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2004年01月29日

「矯正の余地なしとは言えず」

「矯正の余地なしとは言えず」 数年前のことだが、首都圏のある地方裁判所の裁判官と酒席をともにしたことがある。そのとき、刑事事件担当の裁判官の言ったことを思い出した。
 できることなら自分は死刑判決は出したくない。他の裁判官も、同じように考えている。何とか死刑判決を回避できるようにできるようにと考えに考え抜いて、それでもどうしようもないときにはそういう判決文を書くが、書いていてとても苦しいのだと、その裁判官は話した。

 いかなる重犯罪者であれ、そしていかに法の求めるところとは言え、逆上して人を殺めるのではなく、冷静に論理に従って公権力の名に於いて死を強いるのであるから、裁判官のそうした心理も理解できないものではない。むしろ、裁判官と呼ばれる職に就いたひとりの人間が抱える苦悩としては共感できる、とさえ言える。

 しかし、司法システムがそれでは、困るのだ。
紋切り型に自動処理のような判決をされてはもちろんたまったものではないけれど「できれば自分は死刑判決は下したくない」などと言う人情味あふれる理由で情状を酌まれては、司法制度がシステムとしておかしなことになってしまう。

 きょう午後、静岡地裁沼津支部で、元交際相手の17才少女に復縁を迫って執拗に付きまとった挙句、復縁を断られたことに逆上して、少女を包丁でめった刺しにして惨殺した30男の判決公判があった。
 桶川事件の直後に起きた事件で、検察側は死刑を求刑していた。
報道では通例、前科前歴は報じないことになっているが、きょうの新聞報道によると、被告は過去にも(殺人には至らなかったまでも)暴力事件を幾度も幾度も繰り返している人物だった。
この被告には「境界型人格障害」の診断が下されており、弁護側は(この診断を盾に)情状酌量を求めていた。

 裁判官の下した判決は、死刑の求刑に対し無期懲役。
判決文の全文や抜粋を読んだわけではなく、あくまで報道を通じて知った範囲ではあるが、その判決理由を裁判長は(各紙によって重要な部分で論旨が異なるのが気になるが)概ね次のようにしたようだ。
犯行に酌むべき事情はない。ただし。「生育環境から境界型人格障害に至り」(別紙では「犯行当時、境界型人格障害であり生育環境等の影響がみられた」)矯正は困難だが、その余地はある。犯行に計画性はない。だから死刑にはせず無期懲役。

 法律学を学生時代にかじった程度の、素人の僕でさえただちに問題点を2つばかり指摘できる。
 第一に、裁判官は「境界型人格障害」について正しい知識がないと考えられること(これについては後述)。
 第二に、計画性の点。一体、包丁を携えて被害者少女に付きまとう行為が、何ゆえ「計画性なし」になるのか。殺害、もしくはそれに類する犯意を抱かずして、一体どこの誰が包丁など持ち歩くと言うのだろうか?
僕には、裁判官が死刑判決を回避したいばかりに牽強付会の論理付けをしたとしか思えないのだ。

 この事件の裁判官が、僕が冒頭で触れたとある地裁の刑事裁判官のような心理にあったかどうかは推し量るすべもない。
だが、彼の裁判官が「他の人も同じ」と言ったことを事実とするならば、弁護側の「人格障害だったんだから大目に見てよ」という主張は大いに助けになったはずだ。

 最近、異常な(としか言いようのない)凶悪事件がおき、その被疑者が逮捕・起訴され被告として裁かれる段になると、弁護側はまるで判で押したように精神鑑定を要求し、なにがしかの病理や異常が発見されると、それを前面に押し出した弁護活動を行う。
根本的に間違った、ふざけた態度だと思う。
個人的に僕は、こういうことをする弁護士を許せない。
例えば、尾崎豊の「卒業」と言う歌にあるような行動を取ったとする。夜の学校に忍び込んでガラスを割って回ったり消火器をぶちまけたり。いわゆる「非行」である。さてこの非行少年が精神科の診察を受けるとどうなるか。
「行為障害」という診断名がついて、立派な病人と言うことになるのだ。
あるいは、家の外ではごく大人しいけれども家では親兄弟を殴ったり蹴ったり、家具を壊したりする人物がいたとする。
家庭内暴力である。思い悩んだ家族がこの人物を精神科医に診せる。すると「家庭限局性行為障害」という診断が下る。

 だから、精神科の受診歴がある、障害や病理の診断がある、と言うことは、犯罪行為に対する情状と直結させてはならないのだ。
沼津の事件では「境界型人格障害」である。
今はインターネットと言う非常に便利な者があるので、ちょっと検索すれば、これがどういう障害なのか、たちどころにわかる。
その障害は、果たして人をひとり殺害して死刑を求刑されている被告人の情状要件となりうる種類のものなのか。
僕は、まったくそうは思わない。
沼津支部の裁判官は被告の成育歴と人格障害を関連付けて判決文を書いているようである。想像するに、幼少時の悲惨な生育環境とやらが影響して人格障害を患うようになった、とか言うような論旨なのだろう(読んでないので実際のところはわからないが)。
しかしそれ、本当なのか?大酒飲んだら肝硬変になるような、原因と病理の因果関係は本当にあるのか?
調べた範囲で言えることは、そんな事実はないってことだ。

 現行の刑法では、どれほど凶悪卑劣な犯罪事案であっても、被告人が精神を患っていれば減刑可能になってしまう。
もちろん、そう言う法理になっているにはなっているなりの理由があるのだろうし、被告人の最大限の利益を目指す弁護人が、こういう一種の「抜け裏」を利用したがる気持ちもわかる。
だけれども、これは例外措置であるべきもので、ことあるごとに弁護側がこれを持ち出すのは幾らなんでも非常識と言うものだ。そして、先に挙げた行為障害の例でもわかるとおり、現在の精神医療の分類では、ほとんどありとあらゆる社会的逸脱行動は精神病理の一つとして扱い得るのである。
大袈裟に言えば、刑事犯罪の被告人はひとり残らず、心の病を患っているので減刑や刑事罰の埒外とすることが、論理的には可能なのである。

 裁判官に求める。
心神耗弱だとか善悪の判断がつかずとか、そう言う弁護士の手練手管に安易に乗らないで欲しい。そして、精神医療の分野にもっと明るくなって欲しい。

沼津の事件では、検察側が控訴する方向で検討しているようだ。
上級審の判断が、仮に一審判決と同じことになるとしても、せめて沼津支部の判断のように、素人目にも穴が見えるような情けないものではないことを願う。
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Posted at 2004/01/29 18:55:28

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