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2008年03月24日

Zoom Zoom Evolution 過去の自動車デザインと言う「遺産」

Zoom Zoom Evolution 過去の自動車デザインと言う「遺産」 承前。河岡先生との話の続きをば。

 折角の機会なので、このところモヤモヤしていた考えを、プロフェッショナルな人の観点からはどのように見えるのか少し聞かせてもらいたいと思って尋ねた。
ポイントは二つ。イタルデザインのジュジャーロのデザインをはじめ、往年のスター・デザイナーの作品が、最早魅力的には見えなくなってきていて『老い』を感じさせる点。これは既に前項で書いた。
 一人のきわめて優れたタレントに全面依存してしまうと、その人のタレント(才能)が枯れてきたときに目も当てられないことになってしまう、そういう意味でパトリック・ル=ケモンを擁したルノーは今、難しい局面に差し掛かっているとも仰る。言われてみれば、確かに……。そういえば、アルファ・ロメオで名声を築きセアトに移籍したワルター・デ=シルヴァも、その後余り名前を聞かなくなった。ジュジャーロが「2世代にわたってトップランナーであり続けた」ことの凄さは、こういうところからも覗える。

 河岡先生に伺いたかったいまひとつの質問は、最近の自動車メーカーの社内デザインのトレンドが、安易に(僕の目にはそう映る)過去のモチーフの使い回しに流れていて、新しく魅力的なものを生み出す力が著しく衰えてきているように感じられる点。(ちょっと前ならベルトーネのB.A.T.11も入れていたところだが、背景事情を知るとこれは別論になる)
 先生の解説は、こんな具合だった。まず、新しいものが出にくくなっているのは間違いない。しかしその原因には、やはり多かれ少なかれ「やりつくしてしまった」という事情も否定できないようだ。フラッシュ・サイド(クラシックカーとは違ってフェンダーと車体側面パネルが面イチになった造形)が始まってからこっち、生み出されてきたデザインの数を思えば、確かにそうなのかもしれない。

 これは先の講義(笑)で出た『三つの稜線』や『エッジを立てるか暈かすか』の話と関連すると思うのだが、確かにそのバリエーションは無限に存在するとしても、その無限のバリエーションの中でも「車のデザイン」として成り立ちうるものにはおのずと許容範囲があるわけで、そうするとやはりどこかで「行き詰まり」が生じるのも止むを得ないということなのだろう。

 で、そういう中で目を向けられたのが「過去の財産」だと河岡先生はおっしゃる。標題写真のフィアット500も、こうした路線の嚆矢となったVWニュービートル、BMWミニも、それぞれが過去の財産の有効利用であり、また市場もこうした商品を(待望とまではいえないと僕は思うが)受容する環境にある。
 特に北米などではマスタングに続きGMも、初代の雰囲気を大いに意識したスタイルのカマロを近々デビューさせることにしているのだが、河岡先生いわく「アメリカ車の光り輝ける黄金期の製品だから」とのこと。実際問題として、アメリカのオンラインオークションなどではマスタングに代表されるこの時期のポニー・カーやコルベットが、ものすげー値段で24時間取引されているのだそうだ。「美術品の扱いです」とは河岡先生の弁。旧きよき50年代、60年代への郷愁が、恐らくその時代を実体験したことのない若いアメリカ人青年をもいざなっているのだろう。



 さらに河岡先生は「日本だったらスバルのR360(テントウムシ)が、そういう商品になりうるポテンシャルを秘めているが、残念なことに他にはちょっと見当たらない」と仰った。コスモスポーツでも無理ですか?と水を向けると「あれのデザイナーは、自動車をデザインしようと思って作ってない。あれは、ロータリーエンジンと言う未知のエンジンを積んだ新しい乗り物という(存在自体の)新しさと、そういうものを求める時代背景があってのデザインなので」と、否定的なお答えだ。でもそれは非常に頷ける。インダストリアル・デザインは「多くの人に買ってもらうことを目指した商品」に施された造型意匠なのだから。つまり、平成20年の今現在に力道山が存在しても国民的ヒーローにはなり得ないだろうことと同じで、時代背景とまったく切り離して考えることはできないということだ。
 そして残念ながらコスモスポーツは、VWのビートルやミニ、フィアット500、もしくはスバル360とは違って「その時代の誰しもにも親しまれた身近な存在」ではない。

 余談ながら河岡先生は「ああいう平べったい形が、とても斬新に見えたということもあるでしょう」とも仰った。ただ、それを商品として成功させたのはマツダではなくホンダだった(かつてのプレリュードやインテグラなど)とも笑っておいでだったが。

 うーん、うーん、でももう、本当に自動車のデザインは行き詰ってしまっているのだろうか。もう新しい魅力的なデザインを纏った自動車と言うのは望めないのだろうか。過去のモチーフのリフレインしか見られないのだろうか。
 僕は余り悲観したくない。例えば今度のアテンザ2、佐藤チーフデザイナーは配下のチーム・メンバーに「デザイン的手法は使うな、スタイリングの基礎を徹底的に磨きこんだものを作れ」と厳命し、ああいうものを世に出した。
 ならば、ここから先はあるいはT社のように「乾いた雑巾をさらに絞る」ようなことになるのかもしれないが、その「磨きに磨いた基礎」の上に構築される応用のバリエーションが、まだ残されていると信じたいのだ。
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Posted at 2008/03/24 17:08:12

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この記事へのコメント

2008年3月24日 17:52
いやー、最後までいたかったなぁ。帰りしなに河岡さんとすれ違ったんですよ。で、あれ?っと思ったんだけど、「まさかねぇ」と言うのと、僕らがよく知っていた頃よりもかなりお痩せに?なっていたようで別人かなと思ってました。あの人、話もうまいですし楽しいですよね。惰眠さんもとてもいい時間を過ごされたんじゃないかと思いますよ。朝の青切符代なんて今回の講義料だと思えば安いもんです。ああ、また招いてもらえないかなー。今度Aさんも含めてデザイン講演会でも企画しましょうかね。場所は舞浜で。
コメントへの返答
2008年3月24日 20:17
面白かったですよぉ、本当に。
もう、完全に大学の先生の講義です。ご自分でも仰ってたんですが、1コマ90分の講義で話をする配分が染み付いちゃってて、油断してると一人でセッション全部しゃべり倒しそうになると笑ってました。
まあ、それでも青切符は余計な出費でしたが……(笑)。

ところでその舞浜計画(仮)が実現した暁には、多少高めの身銭を切ってでもぜひ参加したいと、今から手を挙げておきます!
2008年3月24日 21:33
土曜日お疲れ様でした。
来しなにそんな事件があったとは。でも普段の惰眠さんなら青切符ではすまなかったのでは・・・(笑)

しかし、後半は至福の時でしたね。元ユーノス500乗りとしてだけでなく、あのようなアカデミックな内容を、気のおけない仲間と一緒に体感できる幸せを実感しました。「蛤〆」のお話は勉強になりました。

この企画はやはり魅力的ですね。
コメントへの返答
2008年3月24日 23:12
いや~、ははは、自業自得とは言え参りました。加速のいい車は余程気をつけてないと危ないですね(笑)。
状況的には、下手したら赤切符もありえたところでしたので、あまり笑ってもいられないのですが。

それにしてもやはり、仰るとおりで河岡教授の話はとても面白かったです。社会にでちゃうと、ああやって「講義」を受ける機会というのもめっきり減ってしまいますし、何より単位とか試験とか考えずに(笑)興味の赴くままに同じ趣味の仲間と話を聞くことのできる楽しさというのはやはり格別です。

前回のデミオのときもそうでしたが、あの企画、やはり「社外」の方を招いたのは非常に成功だと思います。
2008年3月28日 14:28
26日発売のベストカーに前澤さんがアテンザについて書いてますが、まぁ、だいたい僕らと同じような感想のようですヨ。コンビニで本を手に取ったら、エ○本コーナーのところに移動して立ち読みしてみてくださいね。
コメントへの返答
2008年3月31日 11:18
んー、やっぱりですか。
でも、個人的には積極的にNo(笑)を言うほど良くないデザインとは思ってません。同業他社の現役モデルと横並びで見れば、平均点以上だと思いますので……。
あんまりコンビニは利用しないんで、本屋にでも行ったときに見てみます。

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「フェアレデーって本当に呼ばれてたの? http://cvw.jp/b/9433/47108671/
何シテル?   07/24 21:51
曲面の綺麗な旧い車が好き、エレガンスのある車が好き。そんなこんなでユーノス500に乗りつづけ、もう……何年だ?  気がつけば屋根のない車まで併有。いつまで乗り...
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