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2004年03月24日 イイね!

21世紀は西部劇の時代

21世紀は西部劇の時代時代はいま、西部劇である。
善良なる西部開拓民が一生懸命築き上げた平和で栄えた街に、ならず者のインディアンの一群が押し寄せて破壊と殺戮の限りを尽くす。そこに登場騎兵隊!
悪いインディアンどもを皆殺しにして、街に平和が帰ってきた。めでたしめでたし。

 イスラエルによるパレスチナのヤシン師暗殺は、つまりそういう筋書きだ。
敵対勢力の精神的指導者を殺す。
当然、報復は起こるだろうが、戦力において勝るイスラエルは、最終的にパレスチナ人を片端から殲滅して、聖なる約束の地を浄化する―そういうことだ。
 我らの築いた繁栄に徒為す仇敵は、この手で滅ぼし尽くしてくれようぞ。悪いインディアンどもは皆殺しだ、と。

 911の世界貿易ビル事件の折、世界の盟主を自認する合衆国大統領閣下が「テロとの戦争」なるテーゼを打ち出し、自分たちに牙を剥く奴らは「ならず者国家」もしくは「テロリスト」であり、武を以って絶滅させるに憚ることなしと言う姿勢を示したが、そのときから僕は、イスラエルは必ずや欣喜雀躍しパレスチナを軍事力で蹂躙する日が近く来ると確信していた。
 なにしろ世界のリーダーにしてイスラエルの強力なる支援国家が先陣を切って、俺たちに不都合な奴らはテロリストとして葬り去ればいいんだと宣言したのだから、いまや何を遠慮する必要があろうか。

 尤も、これはひとりイスラエルに限ったことではない。
アイルランド問題を抱える大英帝国、バスク地方独立問題を抱えるスペインあたりが、その「テロとの戦い」の錦の御旗の下、イラクに因縁を吹っかけて戦争を仕掛けることに諸手を挙げて賛成した事実を僕らは目にしている。
 インドネシア、中国、トルコ、中南米諸国…つまりは現在の政治体制に対する有力な(もしくは先鋭的で暴力的な)対立軸が存在する国々にとって、合衆国の打ち立てたテーゼはこの上もなく好都合なのだ。「あいつらはテロリストなんだから、もはや対話は必要ない」と。

 人類の智恵は、どうやら一気に400年も後退してしまったようである。
イタリアの政治家が合衆国のこうした姿勢について「油を注いで火を消そうとするようなものだ」と非難したが、まったく同感だ。
 「テロとの戦争」などと吠え立ててミサイル・戦車・機関銃を振り回すなんて、高熱が出ているので頭から冷水を浴びるようなもんだ。高熱が出ているなら、原因疾患を特定して適切な治療をするのが当然というもの。冷水浴びて熱を冷まそうなんてしたら、病気は悪化するだけである。

 襲い来るインディアン。逃げ惑う無辜の開拓者。悪を蹴散らす騎兵隊。自由と繁栄の国、合衆国万歳。つまり、この西部劇というヤツはアメリカ合衆国の「くにつくり神話」である。
土地所有という概念があるのかどうかも疑わしい先住民から、マンハッタン島をわずか60ギルダー分の物品で「買い取る」など「無辜の開拓者」は先住民を追い立て、滅ぼし、そうした侵略と略奪の末に出来上がったのが、美しき栄光のアメリカ合衆国である。主よ、救いたまえ。

 自分たちの生活圏に突如入り込み、まったく異なる文化の世界を勝手に作り上げ、繁殖し、その支配圏をグイグイ拡大していく侵略者から、自分たちを守ろうとした先住民たちが取り得る手段。それが「インディアンによる襲撃」ではないのか。そう、現代に置き換えれば「無差別テロ」と呼びうる、最後の抵抗手段だ。
そうそう、無差別テロなら武力で制圧しなくちゃね。主よ、守りたまえ。

 僕はテロを肯定などしない。
いつものように仕事に出かけた人が、ただ飛行機に乗り合わせただけの人が、買い物をしていただけの人がいきなり生命を奪われるなど、どんな口実を設けようとも認め得るものではない。
 では、テロと戦うにはどうすればいい。テロを「無くす」にはどうすればいい。
敵対するもの、牙を剥きそうな者たちを、或いは殺害し、或いは監禁し、或いは封じ込めればテロは起きなくなるのか?侵略を、略奪を、占領を続けたままで?相手の都合は一切顧みず、独善を押し通したままで?武力ですり潰してしまえば、テロは根絶できると?
 確かに、今この場に存在するテロリストを例えば10人殺せば、今この場の危険を遠ざけることにはなるだろう。しかし―断言する。10人のテロリストが死んだとき、1000人の敵対者が生まれる。より深い憎悪を抱えた敵対者が。そしてその中から、次の10人、15人のテロリストが生まれる。最後の1人をこの世から葬り去るまで止まることのない、憎しみと呪いの拡大再生産だ。

 イスラエルは、この道に踏み出した。ヤシン師の次は、アラファト議長を暗殺すると暗に宣言している。そうしてイスラエルの平和を手に入れるのだと。
であるならば、これはパレスチナ人に対する「民族浄化」の宣言に他ならない。
合衆国大統領は、これに理解を示した。ジェノサイドをやりたまえ、と。相手がこっちに噛み付いてくる以上、殺そうが踏みにじろうが正義はこちらにあるのだ、と。
そりゃそうだろう。侵略と蹂躙によって誕生した合衆国の「くにつくり神話」を忠実になぞっているイスラエルを、どのツラ下げて非難など出来るものか。

 我が国の政府・外務省は極めて珍しいことだが、これを「後先考えぬ愚挙」とばかりに非難した。
尤も、我が国の総理大臣は「それぞれ立場がありますからね」とイスラエルの攻撃に理解を示し、自身の度し難い愚かさを改めて、重ねて、念押しするかのごとく世間に公表したわけであるが。

 この21世紀は、西部劇の時代である。
先住民が生活している土地を「新大陸」と名づけて入り込み、先住民の生活圏を圧迫し奪い取って自らの繁栄を築き上げた、対立を生んだ根本原因―つまり、どうすれば事態が好転し解決し得るかの根っ子―はすべて無視し、襲い来る先住民「悪のインディアン」を打ち滅ぼす正義の騎兵隊の時代である。
世界中で起こる「騎兵隊」の活躍に喝采を送ろう。そういう時代である。

 そして僕は、また一つ気分の悪い想像をしてしまった。
西部劇、即ちウェスタン・ムービーはエンターテインメント・ビジネス、つまり一つの産業だった。同じように、もしかしたら―憎悪を拡大再生産し、次なるテロが生まれる土壌を涵養するのは…それ自体が一つのビジネスとして成立しているからじゃないだろうか。
 シャロンのイスラエルは、暗殺が引き起こす結果を考慮もせずに愚かな行動に走ったのではなく、「後先よく考えて」マーケットの活性化と拡大を期待して行動したのではあるまいか。だから「共同事業者」の合衆国大統領は、このプランを支持したんじゃなかろうか。

 僕はキリスト者ではないが、敬虔なクリスチャンであると自認する合衆国大統領のために、僭越ながら主に祈りを捧げたい。洗礼は受けていないが、一応カトリック系の学校に通っていたこともあるので、門前の小僧の読む経だと思って大目に見てもらいたい。

「願わくは、御名の尊まれんことを。御旨の天に行わるる如く地にも行われんことを。
彼らの罪を赦し給え。」
だが、嗚呼。人の世における行いは、人の世において裁かれねばならないのだ。
Posted at 2004/03/24 16:59:09 | コメント(0) | 事件・事故 | 日記

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