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2007年05月08日

でいごの花咲く頃

でいごの花咲く頃 いま、沖縄ではでいごの花が咲き誇っている頃だろうか。地元の俗信では、この花が咲き乱れる年は台風の当たり年とされているのだそうで、どちらかと言うと凶兆を意味するらしい。THE BOOMの「島唄」は、そのでいごの花が咲き乱れる歌である。

 シングル・カットされたCDをわざわざ買うくらい僕はこの歌が好きなのだけれども(余程気に入らないと財布の紐は緩めない)、何度か聞いているうちに「なんか妙な曲だな?」と感じ始めるようになった。

 THE BOOMの――というか、宮沢和史の『島唄』は一見、悲恋を題材にした恋歌のようなんだけれども、そこかしこに『死』のイメージが漂っている。「千代にさよなら」「八千代の別れ」と永訣を告げた後に「鳥」と来れば、日本武尊の白鳥を例に引くまでもなく死者の魂を暗喩しているようにしか思えない。

 それに、琉球音階で作曲されたと喧伝された割には、どうもそれとは違う節回しを持ち込んでいる部分があることも不思議だったし、なにより「島唄よ風に乗り――」のサビの部分に何故こんなにも悲痛な響きを乗せるのかも分からなかった。前触れもなく宇宙や神まで持ち出すに至っては、恋歌としては飛躍がすぎる。そう思うと、なんだか沖縄民謡ブームに乗っかっただけの(あえて言えばさほど完成度の高くない)流行歌に過ぎないようにさえ感じられてしまう。――迂闊であった。まったく見間違えていた。これは、恋歌なんかじゃあない。宮沢和史の『島唄』は、沖縄戦で理不尽に奪われた命の痛哭の歌なのだ。

 このことは、宮沢自身が一昨年の夏に新聞の連載エッセイの第一回目(2005年8月22日付朝日新聞朝刊)で明かしているそうだ
 ヤマトが勝手に始めたアメリカとの戦争、明治までは独立の王国であった琉球の意思は、そこには一切介在し得ない。そのヤマトとアメリカの戦争が海を渡って琉球にまでやってきた。
 波のように果てることなく寄せては返す戦闘、そのたびに繰り返す悲しみ。やがて追い詰められた琉球の人々は、ウージ(さとうきび)畑の下に多く存在する自然洞(ガマ)への避難を余儀なくされる。そのガマであまたの集団自決の悲劇が起こったのは、まだ僕らの祖父母の青年時代――ほんのちょっとだけ前――のことだ。

 宮沢はこう書いている。
歌詞の中に、ガマの中で自決した2人を歌った部分がある。「ウージの森で あなたと出会い ウージの下で 千代にさよなら」という下りだ。「島唄」はレとラがない沖縄音階で作ったが、この部分は本土で使われている音階に戻した。2人は本土の犠牲になったのだから。

 ああ――そうだったのか。
だから彼は「島唄よ風に乗り――」を、あんなにも痛々しく歌い上げるのか。だから海に、宇宙に、神に、命あるものに、嵐なき永遠の凪を願うのか。恨みでもなく、憎悪でもなく、怒りでもない。ただ深い深い悲しみと抗議が、この歌には込められていたのか……。
 そのことを知った上で改めて歌詞を見ると、今まで感じていた疑問がすべて氷解するとともに、まったく違った『島唄』の姿が見えてくる。いや、そうではない。いままで僕が、この歌の本当の意味を知らなかったのだ。

 しかし宮沢和史自身は、あまりこのことを積極的に語ってはいない。こうした背景をあまり雄弁に語ることはアーティストとして望ましいことと、彼が思っていないからなのかもしれない。
 テレビの番組などでは過去に幾度か語ったようだけれども、宮沢が作詞に至った動機は、繰り返し閲覧の可能な活字ベースではあまり残されていないように見受けられる。――そのことで、結果として、作家の寡黙とでもいべき状況を作り出してしまっているようだ。
 だが僕は、このことに関しては作家自身の、もうすこし積極的な発言を望みたい。まるで宮沢の寡黙に付け入るかのように、彼がこの歌に込めた思いをネガポジ反転したように捻じ曲げたフラッシュ動画を作成して、執拗に公開し続けている下衆がいるのだから――それを見て「感動した」などと言い出す者が後を絶たないのだから。

 『島唄』が引用する君が代の一節「千代に八千代に」は、暗い洞穴の中で自決した二人を歌った部分に登場する。その意味を、いまの時勢だからこそ、宮沢には改めて世に問うて欲しいと思う。
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Posted at 2007/05/09 00:00:51

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この記事へのコメント

2007年5月9日 23:57
僕もこの「島唄」が恋歌ではなく、沖縄戦を歌った唄だとつい先日ラジオか何かでふと聞きました。
この時勢だからこそ、社会に影響力を持つ人達は訴えて欲しいと、僕も切に感じています。
集団的自衛権なんて、現代版三国同盟だよなあ、としみじみ思うのです。
コメントへの返答
2007年5月10日 10:54
ただ「沖縄戦」と言うのではなくて、『本土(日本)の捨石にされ、犠牲になった沖縄』の歌ですね。
その部分に目をつぶってしまうと、この歌の一番肝心なところが伝わらないと思うんですよ。まあ、そういうことは聞きたくない知りたくない認めたくないって人もいるんでしょうけど。

>現代版三国同盟
ですねえ。世界のあちこちに喧嘩を売って恨みを買う商売をしているところと『集団的自衛』だなんてくっつき方したら、一体どういうことになるか想像するだけで気分が悪くなります。

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