/3200rpmにパワーアップしています。
因みに価格は、3.5アスリートベースモデルで644万5000円、本革シートや電動サンシェード等フル装備の「Gパッケージ」で724万5000円。
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2GR-FSE V6-3.5L Dual VVT-i (D-4S)
上記の2GR-FEエンジン(ポート噴射)に直接燃料噴射(D-4S)を加え、直噴/ポート噴射併用とした世界初の機構を持つエンジン。
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2GR-FSEエンジンのカットモデル。
低中回転域では状況に応じて直噴/ポート噴射を使い分け、高回転域では直噴の燃料気化冷却により、耐ノック特性を改善しながら回転上昇して行きます。
給/排気両側の可変バルブタイミング(デュアルVVT-i)と合わせ、低回転域から広範囲に亘る回転域で高トルクを発生。
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1UR-FSE(V8)のカットモデル(※参考)
大変申し訳ありません、このアングルの2GR-FSE(V6)エンジンの画像が無くて、参考にV8を掲載しております・・・。
2GR-FSE(V6)は新開発のエンジンであり、高回転域での効率を追求した結果、可変吸気システムの無いシンプルな機構になっています。
静かなエンジン故の、新たな問題も有ります。
フリクションロスを徹底的に低減した結果メカノイズが減少、従来エンジンに比べて静かすぎるため、逆にアイドリング時にインジェクターのカチカチ音が目立つようになったと言うのです。然し、少なくともクラハイに実際に乗って走行中は、全く気が付きません。
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2GR-FSEエンジンのカットモデル。
約50気圧~120気圧という高圧ガソリンを、エンジンの圧縮行程でインジェクターから高圧のシリンダー内に噴射し、シリンダー内のスワール旋回流を利用して点火プラグ付近に燃焼可能な混合比の層(成層燃焼)を形成することで、シリンダー内全体としては空燃比20:1から55:1の超希薄燃焼を可能にします。
成層燃焼中は、排気再循環を行っても燃焼状態の悪化がほとんどないため、排気を大量に導入することが可能となり、ポンピングロスの低減に有効とされています。
排気再循環により燃焼温度が低く抑えられ、NOx(窒素酸化物)の排出量が低減されます。
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こちらは上の画像の部分拡大画像です。
2つのマル印がそれぞれポート噴射と筒内直接噴射を行うインジェクターです。
微粒化したガソリンが点火プラグの周辺にのみ存在すれば燃焼が成立し、その周辺の空気はシリンダー壁との断熱や、燃焼時の熱を受けて膨張しピストンを押し下げる役割を果たし、従来の吸気行程に噴射する「ポート噴射」と「予混合燃焼」方式の組み合わせに比べ、熱損失の低減が図られ、結果として省燃費を実現します。
高負荷時は出力空燃比(12:1)付近での燃焼(均質燃焼)へ切り替えて吸入行程でガソリンを噴射します。この際、ガソリンの気化熱によりシリンダー内の吸気が冷却されることで充填効率(酸素濃度)が向上、点火時期の進角が可能となり、高出力が得られます。
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直噴専用の特殊形状(皿型)ピストン(赤丸印)。
(※右側の黒いピストンは一般ポート噴射用)
高温高圧に耐える、また成層燃焼のため噴霧を最適化した専用のインジェクター、高圧の噴射ポンプ、特殊な形状(皿型)のピストンなどを必要とするため、エンジン全体のコストはアップしています。
現状まだ残る直噴ガソリンエンジンのデメリットは、シリンダー内にガソリンの燃えカスが溜まることです。40:1を超える超希薄燃焼ではすすが発生しやすく、そのすすがインジェクターノズルに付着すると適正な燃料噴射ができなくなり、更にすすが発生しやすくなるという悪循環が発生します。
新型のエンジンでは、ピストントップと燃焼室形状の最適化や、インジェクターの改良、フィードバック制御の高度化などによってかなりこの症状を抑えられているそうですが、完全では有りません。
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クラウンハイブリッドの排気フィニッシャー。
(黒いすすで汚れているのが解りますか?)
シリンダー筒内で混合気を作り出す為、ポート噴射エンジン以上に霧化が難しい事から高圧多孔インジェクターで強制的に霧化させます。
ポート噴射エンジンでは吸気負圧で霧化が促進されます。でも直噴の場合は負圧の発生がほぼ終了した圧縮行程の下死点~上死点間で燃料を噴射する為に霧化が促進されず、急にアクセルを踏み込んだ際などは燃料過多の不完全燃焼(リッチバーン)となり黒煙が出るという問題が残っています。
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愛車紹介あれこれ | クルマ
Posted at
2010/09/08 15:39:32
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