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イイね!
2009年05月15日

実に画期的な判決

実に画期的な判決 舗装道路というのは平らじゃない。水はけのために、道路中央よりも路肩のほうが低くなっている。これを業界用語では「横断勾配」と言うそうなのだが、その傾きの度合いは一般道路で1.5%、幹線道路だと2%、そして高速道路は2.5%と決められているらしい。

 表題の「画期的判決」というのは、この15日に福岡高裁の陶山博生裁判長が出した判決のことである。陶山裁判長によると「幹線道路には2%の横断勾配がついているので、ドライバーは絶えずハンドルを操作して進路を修正していないと(進路が左に流れていって)縁石に接触してしまう」のだそうだ。

 さて。普通に車を運転している身としては、そして幾らか車の構造についても知識のある身としては、この裁判所の認定には驚愕させられる。陶山裁判長が言うような挙動を示す車があるとすれば、僕に言わせりゃそれは足回りのアライメントが狂った整備不良車である。

 普通に工場から出荷され、普通に点検を受け、普通に車検を通っている車ならば、横断勾配の存在は最初から(設計段階から)織り込み済みなので、それによって車の進路がナナメになってしまうなどと言うことはない。というのが「事実」である。
 第一、2%の横断勾配で車の進路が左に流れてしまうとしたならば、2.5%「も」傾いている高速道路など危なくて走れたもんじゃない。

 で、福岡高裁がこういう「事実と異なる」認定に基づいた判決を下した裁判は、例の酔っ払った福岡市職員(当時)が橋の上で家族5人の乗った車に追突、被害車両が橋から転落して子供3人を溺死させた事件についてのものだった。
 この「事件(事故、とはいい難い気がするので)」を巡っては、危険運転致死傷罪が成立するのかどうかが激しく争われ、地裁は「この事実関係で同罪を成立させるのはムリ」との判断を下した。僕も、情においては容認しがたいものの、法律の条文や事実関係に照らせば、残念ながら同罪の不成立は論理的に正しいと認めざるを得ないと思っていた。

 だから僕は、高裁がどんな証拠評価、事実認定を使って論理的に危険運転致死傷罪が成立すると判断したのかに、すごく興味があったのだ。ところがそれが……こともあろうに「架空の事象」を前提にした『論理』だったとは!事実に基づかないと言う点で実に画期的な判決だが……ダメだろ、それじゃ。

 高裁は、一審で地裁が認定した前方不注視を否定するために、検察側がひねり出したリクツを追認しているわけだが、こんな「ヒンデンブルク号が爆発的な火災事故を起こしたのは水素ガスを使っていたからだ」みたいな事実と違うことを『事実』として扱われては困るのである。
 余談ながらヒンデンブルクがあれほどひどく燃えたのは、浮力を得るために用いていた水素ガスに主因があるのではなく、気球部分の外皮に塗布された燃性の高い塗料――テルミットと同様の成分だと言う話だから「燃えやすい」なんて生易しいもんじゃない――が主犯である。

 あの『事件』に対して危険運転致死傷罪を成立させるためには、もっと別の論理を用意しなくちゃいけない。同罪を適用したいばかりに事実と違うことを前提にして(キツく言えば「ウソ」を根拠にして)裁きを下すのは、司法制度そのものの信頼性に大きな傷をつけることに他ならない。

 どうせ弁護側は上告するんだろうけど、最高裁は基本、事実審じゃなくて法律審だから、多分ひっくり返らないはずだ。でもなぁ……この高裁判決が確定しちゃうと、事実としての自動車の性能に関係なく、法律上は『車は道路の横断勾配のせいで進路がヨレて行く乗り物である』ということになっちゃうんだよなぁ。
ブログ一覧 | 事件・事故 | 日記
Posted at 2009/05/26 00:16:29

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この記事へのコメント

2009年5月26日 1:57
理屈こねてひっくり返せば敏腕ともてはやされる弁護士ってのは、エラそうにしている割にちっとも社会の役には立ってないんですね。
それはともかく、酔った兄ちゃんはもちろん許せんのですが、危険運転致死傷罪ってのはこれら酔っぱらい運転を抑制するために役立って欲しい法なわけで、実際本人は事故を起こしたかったわけではないはずでしょうから、いざ適用で重い刑罰を…となるとウーンと思わなくもない点もありますね。
コメントへの返答
2009年5月26日 2:36
まぁ弁護士もピンキリですから……。ただ本件裁判で被告についた弁護人は(控えめに言っても)あんまり有能でないと思ってます。検察が、こんなアホなリクツを言い出したのをキチンと潰してないんですから。採用する裁判所も裁判所ですが。

ところでご指摘の「本人は事故を起こしたかったわけではない」というのは大変重要なポイントです。故意認定ができない、過失犯の一類型である自動車事故に限って、現在のようにひときわ厳しい罰条を定めるのが本当に妥当なのかどうか、刑法体系の全体に照らした場合、疑問なしとは言えないと思います。
まぁ立法技術で回避できた可能性のある要素じゃないかなぁと思ってるんですが、いずれにせよ今の法規定は、その構成要件の定め方を初めとして僕は首を傾げたくなります。
2009年5月27日 5:24
事実認定の手段もそうですが、自動車に関わる死亡案件の量刑が、所謂普通の殺人事件よりも重いような気がしてならないのが気になります。(それと強姦も)

被告の起こした事件は確かに心証は悪いものですが、他の犯罪との量刑のバランスは再考されてしかるべきではないかと思います。

個人的には、殺人罪の量刑が軽すぎるのではないかと思うのです。その結果、他の犯罪に厳罰が適用されるとバランスが狂ってしまうのではないでしょうか?
コメントへの返答
2009年5月28日 6:28
うーん、自動車に関しては免許と言う「特別のお許し」を受けて運転している、と言う前提があるので幾分か重めに扱われるのは仕方ない側面はあろうかと思います。(余談ながら、性犯罪については僕は逆にもっと重くてもいいと思います)

本件事件で問題なのは、あまりに「情緒的」に扱われすぎてる部分があるように見受けられることだと僕は思ってます。
仮に、亡くなったのが子供3人ではなく1人だったら。或いは、父親だけだったら。両親だったら。こういう「世間」のリアクションになったかな、とか考えてしまうわけです。

なお僕が昔勉強した知識に基づいて言うと、ある一定以上に罰を厳しくしても、それによって犯罪の抑止になるかと言えば残念ながらそうではない、ということだそうです。

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