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2009年03月25日

お医者さんと労基法

お医者さんと労基法 現在の日付(4月22日)からすると約1ヶ月さかのぼるが、忘れちゃいけないニュースだったと思うので、近くを通りがかった折に写真を撮ったこの機会にちりっと記録しておくことにする。

 3月25日の報道で明らかになったのは、東京都から総合周産期母子医療センターの指定を受けている愛育病院(添付写真)が、労基署から「医師を働かせすぎ。現状は労基法に抵触するんで是正が必要」と勧告を受けたことから東京都に対し「現状の医療水準を維持するには、そもそも人が足らん。人が増えない中で、労基署から受けた勧告に従うには、もはや総合周産期母子医療センターの看板を外して業務を縮小するしかない」と“最後通牒”を突きつけたことだった。

 勤務医の労働事情がおよそ常軌を逸した過酷なものであることは、僕がまだ学生だった20年以上も前から折に触れて報じられてきた。「折」というのは、医師が過労で突然死し、その遺族が労災認定を求めて(労基署に認められなかったことから改めて法廷に)提訴する、そういう場面のことである。NHKなどは、そういう「折」には、かなり手厚く報道をしていた。

 NHKなどで報じられた勤務医の当直のタイム・テーブルは、まずデイ・タイムの通常勤務を行い、ビジネス・アワーが終了するとそのまま当直シフトに入り、夜が明けたら翌日のデイ・タイムの勤務を行うというものだった。それが月に3回も4回も5回もある。休みがない。
 かつ、オフ・デューティーの日であっても(こんな当直をさせなければ回らないくらい人手不足なのだから必然だが)一朝ことあらば呼び出しが来る。ほぼ実態としては、休日ではなく自宅での待機勤務状態だ。過労死だって出ようと言うものだ。そして……一人が死亡していなくなれば、その分の労働力の不足分は(業務を縮小するのでない限り)残った人員で穴埋めせざるを得ず、状況は加速度的に悪化していくわけである。

 この人員払底は、直接の当事者である医師の生命・健康を危機にさらすだけではない。“受け入れ要員の数が足りていない”ということは、ごくごく当然の帰結として患者の「受け入れ拒否/たらい回し」……正確には受け入れ不能という事態に直結している。負のスパイラル、というか死のスパイラルに陥って久しいのである。

 さて、頭書の愛育病院の話だが、結局すぐに「総合周産期母子医療センターの看板を外したい」と言う打診は、撤回された。無論、医師の数が増えたわけではない。
 東京都の側が「(勤務を前提にした)当直と言うことにするから労基法に抵触するのであって、(拘束時間の中に睡眠も必要十分な時間確保されている)宿直だと言うことにしておけば、法律上の問題はクリアできるのはずだ」みたいなブッたわけたことを言い出して――ナニがブッたわけかと言えば、労基署は必要なら実態調査を行うし、いかに「宿直」と取り繕おうとも実態が当直相当の様態であったならば、違法状態であると結論付けることに変わりはないのである。否、組織ぐるみで積極的に不当労働行為を行ったとして、より厳しい対応に出るわけである――病院の側も「……ふーん。なら顔は立ててやるが、もうどうなっても知らんよ」と“最後通牒”を引っ込めた形になったという按配。
 ホント、もうどうなっても知らんぜ。と言うか、最悪の事態を覚悟せんとアカンのとちゃうか、東京都は。

 ところで。総合周産期母子医療センターの看板をかけた、都内の「大病院」である愛育病院でさえこの有様なのである。聞けば、地方の病院では「一人医長」の産科で診療を維持しているところもあるらしい。
 一人医長というのは読んで字の如し。その診療科には、医長以外のドクターがいない、と言うことだ。その勤務状況たるや、想像するのも恐ろしい。およそ人間的な生活なんか望み得ないんじゃなかろうか。

 厚生労働省はひさしく「医師の数は十分足りている」として数を減らそう減らそうとする政策を採り続けてきた。足りないように見えるのは診療科ごとの、もしくは勤務地ごとの医師の偏在が原因なのであって定足数は満たしている、と。
 さーて。愛育病院(産科)で上がった狼煙に、こうした苛烈な勤務下に置かれている全国医療機関の医師たちが、産科にとどまらず診療科を問わず呼応し始めたら、一体いかがなことが起こるだろうか。
 ただ単に「労働基準法を遵守する」というアタリマエのことを求められただけで、現在僕らがフツーに享受できている医療は崩れ去ってしまうのではなかろうか。そのとき、現状の医療行政を推し進めて来、日本国の医療関連全般を取り仕切ってきたお役所(の役人サマ)は、その責めをいかが果たすのだろうか。
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Posted at 2009/04/23 01:34:05

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この記事へのコメント

2009年4月24日 0:39
何でもかんでも医師がやるのが正しいのかも要検討だと思います。
医師が足りないのなら、医師以外でも対応可能な事を医師がしないようにすることが必要ではないかと思います。

いつから出産は病院でするのが普通になったのでしょうか。
昔は産婆さんがやっていたのだからその辺も考えないと。

個人的には社会が豊かになり責任回避の傾向が強くなってきた且つ、昔より医師の責任が重くなってきた事による人材難のような気がします。

多少給料が良くても医療ミスで逮捕や裁判沙汰になるリスクは取りたくないから、患者の死亡リスクの高い職場は避けたいというのが普通じゃ無いでしょうか。

要は人数の問題じゃない。医師の数をコントロールするのが問題。役所は医師のレベルを一定以上に維持すれば良いだけかと。

自分ならラリーストを輩出している歯医者さんがいいな(笑)
コメントへの返答
2009年4月24日 12:53
そうですね、医師が現状「やらねばならない」業務の中に、もしかしたら他の職制に委譲できる内容のものもあるかもしれませんから。

ただ、その場合懸念されるのはお金。新たに“誰か”に仕事を任せるとなれば、必ずその“誰か”の人件費が発生します。

出産と医療のことに関しては……助産師業界が産科医療を「目の敵にしている」という話もありまして軽々にコメントしづらいのですが、妊産婦にとってどちらを選択することがメリットになるのかが大切だと思います。

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