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2008年04月22日

予想通りの判決

予想通りの判決 民放の報道姿勢に対してBPOから極めて厳しい意見書が突きつけられたりした、山口県光市の母子殺害事件の裁判だが、予想通り……というか、予定通り被告人を死刑に処するとの差戻し高裁判決が出た。前にも書いたけども、弁護側がああいう弁論を行ったおかげで、裁判官も心置きなく極刑を申し渡す判決文を書くことができたのではなかろうか。

 尤も、本件裁判で弁護側は事件を傷害致死だったと位置づけているわけだから、それを一蹴した高裁判決を受け入れる余地はなく、したがって近日中に(もしかしたら今日中にでも)最高裁に今一度上告することになるだろう。……とか書いてたら、早速上告したとの報。そりゃまそーだろな。
 まあ、仮に裁判所が無期懲役判決を維持したり、弁護側主張を容れて有期刑判決に転じていれば検察官が上告するのも必至で、つまりはどの道、高裁で終わる裁判ではないのだけれども。いずれにせよ高裁判決を確定判決とするには、あとは被告人本人が上告を取り下げるくらいしかないわけだが、まぁそれは無理だろう。

 僕は裁判所の判断は基本的に妥当だと思うのだけれども、新聞報道で見る限り、一点、これだけはちょっと容認できないな、と感じる裁判所の判断があった。それは、これまで6年半の裁判の過程で旧弁護団と数百回の接見を重ねていたにも拘らず、その間においては一度たりとも殺意の否定など、現弁護団が行っている主張につながる話をしていない、だから被告人の主張の変遷は不自然不合理だと認定していること。

 富山で起こった強姦冤罪事件を念頭に置くならば、被告人が弁護人との間に信頼関係を築けず、どうせ何を言っても無駄なんだという心理状態にはまり込んでしまう実例もあるわけで、接見回数と弁護を任せていた期間の長さを以って主張内容の変遷を不自然不合理と決め付けるのは、僕は無理があると思う。(
あるいは、新聞報道が端折りすぎているだけで、実際の判決文ではもうちょっと筋の通ったことを言っているのかもしれないが)
<4/23追記:産経のオンライン版で判決要旨の全文を読んで見たら、ちゃんと筋の通ったことを言って、被告人側の言い分を却下してました。なので、上記部分は撤回。新聞記事の要約って、ホント時々危なっかしいわ。と、ちょっと八つ当たり。>

 ところで、きょうの判決公判を伝えるテレビ番組を職場でザーッと俯瞰していた感じでは、先のBPOの意見書(お前らテレビ局は刑事裁判についての前提的知識すら欠いているんじゃねーの?って指弾)の効果もあってか、かなりスタンダードな裁判(判決)報道をやっていたように思えた。
 そも、否認事件の裁判ともなれば、被告人の主張が「被害者遺族を傷つける」ような内容になるのは程度問題とは言え必至であるし、被告人が幼稚でどうしようもないバカッタレであれば、その弁解の内容も「このガキ、ふざけんじゃねー」になるのも必然である。そういう表層的な文言をいちいち論(あげつら)ったところで、そんなもんは裁判「報道」じゃない。

 テレビ局に報道機関たるの矜持があるのであれば、そんな上っ面のキャッチーな言葉に飛びついてキーキーとヒステリックに騒ぎ散らすのではなく、被告人・弁護人がどういう「戦術」「戦略」で法廷に臨むのかを分析・検討し、その主張が裁判において説得力を持ちうるのか、検察側主張に対抗しうるものなのか、他の証拠関係に照らして破綻がないものなのか、そういうことを報じるべきだった。

 現弁護団に交代してからの被告側主張は、ビビッドな反応を招きやすい幾つかの「修飾語」に惑わされなければ、それ自体はシンプルで合理的だった。つまり被告人は取り調べの初期段階で、殺意を否認している。後の裁判では一顧だにされていない(というのは、実は大問題である)が、殺意がなかったとすると、検察側の起訴事実は根底から覆る。差し戻し二審は、そういう裁判だった。

 問題は、殺意がなかったとした場合、その他の被告人の行動を、傷害致死に伴う一連の行動と言う図式の中に破綻なく組み入れた、説得力のあるストーリーを構築しなければ、そもそも「殺意なし」の立論ができないこと。そこで弁護側が寄りかかったのが、被告人は精神発達の度合いが著しく遅滞した、幼稚で、空想と現実の弁別もろくにできないようなダメ人間とした鑑定書だ。
 幼稚なガキの空想的な世界なら、ドラえもんや死者蘇生といった本人に都合のいい「おとぎ話」も無理なく組み込める……そういう考え方だ。そして、そういうストーリーの構築そのものは、不可能ではない。

 ただ、そういう拙いストーリーが組み立て不可能ではないことと、そのストーリーが検察側立証に合理的疑いを差し挟ませるだけの論理的説得力を持ち合わせているかは全く別の話だ。第一、取調べの初期段階で否認供述をしていたとしても、それが必ずしも真であるとは限らない。
 それに、自白事件裁判としてここまで進んできたものを否認に転じた場合など、裁判所がそのストーリーを受け入れなければ「自己の正当化を図るのみの、自己中心的で身勝手な言い訳」として、より厳しく断罪される材料を自ら進んで提供することにもなる。最初に「弁護側がああいう弁論を行ったおかげで、裁判官も心置きなく極刑を申し渡す判決文を書くことができたのではなかろうか」と書いたのは、そういう意味だ。

 というか、テレビ各社とも専属の司法記者は抱えている筈で、となれば、ここに書いたようなことは、いまさら僕なんかが言うまでもないようなアッタリマエの常識だと思うんだが……。

 今後、最高裁が弁護側の上告をどう扱うか、またはそれ以前に被告人本人が弁護団の上告手続きをそのままに任せるかはまだ分からないが、一点、この長きに渡る裁判で、僕が抱いた偽らざる感想がある。
 ようやく、被告人を極刑に処するに値する程度に「罪の認識」ができるだけの精神面の成長をはかる時間を与えたと言う点で、この長期にわたった裁判には意味があったと感じる。人をかみ殺した犬コロを殺処分するのと択ぶところがないようでは「極刑」自体が虚しいのだから。
 





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Posted at 2008/04/22 14:37:27

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