ウクライナ侵攻の数的主力T-72
長期戦の様相を呈するようになったロシアによるウクライナ侵攻。戦いが始まったのは、雪解けの泥の海、いわゆる「ラスプーチツァ」の時期とも重なる2022年2月後半のことでした。ロシア軍は、旧ソ連軍以来の伝統たる機甲部隊の大量投入でウクライナ軍の防御態勢を一気に押し潰そうとしましたが、主戦兵器の戦車などが予想外の大損害を受けて侵攻速度が著しく低下。加えて、その後のウクライナ軍による巧妙かつ効果的な反転攻勢で、ロシア軍は占領地を奪還されたり、反撃の強さに堪えかねて撤退したりする事態となっています。かつての第2次世界大戦時の戦況をひもとくまでもなく、ウクライナの国土の大部分を占める平原地帯で戦いを有利に進めるには、走・攻・防の3要素にまんべんなく秀でた戦車が不可欠です。そこで改めて、同地に投入された代表的なロシア軍戦車についてみてみましょう。
ウクライナはかつて旧ソ連邦の一部だったので、兵器体系は旧ソ連/ロシア型です。さらに戦車に関していえば、旧ソ連時代の同地には有力な戦車工場が存在しており、それらは今も稼働しています。このような背景から、侵攻してきたロシア軍戦車は、ウクライナ軍にもなじみ深い型式だったり、熟知しているメカニズムが使われたりしています。しかも、ロシア軍戦車兵は戦意が低いからか燃料切れや些細な故障で“愛車”を遺棄するだけでなく、戦わずして無傷のまま放棄して逃げてしまうこともあるようで、結果、ウクライナ軍はロシア軍戦車を大量に鹵獲(ろかく)し、それを再生して活用しています。その代表格が、T-72シリーズです。1970年代に登場したので古い戦車ですが、実は、戦車という「器」に盛り込まれた「中身」である砲などの兵装、エンジンなどの駆動系、FCS(射撃管制装置)などを更新することで、相応に寿命を延長することが可能です。さらにこれらの“入れ物”といえる車体と砲塔、すなわち「ドン殻」ですら、増加装甲などを施して近代化することができます。かようなわけで、ロシア軍はT-72シリーズの改修型であるT-72B3Mを主力戦車として侵攻を開始しました。そして、軽微な損傷、燃料切れ、あるいは乗員に放棄されるなどしたT-72は、ウクライナ軍に鹵獲され、当然ながら同軍で再使用に供されています。
T-72ベースの発展型T-90
このT-72の発展改良型がT-90で、同じようにウクライナ侵攻に投入されています。そもそも旧ソ連は、T-72のほかにT-64とT-80といった戦車も装備していました。前者はT-72に比べて先進的でしたが、T-72の評判がよく、発展改良型の開発は行われませんでした。一方、後者は先端技術を用いた戦車として開発されました。しかしコストの問題などで発展させられることはなく、両者で得られた技術的アドバンテージは、のちのT-72の改修に活かされました。こうしてT-72にT-80の性能をフィードバックさせた、発展型として誕生したのがT-90です。主砲はT-72に搭載されているものの改良型で、9M119M「レフレークス」対戦車ミサイルを発射できます。なお、T-90はT-80より安かったため、ロシア軍が装備するだけでなく輸出用として諸外国にも販売されました。2022年現在、シリーズの普及型はT-90A「ウラジーミル」で、これがウクライナ侵攻にも用いられています。加えて、開発と配備が遅れている最新のT-14戦車を補完するべく、同戦車の技術の一部をフィードバックした最新型のT-90M「プラルィヴ」もロシアは開発し、ウクライナの前線に投入しています。ところがT-90は、T-72と同形式の自動装填装置を備えているので、やはり被弾後に砲塔が吹き飛ぶケースも多いようです。しかもT-72B3Mと最新のT-90Aの戦闘能力は、ウクライナの戦場という限定条件下では、ほとんど差がないということも伝えられています。そして最新のT-90M「プラルィヴ」も、撃破されただけでなく、やはり戦車兵の士気が低いことに起因してなのか、放棄されて全く無傷でウクライナ軍に鹵獲されています。
戦車の数足りなくなって急きょ登板T-62
かくして、最近の主力戦車のT-72B3MやT-90Aを多数失ったロシア軍は、ついに旧式のT-62戦車を再整備して最前線に投入しています。T-62は、1960年代中頃に実戦配備された、世界で初めて滑腔砲を装備した実用型戦車です。当時の滑腔砲は射距離が延びると急速に命中精度が低下する弱点がありましたが、旧ソ連軍は近距離戦を重視しており、命中精度が多少劣っても装甲貫徹力に優れているなら良しとしたのです。しかしこのT-62、中東戦争などではアメリカ製のM60戦車やイスラエルが独自改良した「ショット」戦車(原型は英「センチュリオン」戦車)などに苦戦を強いられました。とはいえ、その後も長く旧ソ連/ロシア軍で運用が続けられ、後期のT-62Mでは9M117 「バスティアン」対戦車ミサイルの発射が可能になるなどして大幅な性能向上が図られています。
本来ならT-72の配備が進捗することで退役する予定が立てられており、実際、ウクライナ侵攻前にはかなりの数のT-62が予備兵器扱いとされ、保管に回されていました。それが、ウクライナでの前述したような最新型戦車の損失を穴埋めする目的で整備され、前線へと送られているのです。同車の一部は囮として用いるために無人誘導できるよう改造されたとも伝えられますが、多くはT-72やT-90と同じように主力戦車(MBT)として運用するためのようです。ただ、ロシアの兵器保管の状況は杜撰(ずさん)で、以前からポケットマネー稼ぎの部品などの横流しも行われてきたため、再整備作業はかなり厄介だとも言われています。このT-62も、やはりウクライナ軍によって撃破されたり鹵獲されたりしており、伝えられるところでは、再生車や鹵獲車などを集めれば、20両から30両単位の大隊規模の部隊を編成することまで可能な数だとか。ただ、ウクライナ軍としても旧式のT-62に、ただでさえ不足しがちな訓練済みの戦車兵をわざわざ乗せる価値があるかどうかが、悩みどころのようです。
晩秋の「ラスプーチツァ」が凍り、積雪と厳寒の季節を迎えたウクライナ。
現在、ロシア軍は地域によって攻勢と防勢を使い分けているようです。普通に考えれば、敵の懐に飛び込む攻勢にはT-72やT-90といった新しい戦車を投入し、それらを装備した部隊が「抜けた穴」や、旧式であることの弱点を補える伏撃ができる防勢の地域向けにT-62が投入されているのかもしれません。2022年ももうすぐ終わりますが、2023年も引き続きウクライナの戦況を注視せざるを得ないようです。(白石 光(戦史研究家))
「ロシアはウクライナにとって最大の武器支援国」などと皮肉なのかジョークなのかそんなことが言われるほどロシア軍の武器の遺棄が多い。ロシア軍と言えば東西冷戦時代西側を震え上がらせた旧ソ連陸軍の末裔、ウクライナの首都キーウは1週間で制圧されるだろうと言うのが開戦前の予想だった。それがこの体たらくとは誰もが予想だにしなかったことだろう。元凶のプースケもまさかのびっくりだろう。現代の戦争は莫大な金がかかる。だから長期戦は是が非でも避けなければならない。それが第二次世界大戦後最大の長期戦となってしまったのは祖国を守り切るという大義を持ったウクライナと訳も分からずに戦争に巻き込まれた何の大義もないロシア軍との差だろう。もっともウクライナにしても西側、特に米国の支援がなければどうなっていたか分からないが、超大国米国も備蓄弾薬が不足して韓国から買い入れるような状況に陥ったということはまさに予想を超えた消耗戦で戦争と言うのは莫大な物資を消耗する不毛の行為だと言うことではある。ウクライナの状況はロシアが防衛線を築いて戦線は膠着状態のようだ。年明けにロシアが再度キーウ侵攻を試みるとか言うが、ロシアにどれほどの戦力が残っているだろうか。ただ一度始めた戦争をやめるには非常なエネルギーと覚悟を必要とする。ロシアはこのまま成果を上げずに停戦すればプースケは追放だろうし、ウクライナの復興について莫大な賠償責任を負うことになる。ウクライナにしても最低でも東部4州の奪還がなければやめることはできないだろう。何と言ってもこの戦争の元凶はプースケなのでこいつが失脚するか死んでしまえばいいのだが、この手に限ってなかなかしぶといようだ。きれいごとを言っても戦争は人間の本性だから人間がいる限り戦争はなくならないだろうけどそれにしても早く終わってくれるといいと思う、・・(^_-)-☆。
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Posted at
2022/12/31 17:38:47