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2002年12月06日

あの熱狂から四半世紀

あの熱狂から四半世紀 いま40歳から30歳くらいまでの人は、子供の頃にスーパーカーブームのど真ん中に居合わせた世代だと思う。両親の証言によると僕の場合、物心つく頃には既にクルマ好きだったと言うからブームで目覚めたわけではないようだが、あのブームを経験したことが、この歳になっても相変わらず車を眺める趣味(あんまり健全ではないのは承知している)から離れられない大きな原因になっているようだ。

 25年前、あまりにもスーパーカーに入れ込む息子たち(僕と弟)を父などは若干苦々しく見ていた気配があったのだが-子供の場合どうしても玩具が欲しいと言う欲望と直結しがちだし、父はこどもに玩具を買い与えることを良しとしない人だった-ある日、朝日新聞社が毎年出している「世界の自動車'78」と言うブックレットを持ち帰ってきた。

 それが、僕ら兄弟の愛読書になったかと言うとそれが皮肉な話で、そのとき一緒に持ち帰ってきた「世界の飛行機'78」や「世界の船'78」のほうに夢中になってしまったのだ。後年、僕が軍艦や軍用機のプラモデル趣味に走ったのは、間違いなくこの2冊が原因と言える。レシプロ機よりもジェット機のほうが好きなのも、このときの原体験がそれだけ強烈だったからだろう。
 話はややそれるが「~飛行機~」にはYF-16やノースロップYF-17が掲載されているような、そんな時代だった。

 その朝日新聞社刊「世界の自動車」と、四半世紀ぶりに再会した。先日来、蔵書一斉放出を続けている社内の図書館で、実は僕が一番期待していたのはこの年鑑誌だった。毎日グラフ別冊が出物に並んだとき、朝日のほうも絶対にあるはずだと踏んでいただけに、今回の入手の喜びはひとしおである。なにしろ1968年から最終号の1981年版まで一冊も欠けていないのだ。が、数えてみると15冊ある。68年から81年なら14冊のはずなのに、と思ってよく確認してみると1冊だけ「世界の船」が混じっていた。

 米袋のようにずっしり重い紙袋を手に帰宅して、まずは早速スーパーカーブーム真っ只中だった1977年の号を開く。次いで78年の号を。意外であった。あれほど僕ら小中学生を熱狂させ、恐らくは社会現象と読んで差し支えなかったであろう出来事が、誌面には一切反映されていないのである。

 そのときまで漠然としか覚えていなかったのだが、僕や弟がスーパーカー熱から醒めた理由を思い出した。世間でのブームのありようはどうあれ、僕らが憧れたスーパーカーなるものの大半は、「この世界のどこかで実際に作られているスゴイ車」ではなく、ショーモデル…子供の解釈ではカッコだけのハリボテ…に過ぎないことを、こういう大人向けのメディアに手を出したことで理解してしまったからなのだ。当時の僕は、しらけてしまったのである。それ以来、大学2年の時に免許を取るまで僕はクルマへの興味を一切失っていた。

 いま、大人の目で見てみると、朝日のこの編集方針の見識はよく理解できる。「世界の~」シリーズは世相に迎合したブックレットではなく、ジャーナリスティックな年鑑なのだ。77年や78年の本に、それより6年も7年も前にデビューした車(ショーモデル含む)を仰々しく取り上げるなど寧ろおかしな話なのだ。

 そう思って改めて読み直してみると資料的価値が非常に高い。当時の自動車を取り巻く環境がよく分かるし面白い。はなはだ子供向けではない作りになっている。今の僕には大変面白いのだが、スーパーカーがお目当ての子供が「特集・ソ連の自動車」だの「特集・東ヨーロッパの自動車」なんて記事に興味を示すはずがないのである。ワルトブルグだとか紅旗の記事を見て興奮している子供がいたら、そっちのほうが気味悪い。

 それともう一つ感じたこと。
現在の自動車専門メディアが、所詮はアウトソーシングされた自動車会社の宣伝・広報誌に過ぎないことがあぶり出しになった。自動車と言う耐久消費財を対象にしていても、そこにジャーナリズムの視座を持ち込むというのはこういうことだ!と無言のうちに主張している。これに比べれば硬派とされるCGだって、子供のままごとのようなものだ。
 世に数多はびこる自動車評論家なる職種の、一体どこが評論家なものか、フリーの宣伝マンじゃないかとの思いを一層強くさせられる。視点・切り口・考察の深さ・知識の広さ、全てにおいて、この時代に無署名記事を書いた記者たちのほうが、よほど評論家と呼ばれるに相応しい。

 などと硬いことも考えはしたのだが、僕は基本的にミーハーなので(理屈っぽいミーハーと評する人もいる)一番嬉しかったのは1968年版のカラーグラビアに、アルファロメオ33.2ストラダーレ(試作型)のプレスフォトが比較的大きく掲載されていたこと。4灯式でボディに余計なルーバー穴の開いていない、スカリオーネが手がけた美しいオリジナルデザインの、数少ない写真だ。箱根のギャラリーアバルト美術館では所蔵品の写真が撮影できないので、このグラビアは僕にとって、アイドルのお宝写真以上に値打ちモノなのである。
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Posted at 2002/12/06 15:44:42

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この記事へのコメント

2002年12月7日 1:54
良くも悪くも情報過多の時代が現在。
~年代のマスコミは、まだまだ足で記事を稼ぐ時代で、門外漢であればあるほど、調べものをしなければ及第点のとれる記事は書けなかったでありましょう。
今の記者が、それが出来ていないということではなくて、そのくらい情報が少なかったのだということで、だからこそ時を越えて目に触れたときに、この時代によくぞ。というセンスの資料が誕生したのでしょうね。
よく見知らぬ人からの質問を、web上で受けることがあります。
「○○のボルトのサイズを教えてください」
「下回りから異音がするんですが、何が原因でしょうか」
ばかかおめーは。そんなもん自分のクルマで測った方が早いし、原因がしりたきゃここへ音を聞かせに持ってこい(正しくは、すぐに整備に出しなさい)。
と、言いたくなるほど、かなり気軽に「自分で調べる前に誰かに聞ける」環境が、現代社会の情報には整っていますね。
ライターもしかりで、かつてフロンテクーペのオーナーと話をしたときに、
「最初の取材でこちらがパーツの件で言ったことを間違えて聞き取り、そのまま記事になる。それが10年経っても訂正されず、同じ情報のまま別の雑誌に載っている。結果、新しくユーザーになった人たちが、この誤情報で、パーツ探しに翻弄されている」
というようなことを言っておられました。
10年間のあいだ、最初に書かれた記事がリレーされ、最新の記事の手本になっているわけです。
「世界の自動車」を例えにするような、資料的価値のある文献を探し出す手間が惜しまれているのは、時間的な制約もあるのでしょうが、そのメディアの編集方針には必要のないことなのかと思うと、ちょっと寂しいですね。
まあ、今の自動車雑誌(あ、“雑誌”を引き合いに出してはつり合わないのか?)、出てきたクルマを大上段に「こんなもんかっこわるくて乗れないぞ」と書くようなところはないものなあ。
で、絶賛に絶賛を重ねていたモデルがFMCすると、突如「先代はここがだめ」と、懇切丁寧に教えてくれるわけですからね(溜息)
コメントへの返答
2002年12月7日 11:07
情報へのアクセスが以前に比べたやすくなったことは実感できますが、マスコミがそういった環境に安住して、なすべき取材をきちんとしていない、検証や確認をしていないのが大きいと思います。
友人に、通称「機械クラブ」と呼ばれる産業関係の記者クラブに籍を置いていた人物がいるのですが、彼からC34型ローレルの「プレスキット」をもらったことがあります。
このキットさえ手元にあれば、いっぱしの記事が書けるくらい懇切丁寧な内容でした。それなりの筆力があれば乗らずに試乗記も書けるし、技術解説もこなせるくらいの代物です。こういう便利なものが、自動車雑誌を含むマスコミ関係者にもれなく配布されるのだそうです。(事実、某週刊誌の某新車コラムはこのキットの完全な引き写しとしか思えない内容でした)

それとともに、広告出稿のことを考えると新製品の欠点を消費者に伝えるわけにはいかない、という馬鹿げた状況も原因にあるのでしょう。具体的なモデル名は伏せますが、海外の某メーカーが出している小型車について、とあるマスメディアで営業をやっている友人と話をしたことがあります。友人の姉がその小型車のオーナーなのですが、彼曰く「あれなら軽自動車の方がよほどマシ。出足トロいし小回り効かんし乗り心地悪いし。自動車評論家の言うことなんかウソばっかだよ。なんであんな車を誉めるか全く理解に苦しむ」。ちなみに彼は、そのメーカーからの広告を受け持っていました。「だから、俺がこんなこと言ったなんて絶対に黙っててくれよ」。
 自動車マスコミが、自動車メーカーからの広告だけで商売を成り立たせている限り変わらないのかもしれませんが、最終消費者を馬鹿にするのも大概にしろと言いたくなります。
 いま自動車マスコミで名を売る人で、話を聞く意味があると思えるのは、新車情報の三本和彦氏と、「今の時代間違いだらけの車選びなどというものはない」「車なんて、結局乗らなきゃ分からない」と自著の中で言い切った下野康史氏くらいしか、僕は思いつきません。

プロフィール

「フェアレデーって本当に呼ばれてたの? http://cvw.jp/b/9433/47108671/
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