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イイね!
2008年04月16日

そこまで言うか!

そこまで言うか! BPO(放送倫理・番組向上機構)が15日付で「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見」を組織決定し公表した。

表紙を含めるて40ページと結構分量のある読み物で、新聞各紙もそれなりに報じているが、ものスゲーことを(あくまで「意見」と言う形ではあるが)書いている

 新聞報道では(見た限り東京新聞を除いて)なぜだか触れていないのだが、意見書はテレビ各局の一連の番組を制作した担当者について「刑事裁判の前提的知識が不足している」と、バッサリ斬り捨てた。
 番組制作者は、法曹三者(裁判官・検察官・弁護人)の役割分担も理解しているのか疑わしく、まるで「真実はすでに決まっている、と高をくくった傲慢さ、あるいは軽率さ」や「被告や弁護団の主張・立証など、裁判所が認めるはずがない、という先入観」に基づいて、「新聞の見出しを見ただけで、誰でも口にできるようなことしかやって」おらず、単に「悪いヤツが悪いことをした。被害者遺族は可哀相だ」ということだけ繰り返しただけに過ぎない、と。

 そこまで言うか……第三者機関とは言え、広義には「身内」であろうに。意見書の内容は、一連のテレビ報道の姿勢を、全否定しているに等しい。

 まとめの一文も強烈だ。「刑事裁判という法律の世界の出来事を、普通の人間の実感レベルだけで捉え、反応している」、「刑事裁判の仕組みなどそっちのけで弁護団に反発したり、文脈や証拠価値のちがいも区別しないまま、被告の法廷での供述と、精神鑑定の際の言葉をいっしょくたに非難したり、など」として、我々世間一般の人間ならばまぁ仕方がないとしても、報道機関がやらなきゃならないこと/やっちゃいけないことを安易にやってる、お前らは報道機関の名に値しないと、まぁそういうことを書いているわけだ。

 かつての「サッチー騒動」を思い出す。いちプロ野球チームの監督夫人の素行を、これでもかと言うくらい細々あげつらって、随分と長いこと週刊誌や月刊誌、ワイドショーが「バッシング」を続けた。
 あるとき偶然、そういうワイドショーを制作する仕事に携わる知人と会ったので「あれ、いつまで続けるの?」と聞いたところ「ホントはもう俺たちも飽きてるんだけどさ、あれやると、数字(毎分視聴率)がポンッと上がるんだよ。この上がり方が鈍ってくれば見切りつけられるんだけどね……」との答えが返ってきた。
 BPOの意見書で言うところの「実感」、要するに世情に阿(おもね)れば阿っただけ、番組の人気に反映するというわけだ。けど、それって「報道」の名に値するのか知らん。

 僕はこのBPOの意見書は、至極正当なことを書いていると思う。「身内」にここまでのことを言うかとの驚きはあるが、それほど一連の報道が「刑事司法の仕組みを判ってない奴が作ってるんじゃないか、普通に暮らしてる人に甚だしい誤解を与えるような作り方になってるんじゃないか」と思わずにいられないようなものだったのも事実だからだ。(と言うか、実際に被告人弁護団に対して、論拠薄弱な懲戒請求が殺到する事態を招いてさえいる)

 ただ、一点、テレビ局側の弁解に手を貸してやりたいと思う事情もある。
日本の刑事裁判制度の構造では、裁判の当事者になるのは「訴訟の進行指揮を行い、最後に結論を下す裁判所」と、「被告人の法的逸脱行為を指弾・糾弾し、これに法的処分を与えるべしと主張する検察」ならびに「当局が法的逸脱行為をしたとみなしているところの(実際にそうなのかは裁判が決着するまで未定)被告人&圧倒的組織力+法的知識+実体的処罰能力を持った当局とのバランスを取るために付けられた弁護人」の三者だけ。

 事件の被害者本人も、被害者関係者も、まったく蚊帳の外でとり行われるものだった。ここに、特にこの問題の裁判の頃から、被害者側も(部分的に)関わりを持たせようと言う風に制度変更があった。
 この制度変更を報道の中に組み込んでみた嚆矢が今回の裁判報道と言うことになる。報道の「台本」の中に被害者側をどう位置づけるかについて、参考にすべき前例がないのだ。それで、今回BPOに全否定を食らわされたようなフレームワークを、まずは採用してみた。とにかく、やってみないことには始まらなかった、そんな印象を僕は持っている。

 ただそれでも、意見書の次のフレーズは、番組制作にかかわった人たちには深く噛み締めてもらいたいと思った。
犯罪が正常なるものからの逸脱行為であってみれば、合理的に理解できるものからかけ離れているのは当たり前のことである。被告に理性や合理的思考が備わっていたら、そもそも母子殺害に及ぶこともなかっただろう。被告の内面で起きた荒唐無稽、奇異で異様なこと、その要因を探ることのなかに、取材や番組制作のもうひとつの意味と醍醐味もあったはずである。
(中略)
 しかし、残念ながら、本件放送には、そのような意欲や取り組みは見受けられなかった。多くの番組は、被害者遺族に同情し、共感するところで止まってしまい、被告・弁護団の主張・立証を最初から、荒唐無稽で奇異なものとして全面的に退けてしまっている。


番組制作者が差戻控訴審に関する番組を企画するに当たって、事件発生から今日までの流れ、事件・犯罪・裁判報道の基本的役割、少年事件における量刑基準のあり方についての議論、被告の内面や人間像を洞察することの重要性、刑事裁判の当事者主義や弁護士の誠実義務、真実義務等々にもう少し自覚的であれば、本件放送の内容はちがったものになったであろう。
  そうした全体的な視野を志向する意識の希薄さ、あるいは欠落が、本件放送をいびつに偏ったものとした。


 もしかしたら、現場の司法記者には言わずもがなのことなのかもしれない。でも、その取材の成果を公表する場である番組が曲がっていたとしたら、結局曲がった情報しか外へは出て行かないのだ。








なかのひと

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Posted at 2008/04/17 13:04:24

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この記事へのコメント

2008年4月23日 23:57
昔はTVのニュースって出来るだけ主観や感情を交えずに、淡々と事実を伝えるだけの(本当かどうかは置いといて)番組が多かったんですが、ニュースステーション以降段々と、キャスターの個性や見解が求められるようになってきて、いまやワイドショーとニュースや報道との境目がなくなってきましたね。
これも過剰なコマーシャリズムやマーケティング理論の影響だと思うんですけどね。
以前はスポンサーも費用対効果とか、今ほど過剰に気にしてなかったような、大檀那とかパトロン的な懐の深さがあったんじゃないかと思うんですが。

昔は公平公正な報道ってテレビ局は義務だと思っていたんじゃないかと思うのですが、解りやすさや面白さを過剰に求めるようになった=視聴率を求めるようになったのが背景にあるような気がします。
もっとも最近はテレビ、普段殆ど見てないので、憶測ですが(^^ゞ
コメントへの返答
2008年4月24日 11:49
今でもストレート・ニュースはそんな感じです。ただ、そういうニュースは見る側の「基礎教養」を要求しますよね。
 ニュースステーションの開発コンセプトは「中学生でも分かるニュース番組」だったそうで、そのニュース内容に関する「基礎教養」を持たない視聴者にも、その重要性や意味合いを敷衍する意味において、意義ある試みだったと思います。

 ただ……やっぱりその「分かりやすさ」ってのが曲者なんですよね。分かりやすく噛み砕いて噛み砕いてを重ねていくと、いずれかのレベルから「間違いだとまでは言えないけども、かなり不正確」な状態が生じる筈です。
 ニュース番組の制作者がそのことに無自覚でいたとすると、これはかなりオッカナイことです。

 本来的に、ものごとを理解するには、受け止める自分のレベルを向上させていかなければならないのですが、逆に事象のレベルを単純化・簡易化して言葉は悪いですが「余程の馬鹿でも分かる」ようにしてやらないとイケナイ的な流れが定着しているような。

 10年以上前、ある文芸作家と雑談をしていたときにぽろっと出た話なんですが、たとえば娯楽小説なんかだって「本を読む」には読者に一定以上のスキルを要求するわけです。
 その敷居を越えられないようなレベルの読者は、あえてやって来て下さらんで結構、と。そういう種類の娯楽だという話。映画にもそういうの、ありますよね。

 そういう目から傲慢な物言い(笑)をしますと、いまあらゆる分野で、この「基礎教養」を欠き、かつそれを身につける努力をも放棄したような層に対して「優しくなり過ぎて」いるように思います。
いや、言葉が不正確でした。優しさではないですね。甘やかせですね。
2008年4月25日 0:28
そうですね、僕も思います。
ちょっと前までは教養人って言葉が生きていて、大人になるって事は社会常識を身につけ、難しい事を理解する事だったですけど。
社会全体が幼稚化していて、それを憚らないような傾向がありますね。
そして、ワイドショーのキャスターは、ブラウン管の向こう側の視聴者にはどうせ難しい事を言っても理解出来ないのだから、お仕着せがましく話して聞かせれば良い、みたいな人が増えたような気がします。
そして単純化の仕方が正しく解りやすければ良いのですが、大体フィルターがかかって、バイアスされてるんじゃないですかねぇ。
特に穏やかでリベラルな方よりも、より扇情的でエモーショナルな方向に導いてるように思います。
コメントへの返答
2008年4月25日 10:44
専門実務家のブログを見ていても、よく「上から目線でものを言ってる」みたいな反応をする人がいるんですよ。開いた口が塞がらないとはこのことかと思います。相手は専門家、こちらはシロウト、仰げば尊しわが師の恩ですよ。師かどうかは兎も角として相手が(知識でも実務経験でも)上なのはあったり前じゃないですか。何を甘ったれたことを言ってるのかと(笑)。

まぁガッコのセンセなら「おーまーえーはーアーホーやー」とでも言ってもっと勉強せぇと不出来な生徒のケツ引っぱたけばいいのかも知れませんが、そーゆー相手にも愛想良くしなくちゃいけない人気稼業のコメンテーター諸兄は嫌われちゃうとショーバイに差し障りがあるので低きに流れると……。

分かりやすく説明するのと、ものごとを単純化して話すのとは、本当は別のことなんですがねえ。

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