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2006年10月26日

故人のウェブ・ログ

故人のウェブ・ログ 26日の昼過ぎ、練馬の住宅街で刃物を振り回す男を取り押さえようとした警察官3人が次々に刺され、そのうち一人は一時「厳しい状態」にまで陥ったとのニュースが流れた。晩の続報では一命を取り留めたとのこと、不幸中の幸いであった。

 このニュースを見て思い出したのが、表題にもつけた故人のブログに記された内容だ。今年の5月下旬に小腸がんで亡くなった森實悟氏は、警察庁のキャリア官僚だった。その彼が病床で記したウェブ・ログ(ブログ)は『警察官僚ガン闘病記』とのタイトルで今も閲覧できる。そのエントリーの中に、警職法(警察官職務執行法)の改正にまつわる一文があった。日付は、昨年の大晦日(関連リンク参照)。

 森實氏は次のように記している。「殉職も増えているのではないだろうか。交通取締り中の交通事故といったものが横ばいである中、職務質問中に刺されるとか、不審者の通報に基づき現場に行って刺される、拳銃を狙って交番内で刺されるといったものが数年のうちに増えているような気がする」と。全く、今回の事件の図式だ。

 その上で氏は、現行の警職法では明文化されていない「職質対象者への身体検査と、合法的な武器となりうるものの質問中一時保管」を法文中に書いてはどうかと問題を提起している。そうして「護身としてナイフなんかを所持している者が増加していること、すぐにキレてこれを用いようとする傾向が強まっていること、ナイフの所持を禁止し、犯罪化しする法令はあれど、これを発見する手段・権限を規定する法令はないこと、現に一定数の警察官がこれがために命を落としていること」が十分な立法事実となると主張する。

 森實氏はこのエントリーを「フリスク(引用者註:捜件、身体検査)すれば救える警察官の命が一つでもあるのなら、少なくとも我々(霞ヶ関の人たちね)は怯むことなく、国民に「あやしい場合に警察官がフリスクするの我慢してくれますか?」と問う義務があると考える。
 もはや警職法の解釈の問題とするには限界が来ているのではないか、きちんと法令に書くことが、現場にとっても、国民にとってもハッピーなのではないかと考える
」と私見を締めくくっている。とても、誠実な方だったことが伺える一文だと思う。そして、基本的に僕は氏の考え方に賛同する。

 しかし――故人の考えに、こうして後付で反駁するのは卑怯なのかもしれないが、それでも僕はやはり「しかし」を付けたい――全面的に賛成かと問われると躊躇がある。
 立法趣旨はそうであったとしても、本当にロー・エンフォースメントの現場では「それだけ」で終わるだろうか、との疑問が拭えないのだ。本来、警察官の安全を確保することを目的に付け加えられた文言が、不審尋問や取り締まりや逮捕のための便利な道具として扱われるようになるんじゃないか、との懸念を抱かざるを得ない。だって、僕が警察官だったらそういう風に解釈・運用するもの。そしてきっと、判例もそれを支持してくれるもの。
だから、立法のバランスと言うのは、本当に難しいのだろう。

 故人のご冥福をお祈りするとともに、亡くなった後もこうして考える題材を与えてくれたこと、令夫人が森實氏のエントリーを残しておいてくれたことに感謝したい。
ブログ一覧 | 事件・事故 | 日記
Posted at 2006/10/27 15:17:08

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この記事へのコメント

2006年10月30日 1:11
僕もこの事件、新聞で生々しい現場の写真と共に読んで、ちょっと考えました。
防刃チョッキは着ていたものの、防げない脇腹部を刺されたそうですが。
最前線でオペレーションされている警察官の方の苦労は解りますし、一命にも関わる事ではあります。
でも一方で惰眠さんが危惧されておられるような解釈上の暴走も可能性としてあります。
むしろ、権力側に与えるパワーとしては、アンバランスになるかも知れず、中々難しい問題ですね。
コメントへの返答
2006年10月30日 10:29
業務従事者に関わる個別具体的な問題を、包括的かつ抽象的・概念的な組織や制度の問題として組み上げるときに、どうしてもついて回るジレンマなのかな、という気がします。

 ただ僕は、こういう「安全」だとか「健康」だとか「子供のため」とかのように、反対意見を述べがたい前提の下に持ち出されるものごとは、とりわけ注意深くその反作用にも気を配って、バランスをはからないと、マズいことになると思っています。

 そういうことを「口実」にして、別の目論見を叶えようとする人々は、残念ながらいるわけですし。

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