
ユーザーレポート;峠のワインディング、その走りは・・・?
2010年2月、200系クラウンはマイナーチェンジを行い、現行クラウンハイブリッドはロイヤルサルーンをベースとしたデザインに変更されました。
この時、変更前と変更後の両方のモデルを比較して、選んだのがマイナーチェンジ前モデルの最終ロット、我が家のSuper City 号です。
先週、2年半前に納車してから我が家のSuper City 号を初めて、峠のワインディングに持ち込んでその走りを試す事が出来ました!
なので、クラハイ君のユーザーレポートは3回目になりますが、こちらに掲載してみまちた(^ ^;
ちょっと、長い内容になりまつm(_ _)m
クラウンアスリートをベースにしたエクステリア、ハイブリッドモデル専用のフロントマスクとブルークリヤヘッドランプ、同様に淡いブルーのレンズを基調としたリアコンビランプ。
シャシーはゼロクラウンを踏襲し、その上でトレッド幅を拡大、更にルームパーテーションパネルとアッパーバックパネルをレーザー溶接することで、パーテーションパネルの大型一体化を実現し、ボディの変形抑止のためのビード配置を見直すなど、軽量化と捩り剛性向上を図っています。
ドライブトレインは、旧レクサスGS450h用を踏襲。
エンジンはV6-3.5LのD4-S(直噴/ポート噴射併用)を組み込んだ2GR-FSE、最高出力/最大トルクは218kw(296ps)6,400rpm/368Nm(37.5kg・m)/4,800rpm。
ガソリンモデルのクラウンアスリート用は、最高出力/最大トルク232kw(315ps)6,400rpm/377Nm(38.4kg・m)/4,800rpmという高出力ですが、これに吸気バルブの開閉タイミングを調整し、発進時のモーターのみの駆動からエンジン併用走行に移行する際のエンジン始動による震動を低減させると共に、吸気・圧縮の抵抗を低減させる事でエンジンをスムーズに回転させるなどのハイブリッド専用チューニングを施した事により、最高出力を△14kw(19ps)、最大トルクは△9Nm(0.9kg・m)下げています。
このエンジンに、147kw(200ps)5,615~13,000rpm/275Nm(28.0kg・m)0~3,840rpmの出力を持つモーター、この強力なモーターの出力を支えるために駆動用ニッケル水素バッテリーの定格電圧288V(直流)を最大650Vまで高めるためのPCU(DC-DCコンバータ)、エンジンパワーを利用して発電しモーターやバッテリーに電力を供給するジェネレータ、エンジンからの動力を車軸(出力軸)とジェネレータに効率良く振り分ける動力分割機構、モーターの回転を車軸に伝える前に減速し、加えて低速/高速域の2段階の減速比を備えた2段変速式リダクション機構、そして減速・制動時にモーターを発電機として用い、電力を駆動用ニッケル水素バッテリーに回収して再利用する回生協調ブレーキシステム、を組み合わせたのがクラウンハイブリッドのTHS-II(トヨタハイブリットシステムII)です。
旧レクサスGS450hは動力性能、特にその加速力に主眼を置いているのに対し、クラウンハイブリッドは、より回生率を重視して燃費性能向上に軸線を振っています。特に、最終減速比では旧レクサスGS450h が日本国内仕様には3.769を使っているのに対し、クラウンハイブリッドは3.266という高いファイナルを採用しています。つまり、高速走行時にはクラウンハイブリッドのほうがエンジン回転を抑えられることになります。
因みに、アトキンソンサイクル化によって燃費性能を飛躍的に向上させた最新のレクサスGS450hでは、最終減速比が3.266と、クラウンハイブリッドと同じファイナルに換装されており、クラハイ乗りとしては興味深いところです。
そして更にクラウンハイブリッドの室内には、より低いエンジン回転域で走行出来る様になった事の弊害として低騒音がこもる様になったため、これを取り除く目的で、旧レクサスGS450hには装備されていないアクティブノイズコントロールを採用しており、徹底的にエンジンノイズを消す事でクラウンの頂点モデルに相応しい静けさを実現しています。
しかしその結果、これまで他の音に紛れて聞こえなかった、モーターの高周波ノイズや風切り音、タイヤノイズが相対的に目立つ様になっている由。
回生ブレーキと電気制御フットブレーキの制御、スムーズな融合は非常に難しい様で、現行PRIUSとACUAに試乗した限りでは、例のカックンブレーキ症状は完全に解消されていませんでした。新車試乗レポートを拝読する限り、New CAMRY HYBRDのブレーキ機構もこのカックンブレーキ症状を抱えているとの事。
多くのTHS-II搭載モデルにその様な状況が見られるなか、クラウンハイブリットのブレーキは非常に滑らかで、日常的な使い方ではほとんど違和感が無いのは秀逸です。20~25km/h程度の速度域で、特定の下り勾配をブレーキングしながらカーブに進入する際に、回生ブレーキ側がスーっと関与を減衰させるために制動曲線が変わるという点が有って、この時は一度抜力し、再び踏み込むという操作で再び制動力を取り戻すテクニックが必要になります。強くブレーキを踏む場面では、試乗記ではコントロールが難しいと記載されていましたが、マイチェン前最終ロットのクラハイ君の場合、その辺りはCPU制御上の修正がされているのか、感じませんでした。
トヨタのハイブリッドシステムは、前述のエンジンからの動力を車軸(出力軸)とジェネレータに効率良く振り分ける動力分割機構によってエンジンのクランクシャフト、発電機、モーター、ドライブシャフト、デファレンシャルが一直線に繋がっているのが特徴です。
遊星ギヤにより自在にギヤ比を変えられるので、クラッチが無い。発電機部分を逆転させる事で後退が可能なため、バックギヤも有りません。
これによる効能は、巡航状態からの急速加速時にクラッチオンオフによるタイムラグが基本的に無いため、瞬時にダイレクトな加速に移行出来るという点です。
一方、クラッチ機構を有するハイブリッドシステム搭載車、例えば日産FUGA HYBRIDの様に前後二箇所にクラッチを持つクルマは、高速でのコースティングの際にクラッチを切ってエンジンのクランクシャフトとミッション側の縁を絶ってしまうので、エンジン側の大きいフリクションロスをキャンセルした状態で滑走出来る訳です。
クラウンハイブリッドの場合、高速ではどの速度からでもアクセルオフするとエンジン側の燃料供給を停止しますが、クランクシャフトとミッション側は常時機械的に繋がっていて、遊星ギヤ部でフリー状態を造り出して居ます。コースティングはアクセルに足先の力をやや入れて、ハイブリッドシステムインジケーターの指針をCHARGE側から0ギリギリまで持って行く様に調整するテクニックを遣います。アクセルを完全に戻してエネルギー回生をさせるとそれが走行抵抗になる。それを避けるには、回生をしない(メーターの針がチャージ領域に入る直前を維持する)ようにアクセルの戻しぐあいを加減し空走距離を可能な限り伸ばす、という訳です。ですが、この際もかすかにゴリゴリというフリクションを足先、ハンドルを通じて感じ取りながら走っています。そのフリクションで、例えばFUGA HYBRIDと比べて3~4%のパワーロスが有ると言われています。
ハイブリッドシステムスタートスッチを押し、クルマの動力系を目覚めさせたあと、センターフロアコンソールのトランスミッションシフターをDレンジにセット。
Sport Mode を選択すると、TFT液晶画面上のメーターイメージと背景が真っ赤に染まり、PCUが定格288Vのバッテリーからの電圧を、通常は500V迄であるが最大650Vまで昇圧するよう切換え、ステアリングが重くなり、AVS搭載の脚周りはグっと固められます。
完全なエンジン停止状態からブレーキペダルの踏力をリリースし、ゆっくりアクセルに置いた右足先に力を入れて逝きます。
上り坂での通常より多めに力を入れた加速へ移行。25~30km/h程度でV6-3,456ccガソリンエンジンが殆どそれと解らない程度の震動とともに目覚め、極低回転から最大トルクを発生する147kw(200ps)5,615~13,000rpm/275Nm(28.0kg・m)0~3,840rpmの性能を誇る駆動モーターが強力にアシストし、V6エンジン側の出力と単純に合算すれば、総合365kw(496ps)/643Nm(65.5kg・m)の驚異的なパワーで猛烈なダッシュを行います。
Sport Mode で峠を掛け上がる・・・。1,840kgという堂々たる車体を苦も無く超高速に押し上げる実力は、まさにTOP OF THE CROWN 、史上最強のCROWN の名を冠するに相応しい。
このあと、ハイブリッドシステムの動力分割機構は全力加速に際し、V6エンジンにモーターパワーを全て供給し続けます。そのため、見る見るうちにニッケル水素二次バッテリーに蓄えられていた電力は減少して行きます。このような走りでは、アクセルをパーシャル状態に維持しても発電機が走りながら発電している電力を蓄電側に割り振る事は有りません。蓄電作用はアクセルから脚を放し、ブレーキペダルだけを踏んで制動を掛けている時に限定されます。これでは程無く、モーターアシストが終焉を迎え、V6エンジンのパワーだけで走りを支える事になってしまうのです。この状態は、Sport Mode の場合登り坂だけでなく下り坂でも同様である事を、今回初めて知りました。
次に、ゲートシフターのマニュアルモードによるシフトダウン。
コーナーに飛び込んで行く際、V6エンジンの高回転側を維持すべくシフトダウンを行うのは普通の事ですが、クラウンハイブリッドの変速機にはブリッピング機能が有りません。
然し実際操作してみますと、ほとんど震動やストレス(急激な減速など)は発生せずにCPU側がクランクシャフト側とドライブシャフト側を上手に繋いでいるのが解ります。この時も、V6エンジンと発電機、モーターはクラッチ機構が無い事から物理的に全て繋がっている訳ですが、遊星ギヤを組み合わせた動力分割機構が有効に働いて、ブリッピングしないシフトダウンによる減速ショックを極力体感させない様に処理しているのが解ります。このあたりの制御に関してCPU側のプログラミングは大変苦労したのではないかと想像されます。
然し、ここでドライバーは操作上、大きな不安を抱えます。
クラウンハイブリッドのメータークラスタにはタコメータの表示機能は無く、動力系の状況把握はハイブリッドシステムインジケーターとその内側に表示されるエネルギーフローに全てを頼る設定です。
通常、従来型ガソリンエンジン車でのマニュアルシフトダウン/アップは、走行中のエンジン音とタコメータの2種類、聴覚と視覚によるリアル情報をドライバーが瞬時に採り入れて、的確な回転数で操作しますが、クラウンハイブリッドにはタコメータが無いうえ、走行中のエンジン音がほとんど室内に侵入して来ませんので、マニュアル操作での的確なタイミングが掴めない。
街中でのゆっくりした走行状況で、アクセルから脚を放してエンジンブレーキによる減速制御中はV6エンジンへの燃料供給がカットされます。この後、停止線に向かってマニュアルシフトダウン操作をして行くと、3⇒2⇒1速と落として行くに従い、状況によってはシフトダウンによるショック対策で再びV6エンジンに燃料供給し、完全に車両が停止したあとも暫くの間(数秒間)はV6エンジンが回転を続けるのです。
これに気が付いたのはだいぶ経ってからですが、その際、V6エンジンが起動していても、
エネルギーフローにはエンジンが動いている事は表示されません。そしてその状態で室内にエンジン音の侵入はごくかすかで、車外の交通騒音に消されてしまうと聞こえません。なので、僅かにステアリングやお尻、足先に伝わるアイドリング及びその後のエンジン停止による車体のかすかな揺れで、『あ、いまV6エンジン停止した!』というのが解る、そういうレベルなのです。
これが、ワインディングでのスポーツ走行時でも同じ様な静寂さで再現されます。更に、ブレーキレバーを力強く踏み込む全力制動ではV6エンジンへの燃料供給がカットされ、シフトダウンを続けて行くと再度エンジン起動によりショックを和らげる。
そして、悩ましいのは峠道の下りを走り込む場面です。V6エンジンの加速時でも、登りの時より負荷が低いのでエンジン音はより静かになり、モーターの微かな回転音も含め、タイヤの走行音と外部ミラー周りの風切り音の騒音レベルに負けてしまい、相当な速度で走っているのに静か。まるで、グライダーで滑空しているような状況になります。
脚周りはどうか。
クラウンハイブリッドの脚はAVS機能を有するKYBのHYBRID車用ダンパーが純正品として組み込まれています。
因みにこのダンパーがクラウンハイブリッド専用に開発されたとDらーさんから聞きましたが、同じDらーの顧客情報で200クラウンアスリートと減衰力の値は同じだというものも有り、情けない話ですがコトの真実はいまだ解っておりません(T_T)
Normal Mode からSport Mode に移行させると、4輪のダンパー減衰力が強化され、コーナリングの際グっと踏ん張る感覚が増幅されます。
Normal Mode でのワインディングでの走りは快適で、水の上を滑る様に走りますが、Sport Mode では明らかにコーナー外側サスペンションの沈み込みが抑えられます。
Super City 号には、TOM'S ロアボディブレース/サスペンションメンバーブレース(F/R用)、アッパーパフォーマンスロッド(F用)のほか、COX BODY DAMPER setting by D'TEC Crown Hybrid用 といったボディ補強パーツを組み込んでいます。
パフォダンを取付けた際にも、ボディ補強ブレースを取付けた際にも、それぞれ従来との挙動・剛性の違いが良く解ったパーツで、ノーマル状態の車両に比べてガッシリ感が高まって、なお且つステアリングの切り返し時にスパっと方向が決まり、ボディの揺り返しが収まるようになりました。
これは、これまでの経験で、首都高など高速道路の架橋の継ぎ目を連続的に乗り越える様な場面では、乗り越えた直後のボディのグラグラがグっと収まるようになりました。高速道路の進入路、カーブで曲がりながら加速するような場面では、後席乗員がボディのリヤセクションの剛性が上がった事が解った、というコメントをくれましたし、本線走行中の車線変更の際にも取付前との変化を確認出来ました。
然し、一定以上の荒れた段差が断続的に続く様な路面状況で、ボディ全体にグォングォンという気持ちの良く無いビビりが残る事も有りましたので、総ての路面状況をケアー出来る訳では無いと言う事も理解しました。
このように市街地で好印象のクラウンハイブリッド、峠のワインディングではやはり、スポーツモデルでは無いが故の弱点を露呈する事になりました。
ひとことで言うと、路面インフォメーションが足りない。
結構なペースでワインディングを走破しても、Sport Mode でもロールは有る程度深いものの、切り返しでも上下の揺れをサスペンションが振幅として残す事はほとんど無く、パっと方向を決めコーナー出口に向けて加速して行きます。その走りは水の上を滑るような安定感を保ちながら、スーっと加速体制に持ち込まれます。然し、ペースを上げて行っても、ステアリングやお尻に感じる路面状態の震動や負荷はあまり変化が無いのです。
以前、スポーツクーペに乗っていた頃は、パワーアシストの無い重いステアリング操作と硬いボディ、タイヤから逐次路面情報が伝わって来て、限界に向けて段々タイヤのグリップが破綻し始めるといった境界に近い部分での挙動が探れていた様に思います。
然し、クラウンハイブリッドでは、それをステアリングで感じる事が出来ない。ペースがフルサイズ4ドアセダンとしては充分速い事は解っているんですけど、いつまでも平気で、しかもちょっと路面からタイヤ浮いてるの?的なインフォの無さで、更にペースを上げてコーナーに突っ込んで行く勇気が出無い・・・。MAZDA RX-7(SA22C)やHONDA NSX(NA1)のステアリングインフォメーションとは、全然違う・・・。
なので結局、峠の上半分が霧と雨でご愁傷様状態だった事もありますが、それ以上本格的に走り込む事は出来ませんでした。
エンジン音やモーター音は、全く無い訳では無く、耳を凝らせば聞こえます。
このクルマでよりレベルの高い走りの領域に近付くには、このままの状に慣れて少しずつペースを上げて行く練習の仕方か、タコメータを増設するか、サイドウィンドウを常時オープンにしてエンジン音を聞こえる様にして走り込むか、そのいずれをもやるかwww
これから、より密接に付き合うための時間を多く造る必要が有りますね。
また次回、その後の詳しいご報告をさせて戴きます~。
今回は、チョイ乗りでのインプレにとどめると言う事で(^ ^;
長い文章にお付き合い戴き、有難う御座いました!